KANA-BOON冬のワンマンライブ ~セットリストはぼく・わたしにまかせな祭~東京公演をレポート
KANA-BOON | 2016.12.14
「いつもありがとう」。アンコールの最後、演奏を終えて谷口鮪(Vo,G)が客席前方のファンから受け取ったタオルには、そんな言葉が書かれていた。「こっちのセリフです、本当にいつもありがとう!」。谷口はそう答えてステージを去った。
そういうやり取りがとても印象に残る一夜だった。
「KANA-BOON冬のワンマンライブ ~セットリストはぼく・わたしにまかせな祭~」と銘打たれた、今回の東名阪ワンマンツアー。その名の通り、ファンからの投票で披露する楽曲を決めるリクエストライブだ。アルバムのリリースを引っさげた普段のツアーと異なり、インディーズ時代も含めて過去の既発曲すべてからセットリストが選ばれる。
メジャーデビューから3年、高校の軽音楽部でバンドが結成されてからは10年という節目の年に行われたキャリア初のリクエストライブ。その初日、11月24日(木)東京 Zepp Tokyoにて繰り広げられたのは、そういう、バンドとファンとの結びつきを強く感じるステージでもあった。
開演時刻の19時を迎えると、谷口、古賀隼斗(G,Cho)、飯田祐馬(B,Cho)、小泉貴裕(Dr)の4人がつないだ手を高く掲げてステージに登場。「ワンマンライブ、始めます!」と「1.2. step to you」からライブはスタート。ぎっしり埋まったフロアが一気に沸き立ち、続けざまに披露した「LOL」でテンションはさらに上がる。「盛者必衰の理、お断り」では「歌えるか!?」と谷口がフロアに呼びかけ、オーディエンスが声を揃える。
都心に11月としては54年ぶりの雪が降ったこの日。「“雨バンド”が“雪バンド”に進化しまして」とMCで谷口は言う。「雪男!」「雪男ちゃうわ、意味変わってくるわ」と客席からの声に笑いながら答えつつ、続いてインディーズ時代の「見たくないもの」や1stアルバム『DOPPEL』収録の「白夜」など、最近のライブではなかなかやらない曲を続ける。
中盤では「飯田の必殺フレーズが出てくる曲をやります」と「talking」を披露。うねりのあるベースラインでグルーヴを生み出し、「MUSiC」「街色」と続ける。
MCで語ったことによると、「街色」は谷口の“推し曲”だという。シングル『ダイバー』のカップリングに収録されたこの曲は今までライブでもやったことのないレアなナンバー。「この曲、めっちゃ好きやな」「わかってるやん」と、小泉と谷口が仲良さげなやり取りを続ける。セットリストはあくまでファンのリクエスト投票による順位をもとに決められたそうだが、メンバーそれぞれにも“推し曲”があり、ちなみに飯田の“推し曲”は「スノーグローブ」、古賀の“推し曲”は今回のライブでは披露されなかった「ストラテジー」だという。
後半は「今、俺らが一番好きな曲です」と最新シングルの「Wake up」からスタート。古賀のギターが大々的にフィーチャーされた曲だ。さらにはバンドの初期に作られた代表曲の一つである「結晶星」から「スノーグローブ」を続け、イントロから歓声が上がった「フルドライブ」へ。
この日のライブで印象的だったのは、ひたすらアップテンポな楽曲が続くこと。性急なビートが興奮を呼び覚まし、フロアに一体感をもたらす。骨太な演奏がアンサンブルを支え、谷口の伸びやかなハイトーンの歌声が響く。声量抜群の歌が引っ張るバンドサウンド、それがもたらす熱を帯びた空気が、エネルギーの塊となってライヴハウスに充満する。
演出はとてもシンプルだ。レーザーや特効のようなものもなく、舞台セットも「KB」と大きく記されたバックドロップのみ。ただ、4人の演奏と、その「キメ」にバッチリ合わせてライトを明滅させる照明が、音と光の渦となる。そういう原始的な快楽がKANA-BOONのライブにはある。
終盤は「久しぶりの曲を沢山やりますと言いましたが、まだまだありました」とインディーズ盤『僕がCDを出したら』から「さくらのうた」。そのアンサーソングとして作られた「桜の詩」を続ける。
「羽虫と自販機」を終え、谷口はMCで「前回のワンマンツアーが終わって、この日が来るまで、いろんなバンドのライブを見に行って、悔しいなと思うことも一杯あって。人のステージを観ながら、そこは俺が立つ場所なのにって思って、楽しめない自分がいて」と語る。
メジャーデビューから3年。次世代を担うバンドとして一躍ブレイクを果たし、着実に成長を果たしてきた彼ら。それでも、思うようにならない日々もあったのだろう。乗り越えなければならないハードルのようなものを感じてもいるのだろう。痛快でダイナミックな楽曲が持ち味のKANA-BOONだが、そういうところを隠さずに見せるところも魅力の一つになっていると思う。
「日々の悩みを置いていってくれたら嬉しいと思います。みんな、いろいろあると思うけど、俺らの音楽を浴びることによって明日から頑張ってくれたら」と続けて「シルエット」。そして「まだ遊び足りないですか?」と本編ラストは「A.oh!!」。完全燃焼の勢いで演奏を終え、4人はステージを降りた。
アンコールの1曲目に披露したのは「ないものねだり」。そして「俺たちにとっても大事な曲、俺個人にとっても大事な曲で。いろいろ思い出しながらこの曲を最後にやって、終わろうと思います」と谷口が告げ、ラストは「眠れぬ森の君のため」。リクエスト投票の結果は1位だったという。アウトロまで噛みしめるように演奏し、拍手に包まれて終演となった。
「実は10年バンドをやってきて。楽しい時も、しんどい時もあって。でも、久しぶりに昔の曲をやって、純粋な気持ちでやってたなと思います」。そんな風に谷口は語っていた。彼らは今、「バンドが楽しい」というピュアな衝動を取り戻しているところなのだという。
「いい曲も沢山できてて。早くみんなに聴かせたいと思ってます」と谷口はその感慨を語っていた。
KANA-BOONのこの先が楽しみになるような一夜だった。
【取材・文:柴 那典】
【撮影:高田梓】
リリース情報
Wake up[初回生産限定盤](CD+DVD)
2016年08月10日
Ki/oon Music
02. LOSER
03. Weekend
セットリスト
『KANA-BOON冬のワンマンライブ ~セットリストはぼく・わたしにまかせな祭~』
2016/11/24@東京 Zepp Tokyo
- 1.2. step to you
- LOL
- 盛者必衰の理、お断り
- 見たくないもの
- レピドシレン
- 白夜
- talking
- MUSiC
- 街色
- Wake up
- 結晶星
- スノーグローブ
- フルドライブ
- さくらのうた
- 桜の詩
- 羽虫と自販機
- シルエット
- A.oh!!
- EN01.ないものねだり
- EN02.眠れぬ森の君のため