Bentham、始まりの決意を込めたメジャーデビュー後初の東名阪ワンマンツアー、東京公演をレポート
Bentham | 2017.06.07
今年4月にメジャーデビューを果たしたBenthamが、メジャー後初となる東名阪ツアー「雨降ってG高まるツアー ~We are the TYPHOON~」を開催した。それは紛れもなく、始まりの決意を込めたライブだった。インディーズ時代に全国のライブハウスを駆け巡り一歩ずつ前へと進んできたBenthamが、果たしてメジャーという場所にどういう想いで足を踏み入れたのか。それを言葉ではなく、音楽で伝える誠実なライブだった。
デビューシングル「激しい雨」のイメージを踏襲するように、大粒の雨が地面に叩きつける音が渋谷クアトロに響きわたると、まずは鈴木敬(Dr)がステージに現れた。ひとりドラムプレイを繰り出したところに、続けて須田原生(Gt)と辻怜次(Ba)が加わり、最後に小関竜矢(Vo・Gt)が姿を現した。そして小関が最前列の柵の上に、お客さんの手を借りながら立ち、「ワンマンツアーへようこそ!」と言い放つと、1曲目の「NEW WORLD」でライブはスタートした。“新しい世界”への燃えるような決意を、あえて抑え込むように刻んだ3拍子のメロディ。対バンやイベントでは切り込み隊長としてトップバッターを任されることも多いBenthamにしては珍しい冷静な幕開けだったが、ぐっと地に足をつけた演奏でじわじわとフロアを温めていく佇まいはとても堂々としていた。
彼らのライブバンドとしての凄まじいエネルギーが一気に爆発したのは「サテライト」から。緻密に組み込まれたバンドアンサンブルのなかで、「ここぞ!」という瞬間に須田と辻のツートップがステージ際まで歩み出て、鮮やかなプレイを魅せる。カラフルな照明とミラーボールに照らされて踊った「HEY!!」では、歌詞の一部を“俺はもちろんあんたら好みだ!”に替えて喝采を呼び、「手の鳴る方へ」では“雨降ってG!”というツアータイトルにちなんだコール&レスポンスに湧いた。「今日はいっぱい来てくれたから、いっぱい曲をやりたいから!」という小関の言葉のとおり、間髪入れずに次々に披露される楽曲たち。次々に表情を変える楽曲をメンバー同士が楽しそうに向き合いながら演奏する姿もいい。3年前に初めてインタビューをしたときに、Benthamは「全員が主役になれるバンドになりたい」と言っていた。当時、おぼろげに抱いていたバンドの理想像へと彼らは着実に近づいていた。
MCではメンバー全員がユニークな言葉で自己紹介をして笑いを誘ったところで、用意されていたのはリクエストコーナー。事前のアンケートで絞られた3曲(「FOO FOO」「アイマイミーマイン」「YUMEMONOGATARI」)のなかから、その場にいるお客さんの拍手の多さで次の曲を決めるという。斬新だったのは実際にメンバーがイントロ部分を生演奏して、その曲を知らない人も決められるようにしたこと。セレクトされた3曲がインディーズ時代の初期曲ということもあり、昔からのお客さんも、初めて来てくれたお客さんも楽しめるようにという彼ららしいアイディアだったが、同時に秀逸なイントロを持つ彼らの楽曲ならではの好企画だったと思う。選ばれたのは「FOO FOO」。1st EP『Public EP』の収録曲なので、いまほど垢抜けてはいないが、Benthanの原点が詰まったナンバーだった。
この日さらにレアな選曲だったのは今年2月22日にリリースされたディズニーコンピレーションアルバム『ROCK IN DISNEY ~Princess Songs~』に収録されている『リトルマーメイド』の主題歌「アンダー・ザ・シー」。原曲の印象的なフレーズを生かしながら完全なBentham節で再現されていて新鮮だった。そこからセンチメンタルなメロディに揺れるポップナンバー「After party」や「fine.」、ファンキーでブラックなエッセンスを色濃く感じる「AROUND」など、ゆったりとした楽曲を中心にした中盤は会場の熱気もクールダウン。先ほどまで手拍子をしたりジャンプしたりして激しく盛り上がっていたお客さんもゆったりとBenthamが奏でる音楽に身を委ねる心地好い空間が広がっていた。
ライブの最後のタームには、特にバンドにとって思い入れの強い楽曲が披露されていった。「ライブハウスを逃げ場にしてほしくない。日常生活をパッと明るくするような場所にしたい。どうにもならないことは全部俺らのせいにしていいよ、という曲です」と紹介されたのはインディーズ時代から歌い続け、メジャータイミングでピアノアレンジで作り直した「夜明けの歌」だった。Benthamが歌い続けることはずっと変わらないということ、しかし音楽家としては絶えず進化していくということ。そんな変化と普遍のふたつを象徴する楽曲は、いまのBenthamに最も相応しい曲だった。「俺は止まらねえよ」という叫びから突入した「激しい雨」では、「手を挙げてくれ。パーじゃないよ、俺らのライブはグーだろ?」。いつも以上に強い言葉を放つ小関の口調に煽られて、会場の熱気もピークに達した。そして、クライマックスはインディーズ時代にBenthamの始まりを告げた「パブリック」とメジャーデビュー曲「ファンファーレ」。会場が特大のシンガロングで満たされると、小関は「その声で俺らは頑張れる。ありがとう!」と目一杯の感謝の気持ちを伝えていた。
アンコールでは7月26日にリリースするニューアルバム『Re: Wonder』のなかから、新曲として「Chicago」がいち早く披露された。メジャーデビューからわずか3ヵ月でニューアルバムを用意しているということもBenthamの止まらない意思を表すようだったが、予想外の展開で翻弄されるような楽曲にもアルバムへの期待感が高まった。そこから「アナログマン」と「TONIGHT」を披露して、およそ1時間40分のライブは幕を閉じた。
誤解を恐れずに言うならば、Benthamは天才型のバンドではないと思う。もちろんソングライティングを手がける小関のメロディや歌詞のセンスは抜群だし、メンバー4人が高い演奏技術をもって鳴らすアンサンブルにしても、ロックバンドとしてのかっこよさと同時にどこかファニーな要素もあったりして、確かに唯一無二のものだと思う。それでもあえて言いたいのは、ここまでの彼らは決して階段を一段飛ばしにはしてこなかったし、常に雑草魂で進んできたバンドだということだ。だからこそ作れる景色があり、そうでなければ伝えられない想いがある。この日の渋谷クアトロもそうだった。泥にまみれて歩いてきた道のりがバンドの鳴らす音楽に強い説得力を与えていたと思う。いまの彼らは未来しか見ていないのだろう。インディーズ時代に培ってきた力を糧にして、メジャーという未知の場所でいかに戦っていけるか。いまBenthamはそれを心底楽しんでいるように見えた。
【取材・文:秦 理絵】
リリース情報
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Re: Wonder[CD+DVD盤]
2017年07月26日
KOGA RECORDS
2.透明シミュレーション
3.White (Album Ver.)
4.今さら
5.Sunny
6.戸惑いは週末の朝に
7.ファンファーレ
8.エスケープ
9.Heartbreaker
10.survive
11.センチメンタル
12.激しい雨
13.クラクション・ラヴ
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セットリスト
雨降ってG高まるツアー ~We are the TYPHOON~
2017.5.23@渋谷CLUB QUATTRO
- 1. NEW WORLD
- 2. サテライト
- 3. HEY!!
- 4. 手の鳴る方へ
- 5. クレイジーガール
- 6. 僕から君へ
- 7. Undulate
- 8. contact
- 9.タイムオーバー
- 10. YUMEMONOGATARI、アイマイミーマイン、FOO FOO
- 11. アンダーザシー
- 12. After party
- 13. fine.
- 14. AROUND
- 15. 夜明けの歌
- 16. 激しい雨
- 17. パブリック
- 18. ファンファーレ
- En1 Chicago
- En2 アナログマン
- En3 TONIGHT
お知らせ
Bentham秋の全国ツアー
09/08(金) 名古屋Electric Lady Land
09/10(日) 岡山ペパーランド
09/12(火) 広島CAVE-BE
09/15(金) 熊本B.9 V2
09/16(土) 福岡DRUM SON
09/18(月祝) 松山W studio RED
09/20(水) 高松DIME
09/22(金) 神戸 太陽と虎
10/01(日) 静岡Live House UMBER
10/06(金) 千葉LOOK
10/07(土) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya
10/11(水) 仙台LIVE HOUSE enn2nd
10/12(木) 新潟CLUB RIVERST
10/13(金) 松本alecx
10/15(日) 富山Soul Power
10/20(金) 大阪 umeda TRAD(旧umeda AKASO)
10/21(土) 赤坂BLITZ
SAKAE SP-RING 2017
06/03(土) 名古屋・栄一帯
フルカワユタカ presents「Play With」
~with Newest B~
06/04(日) 新宿LOFT
LIVEHOLIC 2nd Anniversary series Vol.1
06/09(金) 下北沢LIVE HOLIC
BACK LIFT presents>
「少年少女秘密基地 FESTIVAL 2017」
06/10(土) 名古屋 DIAMOND HALL、APOLLO BASE
- mol-74「colors」release tour
06/16(金) 福岡Queblick
06/17(土) 高松TOONICE
音鳴∃presents>
【オトナリサン in Summer】
06/25(日) 沖縄Output
見放題2017
07/01(土) 大阪府 心斎橋アメリカ村周辺の19会場
NECOKICKS pre.>
「グッドリダンスツアー」
07/08(土) 仙台LIVE HOUSE enn 3rd
NEWOutbreak of ROCK!!>
~UPSET中井 50歳祭り~
07/11(火) 愛知CLUB UPSET
MURO FESTIVAL 2017
07/22(土) お台場野外特設会場
TOKYO CALLING CARAVAN 2017
07/26(水) 渋谷 CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。