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ハナレグミ初となるライブハウス・ツアーを経て成熟したファイナル公演

ハナレグミ | 2017.05.23

 今年3月よりスタートした、ハナレグミにとって初となるライブハウス・ツアー『名前のないツアー』。全国17箇所18公演を回る旅の千秋楽となる横浜公演が、Yokohama Bay Hallにて開催された。

 赤いハットと白いシャツでステージに登場した永積は、「2時間ぐらいのライブになるけど、飽きのこないセットを用意してるんで、ゆっくり楽しんでいってください!」と観客に語りかけると、まずはブルース・セッションのようなイントロから「大安」を披露。今回のツアーはボーカルとギターの永積に加えて、YOSSY(キーボード、コーラス)、伊賀航(ベース)、菅沼雄太(ドラム、コーラス)の4人による小編成で回ってきたのだが、各地でライブを重ねてきたバンドが今まさに熟成の日を迎えていることが、1曲目から手に取るようにわかる充実のプレイの応酬が展開。まるで上原ひろみを彷彿させるようなYOSSYのフリーなピアノソロに引っ張られるように、バンドのボルテージもグイグイと上がっていく。早くも終盤のような盛り上がりをみせる中、「横浜にはレゲエビートが似合うっていうじゃん」と呟いて演奏されたのはロックステディ・チューン「旅に出ると」。原曲よりも少しテンポを落とし、さらにレイドバックした心地良い波を、港町・横浜に届ける。

 最初のクライマックスは5曲目「あいまいにあまい愛のまにまに」で訪れた。オルガンの音色に導かれ、まるでゴスペルのような重厚さを感じさせるグルーヴを聞かせると、後半に永積のシャウト一発、心躍るアップテンポへと展開しオーディエンスを沸かせていく。「普段は6人ぐらいで回ってるけど、今回のツアーは省エネスタイル。だからコーラスはお前たちに頼むぜ!」と叫ぶと、コール&レスポンスのやりとりで会場中が一体となり、最大級の声の大きさでシンガロングが響き渡った。フロアが熱気に包まれる中、「オアシス」に突入。延々と続く南国調のリズム・セッションに乗って、永積はヒューマンビートボックスやスキャットを交えながら自由に歌い上げていく。

 ブルースの色合いを深めてグッと渋みを増した「フリーダムライダー」、そして「うららかSUN」~「Crazy Love」~「ラブリー」~「Peace Tree」の4曲をメドレー形式で聴かせると、ギターを置きハンドマイクで「オリビアを聴きながら」のカバーを熱唱。東京スカパラダイスオーケストラとのコラボでおなじみのスカ・ヴァージョンで歌うこの曲で大合唱が巻き起こる中、永積はラストのサビで突然最前列の女性客にマイクを向ける。女性客はひるまず見事にサビを歌い上げると、観客全員から大きな歓声を送られた。

 「スカパラの沖が作ってくれた」という感謝の言葉に続いて披露されたのは、この日初披露の新曲。キーボードとベースを中心としたシンプルな音色で構成されるバラードは、都会に暮らす大人たちの秘密の恋を歌う。ハナレグミにとっても新境地といえるような楽曲をじっくり聴き入る観衆に向かって、永積は続いて「手紙を読みますよ」と自ら綴った手紙のような詩を朗読していく。福島を訪れた時に感じた想い、そして自らの表現について想いを巡らせた内容の詩に、観客たちも一人一人が自らの過去の記憶と重ね合わせながら、その詩を噛みしめるように耳をすませていた。

 いよいよ終盤に差し掛かると、エレガントなアレンジの「音タイム」に続いて、「無印良人」はシンプルな編成だからこそ強靭さを増したファンクに変貌し、カオティックな世界にオーディエンスを誘っていく。そして「明日天気になれ」の永遠に続くかのようなコール&レスポンスで本編のラストを飾った。

 興奮冷めやらぬフロアからのアンコールに応えて、再びステージに登場した4人。するとキーボードのYOSSYがドラムセットに鎮座し伊賀はウッドベースを、そしてドラマーの菅沼と永積がアコースティックギターを抱え並んでフロントに立って、2曲目の新曲を披露。YOSSYが慣れないドラムをドカスカ叩き、菅沼のスライドギターがルーズに響く中歌われたこの新曲は、オルタナ・カントリーとでも言いたくなるような、これまた今までのハナレグミにはなかったような楽曲を聴かせると、続いて「おあいこ」へ。以前のツアーではアブストラクトなアレンジが印象的だったが、今回の編成では生々しさが増して、心の痛みもむき出しにしていくような聴きごたえを感じさせる素晴らしい演奏だった。アンコールのラストに永積が一人ステージに残り「光と影」を歌い上げると、「また横浜で会いましょう」と別れを告げた。

 本来はここでライブが終わる予定だったが、鳴り止まない拍手に呼び込まれ急遽ダブル・アンコールに応えるハナレグミ。ステージ上で決められた楽曲は、シングルとして発表された「深呼吸」。ふたたび4人の演奏でじっくりと聴かせて大団円を迎えたこの日のライブは、なんと3時間弱に及ぶ長丁場となったが、その時間の長さを感じさせないほどに大充実のライブとなった。

 この充実のツアーでさらに表現の殻を破ったように見受けられたハナレグミ。彼は今、まさにアーティストとしての最充実期を迎えているのではないか。今のハナレグミのライブ、一公演足りとも観逃したくない! そんな想いを強くしたツアー・ファイナルだった。

【取材・文:宮内 健】
【撮影:田中聖太郎】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ハナレグミ

リリース情報

ハナレグミ・レキシ ライブ映像作品 「La族がまたやって来た、ジュー!ジュー!ジュー!」2DVD

ハナレグミ・レキシ ライブ映像作品 「La族がまたやって来た、ジュー!ジュー!ジュー!」2DVD

2017年04月26日

ビクターエンタテインメント

<収録曲>
ハナレグミ
1. 光と影
2. 音タイム
3. 家族の風景
4. きみはぼくのともだち
5. フリーダムライダー
6. オリビアを聴きながら
7. 無印良人
8. オアシス
9. 明日天気になれ
10.深呼吸

レキシ
1. KMTR645
2. 年貢 for you
3. 狩りから稲作へ
4. 最後の将軍
5. SHIKIBU
6. きらきら武士

ENCORE SESSION MEDLEY
ら・ら・ら 〜 LA・LA・LA LOVE SONG

★特典映像
撮り下ろしドキュメンタリー風番組 「La族をさがせ!」

★スペシャル副音声
ハナレグミ、レキシ、TOMOHIKO(ex SUPER BUTTER DOG)による、オーディオコメンタリー付き

★商品封入特典(初回生産限定)
「La族 特製ステッカー」付き (Blu-ray・DVD 共通)

セットリスト

ライブハウス・ツアー
「名前のないツアー」
2017.5.12@Yokohama Bay Hall

  1. 01.大安
  2. 02.旅に出ると
  3. 03. 360°
  4. 04.きみはぼくのともだち
  5. 05.あいまいにあまい愛のまにまに
  6. 06.オアシス
  7. 07.フリーダムライダー
  8. 08.<Medley>
      うららかSUN
      Crazy Love
      ラブリー
      Peace Tree
  9. 09.オリビアを聴きがら
  10. 10.新曲
  11. 11.Oi
  12. 12.ぼくはぼくでいるのが
  13. 13.音タイム
  14. 14.無印良人
  15. 15.明日天気になれ
 ENCORE
  1. EN 1.新曲
  2. EN 2.おあいこ
  3. EN 3.光と影
  4. EN 4.深呼吸

お知らせ

■ライブ情報

ハナレグミ 冬ツアー
11/07(火) 金沢Eight Hall
11/10(金) Zepp Sapporo
11/12(日) 仙台GIGS
11/14(火) 福岡DRUM Logos
11/16(木) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
11/17(金) 名古屋DIAMOND HALL
11/26(日) オリックス劇場
12/06(水) 国際フォーラム ホールA


GO OUT CAMP猪苗代 vol.4
06/03(土) 天神浜オートキャンプ場

勝井祐二×U-zhaan×ナイス貝
06/04(日) 下北沢440

フジフレンドパーク2017
07/01(土) Zepp DiverCity TOKYO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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