1月6日からスタートし、幕張イベントホールと神戸・ワールド記念ホールを巡った“でんぱ組.inc 幕神アリーナツアー2017 電波良好Wi-Fi完備！”の追加公演“でんぱ組.inc 幕神アリーナツアー2017 in 日本武道館 ～またまたここから夢がはじまるよっ!～”。代表曲の数々が届けられ、6人のメンバーたちとファンが一体となったライブの模様をレポートする。

　会場内が暗転し、アリーナ席、1階席、2階席で色とりどりのペンライトが輝いたのが壮観！　オープニング映像とSEが流れる中、薄暗いステージ上に古川未鈴、相沢梨紗、夢眠ねむ、成瀬瑛美、最上もが、藤咲彩音が横一列で並ぶのが見えて、待ちわびていた人々の歓声が高まった。

　オープニングを飾ったのは「W.W.D」。イントロで観客が打った激しいMIXを経て本編に突入するや否や、ダイナミックに炸裂したメンバー6人の歌とダンス。ギター、ベース、ドラム、キーボードのほか、トランペット、サックス、トロンボーンによるホーンセクション、1stバイオリン、2ndバイオリン、ヴィオラ、チェロによるストリングスも含む大編成の“でんでんビッグバンド”が奏でるサウンドも華麗に鳴り響き、最高の一体感が早くも生まれていた。

「萌えキュンソングを世界にお届け。でんぱ組.incです！」、お馴染みの挨拶、メンバー各々の自己紹介を挟んで2曲目「ちゅるりちゅるりら」がスタート。ステージ上で大量のスモークがモクモクと吹き上がり、メンバーたちはますます情熱的にパフォーマンスを繰り広げた。その勢いのまま雪崩れ込んだ「君も絶対に降参しないで進まなくちゃ!」は、掲げたペンライトを揺らしながらホーンセクションとストリングスの7人も大はしゃぎ。この時点で、ステージと客席の間の境が完全になくなっているのを感じた。

　観客も大喜びしながら踊りまくっていた「最Ψ最好調！」。会場中がピンク色のペンライトの光に包まれ、一足早い桜満開の春が到来したかのようなムードとなった「サクラあっぱれーしょん」……オープニングから高まり続けた熱気を切り替えたのは「くちづけキボンヌ」だった。生のストリングスに彩られたメロディが、とても気持ちいい。うっとりと耳を傾けながら、観客は身体を穏やかに揺らしていた。

「キラキラチューン」で再び開放的な盛り上がりとなったあと、一旦ステージから姿を消したメンバーたち。6人をキャラクター化したアニメーションを経て流れたのは、ある男性が、ふとしたきっかけで初めて“秋葉原ディアステージ”に足を踏み入れる様を追った映像だった。それを観て次の曲が何なのか知り、歓声を上げた観客。そして、メンバーたちのほかに、ディアガール（秋葉原ディアステージで働いている店員）もステージ上に現れてスタートしたのは、「Dear☆Stageへようこそ♡」。ディアステージで活動を始めたでんぱ組.incが、ライブを地道に積み重ねながら、こうして2度目の日本武道館に辿り着いたという事実が示すロマンを改めて噛み締めることができた。

　6色のリボンがダイナミックに揺らめいた「でんでんぱっしょん」。観客が全力のコールを送っていた「でんぱれーどJAPAN」。一旦バラバラになりかけたでんぱ組.incの再生の物語が描き上げられた「W.W.D Ⅱ」……強力なナンバーが連発された場面を経て迎えたインターバル。メンバー各々が想いを語ってくれた。

「ほんとにでんぱ組.incでよかったなと思います。強い女になって、みんなをサポートできるように頑張ります。でんぱ組.incと、ここにいる応援してくれる皆さんが大好きです！」（藤咲）

「加入する前はほんとに地味で、ダサくて、ネトゲばっかりしてて、このまま人生終わってくのかなと思ってました。でも、加入して突っ走ってきた5年間は、僕を変えてくれました。こうやって集まってくれる皆さんがいて、メンバーもいてくれて、スタッフさんも増えて。何ひとつ欠けてはならない存在です。僕はこれからもでんぱ組.incを続けていきたい。ついてきてほしいと思ってます」（最上）

「世界を幸せにしたい気持ちは変わってなくて。みんなを元気にしたいです。でも、1個だけ変わったことがあって。ひとりで遊ぶのが好きだったけど、今は支えてくれるみんなと、メンバーが大好き。ずっと仲良く続けるのが夢。これからも応援してください！」（成瀬）

「ここに来てくれてありがとうございます。来るのが簡単じゃないこと、わかってます。“ここにいる全員ででんぱ組.inc”ってよく言うけど、お世話してくださる方々の力で成り立ってます。ファンは塊じゃなくて、1人ひとり。これからもでんぱ組.incの一員でいてください」（夢眠）

「私はアイドルになるまで、努力とか期待をすることができなかったんです。皆さんに頑張る勇気とチャンスをもらって、2回目の武道館のステージに立ててます。これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします！」（相沢）

「でんぱ組.incになっていろいろな経験をして、でも、まだやりたいことがたくさんあります。もっと大きいところでやりたいし、もっといろいろなところへ行きたいし、もっとテレビとかに出て有名になりたい。だから思った。何があってもでんぱ組.incを諦めません！」（古川）

　感極まって涙ぐんだりもしながら届けられた彼女たちの言葉は、胸を打つものがあった。そして、「6人の個性はバラバラだけど、でんぱ組.incに対する気持ちは一緒です。この先、しばらくライブの予定がないけど、1人ひとりが力をつけて、またこうやって6人でステージに戻ってこれるように頑張っていきますので、これからもどうぞよろしくお願いします！」、古川が代表して語り、メンバー全員が深々と一礼。「すべての人のことを思ってこの歌を歌いたいと思います」という言葉を添えて披露された「WWDBEST」は、彼女たちの胸の内で燃え盛っている闘志を鮮やかに伝えてくれた。大型スクリーンに“夢で終わらんよっ”という言葉が映し出されると、客席全体から湧き起った熱い歓声。「最後、みんなで跳ぶよ！」と呼びかけられ、メンバー6人と全観客がジャンプをした瞬間、猛烈な拍手がステージに向かって届けられた。

「みりん、りさ、ねむ、えい、もが、ぴんきー、アンコール！」、観客の歓声に応えて戻ってきた“でんでんビッグバンド”が演奏をスタートさせると、でんぱ組.incの6人もステージに再登場。アンコールの1曲目は「ORANGE RIUM」だった。観客が掲げるペンライトの色がオレンジで統一された会場内の風景、響き渡った大合唱が美しい。歌い終わったあと、武道館の「ORANGE RIUM」がいちばん好きだと明るく語り合いつつ、2度目の武道館のステージに立てた喜びを噛み締めていた6人。そして、アンコールの2曲目「破 ! to the Future」へ。体力の限界に挑むかのような高速BPMで駆け抜け、メンバーたちも観客もすっかり汗だくとなっていた。

　観客を煽って勢いよく曲を始めるつもりだったのに、舌が回らなくなったのか、「まだまだ未来へ突っ走るん＠：＊＜＃＆～！」という意味不明な言葉になってしまい、「今のナシ！」と赤面した古川……ほのぼのとしたムードの大爆笑が起こった客席に向かって「このまま未来へ突っ走ります。まだまだここから未来が始まるよ！」という仕切り直しバージョンの言葉が届けられたのを合図に、ラストの曲「Future Diver」がスタート。観客は飛び跳ねたり手拍子をしたり大合唱をしながら、全力で興奮を露わにしていた。6人が綺麗なフォーメーションによるポーズを描いてエンディングを迎えたとき、武道館内に漂っていたのは完全燃焼の満足感。「せーの、ありがとうございました！」、繋ぎ合った両腕を掲げた彼女たちの表情は、大きな喜びで輝いていた。2度目の武道館で6人が感じた様々な想いは、今後のでんぱ組.incにとっての頼もしいエネルギーになるのではないだろうか。この公演のサブタイトルは“またまたここから夢がはじまるよっ！”だが、彼女たちがさらにワクワクする何かを実現しようとしていることを確信させられるライブだった。

【取材・文：田中 大】
【撮影：ただ（ゆかい）、藤城貴則】