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全国ツアーファイナル中野サンプラザ公演は、これからの井上苑子にとっての新たな出発点に。

井上苑子 | 2017.05.08

 新たな出発点を見た思いがした。

 4月26日(水)に東京・中野サンプラザで開催された全国ツアー「井上苑子 春ツアー2017 いぬうえ幼稚園入園式~ともだち100人できるかな~」のファイナル公演。このツアータイトルに関して、彼女はMCで「タイトルを先に決めて、中身はあとから考えた。なんで幼稚園なのか? ってみんな思ったと思う。私もなんでやろ?と思ったけど(笑)、初めての人とも和気あいあいになるライブになったと思います」と語っていた通り、彼女のライブに足を運ぶ人がどう楽しんだらいいのかを丁寧に教える構成となっていた。彼女のファンは中高生も多い。井上苑子のライブだけではなく、ライブそのものが初めてという人にとって、実に身を任せて安心できる優しい内容となっていたと同時に、これからの井上苑子のライブのあり方や、オリジナルの楽しみ方の基礎を作り上げる、貴重な第一歩にもなっていた。
 
 オープニング映像に保母さんのようなエプロンをつけて登場した彼女は、観客に対して、「園児のみんな」と呼びかけ、苑子先生と園児たちという関係性を示し、まず、ライブにおける基本的な注意事項(と、歌詞を忘れた時はみんなが歌って助けてくださいというお願い)を伝えた。そして、アコギを抱えて全速力でステージ中央に現れた彼女がオープニングナンバーに選んだのは、インディーズ時代のミニアルバムに収録されていたポップナンバー「線香花火」。メジャー1stアルバムにも収録されていたが、小6からライブハウスで歌い始めている彼女にとっては、よりポップでカラフルな音楽性を獲得し、等身大の自分を表現する、現在の彼女に繋がる分岐点となった1曲である。続く、「ふたり」は「線香花火」を手がけたSUPER BEAVERの柳沢亮太による楽曲で、クラップしながらみんなで一緒に歌えるポップソング。そして、3曲目はドラマ「こえ恋」のエンディングテーマにも起用された「ナツコイ」。恋が始まる瞬間を切り取ったラブソングで、会場はChu,Chu,Chuというフレーズに合わせ、おなじみの振り付けで一体感が生まれていた。自然とクラップが巻き起こった弾むポップチューン「おはよう」は最新シングル「メッセージ」の収録曲。彼女が歩んできたこれまでを振り返りながら、現在進行形の“今”までを一気に見せる4曲となっていた。

 ここで彼女が一旦ステージを降り、スクリーンに映し出されたのは、幼稚園の新米先生に扮した井上苑子と、同じく幼稚園の先輩先生役の女性芸人たんぽぽの2人。“みんなで盛り上がれる掛け声”を考えたいとたんぽぽの2人に相談すると、「今日みんなが見にきたのはどの子~」「苑子~」「今日みんなをハッピーにさせてくれるのはどの子~」「苑子~!」「この前、家に財布を忘れて改札で乗り越し清算できなかったのはどの子~」「苑子~!」「みんなのことが大好きなのはどの子~」「苑子~!」という、井上苑子オリジナルのコール&レスポンスが誕生。この日、初披露となった新曲「スタート!」の間奏で早速実践。観客との息もぴったりと合い、見事に大成功となった。このコール&レスポンスがこれからのライブの定番となっていくだろう。

 デビュー当時、ツイキャスの女王と称された彼女は、高校生時代、ツイキャスの視聴者からのリクエストに応える形で様々なカバー曲をアコギの弾き語りで歌ってきた。その延長上として過去のライブでは<リクエストコーナー>が設けられていたのだが、この日、演奏したカバー曲は、椅子に座り、ピアノの演奏のみで歌った槇原敬之「どんなときも。」の1曲のみ。この曲は、GALAXY S7 edgeのCMソングで、最新シングルにも収録されている。メジャーデビュー以降のリリース曲が増えたこともあるが、カバーに頼らず、オリジナルソングだけで十分に観客を楽しませられるという、デビュー2年目に突入するプロのシンガーソングライターとしての新たな一歩でもあるように感じた。

 さらに、「だいすき。」を歌う前には、スクリーンにピン芸人の永野が登場。苑子先生が考えた振り付けを、永野に教えるという内容の映像が流れ、会場のお客さんも一緒に練習し、みんなで踊る「だいすき。」も大成功。「ファーストデート」でも、観客の体は自然に動き、途中、歌詞が飛んでしまったヒット曲「大切な君へ」では、オープニングの注意事項どおり、そのアクシデントをきっかけに会場には大合唱が巻き起こった。昨年リリースした卒業ソング「君に出会えてよかった」では、ライブを楽しみ、笑みを浮かべながら大きな声で歌っていたのが印象的だった。ラストは映画「ReLIFE リライフ」の主題歌で最新シングルの表題曲である「メッセージ」。伝えたい想いがなかなか伝わらないもどかしさを表すように足踏みしながらパフォーマンスし、<君が好き>というメッセージをシンプルに届け、フィナーレを迎えた。

 ライブが終わってもまだ苑子先生と遊び足りない観客達のアンコールの声が鳴り止まない中でスクリーンに現れたのは、人気お笑いコンビの三四郎。苑子先生が、アンコールの掛け声がバラバラという悩みを相談。「新しいアンコールを考えよう」と話し合った三四郎の2人が、「井上/(手拍子)/そんちゃん/(手拍子)」というアンコールを始めると、次第に会場のオーディエンスも加わり、文字通り、新しく統一されたアンコールが完成。そのアンコールに応え、映像と同じ保母さんルックで再登壇した彼女は飴を投げながら「エール」を熱唱。「みんな、ありがとう、ほんまに。心の底から」と感謝の気持ちを伝えた。「君がいればOK! ~サマサマキュンキュン大作戦~」では、みんなで歌い、踊り、クラップし、タオルを回し、オリジナルキャラクターの“いぬうえくん”も登場し、お祭り騒ぎのような賑やかな雰囲気の中でライブは締め括られた。

 この日、オリジナルのコール&レスポンスとアンコールが生まれ、井上苑子のライブのベーシックなスタイルは完成した。ここからどう発展し、進化していくのか。8月6日(金)には、東京・新木場Studio Coastでの「井上苑子 夏祭り(仮)」の開催が決定している。

【取材・文:永堀 アツオ】
【撮影:上飯坂 一】

tag一覧 井上苑子 女性ボーカル ライブ

リリース情報

メッセージ

メッセージ

2017年04月12日

ユニバーサル ミュージック

1.メッセージ
2.どんなときも。
3.おはよう
4.さくら

セットリスト

井上苑子 春ツアー2017 いぬうえ幼稚園入園式〜ともだち100人できるかな〜
2017.4.26@中野サンプラザ

  1. 1.線香花火
  2. 2.ふたり
  3. 3.ナツコイ
  4. 4.おはよう
  5. 5.スタート!
  6. 6.君との距離
  7. 7.おんなのこ
  8. 8.どんなときも。
  9. 9.だいすき。
  10. 10.ファーストデート
  11. 11.大切な君へ
  12. 12.「君に出会えてよかった」
  13. 13.メッセージ
 ~アンコール~
  1. 1.エール
  2. 2.君がいればOK!
    ~サマサマキュンキュン大作戦~

お知らせ

■ライブ情報

えがおステーションプロジェクトwithアカリトライブ スペシャルライブ
05/27(土) 仙台 GIGS

井上苑子夏祭り2017(仮)
08/06(日) 新木場COAST

YAMAHAイベント@赤坂ブリッツ
09/18(月) 赤坂BLITZ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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