My Hair is Bad、衝動のままに駆け抜けた「ホームランツアー2016」セミファイナル東京公演をレポート!
My Hair is Bad | 2016.10.05
いま、My Hair is Badがロックシーンで熱狂的な支持を集めている理由は何なのか。現代を生きる若者のリアルを抉るように綴る歌詞のせいか、フロントマン椎木知仁(Vo・G)の噛みつくようなマイクパフォーマンスのせいか、荒削りだが衝動的なバンドサウンドのせいなのか。その理由はきっとひとつに絞ることはできないが、なぜだか考えずにはいられなかった。それが恵比寿リキッドルームで見たマイヘアのライブだった。
今年5月にメジャーデビューを果たしたマイヘアが、同月から開催してきた全35公演の「ホームランツアー2016」。セミファイナルの東京はバンド最大キャパの会場をソールドアウトさせた歴史的な1日でもあったが、そんなことよりも椎木は「もっとかっこよくなりたい」と何度も繰り返していた。かっこよさに飢えていた。「かっこいいロックバンドになりたい!俺はあの娘のいちばんになりたい!」(椎木)。まるでバンドを始めたばかりの少年のようなダダ漏れの衝動のままにマイヘアは2時間のライブを駆け抜けた。
開演。静かにステージに現われた椎木、山本大樹(Ba・Cho)、山田淳(Dr)の3人。椎木が「やっとここまで来たな!燃え尽きていきましょう」と言うと、メジャーデビュー作となった3rdシングル『時代をあつめて』のリード曲「戦争を知らない大人たち」からライブはスタートした。削ぎ落とされたバンドサウンドにのせて、捲し立てる歌詞はただ目に見える日常を綴っただけのもの。だが、そこには誰もが生活で抱く諦念や求愛、情熱、怒り、そんな様々な感情が確かにあった。
「初対面も、常連も、アンチも、顔ファンも、そういうのマジで興味ない。ライブハウスを選んで足を運んでくれた人を絶対に後悔させないんで」(椎木)。最初の挨拶を手短に切り上げて、畳みかけるように届けた「愛ゆえに」や「悪口たち」。愛の真剣さゆえにこじれていく複雑な心情をリアルに綴る歌詞は、ラブソングと呼ぶにはビターで生々しい。そして10月19日にリリースするアルバム『woman’s』の中から、「いちばん好きな曲かもしれない」と紹介した新曲「告白」、わずか20秒ほどのファストチューン「クリサンセマム」というスピーディな展開を経て、「ディアウェンディ」や「元彼氏として」では、椎木は勢いよくフロアにダイブした。「ライブハウスで遊びたいんだ!」(椎木)。汗ダクになりながら、これでもかとフロアを煽る様はライブハウスこそ生き場所に選んだバンドマンの姿だった。
MCではずっとバイト、バイト、バイト……だったという日々を振り返り、いまの姿を「全店長に伝えたいです!」と言った椎木。この場所には「My Hair is BadでMy Hair is Badを倒しにきました!」と宣言すると、マイヘアにしか鳴らせないアンセム「フロムナウオン」へと突入した。ギターを掻き鳴らして「今日は俺らが主役だ」「俺らは上じゃなく前に進んでる」「俺らがやるべきことはホームランか?三振か?フルスウィングだ!」。そうやって重ねていく言葉に共鳴するように、フロアからは歓声が湧き起こった。「金持ちになりたいわけでもない。ロックスターになりたいわけでもない。男になりてぇんだ!あの娘の前で。あんたは何になりたいんだ!?」(椎木)。この日、マイヘアは富や名声なんかのためではなく、ロックバンドにしかできない奇跡を起こすためにステージに立っていた。
ライブ中に椎木以外のメンバーが何かを話すことはないが、フロントマンの圧倒的なエネルギーに引っ張られるように、メンバーの熱量がぐんぐん高まっていったのが終盤の「真赤」や「悪い癖」にかけてだった。自分の恥ずかしいところを包み隠さずに暴くマイヘアの楽曲群は、たとえ歌詞とまったく同じ経験をしていなくても、くすぐったいほど共感できる感情が転がっている。だから痛いほど響く。そして迎えた最後のMC。椎木は「インスタグラムでもツイッターでもない、現場でかっこいいロックバンドでありたい!」、そんな熱い叫び声をあげて、夏の刹那を刻んだラストナンバー「夏が過ぎてく」へと繋いだ。
アンコールでは「ありがとうございます!(この日を迎えられたのは)みなさんのおかげですし、もっと言うと、俺らが3人ちゃんと生きてライブをしてきたおかげです」と、椎木らしい言い回しで感謝の言葉を伝えると、ミディアムテンポの「優しさの行方」がラストソングだった。「俺らがバンドを組んで10年が経ったんだって。これからもどんどん時間が経っていくけど、ずっと歌ってるから」と、椎木。そんなことを言って、歌わなくなったバンドもたくさんいる。だけど、なぜだろう。彼らの言葉なら信頼できると思った。体ではなく、心を揺さぶるために存在するMy Hair is Badの音楽。その真剣さに触れて本気で思う。彼らの音楽はきっとわたしたちを裏切ったりはしない。
彼らが熱く支持される理由。それを一言で言うのは難しいが、マイへアがライブハウスという場所で体当たりで築く信頼関係の強さは、その理由のひとつだと思う。
【取材・文:秦 理絵】
【撮影:MASANORI FUJIKAWA】
リリース情報
woman’s[初回限定盤]
2016年10月19日
EMI Records
01.告白
02.接吻とフレンド
03.音楽家(ミュージシャン)になりたくて
04.グッバイ・マイマリー
05.戦争を知らない大人たち
06.恋人ができたんだ
07.mendo_931
08.ワーカーインザダークネス
09.革命はいつも
10. 沈黙と陳列 幼少は永遠(とわ)へ
11. 真赤
12. 卒業
13. また来年になっても
[初回盤 LIVE DVD 収録内容]
・2015年12月14日 渋谷 CLUB QUATTRO「師走の虎」
01.真赤
02.18歳よ
03.新曲
04.白熱灯、焼ける朝
05.月に群雲
06.クリサンセマム
07.ディアウェンディ
08.フロムナウオン
09.最近のこと
10.悪い癖
11.ドラマみたいだ
12.優しさの行方
13.アフターアワー
セットリスト
ホームランツアー2016〜ワンマン公演〜 2016.9.23@恵比寿リキッドルーム
- 1.戦争を知らない大人たち
- 2.月に群雲
- 3.18歳よ
- 4.ドラマみたいだ
- 5.赤信号で止まること
- 6.愛ゆえに
- 7.悪口たち
- 8.まだほどけて
- 9.告白
- 10.クリサンセマム
- 12.アフターアワー
- 13.ディアウェンディ
- 14.元彼氏として
- 15.マイハッピーウェディング
- 16.フロムナウオン
- 17.卒業
- 18.真赤
- 19.彼氏として
- 20.悪い癖
- 21.恋人ができたんだ
- 22.最愛の果て
- 23.夏が過ぎてく
- EN1.優しさの行方
お知らせ
My Hair is Bad presents ハイパーホームランツアー
2016/12/03(土) 上越EARTH
2016/12/05(月) 渋谷TSUTAYA O-CREST
2016/12/07(水) 名古屋HUCK FINN
2016/12/09(金) 心斎橋BRONZE
2016/12/11(日) 広島福山Cable
2016/12/13(火) 福岡Queblick
2016/12/26(月) 神戸太陽と虎
2017/03/01(水) 新潟GOLDEN PIGS BLACK
2017/03/03(金) 高田馬場club PHASE
2017/03/07(火) 山口周南RISING HALL
2017/03/09(木) 出雲APOLLO
2017/03/11(土) 大分T.O.P.S Bitts HALL
2017/03/12(日) 松山SALON KITTY
2017/03/19(日) なんばHatch
2017/03/21(火) 千葉LOOK
2017/03/23(木) 郡山#9
2017/03/24(金) 仙台MACANA
2017/03/26(日) 山形酒田MUSIC FACTORY
2017/03/28(火) 新潟三条ROCKET PINK
2017/03/31(金) 静岡UMBER
2017/04/03(月) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
2017/04/05(水) 京都MUSE
2017/04/08(土) 高知X-pt.
2017/04/12(水) 水戸LIGHT HOUSE
2017/04/13(木) 宇都宮HELLO DOLLY
2017/04/15(土) the five morioka
2017/04/16(日) 秋田SWINDLE
2017/04/18(火) 青森弘前Mag-Net
2017/04/22(土) 札幌cube garden
2017/05/04(木) 日比谷野外大音楽堂
2017/05/11(木) 金沢vanvanV4
2017/05/13(土) 名古屋CLUB DIAMOND HALL
2017/05/20(土) 桜坂セントラル
2017/05/25(木) 広島CLUB QUATTRO
2017/05/27(土) 福岡BEAT STATION
2017/05/29(月) 高松DIME
2017/06/01(木) 松本ALECX
2017/06/03(土) 仙台JUNK BOX
2017/06/06(火) 横浜FAD
2017/06/10(土) 宮崎FLOOR
2017/06/11(日) 小倉FUSE
2017/06/15(木) 甲府KAZOO HALL
2017/06/18(日) 新潟LOTS
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。