Shout it Out 初の全国ツアー東京公演で魅せた、全力の“今”。
Shout it Out | 2017.05.17
何が子供で大人かなんてきっと誰にもわからない。子供と大人の境界線がどこにあるかは人によって異なるのだろうし、おそらくどの世代の人間も大人と子供の両岸を行ったり来たりしながら自分というものを作ったり、保ったり、探したりしているのだろう。
メンバー揃って20代に突入したばかりのShout it Outにとってそのグラデーションに揺れる心情はひときわのっぴきならないものであるに違いなく、この3月に彼らがリリースした1stフルアルバム『青年の主張』はタイトルそのままに、まだ大人にはなり切れず、子供のままでいられないことも知った“青年”が等身大で発した朗々と鮮やかな叫びだった。
そんな本作を携え、リリースと相前後してスタートしたのがワンマン6本、対バン7本の全13公演、全国をライブして回る“『青年の主張』リリースツアー”だ。約2ヵ月に及んだ旅もこの5月7日、東京・TSUTAYA O-WESTワンマン公演でファイナルを迎える。集大成のステージに立った彼らははっきりと逞しさを増していた。
宮城県出身の後輩バンド、SILVERTREEの血気盛んなオープニングアクトによって早くも熱気にたぎるフロア。ステージ転換ではスタッフと一緒になってメンバー手ずから楽器のセッティングを行う姿も見られ、ソールドアウトの場内がじりじりと期待感で満たされていく。ちなみにこのあとの細川千弘(Dr)のMCによれば、SILVERTREEとは昨年3月に仙台で対バンをして以来親交を深め、同じく昨年の9月にShout it Outの元メンバー2人が脱退した際には、駆けつけたRICKY(Vo& Gt)と一緒にスタジオに入って、制作途中だった1st EP『これからと夢』のアレンジを考えてもらったりもしたほどの仲らしい。
そうして、まだ客電が灯った状態のステージにサポートメンバーとともに山内彰馬(Vo&Gt)、細川が現れ、それぞれの持ち場についた。グータッチを交わし、「っしゃ!」と同時に声を上げる4人。「よろしく!」、マイクを通さぬ肉声でオーディエンスに呼びかけた山内のそのひと言が始まりの合図だ。かき鳴らすギターに乗せて山内の歌声が力強く響き渡る。一斉に合流するバンドサウンドが想像していたより遥かに太く、がっちりと噛み合ったアンサンブルにも目をみはらずにいられない。思えば山内と細川の新生Shout it Outになってから単発でのライブはあったものの、ツアーを回るのは今回が初となる。サポートメンバーとがっぷり四つに組んで旅を共にした道のりがバンドとしての一体感を格段に高めたことは間違いない。旅は人を育てるとよく言うが、1本のツアーでここまで成長しようとは。
のっけから激しく髪を振り乱しては四肢を自在に操って全身でダイナミックにビートを刻む細川。Shout it Out仕様にシェルをスカイブルーで統一したドラムセットはついに手に入れた念願の彼専用だ。細川がキックペダルを踏むたびに振動する、バスドラのヘッドに描かれたバンドロゴがなんとも誇らしげで、今まさにここからリズムが放たれているのだと実感させられる。盤石なバンドの演奏に安心して身を委ねてられているからだろう、山内のパフォーマンスもいつに増して堂々と伸びやかで、ギターを弾く手を止めてはスタンドを自身に引き寄せて想いのすべてをマイクに注ぎ込んでみせる瞬間や、まるで自分で自分の胸ぐらを掴むように着ているTシャツの胸元を握りしめ、歌に込めたメッセージをエモーショナルに訴えかける場面など、時折覗かせる熱っぽい表情がオーディエンスを釘付けにして離さない。 「僕はバンドを始める前からずっとバンドをやりたくて、高校生でShout it Outというバンドを組んだ時点でもう、ひとつ夢は叶ってるというか、僕の夢はバンドをやることなので、それ以上に大きい夢もなくここまでやってきました。でもこうしてこういう日を迎えると、堺の高校で始まったバンドがやっとTSUTAYA O-WESTを埋められるようになったんだなと、今とても幸せな気持ちです」
中盤戦、すでに額も首筋も汗で濡らしながら、率直な心情を口にする山内の真摯な言葉に胸がギュッと締めつけられる。バンドをやること、やり続けること以上に大きな夢など本当はないとわかっている彼だからこそ、メジャーデビューして間もない時期にその難しさを身を以て知った彼らだからこそ、“幸せ”のひと言が何より大きい。『青年の主張』リリース時、当サイトで行なったインタビューで山内は今作について〈自分のいちばん奥の深い部分に踏み込んで書けた曲たち〉と言い、彼にとっては実にパーソナルなものゆえ〈たぶん僕の中では完結させられないんですよ。このアルバムを携えて全国を回ってライブをして、ライブを通じてリスナーの方と共有することで生まれた反応によって完成する作品なんじゃないかな〉と語った。結果、たどり着いたファイナルのステージで出てきた言葉が“幸せ”なのだとしたら、それは最高のゴールじゃないか。
ツアータイトルが表している通り、『青年の主張』を主軸に今のShout it Outが届けたい大切な楽曲たちを交えたベストセレクションともいうべきセットリスト。表題曲「青年の主張」にシングル曲「DAYS」、この街の歌です、と後悔まみれの失恋を訥々と歌った「エンドロール」、パンキッシュに本音をさらしつつギターを抱えたまま山内がステージの床にゴロンと転がる一幕もあった「大人になれない」など、どれをとっても存在感のある強い演奏尽くしだったが、この日の圧巻はやはり「青春のすべて」だったと思う。 「俺たちに過去にしがみついてる時間なんてないし、未来のことを考えてる余裕なんてない。そんな先のことを考える時間があるなら今! 今日! ここで! 全部燃やし尽くして、まっさらな明日を迎えようぜ!」
そう叫んで再び肉声でタイトルコール、歌と同時に起こった満場のクラップを浴びながら、声の限りを尽くして歌い上げる山内。細川もスティックが折れんばかりの勢いで打面を叩き、いっそうアグレッシブに上体を揺らす。デビューシングルでもあったこの曲の青い疾走感は今も褪せることなく、むしろ、その青はより色濃く鋭くなって前のめりに彼らを、そして我々をも走らせるのだろう。これからもずっと。
なお、この日のアンコールではなんとオーディエンスも巻き込んで「道を行け」のミュージックビデオ用にとライブシーンの撮影も行なわれた。本日2度目の演奏後、「たぶん、とってもいい画が撮れてうれしいんですけど、本番より盛り上がってちょっと悲しいです…」と細川がこぼしてしまったほどの熱狂ぶりをぜひチェックしてみてほしい。
さて、ツアーはファイナルを迎えたが、5月19日からは5都市で追加公演が開催される。最終公演は山内の誕生日当日、しかも彼らの地元・大阪は梅田クラブクアトロでのワンマンライブだ。このチャンス、逃すわけにはいかないだろう。
【取材・文:本間 夕子】
リリース情報
青年の主張
2017年03月08日
ポニーキャニオン
02. 17歳
03. 雨哀
04. 道を行け
05. DAYS
06. 夜間飛行
07. トワイライト
08. 青春のすべて
09. 影と光
10. 青年の主張
11. エンドロール
12. 灯火
お知らせ
1stフルアルバム『青年の主張』リリースツアー
05/19(金) 大分clubSPOT
05/26(金) 岡山CRAZYMAMA 2nd Room
06/09(金) 静岡UMBER
06/23(金) HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
07/10(月) 梅田クラブクアトロ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。