横浜アリーナを我が物に!SiM、圧巻のワンマン公演をレポート!
SiM | 2016.11.11
バンドは唯一無二のスタイルを確立させたときに、頭ひとつ突き抜ける。それは音楽性しかり、もっと言えば、今の時代はライヴという現場がアーティストとリスナーを繋ぎ止める場になっている。ゆえに他者といかに差別化を図るのか。そこがアーティスト生命に関わる根幹要素になってきた。
SiMは昨年11月に「最初で最後」と銘打った初の日本武道館公演を満員御礼にし、八角形ステージで度肝を抜くパフォーマンスを見せつけた。そして、その武道館公演で発表された横浜アリーナ・ワンマン公演「THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR 2016 GRAND FiNAL "DEAD MAN WALKiNG"」が遂にやって来た。場内に入ると、ステージには十字架、枯れ木、鉄門、両脇には巨大なガーゴイルが鎮座している。いきなりお化け屋敷風のテーマパークに迷い込んだような豪勢なステージ・セットに驚いた。
勇壮なSEに煽られる中、「THE KiNG」で幕を開けると、ステージから複数の火柱が上がり、3面の巨大スクリーンにはMAH(Vo)、SHOW-HATE(Gt)SIN(Ba)、GODRi(Dr)のメンバー4人の姿が映し出され、観客の大合唱が鳴り響く。これぞアリーナ・ロック!と言える光景が早くも広がっていた。「NO FUTURE」に入ると、ガーゴイルの目から緑色のレーザー光線が飛び出し、観客は拳を上げてさらに活気付く。それから「Abel and Cain」と4thアルバム『THE BEAUTiFUL PEOPLE』から3連打を畳み掛けた。
壮大なスケール感を持つ曲調で観客を掌握すると、「T×H×C」ではスタンディング・エリアに6つのサークル・モッシュを作り出し、ライヴハウスと変わらぬ熱気を横浜アリーナに吹かせた。「善行Z(彼らの地元・藤沢にある老舗ライヴハウス)から来たSiMです! ただのライヴでもない、ただのショウでもない、でっかいアトラクションに入って来たと思って・・・」とMAHは言っていた。自分たちはどこから来て、今どこに立っているのか。それを観客と共に噛みしめるMCにグッと来た。人気曲「JACK.B」でカオスなムードを作ると、SHOW-HATE、SINは楽器をグルグル振り回す恒例のパフォーマンスで耳目を引き付ける。
それから「FUCK iT ALL」で戦闘機が街に爆弾を落とす映像が同時に流れた後、男女の恋愛模様を痛切に描く実写映像を挟み、スローなレゲエ曲「I DUB U」へ。MAHの胸に沁み入るセクシーな歌声は、会場の隅々まで響く特段の映えっぷりだ。しっとり聴かせる「Life is Beautiful」はコーラス・ワークも美しく、世界観のある曲調で魅了する。暴れる曲だけではなく、静かな曲でも観客の意識を釘付けにする懐の深い表現力にも脱帽した。
そして、再び焚き付けるようにアンセム曲「KiLLiNG ME」に突入だ。迫力満点の怒号スクリームが横浜アリーナに轟き、背筋がシャキっと伸びる思いだった。会場の規模が大きくなれど、SiMの根っこにある部分は変わらない。「I Hate U」の演奏が始まると、僕の前にいた男性2人がハイタッチを決め、ノリノリで騒ぐ姿が目に飛び込んできた。大好きな曲なのだろう。こうした場面を見ても、SiMの愛されぶりがよくわかった。
中盤過ぎには武道館公演でもやったアコースティック・セットをここでも披露。2曲で対になっている「If I Die」~「Paradox」と大人っぽいムードで聴かせた後、発売当時1回ぐらいしかやっていない「Misery」(2ndフルアルバム『SEEDS OF HOPE』収録)をプレイ。ステージと観客の溝を埋めるためにも、バンドの温度感がリアルに伝わるアプローチは奏功していた。ライヴも佳境に入ると、新たな仕掛け(?)が待っていた。今回の横浜アリーナ公演のチケットに「*ワイヤーアクションはありません」と印字されていたのに気付いた人も多いだろう。武道館公演ではGODRiがワイヤーで吊るされてエアドラムを見せてくれたが、今回は「GUNSHOTS」の最後にSHOW-HATEのギターがワイヤーで吊り上げられ、空中で爆発するというビックリ仰天のギミックが施される。「そっち!?」とMAHが思わずツッコみを入れると、会場は爆笑の渦に包まれた。また、この曲だけステージ裏でcoldrainのSugi(Gt)がギターを弾いていた事実も告げられる。どこまで用意周到なのだろうか。お見事な演出だった。
「CROWS」、「EXISTENCE」と攻撃的なナンバーを畳み掛け、ヘドバン&大合唱の嵐を吹かせると、これまたバンドにとっての重要曲「Same Sky」を解き放つ。美しいメロディが会場を一つに束ね、観客総出で手を上げる壮観な景色が広がった。その一体となった会場を底から突き上げたのは「Blah Blah Blah」だ。ライヴハウスで聴いても凄みのある楽曲だが、アリーナ規模の会場でもこの曲の爆発力はとんでもない。観客の熱気を吸い込んで、演奏のパワーに転化させる相乗効果で会場を狂乱図に塗り替えていく。
本編を「f.a.i.t.h」でビシッと締め括ると、アンコールは「MAKE ME DEAD!」を叩き付けて終了。MAHの言葉を借りるならば、「雲の上の存在だった」横浜アリーナを我が物にするエンターテイメント性に富んだ前代未聞のステージを見せてくれた。全行程が終わった後もバンドは何度も感謝を述べる一方で、「SiMかっけー!と言わせたい」、「ライヴハウスに帰ります」という言葉を残して、ステージを去った。
前回の武道館公演同様、今日の横浜アリーナ公演は彼らにとって「ハレの舞台」であった。再びライヴハウスで闘い、己を磨き、音楽性を高めることに全精力を注ぐ。この日も通過点に過ぎないわけだが、善行Zからアリーナ・バンドへ登り詰める夢を叶えた一夜となった。「次は君の番じゃないか!」と叫ぶMAHの力強いMCに、勇気とエネルギーをもらった人も多かったことだろう。唯一無二の感動的なステージだった。
【取材・文:荒金良介】
【撮影:半田安政(Showcase)】
リリース情報
THE BEAUTiFUL PEOPLE
2016年04月06日
ユニバーサル ミュージック
2. NO FUTURE
3. THE KiNG
4. Abel and Cain
5. Paradox
6. If I Die
7. I DUB U
8. Dance In The Dark
9. GUNSHOTS
10. CROWS
11. The Problem
12. EXiSTENCE
13. Life is Beautiful
お知らせ
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TRIPLE AXE TOUR’17
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2017/01/22(日) 新潟LOTS
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2017/01/26(木) なんばHatch
2017/01/28(土) 広島BLUE LIVE
2017/01/30(月) 福岡DRUM LOGOS
2017/01/31(火) 香川festhalle
2017/02/02(木) 新木場STUDIO COAST
2017/02/04(土) 音市場
SiM THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR -season II- "ONEMAN SHOWS 2017”
2017/03/01(水) Zepp Nagoya
2017/03/02(木) Zepp Nagoya
2017/03/05(日) 新潟LOTS
2017/03/08(水) 福岡LOGOS
2017/03/11(土) 高松festhalle
2017/03/15(水) Zepp BAYSIDE
2017/03/16(木) Zepp BAYSIDE
2017/03/18(土) 広島BLUE LIVE
2017/03/23(木) 仙台PIT
2017/03/25(土) Zepp札幌
2017/03/30(木) Zepp Tokyo
2017/03/31(金) Zepp Tokyo
2017/04/08(土) 沖縄 桜坂セントラル
2017/04/09(日) 沖縄 桜坂セントラル
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