フレデリック、全力で走り抜けた「フレデリズムツアー2016-2017」ツアーファイナルで見せた、“進化”の証。
フレデリック | 2017.01.30
メジャー1st FULL ALBUM『フレデリズム』が出たときに書いたインタビューのリード文で、「長らくブレイク目前と言われ続けてきたバンドがいよいよ化けた」と書いた。それはフレデリックの全てを注ぎ込んで作り上げたアルバムの完成度と、少しずつ変わり始めていたバンドを取り巻く状況を受けて、そこに何かが爆発する寸前のような胎動するエネルギーをフレデリックに感じたからだった。結果、そのアルバムは初のオリコンTOP10入りを記録。年末に出演したフェスにしても1年前とはまるで違う景色が彼らの目の前には広がっていた。そんなフレデリックが昨年11月から開催してきた「フレデリズムツアー2016-2017」のファイナル公演を新木場スタジオコーストで開催。そこでフレデリックが見せてくれたのは、自分たちこそオンリーワンであるという誇りと、揺るぎない自信が手繰り寄せた進化の証だった。
ひとり颯爽とステージに現れたスレンダーな女の子が、カセットデッキの再生ボタンをガチャリと押すと、SEと同時にオープニング映像が流れ出した。手拍子に迎えられてメンバーが登場。三原健司(Vo・Gt)が紡ぐクセのある歌声とメロディ、三原康司(Ba・Cho)と赤頭隆児(Gt)のふたりにサポートドラマーを加えた楽器隊による独特の踊れるサウンド、あまりにも唯一無二で中毒性の高い、フレデリック印が全開のライブチューン「リリリピート」から熱狂のファイナルが始まった。フロアからは一斉に手があがり、右も左も前も後ろもジャンプで埋め尽くされていく。そんな溢れる狂騒のなか、ふいに挟みこまれたフレーズにはっとした。“行ってきては 戻ってきては/リピートして 今までの関係も/全部リセットするわけないわ 全部背負ったまま”――それは行きつ戻りつしながらも、少しずつ進化してきたバンドの今とも重なるようなワンフレーズだった。なんだか冒頭から泣きそうだ。なにせフレデリックは過去4回もこの場所でライブを行なっているが、メインステージに立つのはこの日が初めて。決してここまでの道のりは平坦ではなかった。
「関西から来たフレデリックです!オンリーワンのライブを楽しんで行ってください」とだけ、健司が手短かに挨拶をすると、中盤からは全くMCなしで全8曲を畳みかけるダンスタイムに突入した。“がたんごとん”と運ばれるパプリカに存在価値を託した「レプリカパプリカ」、哀愁のサウンドにフレデリックの音楽愛を注いだ「音楽という名前の服」、ジャジーで妖げなムードが会場の空気を冷やすような「峠の幽霊」など、初っ端のアッパーな展開は一転して、メロウなナンバーでもフロアを自由に踊らせていく。「うわさのケムリの女の子」ではメンバーの姿が見えないほど会場に煙を充満させたり、「ナイトステップ」では頭上に巨大なミラーボールがまわり、「ディスコプール」ではレーザーが走った。思えば、昨年夏に開催した「フレデリズムツアー2016」では、映像やダンサーも投入した賑やかな演出に魅せられたが、今回はシンプル。もともと豊かな音楽性を持つフレデリックはワンマンに定評があったが、フェスでも闘えるダイナミズムを得たいま、その進化がワンマンへと還元されて、精度がぐっとあがった。だからこそ音楽のちからだけで2,400人を魅了できる。それも、いまの研ぎ澄まされたフレデリックであればこそのステージだった。
もはや後戻りはできないほどに、どっぷりと高濃度なフレデリックワールドに浸り切ったところで、ようやく本編で唯一のMC。夏ごろに出演して話題になった『めざましテレビ』のネタで、健司が、「双子の兄、双子の弟……他人です!」とバンドを大まかに自己紹介する掴みで笑いをとると、会場からは「たにーん!」と、隆児を呼ぶ声が飛んだ。そこから、サポートドラマー高橋武のドラムソロを挟んで、「ふしだらフラミンゴ」(たまイズムを引き継いだ脱力系のリフが最高!)からクライマックスへと突入した。緩急の激しい混沌とした世界観の「バジルの宴」では、隆児と康司が挑むように向き合うプレイを見せて、メンバーもラストに向けてヒートアップしていく。そして、怒濤のラスト3曲へ。「オワラセナイト」からの「オドループ」では、“カスタネットがほらたんたん”のフレーズであまりにも息の合ったお客さんのハンドクラップに 「最高(笑)」と思わず笑みを漏らした健司。特大のシンガロングを巻き起こして、雪崩込んだ「オンリーワンダー」。文字通り、フレデリックを“ネクストブレイク”から、シーンの一角を担うオンリーワンのバンドへと導いたナンバーでフロアをもみくちゃにするという、無敵感すら漂う最高のフィナーレだった。
アンコールでは、フレデリックがいまの3人で進むことを決意したときに書かれた未来への大切なナンバー「FUTURE ICE CREAM」をエモーショナルに届けると、最後のMC。健司は今回のツアーのテーマは“進化”だったと語りかけた。1曲目に披露した「リリリピート」の歌詞を引き合いにして、これからも過去を更新して、進化していくことを約束すると、「日本武道館を遊び場にしたい。あと2年以上かかると思う。悲しいこと、嬉しいこと、楽しいこと、全部背負って、俺たちと一緒にこれからも進化していきましょう!」と言って、ラストソング「ハローグッバイ」でライブを締め括った。
ここでメンバーが袖に捌け、エンドロールも流れたところで終演かと思われたが、再び最初の女の子がステージに出てきた。オープニングと同じようにカセットデッキをガチャリと再生。「フレデリズムツアー、リピートします」の声で、なんともう一度、1曲目の「リリリピート」が始まったのだ。全18曲のライブを終えてなお、ライブが始まったときと同じ熱量でメンバー迎え入れるお客さんのパワーも含めて、まるで2時間前のデジャブのよう。それは「リリリピート」という楽曲と、フレデリックの代名詞でもある“繰り返し”にかけた演出でもあったが、アンコールでの熱いMCの後だからこそ、もう一度「リリリピート」をやる意味もあった。そのまま2曲目の「KITAKU BEATS」に入り、サビ終わりの“遊びきってから帰宅”のフレーズでステージの幕が締まると、今度こそ本当にライブは終わった。
全国10会場をまわって辿り着いたフレデリックのツアーファイナル。絶対的なオンリーワンの存在になったフレデリックはその勢いを弱めることなく、2017年も進んでいくだろう。そんな期待感を抱きながら、ライブの余韻とともに岐路についた道のりでは、いつまでもフレデリックの楽曲が頭のなかで流れ続けて止まらなかった。まさに“止まらないんだってコンセント刺さってないのに 音楽は止まない”という、あの歌のとおりに。
【取材・文:秦 理絵】
【撮影:Kohei Suzuki】
リリース情報
フレデリック『フレデリズム(初回限定盤)』
2016年10月19日
A-Sketch
M2. リリリピート
M3. レプリカパプリカ
M4. KITAKU BEATS
M5. サービスナーバス
M6. スピカの住み処
M7. バジルの宴
M8. ナイトステップ
M9. POOLSIDE DOG
M10. オドループ
M11. CYNICALTURE
M12. ふしだらフラミンゴ
M13. 音楽という名前の服
M14. オワラセナイト
M15. ハローグッバイ
■初回限定盤DVD収録曲
1. DNAです
2. ひっくりかえす
3. FUTURE ICE CREAM
4. トライアングルサマー
5. WARP
6. FOR YOU UFO
7. ディスコプール
8. オドループ
9. オンリーワンダー
セットリスト
フレデリズムツアー2016-2017
2017.1.22@新木場STUDIO COAST
- 01.リリリピート
- 02.KITAKU BEATS
- 03.トウメイニンゲン
- 04.レプリカパプリカ
- 05.音楽という名の服
- 06.うわさのケムリの女の子
- 07.峠の幽霊
- 08.真っ赤なCAR
- 09.ナイトステップ
- 10.CYNICALTURE
- 11.ディスコプール
- 12.ふしだらフラミンゴ
- 13.バジルの宴
- 14.オワラセナイト
- 15.オドループ
- 16.オンリーワンダー
- EN1.FUTURE ICE CREAM
- EN2.ハローグッバイ
お知らせ
2017/01/31(火) 心斎橋Music Club JANUS
2017/02/01(水) 名古屋 APOLLO BASE
2017/02/07(火) 渋谷WWW X
[海外公演]
2017/02/12(日) 台湾台北市 THE WALL 台北
スペースシャワーTV チュートリアルの徳ダネ福キタル♪SPECIAL LIVE Vol.4
2017/02/18(土) 豊洲PIT
タイ・スペースシャワー列伝 ASIA TOUR 2017 powered by MCIP
2017/03/14(火) Muse Pub&Restaurant
スペースシャワー列伝 ASIA TOUR 2017 powered by MCIP
2017/03/16(木) MILLIAN SINGAPORE
2017/03/31(金) Legacy Taipei
YON FES 2017
2017/04/01(土) - 02(日)
モリコロパーク(愛・地球博記念公園)
※出演日・ステージは後日発表致します
Root & United vol.23
4月23日(日) 代官山UNIT
ARABAKI ROCK FEST.17
2017/04/29 - 30みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
※出演日・ステージは後日発表
VIVA LA ROCK 2017
2017/05/03-05 さいたまスーパーアリーナ
※出演日・ステージは後日発表致します
rockin’ on presents JAPAN JAM 2017
2017/05/03-05 千葉市蘇我スポーツ公園(千葉市中央区)
※出演日・ステージは後日発表致します
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。