恵比寿・ザ・ガーデンホールで行われた「吉澤嘉代子とうつくしい人たちツアー」追加公演を完全レポート!
吉澤嘉代子 | 2016.11.29
11月18日、恵比寿・ザ・ガーデンホールで「吉澤嘉代子とうつくしい人たちツアー」の追加公演が行われた。8月にリリースされたミニアルバム「吉澤嘉代子とうつくしい人たち」を引っさげて行われてきたこのツアーには、初日の名古屋にザ・プーチンズ、東京キネマ倶楽部に伊澤一葉(the HIATUS、あっぱ)と曽我部恵一、神戸に岡崎体育と、この作品でコラボレーションしたアーティストがゲストとして登場。「アフターファイブにひとりカラオケを満喫するOL」という設定で主人公を演じる吉澤との絶妙なやり取りで各会場を盛り上げながら、スペシャルなコラボレーションを披露してきた。追加公演となるこの日は、再びザ・プーチンズがゲスト出演。アンコールでは、来春リリースされる待望のニューアルバムについてもアナウンスされ、いち早くその中からの新曲もお目見えした。
開演前に流れていたのは、郷ひろみと樹木希林の「林檎殺人事件」、石川優子とチャゲの「ふたりの愛ランド」、鈴木聖美と鈴木雅之の「ロンリーチャップリン」など、ちょっと懐かしいデュエットソング。ステージはカラオケルーム仕様になっていて、ソファにモニター、ミラーボールと準備は万全だ。ライブの幕開けを告げたのは、大音量で流れてきたモーニング娘。の「LOVEマシーン」。ステージに現れたOL・吉澤がノリノリで歌い終えると、それまで着席していたオーディエンスを煽りながら「綺麗」、「ユキカ」、「恥ずかしい」とオリジナル曲を披露していく。
「は~、歌うって気持ちい~。最高の気分!のど渇いちゃったな、何か頼も」
フロントに電話をかけてレモンスカッシュをオーダーするも、やたらと存在感のある店員が運んできたのはガリスカッシュ!「え~、マズそう」とぼやきつつも意外と美味しかったガリスカッシュを飲みながら、「次、どれにしようかな。あ、『吉澤嘉代子』!吉澤嘉代子って、魔女修行してるとか言ってる不思議ちゃんだよね。メドレーか。ん?『すし屋は不良編』!?」ということで、ここからはねじり鉢巻で本物のガリをバラまく「ガリ」~ちょいワルのサングラスで「ブルーベリーシガレット」~全員参加の振り付けで「ケケケ」~客席に降りてコール&レスポンスを楽しんだ「チョベリグ」と個性的なナンバーが続いていった。もはやどこまでがカラオケルームだったのかわからなくなるほどの一体感だ。
呼んでもないのに再び現れた店員に勧められ、「ねえ中学生 feat.私立恵比寿中学」を歌う吉澤。「アボカド feat.伊澤一葉」、「ゆりかご feat.岡崎体育」と続き、「んー、次はやっぱりあの曲入れちゃおうかな!」と「じゃじゃじゃ feat.ザ・プーチンズ」をチョイスするが、この曲には店からのスペシャルサービスがあることが発覚。「当店にはザ・プーチンズの街角マチコと街角マチオが常駐しております。ちなみに、マチオのほうは私です」ということで、先ほどから美声を響かせていた店員・マチオとテルミンのマチコがステージへ。ミニアルバムの中でも異彩を放っていた「じゃじゃじゃ feat.ザ・プーチンズ」を、各方面からギリギリ怒られないであろう演出込みで披露(笑)。吉澤が大好きだというザ・プーチンズの楽曲「ナニコレ」では、MVで着用していたタンクトップ姿のマチオとのデュエットに客席も大いに沸いていた。
法外な料金をふっかけられながら(笑)、カラオケルームを後にするOL・吉澤。ステージのモニターでは、このツアーのために用意されたというDAM CHANNEL TVのスペシャルバージョンが流れ始めた。吉澤本人がナビゲーターとゲストの二役を演じていて、そのなんとも言えないやり取りに思わず笑ってしまう。こういうセンス、大歓迎(笑)。
衣装をチェンジし、再びステージに現れた吉澤が歌い始めたのは、まだ音源化されていない「残ってる」。彼女の口からこぼれる言葉の一つ一つがゆっくりと景色になっていくような、熱いバラードだ。アップテンポの「ちょっとちょうだい」、「シーラカンス通り」を挟み、「泣き虫ジュゴン」をじっくりと歌い上げる。微笑みながら泣き叫んでいるような彼女の声に、胸が締め付けられるような1曲だ。本編の最後は、彼女が学生の頃から大好きなアーティストであり、今回のミニアルバムの出発点にもなったサンボマスターとのコラボ曲「ものがたりは今日はじまるの feat.サンボマスター」。晴れやかな笑顔と同時に、覚悟を感じさせるような表情が強い印象を残すパフォーマンスだった。
アンコールではまず、友達のために書いたけど今では自分自身も支えられている曲だという「東京絶景」が歌われた。東京キネマ倶楽部の公演では曽我部本人がアコースティックギターと歌で参加していたが、この日はメンバーの横山裕章が奏でるピアノ1本だ。吉澤の声が客席の隅々にまで届いていく様子が目に見えるよう。その後ドラムの能村亮平を呼び入れ、「自分の気持ちを満たしてくれるのは、誰かじゃなくて自分自身なんだ」と歌われる「がらんどう」を熱量高く歌い終えてステージを去ったが、拍手は鳴り止まない。少しだけ照れ臭そうな笑顔でステージに戻ってきた吉澤は、あらためてザ・プーチンズを紹介した後、来年春に新しいアルバムを出すことを報告。「内容も言っていいのかな?ダメですね(笑)。でも、今まで少女時代と日常をテーマにしてきたので、3枚目はバーン!!って感じの濃いものにしたいと思ってます。ぜひ期待しててください」と言葉を添えた。そしてその中から、「私の中でのご法度というか、言っちゃいけないことを言ってる曲なんだけど、本当の気持ちだから曲にしようと思った」と前置きした上で、20歳の頃に書いた「一角獣」という曲をアコギ弾き語りで披露した。
「子供の頃から人と接することが得意ではなかったけど、歌があったから社会復帰できました(笑)。でも人生には波があって、その度に言葉を失ってしまう。気持ちを言葉にするのは苦手だけど、頑張って言葉にして、それを音楽にして、ずっとずっと歌いたいなって思ってます。みなさん、これからもよろしくお願いいたします」
時々脱線しながらだったけど、最後はそんな風に正直な気持ちを語ってくれた吉澤嘉代子。絶賛制作中だというたくさんの新曲、それらを収めた春のアルバム、そして彼女が創り上げる次なるステージ。お楽しみはまだまだこれからも続いていく。
【取材・文:山田邦子】
【写真:田中一人】
リリース情報
吉澤嘉代子とうつくしい人たち
2016年08月03日
日本クラウン
2.ねえ中学生 feat.私立恵比寿中学
3.ゆりかご feat.岡崎体育
4.アボカド feat.伊澤一葉
5.じゃじゃじゃ feat.ザ・プーチンズ
6.綺麗 remixed by 小島英也(ORESAMA)
7.東京絶景 feat.曽我部恵一
セットリスト
「吉澤嘉代子とうつくしい人たちツアー」追加公演
2016.11.18@恵比寿・ザ・ガーデンホール
- 1. 綺麗
- 2. ユキカ
- 3. 恥ずかしい
- 4. 吉澤嘉代子メドレー
(ガリ~ブルーベリーシガレット~ケケケ~チョベリグ) - 5. ねえ中学生
- 6. アボカド
- 7. ゆりかご
- 8. じゃじゃじゃfeat. ザ・プーチンズ
- 9. ナニコレ(ザ・プーチンズ楽曲)
- 10. 残ってる(未音源化楽曲)
- 11. ちょっとちょうだい
- 12. シーラカンス通り
- 13. 泣き虫ジュゴン
- 14. ものがたりは今日はじまるの
- 東京絶景
- がらんどう
- 一角獣(新曲)