カラスは真っ白、東京でのラストワンマン“2017年冬のワンマンツアー”を独占レポート!
カラスは真っ白 | 2017.03.06
“2017年冬のワンマンツアー”を以って解散することを発表したカラスは真っ白。ブラックミュージック的なフィーリングを絶妙に採り入れつつ、メロディアスでウイットに富んだ独自のJ-POPを提示し続けてきた彼らは、幅広い音楽ファンに愛されていた。2月24日に行われた渋谷WWW X公演の模様をレポートする。
ミラーボールが回転して、鳴り響いたジェームス・ブラウン「セックス・マシーン」のライブ音源。冒頭部分に入っていた煽りの声“Are you ready?”に応えて、渋谷WWW Xに集まった観客も一斉に“Yeah!”と歓声を上げる……という華やかな開演の合図を経て、まずステージに現れたのは、シミズコウヘイ(Guitar、MC)、オチ・ザ・ファンク(Bass)、タイヘイ(Drums)、サポートプレイヤーの工藤拓人(piano)、山田丈造(Trumpet)。彼らが演奏をスタートさせると、ヤギヌマカナ(Vocal、Guitar)がいつものようにパンダの人形を持って悠然と登場。「9番目の「?」」を歌い始めた。ビートに乗りながら激しく言葉を連射する様に早速ワクワク! オチのベースのスラッピングも炸裂するなど、スリリング極まりないオープニングとなった。
ヤギヌマがギターを手にして「メニー・メアリー」へ突入。軽快なビートに合わせて起こったクラップが激しい。続いて「アセトアルデッドヒート」と「正義とアクチュエータ」も披露され、すっかり興奮状態となっていた観客。メンバー全員で構築しているサウンドの熱量がものすごい。ブラックミュージックへの敬愛を核に据え、極上のグルーヴを醸し出すカラスは真っ白の魅力を、まざまざと感じることができた。そして、「みんな0.2歩ずつ前へ出ない?」と、フロア後方の混雑を少しでも緩和するためにシミズが呼びかけ、観客がちょっとステージの方へ踏み出した場面を経て、「魔法陣より愛を込めて」がスタート。ヤギヌマの歌と、シミズのラップのコンビネーションが心地よい。瑞々しいメロディに手拍子が加わり、温かな昂揚感が広がっていった。
「浮気DISCO」と「サヨナラ!フラッシュバック!」も届けられたあとに迎えたインターバル。
「イエーイ! MCゾーンで合ってるよね?」(シミズ)。
「俺ら、東京に住んでるのに“東京!”って言うの変じゃない? 札幌に住んでたときに“札幌!”って言ってなかったじゃん」(タイヘイ)。
「ヤギヌマのギターのパンダのストラップ、かわいいね」(オチ)。
「ずっとこのストラップだよ」(ヤギヌマ)
……4人それぞれが自由な発言を繰り広げるMCタイムを挟んで、さらに演奏は続いた。「最高のダンスチューンを作ってきました!」とシミズが呼びかけてスタートさせたのは、新曲「DAN DAN DANCE」(来場者全員に配られたメッセージカードに印刷されているフリーダウンロードコードで配信された曲)。そして、「ごめんね、マッカーサー」も披露。大喜びしながら盛り上がる観客を眺めながら、メンバーたちもうれしそうな表情を浮かべていた。
「シャイ・ルック・ホームズ」で、一気に妖艶なムードに包まれた会場内。「night museum」では、オチも美声を発揮。続いて、ピンスポットを浴びながらヤギヌマが華麗に歌い上げた「せいじゃくのこうしん」。この曲を歌い終えた彼女はステージから一旦姿を消し、インストゥルメンタルナンバー「fifth blues」の演奏が始まった。シミズによるトーキング・モジュレーターのミステリアスなボイスも飛び出し、いぶし銀のソウルフルなサウンドが広がっていく。楽器プレイヤー陣の高い表現力を感じたひと時だった。
「カーネーション」の演奏がスタートすると、ステージに戻ってきたヤギヌマ。先ほどまでは黒色の衣装だったが、真っ白のワンピースに着替えているのが目を引いた(彼女のTwitterからの情報によると……衣装だった3着のワンピースを組み合わせたリメイクの服)。そして、「トルコブルー」も披露され、オチが音頭を取ったコール&レスポンスを経て雪崩れ込んだのは、「スーパーウルトラミラクルファイヤーサンダーエキセントリック ダイナマイトスパークセンチメンタルハレーションミラーひみつきち」。シミズが好きな言葉なのだという“パーティータイム”と“ファンキーミュージック”という言葉を交わし合うコール&レスポンスが炸裂し、その熱気のまま突入した「HIMITSUスパーク」も圧倒的な盛り上がりを生んでいた。
ここまでは王道にかっこいいナンバーが続いたが……後半戦で独特のインパクトを放ったのは「YASAI FUNK」。ヤギヌマがハンドマイクでラップし、野菜に関する言葉遊びを連発する曲だが、♪とうもろこし♪がいつの間にか♪ともをころし♪という、穏やかではないフレーズへと変化してしまったりするこの曲は、ライブで聴いてもインパクトが半端ではなかった。そして、このようなアクの強いナンバーの直後に、正統派の名曲としての存在感を放っていたのが、モータウン的な演奏とノスタルジーを誘うメロディが融合した「Oh my sugar」。アイドルのように振り付けを踊りながら歌うヤギヌマが、とても活き活きと輝いていた。
ステージにお馴染みのマスコットキャラクター“からしくん”が登場。彼が真っ白な巨体をユラユラと揺らしながらダンスのお手本を示し、観客が夢中になって踊った「革命前夜」を皮切りに、「ヒズムリアリズム」「みずいろ」「fake!fake!」……強力なナンバーが連発され、ライブはいよいよ佳境へ。ヤギヌマのアカペラで幕開け、壮大に高鳴っていった「スカート・スカート・スリープ」が、とても気持ちよかった。そして、本編を締めくくったのは「ニュークリアライザー」。腕を振り上げて盛り上がる観客の一体感が圧倒的だった。
鳴り止まない手拍子と歓声に応えて行われたアンコール。最初にタイヘイが戻ってきてドラムを叩き始め、そのあとにオチも現れてベースをプレイ。続いて工藤のキーボード、山田のトランペット、シミズのギターも加わり、構築されたサンバ風味のサウンド。すると、ヤギヌマもからしくんの翼部分(手)を引きながら登場。「サニー・サイドアップ」が、観客を陽気なダンスへと巻き込んだ。そして、「じゃあ最後に、渋谷から最寄りの駅に着いてから聴くと良さげな曲。今日、雨降ってたら良かったのにね」とシミズが言い、「雨傘パレット」へ。透明感に満ちたメロディをじっくり届けたあと、メンバーたちは去って行った。しかし、名残を惜しむ拍手と歓声は、どんどん高まり、ダブルアンコールへ。「最後に1曲だけ」とヤギヌマが言い、ラストを飾ったのは「ハイスピード無鉄砲」だった。ヤギヌマ、シミズ、オチがタイヘイのドラムの前に集まり、互いに視線を交わし合ってから演奏がスタート。彼らの姿は完全燃焼を目指す気迫に満ちていたが、何よりも伝わってきたのは、共に音を奏でることに対する穏やかな喜び。苦楽を共にしてきたメンバー同士の信頼関係が自ずと伝わってくる場面であった。
「カラスは真っ白でした。バイバイ!」、メンバー4人とサポートプレイヤーの工藤、山田は、横一列でステージに並び、深々とお辞儀。ヤギヌマの右手に嵌められていたパンダのぬいぐるみが、なぜか切なそうな表情を浮かべているように感じられた。そして、メンバーたちは手を振りながらステージから去り、シミズがタオルをフロア目がけて投げ込んで迎えた終演……カラスは真っ白の東京でのライブはこれが最後であり、この時点で残されていたのは、3月2日の札幌Sound Lab mole公演のみ。解散してしまうことへの寂しさはどうしても募ったが、湿っぽいムードになることなく明るい姿を見せてくれたのが、とてもうれしかった。メンバーはそれぞれの道へと進むことになるわけだが、彼らが生み出した音楽は、これからもファンの胸の内でフレッシュに鳴り響き続けるだろう。
【カメラマン:ハヤシ サトル】
【取材・文:田中 大】
リリース情報
バックトゥザフューチャー
2016年09月21日
SPACE SHOWER MUSIC
02.浮気DISCO
03.Let it die~You shall die~ ※PS4『LET IT DIE』公式参加ソング
04.サヨナラ!フラッシュバック!~hard mode ver. ~※『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』EDテーマ
05.fifth blues
06.カーネーション
07.Oh my sugar
08.YASAI FUNK
09.みずいろ
セットリスト
2017年冬のワンマンツアー
2017.2.24@渋谷WWW X
- OP. 9番目の「?」
- 01.メニー・メアリー
- 02.アセトアルデッドヒート
- 03.正義とアクチュエータ
- 04.魔法陣より愛を込めて
- 05.浮気DISCO
- 06.サヨナラ!フラッシュバック!
- 07.DAN DAN DANCE
- 08.ごめんね、マッカーサー
- 09.シャイ・ルック・ホームズ
- 10.Night museum
- 11.せいじゃくのこうしん
- 12.fifth blues
- 13.カーネーション
- 14.トルコブルー
- 15.スーパーウルトラミラクルファイヤーサンダーエキセントリック ダイナマイトスパークセンチメンタルハレーションミラーひみつきち
- 16.HIMITSUスパーク
- 17.YASAI FUNK
- 18.Oh my sugar
- 19.革命前夜
- 20.ヒズムリアリズム
- 21.みずいろ
- 22.fake!fake!
- 23.スカート・スカート・スリープ
- 24.ニュークリアライザー
- EN1-1. サニー・サイドアップ
- EN1-2. 雨傘パレット
- EN2-1. ハイスピード無鉄砲