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THE NOVEMBERS、TOURファイナルで魅せた最も“美しい日”

THE NOVEMBERS | 2017.06.09

 幻想的なサウンドが流れるとステージに「A BEAUTIFUL DAY」の文字が浮かんだ。そしてTHE NOVEMBERSの4人が現れ、センターに立った小林祐介(Vo・Gt)が言った。 「今日は来てくれてありがとうございます。一番”美しい日”に、一番『美しい火』を」

 ”美しい日”は、このツアータイトルであると同時に、デビュー11周年を迎えた彼らを記録した映像作品のタイトルだ。昨年11月11日に11周年記念として行った新木場スタジオコーストでのライブと、彼らの11年の足取りを多面的に捉えたドキュメントの2DVDをパッケージした映像作品を、4月22日の名古屋から始まったこのツアーの会場限定で販売してきた。その最終日であるこの日を、小林は「一番”美しい日”」と言い、新木場スタジオコーストの本編最終曲だった「美しい火」から、このステージをスタートさせたのだった。

 ダイナミックなバンドサウンドと、小林のよく通るヴォーカルが柔らかでリリカルな歌を届けてくる。この日のスペシャルゲストであるVJ : rokapenisによるアブストラクトな映像がステージの4人と重なり、いつにも増してステージの幻想性は高まった。ファンシーという意味でなく、モノトーンのソリッドな映像がバンドの演奏と醸し出すものは傑出した非現実性というべきか。控えめな照明で4人の姿は映像に溶け込んでいる。満杯のフロアではリズムに合わせて体を揺らし、そっと口ずさむ影がステージからの微かな明かりに浮かんだ。   躍動感のあるポップ・チューン「Rhapsody in beauty」からこぼれ出す激情は、荒々しいベースから激しく起伏する歌で疾走する「1000年」へ続き、小林のシャウトは「Xeno」のクールな熱を引き出した。フロアからの歓声にヘヴィなビートと美しいギターリフで応えた「永遠の複製」で小林はシニカルな歌詞を絞り出すように歌い、内省的な「愛はなけなし」はケンゴマツモト(Gt)の細やかなギターとともに抑制の効いた歌が心を捉えた。 「めちゃめちゃクールな曲をやります」と小林が告げて軽やかなギターから始まったのは「We」。ロウとハイトーンを巧みに使う小林のヴォーカルに引き込まれる。さらに金属的なサウンドで落ち着いた歌を聞かせた「sky crawlers」のクールネスに酔いしれていると、エスニックなコーラスやギターが流れ「Gilmore guilt more」へ。テンポを落としたイントロから一気にテンポもテンションも上げて別次元へと飛翔する。オリジナルから進化したバージョンはTHE NOVEMBERSの面目躍如。高松浩史(Ba)のベースがリフを繰り返す中、小林が絶叫し吉木諒祐(Dr)のドラムが炸裂する。ケンゴマツモトが全身で弾くギターがやがてループとなって、めくるめく映像とともに穏やかな「小声は此岸に響いて」へと移ろい「あなたを愛したい」「Romancé」と柔らかな曲が続いてゆったりと空気を落ち着かせていく。これらの曲もまた彼らの重要作であることは言うまでもなく、このライブも中盤を迎えて心を吸い込まれるような魅惑的な時間を紡いだ。

 数十秒の静寂を挟み、ゾクゾクするような緊張感のあるイントロから「鉄の夢」に突入すると再び空気が一転した。鳥肌の立つようなダークでクールなギターとビート、溢れ出す感情をこらえきれず吐き出すようなヴォーカルに翻弄され脳内はカオス。その混沌をディレイの効いたギターと抑制の外れたヴォーカルがさらに掻き乱す「Blood Music.1985」から間髪を入れず「こわれる」が続き、小林がシャウトすると呼応するようにフロアから声援が上がった。1stフルアルバム『picnic』の曲を今も掘り下げさらに熱を加えてプレイする4人の存在感がひときわ大きくなったように感じた。小林が全身を絞るようにシャウトし、ケンゴがギターを掻き鳴らし、高松のベースが唸り吉木は両手で激しくドラムを鳴らす。そのまま最新作『Hallelujah』からの「黒い虹」となり、起伏に富んだ小林のヴォーカルがドラマチックに広がった。ひときわ音圧の上がった演奏に腕を上げて応え歓声を送ったオーディエンスの高揚感がステージをさらに熱くさせ、4人のシルエットが大きく揺れ続けた。  曲が終わり静寂の中で余韻を味わっていると、小林が話し始めた。 「改めまして今日は来てくれてどうもありがとうございます。今日がツアーファイナルなんですけど、なんだかすごく不思議な感じ。いつか想像した未来が今日なんだと思うと、いつも不思議な気持ちになるんですよね」  演奏の途中ではほとんど話さなかったけれど、興奮が冷めやらず言いたいことがまとまらずに、もどかしい気持ちでもいるようだが、言いたいことはたくさんあるようだった。 「無人島に咲いている誰も見ていない花が美しいかどうか、僕とあなたが決めること。今ここになくても、美しいと信じて、そう決めるのは僕とあなたです。今日、僕らは今日が美しいと信じてる。あなたがここへ来てくれたことが、誇らしいです。本当にどうもありがとう。次やる曲で最後なんですけど、今の自分たちの一番美しいと思う曲をやって終わりにします。今日はこの曲をやるためにここに来ました。一緒にいい未来を見ましょう」  アンコールは無し、と告げて始めた最後の曲は「Hallelujah」。美しいギターリフをケンゴマツモトが鳴らし、小林は落ち着いた声で歌い出した。吉木のドラムは軽やかで、高松はベースを歪ませた。祈りを込めた美しい曲は、軽やかに響いてこの日のフィナーレを告げ、4人が去ったステージに再び文字が浮かび上がった。『Before Today』。それは9月13日にリリースが決定したTHE NOVEMBERS初のベスト盤のタイトルだ。冒頭に書いた映像作品『美しい日』の全国発売、フジロックへの出演も発表されたが、昨年11月11日から始まった「A BEAUTIFUL DAY」が完結するのは、もう少し先らしい。

【取材・文:今井 智子】
【撮影:Yusuke Yamatani】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル THE NOVEMBERS

リリース情報

Hallelujah

Hallelujah

2016年09月21日

MAGNIPH/Hostess

1.Hallelujah
2.黒い虹
3.1000年
4.美しい火
5.愛はなけなし
6.風
7.時間さえも年老いて
8.!!!!!!!!!!!
9.ただ遠くへ
10.あなたを愛したい
11.いこうよ

セットリスト

TOUR 「美しい日」
2017.5.27@渋谷WWW X

  1. 美しい火
  2. Rhapsody in beauty
  3. 1000年
  4. Xeno
  5. 永遠の複製
  6. 愛はなけなし
  7. We
  8. sky crawlers
  9. Gilmore guilt more
  10. 小声は此岸に響いて
  11. あなたを愛したい
  12. Romancé
  13. 鉄の夢
  14. Blood Music.1985
  15. こわれる
  16. 黒い虹
  17. Hallelujah

お知らせ

■ライブ情報

“熱源” Release tour 『高機動熱源体』
06/17(土) 松山Double-u Studio
06/18(日) 高松TOONICE

SWIPE0624 ※小林祐介ソロ
06/24(土) 大阪cafe Room

CLUB Que 夏ノ陣 2017 RETURN TO NATURAL 2BANDS【VS】シリーズ ※小林祐介ソロ
07/16(日) 下北沢CLUB Que

FUJI ROCK FESTIVAL`17
07/30(日) 新潟県苗場スキー場

La.mama 35th anniversary 『PLAY VOL.46』
08/4(金) 渋谷La.mama

「ROSES」THE NOVEMBERS live at SHINAGAWA GLORIA CHAPEL
08/25(金) 品川グリーリアチャペル

sebuhiroko presents「Her Majesty’s Secret Night : Part II」
08/30(水) 新代田FEVER

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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