まるで新感覚のエンターテイメントショー! 「908 FESTIVAL 2016」をレポート
KREVA | 2016.09.23
「最終的にはやっぱりKREVAが一番いいと言わせたい!」
MCで発したその言葉は、KREVAの偽らざる本音だった。KREVAは昨年の「908 FES」から1年間、表立ったライブ活動を控えていた。ソロデビューから12年、KREVAがここまでステージに“空白の時間”をつくったことはない。作品のリリースも昨年2月のシングル「Under The Moon」から途絶えている。もちろん、この1年間の空白はKREVAが自ら設けたものでもあるが、栄枯盛衰のサイクルが早い世界に身を置いている以上、逸る気持ちがなかったといえば嘘になるだろう。だからこそ、KREVAは今回の「908 FESTIVAL 2016」でさまざまな“サムシングニュー”を提示したのだと思う。
そもそも今年の「908 FES」は、そのラインナップからして新風景が広がること必至のバラエティに富んだ顔ぶれだった。三浦大知、AKLO、Mummy-Dといった縁の深い先輩・後輩から、同イベント史上初のバンドアクトとなる赤い公園、ダンスアーティスト集団であるYOKOI from WRECKING CREW ORCHESTRA、EL SQUAD、芸人の渡辺直美、ミュージカルをメインに活躍している女優の綿引さやか、ラッパーのFU-JI。彼らのライブパフォーマンスがどのような様相で「908 FES」を彩り、KREVAと交わるのか。例年以上に予想がつかなかった。
開演時間ジャストにオープニング映像がスタートし、柿崎洋一郎(Key)、岡雄三(Ba)、近田潔人(Gt)、白根佳尚(Dr)、熊井吾郎(DJ+MPC)という「908 FES」を全編にわたってサポートするスペシャルバンドのメンバーによる「intro 2016ver」を経て、KREVAはいきなり新曲「神の領域」を鳴らしたのだが、その模様については後述したい。
「神の領域」になぞらえて「今年の一番手、こいつも最後には神にも手が届くんじゃねえか!?って男を紹介するぜ。AKLO!」と、KREVAからバトンを渡されたAKLOは最新のUSヒップホップを完璧に体得したスタイルを誇示するようなライブを見せつけた。KREVAと「RGTO feat. KREVA」、「Catch Me If You Can feat. KREVA」を、さらにMummy-Dも交えての「サーフィン RMX feat. Mummy-D, KREVA」とコラボレーションの数珠つなぎも実現した。
続くYOKOI from WRECKING CREW ORCHESTRA&EL SQUADのステージは掛け値なしに衝撃的だった。蛍光素材のELワイヤーが施された電飾コスチュームを身にまとった彼らは、低音を強調したトラックが爆音で流れるなか、光と闇を駆使した新時代のパフォーマンスアートともいうべき寸分の狂いもないダンスアクションでオーディエンスのどよめきを誘った。
KREVAの新しい音楽劇「最高はひとつじゃない2016 SAKURA」でもカバーした「ひかり」をしっとり歌い上げた綿引さやか。これが初の完全再現となる「TOKYO HARBER feat. KREVA」も披露した赤い公園。KREVA曰く「俺が2016年に聴いたどの曲よりも記憶に残っている」という「マンボー」でコミカルなインパクトをもって会場を湧かせたFU-JI??と、フレッシュなアクトが続いたところで登場したのが、渡辺直美。徹底的にビヨンセになりきる渡辺直美の形態模写パフォーマンスは、確実にオーディエンスを楽しませるという芸人魂に満ちていた。ミュージカル女優、若き女性バンド、まだ多くの人には知られていないラッパー、国民的な知名度を誇る芸人がシームレスに登場するというカオティックな展開にまったく違和感を覚えさせず、むしろ新感覚のエンターテイメントショーのような歓楽性を生み出してみせたその要因にあるのは「908 FES」の懐の深さに他ならない。換言すれば、それは日本のポピュラーミュージックシーンの第一線でヒップホップの可能性を拡張し続けるKREVAの音楽性でありアーティスト性の包容力ともいえる。
そんなKREVAが全幅の信頼を置いているのが三浦大知。渡辺直美が残した濃厚な余韻に飲み込まれることなく、もはや貫禄さえ漂うボーカルとダンスでオーディエンスを魅了し、事実上の“セミファイナル”を飾った。KREVAと三浦大知のタッグではおなじみの「全速力」ではYOKOI from WRECKING CREW ORCHESTRA&EL SQUADも迎え、エクスクルーシプなコラボレーションもすばらしかった。
そして、KREVAだ。記憶を「908 FES」の冒頭に巻き戻そう。前出の新曲「神の領域」についてである。この1年間の空白を一瞬にして埋めてみせるようなバースの説得力とすごみ、豊潤な旋律を擁したフックの求心力。そう、これぞKREVAの真骨頂であり新領域だと膝を打つ会心の内容だった。
一気に記憶を早送りする。「908 FES」のトリとして登場したKREVAが自身のブロックで1曲目に選んだのは「王者の休日」だった。2曲目の「基準」へ移行する前にはこんなMCを挟んだ。
「1年ぶりにここに帰ってきたぜ。だから今日は長くやらせてもらう。だが、しかし!しばらく俺がライブをしてない間にやれRADWIMPSだ、やれONE OK ROCKだ、やれ三浦大知だって、俺のことを忘れてしまった人もいるかもしれないから、あらためて俺がどんなやつが、俺がどんな“基準”でライブをやっているかを教えてやらないといけねえな」
KREVAはやはり王者の威光を微塵も損なうことなく帰ってきた。アンコールでKREVAはあえてひとりきりでステージに立ちもうひとつの新曲「居場所」で「908 FES」の幕を下ろした。その歌はKREVAのソロ活動における原点である「希望の炎」や「音色」を彷彿させるものがあった。終演後には以下の3つの重要事項が発表された。
①12年間在籍したポニーキャニオンからSPEEDSTAR RECORDSに移籍
②2017年春にニューアルバム(タイトル未定)をリリース
③アルバムのリリース後に全国ツアーを開催
いよいよKREVAのニューフェイズが始まる。誰よりもストイックな王者から目を離すべからず、だ。
【取材・文:三宅 正一】
【撮影:国府田利光】
リリース情報
[DVD]「908 FESTIVAL」2014.9.07 & 9.08 at 日本武道館
2015年03月18日
ポニーキャニオン
2014.9.07(SUN)「KREVA~完全1人武道館~」
01 基準
02 ストロングスタイル
[メドレー]
03 成功
04 俺は Do It Like This
05 OH YEAH
06 I REP
07 調理場
08 世界の中心
09 かも
10 スタート
11 成功 (outro)
[ライミング講座]
12 47都道府県ラップ
[ビートメイク]
13 トランキライザー
[マッシュアップ]
14 全速力×Space Dancer
[セミアコースティック]
15 瞬間Speechless
[押し語り]
16 EGAO
[外出]
17 イッサイガッサイ
18 Have a nice day!
19 C’mon, Let’s go
20 Na Na Na
21 音色
<DISC-2>
2014.9.08(MON)「クレバの日」
出演:KREVA / 鈴木雅之 / 久保田利伸 / 三浦大知 / AKLO / UL / KICK THE CAN CREW / RHYMESTER
[KREVA]
01 908FES 新超INTRO
02 トランキライザー
03 全速力 feat. 三浦大知
[三浦大知]
04 Right Now
05 Blow You Away!
06 Anchor
[AKLO]
07 CHASER~RED PILL~NEW DAYS MOVE
08 Catch Me If You Can feat. KREVA
[鈴木雅之]
09 くればいいのに feat. 鈴木雅之
10 夢で逢えたら
11 僕らの奇跡 ~Open Sesame~ feat. KREVA
[UL / KICK THE CAN CREW]
12 La La Like a Love Song
13 イツナロウバ
14 神輿ロッカーズ
15 マルシェ with RHYMESTER
[RHYMESTER]
16 ONCE AGAIN
[久保田利伸]
17 M☆A☆G☆I☆C 久保田利伸 meets KREVA
18 LA・LA・LA LOVE SONG with 三浦大知
[KREVA]
19 イッサイガッサイ
20 蜃気楼 feat. 三浦大知
21 中盤戦 feat. Mummy-D
22 Na Na Na
23 希望の炎
24 音色
EN パーティはIZUKO?