クリープハイプ、最新アルバム『世界観』を携え行った全国ツアー“熱闘世界観”、全試合終了!熱狂の東京公演2日目をレポート!
クリープハイプ | 2016.11.29
「ライブは本当にクリープハイプを好きな人だけに楽しんでほしいし、何かあったらそれは全部バンドの責任。それでもそこを突き抜けていいものを届けたいので、もっと頑張ります。相変わらず確信的なことが言えるわけでもないんだけど、こうやって一緒に考え続けていきたい」
この日、尾崎が口にした言葉でとても印象に残ったフレーズだ。ひねくれてるとか気難しいとか偏屈だとか意固地とか、クリープハイプというバンド、特にメインソングライターの尾崎世界観(Vo&Gt)には少なからずそうしたパブリックイメージがまとわりついているかもしれない。だが、音楽、そして彼らの音楽を心から愛し、受け止めてくれる人たちに対峙してこれほどに実直なバンドも人もないだろうとこの夜につくづくとそう思った。最新アルバム『世界観』を携えて22都市24公演を回る全国ツアー“熱闘世界観”。その大詰めを迎えた東京2 days公演の2日目、11月10日Zepp Tokyoのステージに立った彼らの姿は、まさしくツアータイトルそのままにアルバム『世界観』、ひいては自らに内在あるいは外部から付与される“世界観”と真っ正面から格闘し、それが何であるのかを自身にも、観る者にも誠実に問いかけるものだった、そんな気がする。
サブタイトルに“―10回裏 東京―”と冠されたこの日、フロアはツアーグッズのベースボールシャツを着たファンで埋め尽くされて、ただならぬ熱気にみなぎっていた。開演時刻と同時に暗転した場内に野球の場内アナウンスよろしくスターティングラインナップとしてひとり一人メンバーの名がコール、そのたびに凄まじい歓声が起こる。徹底してコンセプトを体現する粋な姿勢もファンを喜ばせているに違いない。一番手に呼ばれた小泉拓(Dr)は“どっせーい!”とばかりに豪快に、続く長谷川カオナシ(Ba)はジェントルに、小川幸慈(Gt)はターンをキメて華麗にと、それぞれ登場とともにパフォーマンスを披露。しかし最後に現われた尾崎は普段と変わらず、飄々とギターを肩に掛け、マイクスタンドの前に立った。 「俺は存在そのものがパフォーマンスだからしませんでした。見ての通り、調子に乗っております。もっと調子に乗せてください。東京2日目ですけど、昨日を捨てる覚悟なんて簡単にできてます。みなさん、昨日を超えてください!」
開口一番、不敵に尾崎は言い放って演奏は1曲目「手」に突入、のっけから全力全開の疾走感でオーディエンスを圧倒する。立て続けになだれ込んだ「手と手」と対をなすようにして聴き手の胸の内側に立体的なやるせなき世界を屹立させるこのオープニングはあまりにもニクい。かと思えば一転、「会いたかったから会いにきました」とファンを色めき立たせた「アイニー」では軽やかで都会的なサウンドでフロアを横に揺らし、爽やかかつポップに突き抜けた「リバーシブルー」では間奏中、小川と音の掛け合いをする長谷川のもとに尾崎が歩み寄り、その肩に頭をそっと乗せてはまたしても場内を嬌声で沸き返らせるなど、アンサンブルもステージングもなんとも奔放自在。
百花繚乱の音楽性に彩られたアルバム『世界観』が軸に据えられているのだから当然と言えば当然なのだろうが、いわゆる“4ピースギターロックバンド”の枠にもライブとしての整合性にも囚われず、過去の楽曲も含め1曲1曲に孕まれた感情や情景に寄り添って演奏に没頭することを楽しむかのような、つまりはとても自由な印象がこの日のステージにはあった。全身を絞るようにして歌を吐きだす尾崎の声も、例えば「寝癖」ではとてもやさしく甘やかに響き、例えば「身も蓋もない水槽」では本当に身も蓋もなくやさぐれる(最後にロングトーンで吐き捨てた渾身の“ばーか”が実に痛快だった)。
かといってオーディエンスを置いてきぼりにするわけではけっしてない。「HE IS MINE」では「みなさん、恒例のこの時間がやってまいりました。本気のアレが聴きたいです」と呼びかけ、満場の“《セックスしよう》”を轟かせ、「炭、酸酸」ではフロアに向けて無数のシャボン玉を降らせる儚くもドリーミーな演出で場内に一体感を生み出すなど、自分たちが楽しむと同時に客席にも常に楽しんでいてもらいたい、自分たちが音楽に託したものを破片だけでも手渡したいという想いが随所に散りばめられているのを感じた。「5%」のムーディーなイントロの中、「ライブのことなんて忘れても問題ないけど、何年経ってもこれくらいは残ってればいいなっていう気持ちがあります。これぐらいっていうのは5%。今からその5%を歌いますので、しっかり記憶に残して帰ってください」と語りかけた言葉は、それを端的に表わしていたのではないだろうか。
無常感を漂わせた尾崎の独唱からバンドの演奏が重なった瞬間の鮮烈なダイナミズムに刮目した「誰かの吐いた唾が キラキラ輝いてる」、おどろおどろしく不穏な「けだものだもの」が後半戦を一気に畳み掛ける。「キャンバスライフ」ではメインボーカルを取った長谷川がポエトリーに捲し立てる端正な声に挿し色のごとく尾崎がシャウトを重ねてエモーションを増幅、「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」に至ってはオーディエンスも拳を突き上げることも忘れたように、ただ陶然とその鬼気迫る歌声と演奏を浴びた。 「まだまだこんなもんじゃないと思うんですけど、どうですか?
俺が“お台場!”とか言わないからダラダラしてんだろ。絶対言わないけどな、ダサいから」
そんなフロアを挑発するように尾崎が言い捨てる。その直後、その舌の根も乾かぬ間に「お台場ぁぁぁぁ!」と叫んだのだから、熱狂に火がつかないわけがない。『世界観』の中でももっともチャレンジングな1曲「TRUE LOVE」でコラボレーションしたラッパーのチプルソがステージに登場、「今から16小節を使って最高のラップをします」と尾崎にムチャ振りされるも見事クリア、大歓声を合図にスタートした演奏はクリープハイプが拓いた新たな境地をリアルに見せつけるものだった。本編ラストは「バンド」。尾崎のメンバーへの感謝と愛情を不器用に綴った最高にハッピーなこの曲ほど、ライブを締めくくるにふさわしいものもないだろう。前日に誕生日を迎えた尾崎が昨日の終演後、メンバーからのサプライズにまんまとハメられてしまったことを明かしたMCでの照れくさそうな表情が歌に重なる。もしかしたら今、クリープハイプは世界最強かもしれない。
アンコールは「エロ」、そして「大丈夫」だった。朗らかな多幸感に包まれたエンディング。「また会いましょう」の約束を手土産に、満たされた心地で試合終了のアナウンスを聞いた。
【取材・文:本間 夕子】
リリース情報
世界観(初回限定盤)
2016年09月07日
ユニバーサルシグマ
02.破花
03.アイニー
04.僕は君の答えになりたいな
05.鬼
06.TRUE LOVE
07.5%
08.けだものだもの
09.キャンパスライフ
10.テレビサイズ(TV Size 2’30)
11.誰かが吐いた唾が キラキラ輝いている
12.愛の点滅
13.リバーシブルー
14.バンド
初回限定盤DVD収録内容
・短編映画「ゆーことぴあ」
・ミュージックビデオ「鬼」
・メイキング映像「ゆーことぴあ」「鬼」
セットリスト
「熱闘世界観」 ー10回裏 東京ー
2016.11.10@Zepp Tokyo
- 01.手
- 02.手と手
- 03.アイニー
- 04.リバーシブルー
- 05.寝癖
- 06.左耳
- 07.テレビサイズ
- 08.HE IS MINE
- 09.身も蓋もない水槽
- 10.さっきはごめんね、ありがとう
- 11.かえるの唄
- 12.炭、酸々
- 13.百八円の恋
- 14.5%
- 15.誰かが吐いた唾が キラキラ輝いている
- 16.けだものだもの
- 17.キャンパスライフ
- 18.おやすみ泣き声、さよなら歌姫
- 19.社会の窓
- 20.TRUE LOVE
- 21.鬼
- 22.僕は君の答えになりたいな
- 23.バンド
- EN1.エロ
- EN2.大丈夫
お知らせ
SKY-HI Live House Tour 2016
〜Round A Ground Tokyo Final 〜
Supported by MUSICA
2016/12/16(金) 豊洲PIT
FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2016
2016/12/28(水) インテックス大阪
rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 16/17
2016/12/30(金) 幕張メッセ国際展示場1?11ホール、イベントホール
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。