ハルカトミユキ、5年分の思いを込め歌った赤坂BLITZワンマン
ハルカトミユキ | 2017.03.13
“+5th ANNIVERSARY TOUR 2017”と銘打った東名阪ツアーを2月16日にスタートさせたハルカトミユキが、あっという間に迎えたツアーファイナル。満員のオーディエンスと共にハルカトミユキは赤坂BLITZで、デビューから5年の間にふたりが育んできたもの、そしてこのツアーで得たものを存分に見せ、さらにその先に輝くものも示してくれた。
SEが流れるなか、朱赤のノースリーブチュニックにタイトなレギンスを着たハルカはまっすぐマイクの前に立ち、黒の上下で揃えたミユキはキーボードに向かった。オープニングナンバーは最新作『LOVELESS/ARTLESS』の1曲目でもある「光れ」。広がりのあるサウンドがホールいっぱいに広がり、総立ちのオーディエンスからの手拍子とひとつになった。「OK、BLITZ!」とハルカが気合を入れミユキが腕を高く上げアピールした「DRAG & HUG」から、60年代ポップス風のベースラインに乗り「5年間のすべての思いを込めて歌います」とハルカが言った「Hate you」と、緊張感と高揚感がほどよく高まっていく。ツアー前から月に1、2度はステージに立ってきたこともあり、ステージがホームと言いたいような自然な空気もふたりは醸し出し、ライブを楽しんでいる様子。澄んだ声のふたりのコーラスがしっかりと届いたのは、そんな気持ちを如実に伝えているようだった。
デビューからの5年、ここまでこれたのは皆さんのおかげと謝辞を述べてミユキと共に頭を下げたあとでハルカは続けた。
「時間が経つといろんなことが変わってしまったり、見失ってしまったり。それは仕方のないこと。でも変わらないのは、私たちは希望の歌が歌いたいということ。歌が希望であってほしいということです。デビューからずっと歌っている希望の歌を歌います」。
絶望の中に見出すかすかな希望を歌う「その日がきたら」はふたりの原点と言えるかもしれない。このステージは最新作が中心ではあるけれど、そこに5年分の足取りもしっかりと折り込まれていた。この曲の前に歌った「ドライアイス」や、東日本大震災後に書いた曲と話してハルカとミユキだけで歌った「絶望ごっこ」も、ふたりの世界観を形作る核となる曲だ。目の前にあるものや起きていることの向こう側や自分の心の襞の奥、足元のさらに下に眠るものを探る歌。パンドラの箱の底に眠る希望を探してふたりは歌い続けている。
集中力のあるライブを見せるふたりだが、単に歌い演奏することだけでない表現力も身につけていることを、このステージでは示した。昨年ハルカが演劇にも挑戦したことを思い出させるように朗読から始まった「夜明けの月」は現在進行形のハルカトミユキの曲だったし、「奇跡を祈ることはもうしない」も、スケール感のある演奏とともに緊張感のあるドラマを描き出していた。この日は1階フロアも椅子席になっていたのだが、オーディエンスは総立ちでふたりを迎えてライブはスタート。中盤に「せっかく椅子があるからゆっくり座って聴いてください」とハルカが呼びかけて、「絶望ごっこ」からジックリ聴いてもらう時間帯となったのも新鮮だった。
落ち着いた空気をもう一度熱くさせたのは、ミユキが前作から掘り続けている80年代エレポップテイストたっぷりの曲だ。シンセで「Are you ready?」のイントロが流れた途端にオーディエンスは再び総立ちとなり、サイケデリックな照明とミラーボールの輝きの中でふたりのコーラスが響くと、続く「見る前に踊れ」に合わせて体を揺らし腕を上げてふたりに応えた。「トーキョー・ユートピア」ではショルキーを持ったミユキがクルクル回りながらステージを走り回り、前に出てオーディエンスに手を伸ばせば、ハルカもステップを踏みながら一段と声を張って歌う。「ツアーファイナルなんですよ、もっともっと声聞かせてもらえますか!」とミユキが呼びかけオーディエンスとともに歌った「伝言ゲーム」、バンドの力強い演奏で盛り上げた「バッドエンドの続きを」にフロアの熱気は更に高まった。ドラマチックなイントロになった「ニュートンの林檎」は、ヒリヒリするようなメロディに誰もが心を揺らし腕を上げた。この曲は、いつのまにかハルカトミユキのアンセムになっているようだ。それもこの5年という時間と、その間に積み重ねてきたライブでオーディエンスとともに育んできたものだ。ステージ前方に進み出てギターを弾いたハルカからは、そんな思いが伝わってきたような気がした。
「今日は来てくれてありがとうございます。デビューして5年、音楽を続けることができてとてもうれしいです。つねに戦う5年間、もがき苦しみながら過ごしてきたんですが、ライブをするときだけはいつも解放されて、皆さんがいるからいい曲作らなきゃとか、前を向かせてくれました。いつもありがとうって、言いたいんです。うまく言えなくてごめんね」
ミユキは笑顔で言った。そしてハルカは「決して順風満帆な5年間ではなかったと思います。過去を羨んだり、諦めそうになったときもありました。でもそんなとき、いつも私は歌に救われてきました。歌に苦しみながらも歌に救われてきました。だから、皆さんにもそんなときにこそ、歌があるように、歌が助けてくれるように5年目も頑張って歌っていこうと思います、どうぞよろしくお願いします」と続けてミユキとふたりで深く頭を下げた。本編最後は「歌に苦しみ歌に救われる」と言うハルカの心情を綴ったような「vanilla」。ハルカはひときわ伸びやかな声を響かせて歌った。
アンコール1曲目は、新曲の「嵐の舟」。ドラマチックな歌と演奏に引き込まれ張り詰めた空気の中、歌い終わったハルカが口を開いた。
「皆さんにご報告があります。私たちハルカトミユキは今年の9月2日、3度目の(日比谷)野音に立ちます!」
フロアから大きな歓声と拍手が送られ頭を下げたハルカとミユキ。ハルカは続けた。
「もうひとつ、野音やるからには6月にオリジナルアルバムを出します!」
昨年もたくさんの決意表明をして実行してきたふたりのあらたな宣言だ。そして最後に歌ったのは、“明日には光れ”と自分を鼓舞する「世界」。ステージを去り際にミユキが「かっこいいアルバム作るから!野音で待ってるね!」と手を振った。皆にこれを伝えるために今夜は歌った。そんな安堵と希望に輝くふたりを見られた素敵な夜だった。
【カメラマン:Aki Ishii】
【取材・文:今井智子】
リリース情報
LOVELESS/ARTLESS[初回限定盤]
2016年08月17日
SMAR
02. DRAG & HUG
03. 奇跡を祈ることはもうしない
04. Pain
05. Are you ready?
06. 見る前に踊れ
07. トーキョー・ユートピア
08. 永遠の手前
09. you
10. 夜明けの月
セットリスト
HARUKATOMIYUKI +5th ANNIVERSARY TOUR 2017
2017.2.25@赤坂BLITZ
- 1. 光れ
- 2. DRAG & HUG
- 3. Hate you
- 4. ドライアイス
- 5. その日がきたら
- 6. Pain
- 7. 終わりの始まり(新曲)
- 8. 絶望ごっこ
- 9. 春の雨
- 10. 夜明けの月
- 11. 奇跡を祈ることはもうしないv
- 12. Are you ready?
- 13. 見る前に踊れ
- 14. トーキョー・ユートピア
- 15. 伝言ゲーム
- 16. ニュートンの林檎
- 17. バッドエンドの続きを
- 18. Vanilla
- en1. 嵐の舟(新曲)
- en2. 世界
お知らせ
HARUKATOMIYUKI
+5th ANNIVERSARY ACOUSTIC SERIES
03/16(木) 横浜LOOP
+5th Anniversary SPECIAL【東京・日比谷野外大音楽堂】
09/02(土) 日比谷野外大音楽堂
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。