Dragon Ash、結成20周年記念ワンマンライブ“MIX IT UP”をレポート!
Dragon Ash | 2017.03.15
ミクスチャーロック――今やこのジャンルを声高に叫ぶバンドは日本にはDragon Ashしかいないんじゃないだろうか。元々はロックとヒップホップを融合した音楽だったが、世界的にはすっかり廃れたジャンルになってしまった。だからと言って、彼らはそこから離れなかった。ヒップホップだけでなく、ドラムンベースやテクノ、ラテンミュージックをも吸収し、ミクスチャーの可能性を貪欲に広げていったのである。
そもそも海外ではラップロックなどと呼ばれているジャンルで、ミクスチャーなんていうのは日本だけで使われる呼称なのだけど、彼らは文字どおり様々なジャンルをミックスし、名実共に日本を代表する、いや、世界唯一のミクスチャーロックバンドになったのである。これは彼らの発明品と言ってもいい。こうやって結成20周年ライブを迎えることができたのも、他の追随を許さない独創性やステージに対する熱意があってこそだろう。
この日の会場であるEX THEATER ROPPONGIの扉を開けた途端、ムワッとした熱気が体にまとわりついた。そして、次の瞬間に耳に飛び込んできたのは客入れBGMのグリーン・デイ「Nice Guys Finish Last」。このパンククラシックのあとも、プロディジー「Breathe」、メタリカ「Fuel」、インキュバス「Redefine」と懐かしい曲が続く。そして、開演直前に流れたのはケミカル・ブラザーズ「Setting Sun」……ん? ここで気付いた。これらの曲はすべて1997年、つまりDragon Ashが結成された20年前に発表されたものではないか。こんなのメンバーと同世代かそれ以上の音楽好き以外気付かねぇぞ……と思いながらも、遊び心のある演出に心が躍る。彼らはこんな音楽に興奮を掻き立てられながら、“俺たちだって!”とDragon Ashを結成したのだろう。
「Setting Sun」の音量がグッと高まると、それに呼応してフロアをびっしりと埋め尽くした観客から歓声が上がり、暗転したままのステージにメンバーが次々と姿を現した。そして、ステージ背面に設置された巨大スクリーンから真っ白な光を放ち始めるなかで鳴らされたオープニングナンバーは「天使ノロック」。いきなりのハードチューンの投入にクラウドサーファーが続出。続いて披露されたのは20周年記念日にリリースされた新曲「Mix It Up」。Dragon Ashのあらたなミクスチャーロック宣言とも受け取れるハードチューンがさらにフロアの熱を高め、このあとも「Headbang」「For divers area」というアグレッシブな選曲で攻め立てる。続くブロックは「Walk with Dreams」からスタート。1コーラス目が終わったところで、Kjが口を開いた。
「Dragon Ashです。よろしくお願いします」
7人は思っていたよりもクールなステージングを展開。全員が演奏にグッと入り込んでいる様子が伝わってくる。だからというわけではないが、音の密度が異常に高い。軽快なミディアムナンバーであるはずの「TIME OF YOUR LIFE」も、サウンドがとにかくヘビーだ。途方もなくデカい音塊に包み込まれるような感覚。それは単なる優しさではなく、非常に男性的な包容力と表現したほうがいいかもしれない。
比較的落ち着いた楽曲で構成されたセカンドブロックを終えた中盤からは、再び場内のテンションが高まっていく。アッパーな祝祭ムード溢れる「Freedom」、そして強烈なラテンナンバー「Ivory」では観客の縦ノリで、ビビるぐらい2階席が揺れた。ひときわ大きな歓声が上がったのは「Let yourself go, Let myself go」だ。この日演奏された楽曲のなかでは最も古い楽曲の一つ(天使ノロックはデビュー時の楽曲です)だが、20周年記念ライブとは言え、懐かしい感覚なんて沸いたりはしない。なぜなら、リリースこそ90年代だとしても、“今”の楽曲として生き続けているからである。今回のセットリストは桜井誠(dr)とATSUSI(Dance)を中心に“どうやったらみんなが喜んでくれるのか”というテーマの元に選曲したそうだが、20年間のオールヒッツというよりは、いつもと変わらぬ1本のライブということを念頭に置いたセレクトに思えた。「Life goes on」や「陽はまたのぼりくりかえす」といったヒット曲を中心に組まなかったことは、彼らのライブバンドとしてのプライドなのかもしれない。
ライブはエンディングへ向けて加速度を増していく。「メンバーとスタッフとコイツのおかげで20年やってこれました」というKjのMCを受けて、KenKenの強烈なスラップベースが鳴り響き、「The Live」へ。観客も大合唱で7人の熱演に応える。「Amploud」ではギターを置いたKjがハンドマイクでフロアを煽った。へビーグルーブの上を駆け巡るオールドスクールなサンプリングとラップがとにかく格好良い。Kjが、ステージに向かってサーフしてくる観客と次々に拳を合わせていく様子が美しかった「百合の咲く場所で」では、「聞こえねーよ!」と大合唱を煽る場面も。
ここまで多くを語らなかったKjはこう挨拶した。
「俺たちはロックバンドが世界でいちばん大好きです。Dragon Ashが好きだということに誇りを持ってもらえるように、これからも頑張ります」
そして鳴らされたのは「Fantasista」。この日いちばんの大合唱で場内は大揺れ。そして、曲前の自身の言葉を引き継ぐようにKjは叫んだ。
「俺たちはおまえたちが大好きだ!」
この日初披露となったのは3月29日にリリースされるアニバーサリーソング「Beside You」は、バグパイプやマーチングサウンドが印象的で、明日への希望を与える力強さと皆を包み込むような包容力をもつ曲。Kj曰く、“願わくば、俺達の音楽がみんなの支えになればいい”という気持ちで作ったという今作は、序盤に披露された「Mix It Up」と共に、あらたなDragon Ashを示唆していた。
アンコールでは20周年を祝うケーキがファンによってステージに運ばれるひと幕も。ハタチとなったDragon Ashをハッピーバースデーの歌と共に改めて祝福した。その後も記念撮影をしたり、メンバーとスタッフがハグや握手を交わしたり、ストイックな本編とは打って変わって場内はお祝いムードに包まれた。「一回のロックバンド人生では体験できないようなこと、抱えきれないようなことをたくさん経験したバンドだけど、いろんなときに辞めないでよかったなと思います。これからもよろしくお願いします」というKjの言葉はとても力強かった。
最後は「運命共同体」と「Curtain Call」でフィニッシュ。最後の最後に桜井が「まだ今日が始まりなんで、今年はガンガンいきますんでよろしくお願いします」とあいさつ。この夜をもって、Dragon Ashは次の10年、20年へ向けてのスタートを切ったのである。
【カメラマン:橋本塁(SOUND SHOOTER)】
【取材・文:阿刀“DA”大志】
リリース情報
Beside You
2017年03月29日
ビクターエンタテインメント
2.Circle
セットリスト
Dragon Ash 20th Anniversary Live Show「MIX IT UP」
2017.2.21@ EX THEATER ROPPONGI
- 01. 天使ノロック
- 02. Mix It Up
- 03. Head bang
- 04. For divers area
- 05. Walk with Dreams
- 06. 繋がりSUNSET
- 07. Velvet Touch
- 08. TIME OF YOUR LIFE
- 09. Freedom
- 10. Ivoly
- 11. few lights till night
- 12. Let yourself go, Let myself go
- 13. The Live
- 14. Amploud
- 15. 百合の咲く場所で
- 16. Fantasista
- 17. Beside you
- 18. 光りの街
- 19. 運命共同体
- 20. Curtain Call
お知らせ
Dragon Ash Tour 2017
06/08(木) Zepp DiverCity
06/16(金) Zepp Nagoya
06/17(土) なんばHatch
06/22(木) いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場
06/30(金) 仙台 PIT
07/02(日) 高松festhalle
07/03(月) 松山WstudioRED
07/05(水) 米子laughs
07/07(金) BLUE LIVE 広島
07/15(土) キッセイ文化ホール 中ホール
07/16(日) クロスランドおやべ
07/20(木) KBSホール
07/21(金) 福井県県民ホール
07/25(火) CLUB CITTA’
08/16(水) チキンジョージ
08/17(木) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
08/23(水) 岐阜club-G
08/24(木) Live House 浜松 窓枠
08/30(水) 周南 RISING HALL
08/31(木) DRUM LOGOS
09/02(土) KUMAMoTo B.9 V1
09/03(日) CAPARVO HALL
09/07(木) PENNY LANE24
09/08(金) PENNY LANE24
09/10(日) 帯広MEGA STONE
09/12(火) 石巻BLUE RESISTANCE
09/13(水) 山形ミュージック昭和セッション
09/15(金) 青森Quarter
09/18(月・祝) 新潟LOTS
10/01(日) 桐生市市民文化会館 小ホール
10/03(火) Zepp Tokyo
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。