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伊東歌詞太郎 クリスマスの夜の恵比寿ガーデンホールをレポート

伊東歌詞太郎 | 2017.01.10

 SEが流れ、高まった観客の手拍子。フロアの全面で掲げられたペンライトの緑色の光がまぶしい。そして、バンドメンバーたちによる演奏がスタートしたのに続いて、伊東歌詞太郎が登場。「北極星」を歌い始めた。ステージのセンターに置かれたスタンドマイクに向かいながら放たれる歌声がとても力強い。続いて「ピエロ」に突入すると、歌声は一層の熱量を帯びていった。そして、イントロが奏でられるや否や激しい手拍子が起こった3曲目「タイムトラベラー」の時点で、完全に1つになっていた恵比寿ガーデンホール。とても気持ちいいオープニングだった。

「メリークリスマス! “よく来たな”という言葉が今日くらいふさわしい日はない(笑)。今日はクリスマスだ!」、クリスマスという特別なイベントの日にたくさんの人々が集まったことを心から感謝した歌詞太郎は、男性ファンが増えたことも喜び、「バンドメンバーも含めたら5:5(ゴーゴー)みたいなもん(笑)」と明るく語っていた。和やかなMCを経て「Everything’s gonna be alright」「ぼくのほそ道」「君をつれて」が披露され、ますます温かい昂揚感に包まれた会場内。その後に届けられた「rain stops, good-bye」と「さよならだけが人生だ」は、漂うムードを一気にしっとりしたものへと塗り替えっていった。そして、「とにかく優しい歌が歌いたかった。聴いてくれ!」と言ってスタートさせた「親愛なるフランツ・カフカに捧ぐ」は、あの場にいた全ての人にとって忘れられないものになったのではないだろうか。身体を激しく震わせ、時折、ステージにひざまずいたりもしながら放たれた歌声が、豊かな情感を湛えながら迫ってきた。歌い終えた直後、「この瞬間のために生きてるといっても過言ではない。みんなの気持ちと繋がった気がしました。俺1人じゃ最高の歌は歌えない。教えてくれてありがとう!」と感極まった声で言った歌詞太郎を、大きな拍手が包んでいた。

 中盤のMCでは、舞台で共演したことがある親しい俳優についての話が語られた。お酒を飲みながら人生について語り合う仲であり、演技の世界に全力を注いでいる彼のことが、歌詞太郎は大好きなのだという。そして披露されたのは、劇団を立ち上げたその人の公演のために書き下ろした曲「Role Praying」。瑞々しく躍動するサウンドが、背景のスクリーンに流れる映像とリンクしながらドラマチックに高鳴っていった。その後に届けられた「よだかの星」と「酸素の海」も、美しい映像に彩られながら展開。映像を使った演出は長年の夢だったらしく、「実現しました!」と、とても嬉しそうな様子であった。

「昨年、約束しました。一生歌い続けること。それがいかに難しいかを、今年実感しました。365日歌いたい。来年はもっと立ち止まらないと、ここで約束したい!」と観客の前で宣言して歌い始めた「約束のスターリーナイト」を皮切りに幕開けた後半戦も心をこめた歌声が煌めき続けた。「カナリア・シンデレラ」「百火繚乱」「銀河鉄道の夜」「I Can Stop Fall in Love」……多彩な曲が届けられる毎に、ますます引き込まれていた観客。そして、本編は「僕だけのロックスター」で華麗に締め括られた。歌い終えると、「また来年会おう。バイバイ!」と言い、バンドメンバーと一緒に去って行った歌詞太郎。すると、アンコールを求める熱い歓声が上がった。

 赤いサンタ帽を被って再登場した歌詞太郎は、これから行うVR撮影について説明……ステージから見える風景を疑似体験できる映像になるのだという(スマートフォン向けのミュージックVR映像と音楽データが収録されたコンテンツカード“M∞カード”として発売中)。「今日の映像がVR化されるということは、みんなの顔が映る。ステージで歌うというのは1人では無理なんです。ステージから見る景色。これを見るために生きてると言ってもいいです。VRをやれば、みんなも見れるじゃないかと。みんないい顔してるよ。ファンはアーティストを映す鏡というじゃない? 美人、イケメンしかいないから(笑)」などと言いつつ観客を和ませると、ギタリストのyoshi柴田をステージに呼び込んだ。「東京は僕のふるさと。僕にも帰る家はあるのかなと思ってたら、実家は売り払われてたけど(笑)。でも、両親はふるさとです。そして、ここは僕のふるさとだという想いをこめて」という言葉を添えて披露されたのは、「帰ろうよ、マイホームタウン」というタイトルの曲だった。今回のワンマンライブのために書き下ろしたのだというこの曲を、アコースティックギターを弾いたyoshi柴田と並んで椅子に座り、とてもリラックスした様子で歌ってくれた歌詞太郎。観客が穏やか表情を浮かべながら耳を傾けていた風景が、とても爽やかであった。そんな模様を捉えた映像は、最高のVR作品に仕上がったに違いない。

 VR撮影を終えると、愛猫である「みみ」と「ぽん太」のイラストをあしらった靴下など、こだわりのオリジナルグッズについて語った歌詞太郎。中でも特に熱がこもっていたのが、トートバッグについての説明であった。一般的なトートバッグよりも丈夫なものにしたかったので、生地にこだわったのだという。「オンス」という生地の厚さの目安となる単位を使って説明していたのが、ジーンズ愛好家として知られる歌詞太郎らしくて微笑ましかった。そして、ラストに披露された曲は「パラボラ~ガリレオの夢~」。観客が掲げたペンライトの光が幻想的に揺れるフロアを眺めながら歌っていた歌詞太郎は、とても幸せそうだった。「最後に一緒に飛ぼう!」と呼びかけ、観客と一斉にジャンプをしてエンディングを迎えた瞬間、ステージに向かって届けられたのは猛烈に熱い拍手と歓声。伊東歌詞太郎のライブは、ファンと共に作り上げられているのだということを改めて実感した場面であった。

【取材・文:田中 大】
【撮影:スズキシンノスケ】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 伊東歌詞太郎

セットリスト

伊東歌詞太郎ワンマンライブ ~冬空のむこう~
2016.12.25@恵比寿ガーデンホール

  1. 01. 北極星
  2. 02. ピエロ
  3. 03. タイムトラベラー
  4. 04. Everything’s gonna be alright
  5. 05. ぼくのほそ道
  6. 06. きみをつれて
  7. 07. rain stops,good-bye
  8. 08. さよならだけが人生だ
  9. 09. 親愛なるフランツ・カフカに捧ぐ
  10. 10. Role Praying
  11. 11. よだかの星
  12. 12. 酸素の海
  13. 13. 約束のスターリーナイト
  14. 14. カナリア・シンデレラ
  15. 15. 百火繚乱
  16. 16. 銀河鉄道の夜
  17. 17. I Can Stop Fall in Love
  18. 18. 僕だけのロックスター
[ENCORE]
  1. 19. 帰ろうよ、マイホームタウン
  2. 20. パラボラ~ガリレオの夢~

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