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井上苑子、クリスマスイブに行われた追加公演で魅せた、プレミアムな一夜をレポート

井上苑子 | 2017.01.10

 メジャーデビューから1年半。女子中高生を中心に絶大な支持を得ている井上苑子は、アーティストとしても確実な変化、成長を見せてくれた。

 昨年12月24日にShibuya WWW Xにて開催されたワンマンライブ「井上苑子19th BIRTHDAY TOUR 2016 ~いぬうえワン!だランド追加公演 クリスマススペシャル~」。本公演は、東名阪ワンマンツアーに拡大して開催された恒例のバースデーライブ「井上苑子19th BIRTHDAY TOUR 2016 ~いぬうえワン!だランド」の即日完売を受け、急遽、開催が決定したツアーの追加公演。さらに、彼女にとってはこちらも恒例となっているクリスマス“ピアノ”ライブを融合させた、プレミアムなライブとなっていた。

 彼女の成長を強く感じさせられたのは、ツアーでも1曲目を飾った「Lovely days, Lousy days」だった。SHAKALABBITSのUKIが作詞、MAHが作曲を手がけたポップなパンクロックナンバーだが、メジャーデビュー作となるミニアルバム『#17』に収録されている彼女の歌には、UKIの独特な節回しにどこか引っ張られている印象があった。ほとんどの作詞を自ら行っている彼女にとっては、そのように歌わないと成立しにくい曲でもあったのだが、この日の彼女の歌い回しからは、SHAKALABBITSの影が一切見えなくなっていた。ボリュームは抑えめではあったが、彼女の切なく澄んだ歌声がクリアに聞こえる音像となっており、どんな曲でも自分のものにできる、井上苑子らしさというものを掴んだ印象を受けた。

 歌い出しで歓声が湧き上がった2ndシングル「ナツコイ」、「これから始まるぞっていう気持ちになってもらえたら嬉しいです」と語りかけた片思いソング「メリーゴーランド」、そして、“近距離”ならぬ“キュン距離”を描いた「君との距離」へ。この曲はツアーでは披露していなかった。のちのMCで「今日は追加公演なのでツアーでやってない曲をやります」と宣言したように、アンコールも含め、全16曲中7曲が追加公演の為に選曲された楽曲となっていた。わずか2週間という短い期間でセットリストの半分以上を変えるというのも成長の証だろう。続いて、SNSを通して口コミで広まり、彼女の人気を決定づけたカントリーポップ「大切な君へ」を早くもパフォーマンス。ツアーではアンコールで歌っていた代表曲を前半の締めである5曲目に持ってきたことで、観客にもツアーとは全く違うスペシャルなライブであることをはっきりと伝える構成となっていた。

 中盤では彼女が一昨年からスタートさせたクリスマスライブが開催された。ギター、ベース、ドラム、キーボードに女性コーラス3名によるバンドが一旦退場。クリスマスのピアノライブを共に行ってきた向井先生が入場し、高校1年生の時から彼女のボイストレーナーも担当しているという向井先生の伴奏で4曲をカバーした。秦基博「アイ」ではエモーショナルなフェイクからウィスパー気味の語りまで、歌声一本でスケールの広がりを表現。「初めて聴いた時から歌いたいと思った。心が震える曲です」と語った宇多田ヒカル「花束を君に」は、マイクやアンプを通してないのではないかと思うほどの生の歌声を観衆の心にまっすぐ届け、星野源「SUN」で会場全体をスイングさせ、最後にスズを片手にAI「ハピネス」を歌い、クリスマス気分を盛り上げた。

 後半戦の幕開けを飾ったのは、彼女の遊園地のようなファンタジックな世界観を詰め込んだ「ファーストデート」。オリジナルキャラクター“いぬうえくん”によるフリの練習を経て、バンドメンバーに加えて、ヴィオラ、チェロ、バイオリン2名の計4名のストリングスも加わるという贅沢な編成で音楽の豊かさを感じさせ、楽しげなダンスとクラップが会場を包み込んだ。さらに、「ふたり」は観客全員での大合唱となり、「高校2年生の時に出して、今でもみんなが好きだと言ってくれる、友達の三角関係を描いた曲です」と紹介されたインディーズ時代からの人気曲「赤いマフラー」をドラマチックに歌い上げ、友達との前向きな別れを歌った「君に出会えてよかった」を歌い終えたところで、2016年を振り返った。

「そろそろ、ワン!だランドも閉園が近づいてきています。2016年はいろんなことをやらせていただいた、濃厚すぎる年でした。高校を卒業し、大学に入学。オールナイトニッポンでレギュラーのラジオがスタートし、夏にはシングル『ナツコイ』をリリースして、めざましライブにも出演させていただきました。そして、この年末には『FNS歌謡祭』にも出させていただいて。小学生の時からずっと歌を歌ってきて、改めて、辞めないでよかったなと思いました。今年はみなさんにたくさんエールをもらったので、最後は、この曲でみなさんの背中を押せたらいいなと思います」

 観客の一人一人の顔を見つめながら、まるで友達に話しかけるかのように歌った最新シングル「エール」で本編を締めくくると、会場は明るくハッピーなバイブレーションで満ち満ちていた。

 白いキャップにTシャツというツアーグッズを身にまとってアンコールに登場した彼女は、ヒット曲「だいすき。」で観客をぎゅっと抱きしめ、この夏のイベントや秋の学祭で各地を盛り上げたサマーソング「君がいればOK!~サマサマキュンキュン大作戦~」をハンドマイクで歌い、場内をタオル回しとコール&レスポンスで大いに沸かせると、井上は満面の笑顔を浮かべ、「大切な日に来てくれてありがとうございました。みんな最高です。ありがとうございます。すっごくすっごく元気をもらいました」と深々とお辞儀をし、「また会いましょう」とファンとの再会を約束。手を振りながら去ろうとする彼女に会場から突如、「頑張れ!」という声が上がった。再びエールをもらった彼女は「頑張っていくよー。井上は~」と今後のさらなる成長へ期待を感じさせる言葉を残し、ステージをあとにした。

 昨年の夏に赤坂BLITZを満員にし、冬にはZepp DiverCity Tokyoを即日完売にした彼女は、今年の春に初の中野サンプラザ公演を含む全国5都市に及ぶツアーが決定している。10代最後の1年に彼女がどんな成長の軌跡を見せてくれるのかが楽しみで仕方がない。

【取材・文:永堀アツオ】

※ライブ写真は12/11(日)Zepp DiverCity Tokyo公演のものになります。

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 井上苑子

リリース情報

エール[初回限定盤]

エール[初回限定盤]

2016年12月07日

ユニバーサル ミュージック

[CD]
01. エール
02. ファーストデート
03. 君がいればOK!〜サマサマキュンキュン大作戦〜
04. エール (Instrumental)

[DVD] ※初回限定盤のみ 
みんなに”エール”企画!〜初めてのバク転〜

セットリスト

井上苑子19th BIRTHDAY TOUR 2016
〜いぬうえワン!だランド追加公演 クリスマススペシャル〜
2016.12.24@ Shibuya WWW X

  1. 01. Lovely days, Lousy days
  2. 02. ナツコイ
  3. 03. メリーゴーランド
  4. 04. 君との距離
  5. 05. 大切な君へ
  6. 06. アイ (秦基博) (Piano ver.)
  7. 07. 花束を君に (宇多田ヒカル) (Piano ver.)
  8. 08. SUN (星野源) (Piano ver.)
  9. 09. ハピネス (AI) (Piano ver.)
  10. 10. ファーストデート
  11. 11. ふたり
  12. 12. 赤いマフラー
  13. 13. 「君に出会えてよかった」
  14. 14. エール
ENCORE
  1. En-01. だいすき。
  2. En-02. 君がいればOK! 〜サマサマキュンキュン大作戦〜

お知らせ

■ライブ情報

井上苑子 2017年春ツアー
3/10(金)Zepp Sapporo
3/19(日)電気ビルみらいホール
3/30(木)Zepp Namba
4/16(日)Zepp Nagoya
4/26(水)中野サンプラザ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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