水曜日のカンパネラ、全身全霊で見せた初の日本武道館公演
水曜日のカンパネラ | 2017.03.16
アリーナ席の表示が“東エリア=青龍神・西エリア=白虎神・南エリア=朱雀神・北エリア=玄武神”、ステージは360°を客席で囲まれた真っ白な八角形……ライブが始まる前から何か特別なことが起こりそうな予感でいっぱいだった日本武道館。やがて開演時間となり、「猪八戒」のイントロが流れたのだが、コムアイ(主演、歌唱)は、孫悟空のきんとん雲風の白いフワフワした神輿に乗って登場。アリーナ席の通路を賑やかにパレードして、早速観客を大喜びさせていた。そして、ステージに到着して歌い始めた2曲目は「シャクシャイン」。頭上からステージに向かって投影されたグラフィックが次々変化するのが美しい。異次元に迷い込んだような気分になる不思議な空間が作り上げられていた。
最初のインターバルで「日本武道館へ、ようこそ!」と挨拶をしたコムアイは、今日のライブのためにたくさんの準備を重ねてきた旨を語り、我々の期待をますます煽った。そして、「ディアブロ」がスタート。♪いい湯だね♪と歌い始めると、すかさず返ってきた♪いい湯だね♪という陽気な観客の声。♪手の指の皮が♪に対して返ってきたのは♪ふやけるね♪……お馴染みの掛け合いを経て本編へ入ると、観客が掲げた腕が温泉の湯気のようにユラユラと揺らめく平和な風景が広がった。続いて、スモークが雲海のように漂う中で届けられた「雪男イエティ」。全身が真っ黒の衣装に身を包んだダンサーチームとダイナミックなパフォーマンスを繰り広げた「アラジン」。大喜びしながら盛り上がる観客の一体感が、とにかくものすごかった「桃太郎」……水曜日のカンパネラのライブの定番曲たちが次々と武道館に響き渡るのが痛快だった。
床に貼られていたシートが数人のスタッフによって手早く剥がされ、白色から黒色になった八角形のステージ。スタッフの転換作業を眺めながら「今日、いちばん地味なシーン」と言って観客を爆笑させたコムアイは、ライブ中の携帯電話による撮影がOK(フラッシュはNG)であることを告げた。「携帯出したついでに次の曲手伝ってほしい。ライトを点けて」と彼女が言うと、客席全体で真っ白な光が輝き、まるで銀河のような風景が作り上げられた。この素晴らしい空間の中で披露された「アマノウズメ」を皮切りに、「ライト兄弟」「ツイッギー」「ウランちゃん」が連発された中盤は、片時も目を離せない幻想的な場面の連続であった。
ステージの全方位を覆った紗幕の表面にサイケデリックな映像が投影され、踊るコムアイのシルエットが揺らめいた「バク」は、視覚効果とサウンドの融合の仕方が素晴らしかった。そして、幕が切って落とされ、大人数のダンサーと共に神々しい儀式のようなパフォーマンスを展開した「ユタ」。アカペラによる歌声がとても心地よかった「ネロ」。ダンサーたちが脱いだ衣服の山が、すがりつくかのようにコムアイを取り囲んだ「ユニコ」……インターバルを挟むことなく披露された曲たちは、シアトリカルなドラマチックさを漂わせていた。そして、「カメハメハ大王」と「ツチノコ」を経て突入した「マッチ売りの少女」は、あの場にいたすべての人にとって忘れられないものになったのではないだろうか。松明のようなオレンジ色のLEDライトを掲げたダンサーたちが舞い踊った空間は、まるで美しい絵本の挿絵。呼吸をするのも忘れそうなくらいのワクワクを噛み締めることができた。
「ナポレオン」「ミツコ」「坂本龍馬」も披露したあと、一旦姿を消したコムアイ。「世阿弥」がスタートすると彼女はショートヘア、ドレス風の衣装に着替えて戻ってきた。スタッフによってワイヤーを装着された彼女が、いきなり空中遊泳を始めてびっくり! 天女のように舞いながら歌う彼女は、実に気持ち良さそうであった。そして、久しぶりのMCタイムとなったのだが……イヤーで吊られて宙に浮いたまま話をしたりお辞儀をするコムアイの姿がシュールだった。「全員見える。やっほー!」と無邪気にはしゃいだ彼女は、2階席に座っていたカレーメシくん(日清カレーメシの公式キャラクター)を発見し、「いた!」と声を上げた。2階席から降りてきたカレーメシくんも加わって披露されたのは「ラー」。回転をしたり、空中を上下しながら歌っていたコムアイを捕まえようとして何度もジャンプしていたカレーメシくんの姿が、とてもかわいらしかった。
ものすごい数のダンサーが会場の全方位から登場、お祭りのようなにぎやかな盛り上がりとなった「一休さん」によって締め括られた本編。「初めての武道館公演。本当にありがとうございました!」、彼女は挨拶をしてステージをあとにしたが、観客の興奮はまったく止まる気配がない。鳴り響いた拍手は、そのままアンコールを求める熱い手拍子となった。すると、彼女は小走りで再登場。「1曲だけ、セットリストにうまく入らなかった曲を一緒にやってもらっていいですか?」と呼びかけると、「ドラキュラ」の歌詞の一節を歌い始めた。♪ちーすうたろか♪という観客の歌声が360°から聴こえてくることに大喜びしつつ、「ほんとはこの曲を最後にして、献血車を外に用意して“献血して帰ってね”ってやりたかったの」と、諸事情によって実現しなかったアイデアを明かして観客を沸かせていた。そして、「言ってなかったけど、ステージに上がってもらおうかと」と言い、水曜日のカンパネラのメンバーであるケンモチヒデフミ(サウンドプロデュース)、Dir.F(何でも屋)をステージに招いた。普段は表舞台に出ることがないメンバーたちと並んで立ち、「この3人で水曜日のカンパネラです!」と力強く宣言したコムアイは、とてもうれしそうであった。
このような感動的な場面と共にライブは終了したのだが……その直後がびっくりするくらい緩いムードであったのも実に水曜日のカンパネラらしかったので触れておこう。本来はコムアイが乗り込んで退場するために用意されたきんとん雲の神輿にケンモチヒデフミが乗り、コムアイは最後尾の白いヒラヒラした物体を動かす役を務めたが、「忘れてた! 6月にツアーをやります。遊びに来てね。バイバーイ!」という言葉を残して去って行った。こうして幕を閉じた初の日本武道館公演。“この空間だからこそできる表現を全力で追求する”という姿勢で貫かれていたのが、とても印象的だった。今後の水曜日のカンパネラも、柔軟な発想で我々を楽しませてくれるに違いない。
【カメラマン:横山マサト】
【取材・文:田中 大】
リリース情報
SUPERMAN
2017年02月08日
WARNER MUSIC JAPAN
2.坂本龍馬
3.一休さん
4.オニャンコポン
5.チンギス・ハン
6.チャップリン
7.オードリー
8.カメハメハ大王
9.世阿弥
10.アマノウズメ
セットリスト
水曜日のカンパネラ
日本武道館公演~八角宇宙~
2017.3.8@日本武道館
- 01.猪八戒
- 02.シャクシャイン
- 03.ディアブロ
- 04.雪男イエティ
- 05.アラジン
- 06.桃太郎
- 07.アマノウズメ
- 08.ライト兄弟
- 09.ツイッギー
- 10.ウランちゃん
- 11.バク
- 12.ユタ
- 13.ネロ
- 14.ユニコ
- 15.カメハメハ大王
- 16.ツチノコ
- 17.マッチ売りの少女
- 18.ナポレオン
- 19.ミツコ
- 20.坂本龍馬
- 21.世阿弥
- 22.ラー
- 23.一休さん
- 24.ドラキュラ
お知らせ
NO NUKES 2017
03/18(土) 豊洲PIT
Output 5th ANNIVERSARY SPECIA(沖縄)
03/25(土) Live House Output・ナムラホール
ARABAKI ROCK FEST.17
04/29(土・祝)〜30(日)みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
2017年全国ツアー「IN THE BOX TOUR」
06/07(水) 札幌 PENNY LANE24
06/09(金) 函館 金森ホール
06/10(土) 青森 Quarter
06/14(水) 仙台 Rensa
06/16(金) 静岡 SOUND SHOWER ark
06/24(土) 福井 響のホール
06/25(日) 新潟 studio NEXS
07/07(金) 愛知 DIAMOND HALL
07/09(日) 高松 festhalle
07/11(火) 福岡 DRUM LOGOS
07/13(木) 鹿児島 CAPARVO HALL
07/16(日) 岡山 YEBISU YA PRO
07/17(月祝) 広島 CLUB QUATTRO
07/19(水) 大阪 Zepp Osaka Bayside
07/26(水) 東京 新木場STUDIO COAST
08/18(金) 沖縄 ミュージックタウン音市場
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。