KOBUKURO LIVE TOUR 2016“TIMELESS WORLD”supported by Ghanaライブレポート
コブクロ | 2016.12.19
さいたまス-パ-アリ-ナは19000人の観客で満員。場内の客電が落ちて、オ-ヴァチュア的に(勝手にタイトルつけるなら“胸騒ぎ”のファンファ-レとでも言いたい)インストが流れ、次の瞬間、パッとポ-ズを取った二人がライトに浮かぶという、まさに“カッコいい登場の仕方”のお手本のようなオ-プニング演出である。ヤラレタァ~と思っているうち、1曲目のイントロが…。
ここ最近は、センタ-・ステ-ジをメインとする試みもお馴染みだった彼らだが、今回は通常のエンド・ステ-ジへ戻った。でもそれは、客席との物理的な距離のみならず、“歌の到達距離そのもの”に対する新たな意識・自信の芽生えがそうさせたのかもしれない。これ、実際にセンタ-を経験してこその“その先の境地”なのではなかろうか。ちなみに今回のステ-ジ全般に関しては、主に「黒田がアイデアを出し考えたもの」だったと、MCで小渕は言っていた。そして1曲、また1曲と、それぞれの楽曲の作品性に即した最善の伝え方が、ハッキリ示されていく内容でもあった。
たとえばオ-プニングの「SUNRISE」では、まさに視界が徐々に拓けていくかのような映像と照明が、とてもスム-ズに曲の世界観へと誘った。一方、風雲急を告げるかのようなリフのアレンジの中、火炎が派手に吹き上がる「SNIFF OUT!」の大迫力は、正直、コブクロはこういうコト、やらない人達だと勝手に思ってたのでビックリした。これ、嬉しいビックリ。黒田久々の自作曲「Tearless」は、通常のJ-POPよりコ-ドの展開がゆったりしたあたりは洋楽的。アルバムでも充分に手応えあったが、こうしてライブで聴くと、さらにいい曲に思えた。
「Flag」からは、センタ-・ステ-ジへ移動してのパフォ-マンスへと移る。移動の間はお客さんとふれ合う。そして四方からのスポットライトのみに照らされ、歌い始める。客席に居て、とても集中して観ることが出来た。続けて「同じ窓から見てた空」が歌われる。青春というイノセンスからの決別が主題のようで、変わらぬ友情の大切さこそを描いている。黒田俊介の歌の、歌詞の語尾を伸ばすあたりに宿るソウルフルな情感が、ビシビシ客席に伝わる。後半、英語詞のリフレインでは、客席も一緒にシングアロングし、その歌声とともに二人はメイン・ステ-ジへ戻っていくのだった。
そして、これまた冒頭が英語詞の「何故、旅をするのだろう」へと繋ぐ。こういう手があったのか、と、すごく新鮮に思った。いや、こういう手が使えるのも、そういう多彩な曲作りあってのことだが…。ちなみにこの曲では、二人が旅客となり、新幹線で移動していくドキュメンタリ-風の映像が流れていた。
やわらかなタッチで誠実な恋愛模様を歌う「NOTE」へと、セットリストは進んでいく。ここで気がついたのは、10年前のアルバム『NAMELESS WORLD』から、「六等星」含め既に4曲が歌われたことだった(結局、全体では計6曲が歌われた)。もちろんこれは、あのアルバムと新作の『TIMELESS WORLD』とが、時間というスパイラルの位置は違えど同じ方位を示す相似形(アルバム・ジャケットのコンセプトに顕著)だということも大きく関わりがあった。このふたつが向き合うことで、彼らの変わらない部分と、新たに入れ替わった細胞が果たす今日的な表現の醍醐味とが、生き生きと客席に伝わったと思う。
そして大切な大切な時間がやってくる。「桜」「蕾」「未来」を、続けて歌ったのである。小渕もこの3曲が並ぶセットリストは「今後、もうないのかも」と言っていたくらい、とても貴重なものだった。コブクロにおいてバラ-ドというのは、アップテンポの作品以上に歌う側としてはカロリ-消費が多いのではと思うくらいに全身全霊を傾けた歌が続いていく。
「桜」にしろ「蕾」にしろ、何度も聴いてるのに何度も何度もウルウルしちゃうあたり、まさに歌が“TIMELESS”である所以だろうし、これらは数分間の感動のための“装置”でもある。さらに重要なのは「未来」であり、「桜」「蕾」と遜色ないものを意識して書くことが出来ていることを、頼もしく思うのだった。いや、頼もしく、などと書くと上から目線ぽいが、でも無意識に授かった、とかではなく、プロの作家として既存の2曲を意識しつつ、その系譜にある更なる名曲を書いた小渕のことを、本当に頼もしく思うのだ。
なお今回、ドラムには日本の音楽シ-ンを支えるひとりである河村カ-スケが招かれ、快演を響かせていた。でももちろん、コブクロのツア-・メンバ-はチ-ムとしての有機的な音の交歓ができる人達だし、アットホ-ムな雰囲気が、音からも伝わってくるのが彼らのライヴの気持ちよさであることは普遍である。特に「サイ(レ)ン」は、非常に熱くキレのある演奏が光っていた。特にこの曲では、ラムジ-のパ-カッションのドライヴ感がズイズイ心を揺さぶってくれた。
ソングライタ-としての小渕が、さらに殻を破ってみせた記念作品と評価したいのが「tOKi meki」で、楽しみにしてた1曲だった。彼が率先して振りも交えて客席に参加を促しつつ、見事なパフォ-マンスだった。ここではストリングスの面々も振りに参加し、盛り上げていた。実はこういうことは、非常に大事なのだ。
ふと気付けば本編最後の盛り上がりのコ-ナ-も顔ぶれが変わった。「SPLASH」と「LOVER’S SURF」。後者では、小渕とバンドのギタリスト・福原将宜が、センタ-・ステ-ジに移りギタ-・バトルを展開。ハ-ド・ロック・ギタ-のお手本のようなフレ-ズの応酬が、広い場内の隅々まで轟いた。
アルバム『TIMELESS WORLD』のオ-プニングだった「SUNRISE」で始まったこのライヴは、同じくラストを飾った「STAGE」で終了した。この曲の黒田の歌は凄かった。細かく書くなら歌詞の♪僕等のSTAGEは~、の、ステ-ジという言葉の響きが特別だった。想いが歌唱テクニックを伴って歌となりマイクに乗れば、それは上手い歌になる。しかし今の彼の歌はそういう経路は踏まずに心情がゴロリとそのままこちらへ届くかのようなリアルさを放つ。だから「凄い歌」なのだ。なおこの日はライヴ映像の収録もあり、そんな日ゆえの緊張感を逆手にとっての楽しいト-クも満載だった。
【撮影:後藤武浩】
【文:小貫信昭】
<お知らせ>
この模様は、2017年春に、CS放送「TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画」でテレビ初独占放送が決定している。
リリース情報
TIMELESSWORLD(初回限定盤)[CD+DVD]
2016年06月15日
ワーナーミュージック・ジャパン
M-1 SUNRISE
M-2 未来
M-3 何故、旅をするのだろう
M-4 tOKi meki
M-5 SNIFF OUT !
M-6 サイ(レ)ン
M-7 hana
M-8 星が綺麗な夜でした
M-9 Twilight
M-10 Tearless
M-11 陽だまりの道
M-12 42.195km
M-13 奇跡
M-14 NO PAIN, NO GAIN feat.布袋寅泰
M-15 STAGE
セットリスト
KOBUKURO LIVE TOUR 2016 “TIMELESS WORLD” supported by Ghana
2016.11.20@さいたまスーパーアリーナ<2日目>
- 1.SUNRISE
- 2.六等星
- 3.hana
- 4.SNIFF OUT!
- 5.奇跡
- 6.Tearless
- 7.Flag
- 8.同じ窓から見てた空
- 9.何故、旅をするのだろう
- 10.NOTE
- 11.桜
- 12.蕾
- 13.未来
- 14.サイ(レ)ン
- 15.tOKi meki
- 16.SPLASH
- 17.LOVER’S SURF アンコール
- 18.今と未来を繋ぐもの
- 19.STAGE