感覚ピエロ、東名阪ワンマンのファイナル・LIQUIDROOM公演をレポート!
感覚ピエロ | 2016.12.26
ついにDIYを貫いたまま、感覚ピエロが恵比寿LIQUIDROOMまで辿り着いた。バンド結成&自主レーベル“JIJI RECORDS”発足からわずか3年。相変わらずメンバー主導のバンド運営のスタイルは変わらないまま、今年は「拝啓、いつかの君へ」がドラマ「ゆとりですがなにか」の主題歌に大抜擢されたことを受けて、感覚ピエロはインディーズシーンのみに留まらない大躍進を遂げた1年だった。
そんな2016年を締め括るべく開催された東名阪ワンマンツアー“感覚ピエロの三点責め イク×2 東名阪ワンマンツアー”の東京公演は、キャパ900人を誇る恵比寿LIQUIDROOMを早々にソールドアウト。フロアから湧き上がる熱狂的な歓声に、メンバーもまたライブバンドの意地を賭けたすさまじい気迫で対峙する。その本気と本気のぶつかり合いが、灼熱のライブハウスに、彼らにしか作れない唯一無二の景色を描き出していた。
“KKP”と書かれた巨大なフラッグを掲げステージに登場したメンバー。重量感のあるグルーヴが不気味で怪しげな雰囲気を醸し出す「Freedom」を皮切りに、容赦ない爆音をフロアに浴びせかけていく。「ウィーアー感覚ピエロです!」。横山直弘(Vo、G)が力強く名乗りを上げると、繰り出したのは、西尾健太(Dr)がパワフルに叩き出す4つ打ちのリズムで会場の隅々をジャンプさせた「Japanese-Pop-Music」。長身の秋月琢登(G)がテクニカルに魅せる鮮やかなギターリフ、ぐるぐるとベースを回しながら弾く滝口大樹(B)の躍動感溢れるベース。ゴチャゴチャと思考する暇を与えない波状攻撃のような感覚ピエロのバンドサンドが集まったお客さんの体を変幻自在に揺り動かしていく。
「曖-me-昧」の途中では、ツアータイトルを使って、みんなで「イクイク!」を連呼するという、ちょっと恥ずかしいコール&レスポンスで羽目を外せば、早くも会場には言い様のない一体感が生まれていく。「今日は俺の奴隷になってもらうから覚悟してよ。頭のネジを外して、クレイジーになってれるかな!?東京!」と、横山がこれでもかと煽りまくって突入したダンサンブルな「CRAZY GIRL」から、祭囃子のようなノリが刺激的な「ワンナイト・ラヴゲーム」。踊ったり、歌ったり、感覚ピエロのライブは初参戦でも常連でも分け隔てなく一緒にライブを作り上げるが絶対条件だ。「メリーさん」では、BPMの速さに負けない一糸乱れぬオーディエンスの高速ハンドクラップと合いの手が絶妙だった。
秋月の不穏なギターのフレーズと共に、横山が「自分を変えていこう」と訴えてから雪崩込んだへビーなラップナンバー「CHANGE MY LIFE」の辺りで、会場の興奮と熱狂が中盤のピークへ達すると、MCではバンドの結成当時を振り返った。
「結成は2013年。2年前にチェルシーホテルで初めてワンマンをやったとき、“まだ早い”って言われたけど、200人、パンパンだった。それから2年経って、ここ、LIQUIDROOMがソールドアウトですよ、どうだ!?」。
その言葉には何度もバンドに挫折した男たちが、ようやくここまでの道のりを、自分たちだけの手で切り拓いてきたという自負があった。そこから聴かせた「雨ノチ、雨上ガリ」や「夜香花」といったバラードでは、先ほどまで激しく波打っていたフロアの景色が一変、ステージを静かに見守る、とても神聖な空間が出来上がっていた。
終盤のMCで来年2017年2月22日にニューミニアルバム『等身大アンバランス』をリリースすることを発表すると、さっそくその中から新曲「CCC」をいち早く披露。感覚ピエロらしい手数の多い繊細なグルーヴと、キャッチーな歌メロで、初披露にもかかわらず、フロアはハンドクラップで満たされた。さらに、「A-Han!!」からの「O・P・P・A・I」という、全員がひたすらアホになるアッパーチューンの連発。これらは、かつて感覚ピエロのライブでは絶対的な存在感を放っていたライブアンセムだが、すっかり楽曲の層が厚くなったいまでは、それだけに頼らずとも、すでに会場内には良い空気が出来上がっていた。
最後のMCでは、「一人ひとりが過ごしてきた時間と夢がある。それを裏切ることができるんですか?」と、熱い口調で問いかけた横山。「俺たちの夢は何だ?日本一のロックバンドになることです!それを一つひとつ実現する姿を見せましょう」と高らかに宣言すると、バンドにとって大切なナンバー「拝啓、いつかの君へ」を、メンバー全員が渾身の力を込めてフロアに届けた。卑猥におっぱいを叫び、下ネタ野郎なフロントマン横山は、一見するとチャラくも見えるかもしれない。だが、実はその胸には誰にも負けない情熱を抱き、クサいことをサラリと言うロマンチストでもある。最近のライブではそんな横山らしさがどんどん発揮されていることが、感覚ピエロのライブの強みにもなってきた。
「君たちがあのドアを出たら、現実が待っています。明日を一緒に走って行こう!」。
そう言って突入したラストソングはダイナミックなビートにポジティブなエネルギーを滾らせた「加速エモーション」。もはや感覚ピエロは、皮肉やエロを飛び道具にして、瞬間を謳歌するだけのバンドではい。平凡な日常に希望の光を残すような素晴らしいライブを、この日、見せてくれた。
感覚ピエロのすべてを注ぎ込んだ本編のあと、最後の無礼講となったアンコール。「クリスマスとクリスマスイブにセックスしてるカップルは大嫌いですっ!」と、嫉妬に満ちた叫び声と共に届けた「リア充大爆発」では、手拍子に、ジャンプに、コール&レスポンスにと、狂乱のフィニッシュ。「東京のみなさん、イッちゃいましたか?また一緒にエッチなことしましょう!」。最後のあいさつもまた、自らピエロの役を引き受ける横山らしい言葉でオーディエンスに別れを告げた。
ライブ中に横山は「2016年に悔いはない!」と言っていた。2016年の残りはカウントダウンイベントの出演まで、文字どおり、全力で2016年を駆け抜けると、今回の東名阪ワンマンツアーは、年明けの1月6日になんば Hatchでファイナルを迎える。あらたに始まる2017年が、感覚ピエロにとってますます飛躍の年になることは間違いなさそうだ。
【取材・文:秦 理絵】
リリース情報
等身大アンバランス
2017年02月22日
JIJI RECORDS
2. 加速エモーション
3.CCC
4.TELL ME WHY
5. チェシャ
セットリスト
感覚ピエロの三点責め イク×2 東名阪ワンマンツアー in 東京
2016.12.8@LIQUIDROOM
- 01.Freedom
- 02.Japanese-Pop-Music
- 03.Tonight Yeah! Yeah! Yeah!
- 04.曖-me-昧
- 05.CRAZY GIRL
- 06.ワンナイト・ラヴゲーム
- 07.メリーさん
- 08.CHANGE MY LIFE
- 09.好きにして頂戴
- 10.雨ノチ、雨上ガリ
- 11.夜香花
- 12.会心劇未来
- 13.等身大アンバランス
- 14.A-Han!!
- 15.O・P・P・A・I
- 16.TELL ME WHY
- 17.拝啓、いつかの君へ
- 18.加速エモーション
- 19.リア充大爆発
お知らせ
FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
2016/12/27(火) インテックス大阪
rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 16/17
2016/12/29(木) 幕張メッセ国際展示場1~11ホール / イベントホール
感覚ピエロの三点責め イク×2 東名阪ワンマンツアー in 大阪
2017/01/06(金) 大阪 なんば Hatch
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。