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自らの“これまで”と“これから”を力強く示唆した、GOOD ON THE REEL初の野音ワンマンライブをレポート

GOOD ON THE REEL | 2016.10.14

 GOOD ON THE REELが10月9日(日)、東京・日比谷野外音楽堂で自主企画イベント「『HAVE A “GOOD” NIGHT vol.50』ANNIVERSARY SPECIAL」(ワンマンライブ)を開催。記念すべき通算50回目のイベント、そして、初めての野音ワンマンライブで5人は、結成10年目の集大成というべき充実のステージを見せてくれた。 

 東京地方は前日の10月8日(土)から雨。当日の午前中も強い雨が降ったものの、午後になると雨は止み、開場時間の16時30分には爽やかな風が日比谷公園を吹き抜けていた。雨を心配していたオーディエンスもホッとした様子。入場時に配布されたシャボン玉セットを手にして、この記念すべきライブの開演を待っていた。 

 すっかり日が暮れた17時30分過ぎ、ついにライブがスタート。「HAVE A “GOOD” NIGHT」と書かれた青い布が飾られたステージにメンバーが登場し、「やっとこの日が来ました。10年目にして辿り着いた野音が来ました。50回目の『HAVE A “GOOD” NIGHT』へようこそ!」と千野隆尋(Vo)が叫ぶと観客から大きな歓声と拍手が巻き起こる。オープニングは50回目の自主企画イベントを記念して制作された最新シングル「雨天決行」。疾走感に溢れたバンドサウンドと空に向かって広がるようなメロディ、「言いたいやつは言わせとけよ 暇なやつらに構ってる暇はない」という前向きな歌詞が響き渡り、観客の高揚感もグングン上がっていく。
さらに「ユリイカ」「それは彼女の部屋で二人」とアップテンポの曲を続けて演奏した後、最初のMC。
「“こんばんは”になったかな? GOOD ON THE REELです。いや、すげえ景色だね。出て来たときに感動しました。ありがとう」「10年やってきて、たくさんの曲が生まれて。それを今日、この場所で歌える、演奏できるのは、すげぇ嬉しいです」

 そんな千野の言葉を挟み、このバンドのキャリアを彩ってきた楽曲が次々と披露される。抒情的なムードを描いた音像、飛び跳ねるような4つ打ちのビートがひとつになった「2月のセプテンバー」(2ndミニアルバム「シェレーディンガーの二人」/2011年)、“いつか枯れてしまう幸せなら、そんなものはいらない”という切実な思いを綴った「花」(4thミニアルバム「マリヴロンの四季」/2013年)、煌びやかなギターフレーズとともに「久しぶりに会った君」への思いを歌った「エターナル・サンシャイン」(7thミニアルバム「七曜になれなかった王様」/2015年)、エモーショナルなサウンドのなかで“僕のことを覚えていてほしい”という切実な願いを描いた「夕映」(1stミニアルバム「世界分の一節」/2011年)。リアルと寓話が重なり合うような千野の歌、そのメッセージ性と世界観を際立たせるバンドサウンド。GOOD ON THE REELの独創性を強く反映した楽曲が美しい夜景とともに広がるシーンは、まさに“この日、この場所”だけのものだ。

 ライブ中盤では「夏の大三角」「つぼみ」「24時間」をアコースティック・スタイルで演奏(宇佐美友啓[Ba]はこのコーナーのためにアコースティック・ベースを購入したそう)。観客も椅子に座り、5人が紡ぎ出す歌をじっくりと聴いている。美しい風景、懐かしい思い出、胸をギュッと締め付けられるような切なくも愛おしい感情の数々。GOOD ON THE REELの音楽は(その場限りの刹那的な一体感ではなく)オーディエンスひとりひとりに訴えかけ、いつまでも心に残るような力を持っている。この日のアコースティック・コーナーは、そんな彼らの特性を改めて示していたと思う。 
「きっと寒いよね? 暑いとか寒いとか、それも生きてるから感じることであって。いまから、あなたたちが息をしているという証を見せてください。これから生きていくという証を、僕らと一緒に見せ合いましょう」(千野)というコメントに導かれた「シャボン玉」も強く印象に残った。3拍子を交えた美しいリズムと幻想的なアンサンブル、そして、「シャボン玉を飛ばそう 君が息する証として」というフレーズとともに無数のシャボン玉が立ち上る光景は、まちがいなく、この日のライブの大きなハイライトだった。

 メンバー全員のリラックスしたMCの流れから、なぜかドラマーの高橋誠が“家族を代表してライブに来た兄に感謝の気持ちを伝える”ということになり、「かわいい弟の有志を家族代表で見届けてください。こっから飛ばしていきますけど、お兄ちゃん、準備大丈夫?!」というシャウトから、伊丸岡亮太(Gt)、岡崎広平(Gt)のツインギターが炸裂する「REM」へ。さらに「サーチライト」「ホワイトライン」とアグレッシブなナンバーが続き、肌寒いく空気を吹き飛ばしていく。以前はどこか内省的なイメージがあったGOOD ON THE REELだが、この1~2年はさらにダイレクトに観客と向き合い、ライブの雰囲気も少しずつ変化している。この3曲で彼らが体現した肉体的なバンド感は、その大きな成果と言えるだろう。さらに「その日々がもっともっと輝くように、笑えるように願いを込めて。さあ、素晴らしい今日を始めよう!」(千野)という言葉とともに放たれた代表曲「素晴らしき今日の始まり」、そして、赤と青のテープが発射され、「赤と青をうまく回して 回して」というサビのフレーズに合わせて観客が腕を回した「シャワー」で本編は終了した。

 アンコールではまず、新曲「砂漠」を初披露。メロディアスかつダイナミックなギターフレーズ、推進力に満ちたバンドグルーヴは、このバンドの意識がさらに外に向かっていることをはっきりと告げていたと思う。続いて「うまくは言えないけれど」「ハッピーエンド」を演奏。一旦メンバーはステージから去るが、止まないコールに導かれて再び登場し、「どんな日もなんだけど、今日、この日が、みんなのなかでつぼみとなって、思い出すたびに花開いて、少しでも笑えるように願いを込めて1曲だけやらせていただきます」(千野)と「Mr.Week」を披露し、ライブは幕を閉じた。
活動スタートから10年目で到達した初の野音ライブで、自らの“これまで”と“これから”を力強く示唆したGOOD ON THE REEL。このライブで得たもの、確かめられたものは間違いなく、現在制作中の新作にも反映されることになるだろう。

【取材・文:森 朋之】
【撮影:安藤未優】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル GOOD ON THE REEL

リリース情報

雨天決行

雨天決行

2016年07月06日

ユニバーサル ミュージック

(HAVE A“GOOD”NIGHT 盤)
[DISC1 CD]
01.雨天決行
02.夏の大三角

[DISC2 DVD]
・ BYSTANDER
・ サーチライト
・ つぼみ
・ REM
・ シャボン玉
・ rainbeat
・ ペトリコール

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セットリスト

GOOD ON THE REEL
『HAVE A “GOOD” NIGHT vol.50』ANIVERSARY SPECIAL
2016.10.9@日比谷野外音楽堂

  • 01.雨天決行
  • 02.ユリイカ
  • 03.それは彼女の部屋で二人
  • 04.2月のセプテンバー
  • 05.花
  • 06.エターナル・サンシャイン
  • 07.夕映
  • 08.夏の大三角
  • 09.つぼみ
  • 10.24時間
  • 11.rainbeat
  • 12.ゴースト
  • 13.シャボン玉
  • 14.REM
  • 15.サーチライト
  • 16.ホワイトライン
  • 17.素晴らしき今日の始まり
  • 18.シャワー
  • -encore-
    • EN-01.砂漠(新曲)
    • EN-02.うまくは言えないけれど
    • EN-03.ハッピーエンド
    • -W encore-
      • EN-04.Mr.Week

お知らせ

■ライブ情報

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2016/10/16(日) 新潟 CLUB RIVERST

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2016/10/28(金) 大阪 BIGCAT

日本大学経済学部『三崎祭』
2016/11/04(金) 日本大学 本校舎7F体育館

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Suck a Stew Dry 東名阪対バンツアー「遺失物取扱所」
2016/12/06(火) 下北沢GARDEN

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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