6thアルバム『NEW』を2月8日にドロップしたばかりのTHE BAWDIESが、同月19日の新木場STUDIO COASTから“NEW BEAT TOUR 2017”をスタートさせた。
　ステージにはアルバムジャケットと同じデザインでネオンとスパンコールに輝く“NEW”の文字が掲げられており、白ジャケットに蝶ネクタイの新しいコスチュームに身を包んだTHE BAWDIESの4人を迎える。そして始まるライブは、もちろん最新作『NEW』に収められている“NEW”ソングの数々。その始め方も今までになかったスタイルで、満杯のフロアから”オォ～ッ”と驚きの歓声が上がったほど。今まで見たことのない、最も新しいTHE BAWDIESを見せて聴かせて楽しませるショータイムの始まりだ。
　センターで歌うROYが発する熱を倍増させながらJIMが前に飛び出しご機嫌なギターソロを見せつけると、待ってましたとばかりにフロアから腕が伸びる。TAXMANもステップを踏みながらリフを弾き、MARCYが3人にドラムでビートを送る。フロアが揺れ続けるのもお構いなく、曲が変わった途端に3人揃ってジャンプして、出口なしのダンス天国に連れていった。

「イェー！始まりましたよ皆さん！NEW BEAT TOUR 2017！全国33ヵ所回ってきます。そのスタートが今日です。今日感じたあらたな光を明日からのパワーにしてください、全身でR&Rを浴びてください、いいですか！」

　ROYの呼びかけに皆は歓声で応えた。前半は新作『NEW』からの曲が多いというのに、何年も演奏している曲のようにバンドとフロアがひとつになって揺れる。ROYが言うように全身でロックンロールを浴びれば、理屈抜きに楽しめるのだ。ROYが呼びかけてシンガロングが起きた曲も、『NEW』からの曲。覚えたばかりの曲をTHE BAWDIESと一緒に歌うなんて、こんな楽しいことがあるだろうか。しかもライブはまだ始まったばかりだ。フロアとひとつになったロックンロールの熱気とともに演奏のボリュームもアップし、歪んだガレージロックで4人は本領発揮する。ロックンロールの魂を21世紀に熱くすればこうなる、という音だ。そう、まさに2017年のNEW BEAT！

　新作『NEW』は、THE BAWDIESが様々な新しい試みに挑んだ作品だ。ロックンロールバンドが歌い演奏するスタイルをどこまで広げていけるか、そんなトライをしている気がする。激しく弾けるだけでなく、ちょっとしっとり聴かせたり、ミディアムテンポで和ませたり、バラエティに富んだ曲が詰まっている。そんな新しい面も、もちろん4人はステージで存分に発揮する。雨の日も晴れてる日もロックンロールは欠かせないし、心踊らせたり落ち着かせたり、あらゆるシーンにふさわしいロックンロールがあることを、4人は全身全霊で伝えてくる。『NEW』初回限定盤に入っている短編映画も、そんな彼らの気持ちを伝える物語だが、ステージでは互いをいぢる格好の話題になる。MARCYの演技をROYは褒めるというより褒め殺しにし、そんなROYにMARCYが「お前、今日おかしい。あとでゆっくり話そう」と諭したり、次いで自分を褒めるROYにTAXMANが「お前、自分の評価は高いのな（笑）」と突っ込むあたり、10代からずっと一緒にいる4人ならではの空気感。誰がいちばんとかでなく、4人がそれぞれのシーンで互いに支え合う。バンドが続いているのはそんな空気を持っているからだろう。

　と、感心していると意外なところで予想外の“NEW”が飛び出した。言うまでもないがTHE BAWDIESは主にROYがボーカルを取り、アルバムに1曲ほどTAXMANが歌う曲が入ったりする。ステージでもこの二人の歌が聴けるのだが、このツアーではもう一人ヴォーカリストが誕生したのだ。それが誰かはライブを観てのお楽しみだが、スポットライトを浴びながら意外にしれっと歌う姿は初々しくも頼もしい。“NEW”"ヴォーカリストに刺激されたように、「僕も歌います！」とTAXMANが歌う懐かしい曲にまたフロアが揺れると、ROYまでが「わたしも歌っていいですか！」と、わざわざ参戦して得意のシャウトで盛り上げた。歌い終わって見せた笑顔が実に楽しそうだった。

「本当に『NEW』は皆さんに聴いてほしい、THE BAWDIESの魂を詰め込んだ一枚になっています。このアルバムは必ず皆さんの光になるんじゃないか、皆さんをもっと輝かせてくれるアルバムだと信じています。人生のサウンドトラックとして、聴き続けて、愛してほしいと思います。心を開いていただければ我々が光を差し込んでいきます。そんな曲を聴いてください！」 　

　ROYがこう言って始めたのは、新作の要のひとつと言える曲。スイートなコーラスのハーモニーが今までにない味わいを出し、新しいTHE BAWDIESを感じさせた。そして終盤はシンガロングで熱くなるお馴染の曲から新曲へ一気になだれ込み、アンコールでは5月21日のNHKホールには「全国の皆さんのソウルパワーをいただき、パワーアップした状態で帰ってきたい。そして特別なライブにしたい」と、その日だけの草野（翔吾）監督によるスペシャル映像ができるらしいと告知。そのやりとりの中でTAXMANがROYに「お前のことキライ」と言ってしまったのだがROYは「大丈夫、痛くもかゆくもない。そう言いながら20年以上一緒にいるんだから」と、またもや4人の絆を感じさせる一コマに。やっぱりいいなあこの4人……と皆思ったのではないだろうか。こういう人間味と友情があるからこそ、彼らの音楽はホットでスイートでストレートなのだろう。「ソウル汁生絞り、全部出し切って帰ってください！」と小気味よく3曲ほど演奏し、最後はお馴染の「わっしょい！」で締め。最前列のお客さんたちとタッチしながら名残惜しそうにステージを去った4人は、ツアーのスタートが無事に切れたことに安堵しながら、これからの長い旅に思いを馳せているようだった。
ここで言ったとおり、全国のオーディエンスからパワーをもらってさらに大きくなって再会できるに違いない。

【カメラマン：RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)】
【取材・文：今井智子】