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俺らが出来なきゃ誰も出来ない――SANABAGUN.が8人で在ることの意味を改めて示した一夜をレポート。

SANABAGUN. | 2017.02.03

「まだまだこの8人で、ガキみたいなことを10年、20年やっていくんで、よろしくお願いします」

 岩間俊樹がそう口を開くと、オーディエンスからその宣言を聞きたかったと言わんばかりの歓声が上がる。そして、本編最後の曲へ。タイトルは「メジャーは危ない」。SANABAGUN.が昨年7月にリリースしたメジャー2ndアルバム『デンジャー』のラストに収録されている曲だ。この曲で、MCの岩間はSANABGUN.の創設者であり首謀者でありもう一人のフロントマンである高岩 遼、その男に銃口を向けた。高岩もまた岩間から浴びせられる言葉の銃弾を真っ向から受け止めた。ベースの小杉隼太、ギターの隅垣元佐、ドラムの澤村一平、サックスの谷本大河、キーボードの櫻打泰平、トランペットの髙橋紘一はソウルフルかつメロウなサウンドでバースとフックを包み込んだ。

 絶対に譲れない濃厚なルーツとしてのジャズとヒップホップのエッセンスを血肉化し、この8人でしか体現し得ない独創的な音楽像をもって日本のシーンをひっくり返す。野望はNFLのハーフタイムショーに出演すること。SANABAGUN.がそういったマインドを掲げ、またその態度や言葉をまったく大仰に感じさせない説得力をその楽曲に宿らせて、ビクター内に設立されたばかりの新進レーベル、CONNECTONEとメジャーディールを交わしたのは2015年8月のことだった。あれから、約1年半。SANABAGUN.は多くのミュージシャンやリスナーのプロップスを得ながら、しかし、現時点ではまだその音楽と存在を世間に轟かすまでには至っていない。その理由は複合的なものだろう。ただ、筆者のような第三者から見ても、8人のメンバーが同じ方向を見ているようには思えなかったのは確かだ。いつだって真正なる情熱を音楽に傾けている8人である。メンバーのアウトプットが多岐にわたるのも必然だと思う。高岩はSANABAGUN.と同じくCONNECTONE所属となったロックンロールバンド、ザ・スロットルの活動も精力的に行い、ソロのジャズシンガーとしてもステージに立っている。岩間は昨年12月にリベラル a.k.a 岩間俊樹名義でソロアルバムをリリースした。小杉と櫻打がSuchmosのメンバーとして時代の寵児と言っても過言ではない活躍を見せているのは記すまでもないだろう。SANABAGUN.がSANABAGUN.たる所以はこの8人が等しい強度をたたえた音と音、あるいはラップと歌で拳を突き合わせていることにある。メンバーに言われせれば、「そんなことは十二分に承知している」となるだろう。しかし、だからこそ、岩間は「メジャーは危ない」で高岩に銃口を向けながらメンバーにこう語りかけた。

<10年後 笑って話そう この曲が出来たことを>
<結成3年 先は長ぇけど 今が1番みんなバラバラに感じるのは 俺だけですか?>
<お前が作った最高のクルーを お前以上に大切にする>
<俗に言う音楽性の違いを 音楽で伝えよう>
<まだだ まだまだ足りない 稼ぎ足りない 暴れ足りない 遊び足りてもないし 夢見させたい >
<俺らが出来なきゃ誰も出来ない>

 随分とプロローグが長くなってしまった。記憶をこの日のライブに戻そう。ステージ上の8人は、これまでの自分たちを整理し、これからの道筋を照らしながら、改めて結束を誓い固めるように「メジャーは危ない」を鳴らしてみせた。会場に広がった多幸感と期待感に富んだムードはサウンドの趣向もあいまったものではあるが、それ以上のはみ出した熱量が、8人の演奏にあったのが何より重要だ。
 そう、SANABAGUN.の核心は、圧倒的で、受け手が気圧されるまでのはみ出した音楽力と人間力にある。その熱量は、意味不明で、怖くて、色っぽくて、笑えもする。tofubeatsとCreepy Nutsを迎え、自主企画イベントとして開催した“VS SANABAGUN. Round 1”は、彼らにとって2017年一発目のライブだったわけだが、思えばスローでムーディーな1曲目「ア・フォギー・デイ」からSANABAGUN.の本質が浮き彫りになっていた。
 1音1音に込められたプレイヤーの集中力がもたらす緊張感。5曲目の「板ガムーブメント」までは、オーディエンスにじっくりと愛撫を施すと同時に、メンバーそれぞれが自らの役割(特に的確で絶妙な押し引きが定まった、高岩と岩間のコンビネーションが印象的だった)とバンドの軸を再確認しながら、比類なきグルーヴの快楽を互いに味わうような時間が連なっていった。
 高い緊張感があるからこそ、至高の緩和は訪れる。「板ガムーブメント」「大渋滞」「BED」「人間」と畳み掛けたダイナミックな楽曲群のカタルシスはたまらなかった。「板ガムーブメント」「BED」「人間」はメジャーデビュー以降に発表した楽曲だが、リリース当時よりも2017年のSANABAGUN.だからこそ示せる更新した求心力がそこにあった。そして、冒頭の「メジャーは危ない」のシーンになる。
 アンコールのラストに入る前に、高岩はこう言った。

「まあ、いろいろほら、俺らは才能に溢れてるわけじゃん? 生きてればいろんなことがあるけど、SANABAGUN.は不滅です。よろしく」

 この言葉は会場にいる誰もが聞きたかったものだ。最後に鳴らされた「WARNING」が、ほかのどのバンドも形象化できないイカれたニュージャックスウィングのようなニューアレンジになっていたのも最高だった。
 ライブ終了後、SANABAGUN.はYouTubeに2017年のマニフェストを告げる動画をアップした。その内容はぜひ直接確認してほしい。ただ言えるのは、やっぱりSANABAGUN.は、すげえ頭がおかしくて、超カッコいい。

【カメラマン:小見山 峻】
【取材・文:三宅正一】


tag一覧 男性ボーカル SANABAGUN. ライブ

リリース情報

デンジャー

デンジャー

2016年07月06日

ビクターエンタテインメント

1.SANABAGUN. Theme
2.BED
3.板ガムーブメント
4.P.O.P.E
5.Mammy Mammy
6.ア・フォギー・デイ
7.メジャーは危ない

セットリスト

VS SANABAGUN. Round 1
2017.1.21@渋谷WWW X

  1. 1.ア・フォギー・デイ
  2. 2.P.O.P.E
  3. 3.HSU what
  4. 4.SANABAGUN Theme(1st アルバム『メジャー』収録)
  5. 5.板ガムーブメント
  6. 6.デパ地下
  7. 7.大渋滞
  8. 8.BED
  9. 9.人間
  10. 10.メジャーは危ない
ENCORE
  1. 11.WARNING

お知らせ

■ライブ情報

PLAYGROUND 〜 SCOOBIE DO × SANABAGUN. 〜
2017/02/07(火)代官山LOOP

Creepy Nuts 全国ツアー2017 「いつかのエキストラ、ライブオンステージ。」
2017/02/24(金)札幌 Sound Lab mole
2017/03/24(金)松本ALECX

IMAIKE GO NOW 2017
2017/03/25(土)名古屋・今池(ちょっとだけ池下)のライブハウス、カフェ等の9会場

SANABAGUN. 『THUG TOUR』
2017/05/26(金) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd
2017/05/28(日) 札幌COLONY
2017/06/09(金) 広島BACK BEAT
2017/06/10(土) 福岡graf
2017/06/17(土) 名古屋JAMMIN’
2017/06/18(日) 大阪Shangri-La
2017/06/23(金) 恵比寿LIQUIDROOM

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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