GLIM SPANKYならではの風景を見事に描いてみせた、日比谷野外大音楽堂ワンマンライブをレポート
GLIM SPANKY | 2017.06.18
入梅前の爽やかな風が心地よい好天に恵まれた6月4日、ついにGLIM SPANKYが日比谷野外大音楽堂のステージに立った。「自然の舞台美術の中で、室内ではできないことをやってみたい」と松尾レミ(Vo・Gt)が言っていたこの会場で、彼らは存分にその思いを果たした。
ステージの上方にはカラフルに連なる三角旗が飾られ、機材の周りはたくさんのグリーンが置かれている。そこにお馴染みのSteeleye Spanの曲が流れ、大きな歓声と拍手で迎えられながら登場した松尾と亀本寛貴(Gt)は、力強くドラマチックな「アイスタンドアローン」からスタートした。最新ミニアルバムの表題曲であるだけでなく、時代に媚びず唯一無二の音楽を奏でている彼らが掲げるフラッグのような曲だ。初の野外ワンマンのオープニングにこれほどふさわしい曲はない。 「GLIM SPANKYです!」歌い終わると松尾は挨拶もそこそこに「E.V.I」へ。松尾の歯切れのいい歌に、オーディエンスの手拍子が止まらない。そしてちょっと気を持たせるようなセッションから聴き覚えのある「時代のヒーロー」のイントロを亀本が弾くと、オーディエンスの体が揺れ、ドラムが繋いだ「褒めろよ」はギターのリフに合わせて腕が挙げられ、そのウェーブの上を渡るように松尾の声が伸びていった。高揚する気持ちに応えるように、まだ明るい野外でも映えるようにと用意された強力な照明が彼らの姿を照らした。
中盤は、GLIM SPANKYの”GLIM”な面を象徴する、幻想的でドラマチックな曲が続いて、彼らならではの日比谷野音の風景を描いて見せた。亀本がステージ前方に進んで気持ち良さそうにブルージーなギターを聴かせて始まった「ダミーロックとブルース」は、GLIM SPANKYらしい濃厚な空気を醸し出し、迫力を増した松尾のヴォーカルが耳を惹きつけた。そして一息入れてアコースティックギターに持ち替え、軽く音を取ると松尾がアカペラで歌い出した「闇に目を凝らせば」は更にじんわりと歌を染み込ませ、「NIGHT LAN DOT」はバンドとともにゆったりと聴かせた。バンドとのセッションをひとしきり楽しんでからイントロに入った「MIDNIGHT CIRCUS」は一段と幻想的で、風にそよぐ三角旗の間から歌詞のままに幻が見えそうだった。 この日のハイライトとなるべきは次の曲だったのではないだろうか。開演時間が17時だったため、1年で最も日の長くなるこの季節では月が空に顔を出してはくれなかったが、亀本のギターと高野勲(Kb)の鍵盤で「お月様の歌」を歌った松尾の心の目には、綺麗な月が見えていたことだろう。「改めてこんにちは、GLIM SPANKYです」と挨拶をした松尾が、
「今朝カーテンを開けたら、めっちゃ青空でよかった」と言えば、亀本は「何%から快晴なんだっけ? 今日は快晴って言っていいよね?」と空を見上げた。同じ気持ちだというように拍手が起こると、松尾が「本当に野音でできてすごい幸せです」と笑顔を見せ、「じゃあ、気持ちよく揺れながら堪能できる曲を」と始めた「風に唄えば」はオーディエンスも一緒にコーラスし、その言葉通り気持ちよく揺れていた。 その流れに乗ってアコースティックギターで歌い出した「太陽を目指せ」で、幻想的な”GLIM"からアグレッシヴな"SPANKY"へ、流れが変わった。バンドとともに次第に熱を帯びていく歌と演奏に、シートに座って楽しんでいた人たちも立ち上がり、「Freeder」のイントロから力強いコーラスが起こった。それに応えるように松尾は声を張り、力強いリズムに合わせて高く上げた腕を振るオーディエンスはステージとひとつになって自由へのアンセムを歌う。素晴らしい瞬間だった。
ドラムのダイナミックなビートに合わせて手拍子が起こり、それを待っていたように亀本がイントロのギターを鳴らした「NEXT ONE」も当然のようにサビは松尾とオーディエンスが息のあったコール&レスポンスを繰り返し、意外なほどにパワフルなナンバーとなった「いざメキシコへ」でもコーラスは続いた。 ステージを照らす照明パネルが揺れるように輝いた「Gypsy」はインディーズ時代から演奏している曲だが、いつも新しい表情を感じさせる。曲の途中でメンバー紹介をしたのは、最も演奏し慣れているからでもあろうか。かど しゅんたろう(Dr)、栗原大(Ba)は以前からのメンバーだが、新たに参加した高野はGRAPEVINEや斉藤和義などのサポートで活躍している腕達者。この面々で突入した後半のハイライトは、映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌になり彼らを広く知らしめるきっかけとなった「怒りをくれよ」。気持ちを高ぶらせずにいられない曲なのに、ギターを弾きながら亀本が腕を上げて煽ってくる。小さな子供を肩車して体を揺らしている大きな背中や、手拍子をしている親子連れがあちらにもこちらにも。ロックバンドのライブでこんな光景が見られるのもGLIM SPANKYの野音ならではだろう。
「全然暗くならない」とちょっと残念そうに言う松尾に、「5分ぐらい喋ってたら少しは暗くなるかな」と亀本。そんな話の後に松尾が手にしたのは、この日が初お披露目だと告げた”シガーボックスギター”。本当に使われていたシガーの箱を利用したもので、日本で唯一沖縄で製作しているところがあり、そこで作ってもらったものだそうだ。素朴で乾いた音をシャランと鳴らして歌い始めたのは「夜風の街」。フォーキーでゆったりしたこの曲に、新しいギターの音が馴染んでいた。もう最後の曲と告げ、今までのライブの中で一番長いセットリストを組んだのだが「あっという間だった」と振り返った松尾。亀本は彼らが主題歌を担当したドラマ「警視庁・捜査一課長 season2」に出演したが演技が拙く自分でもびっくりだったなどと笑わせた。本編最後は、そのドラマ主題歌となった「美しい棘」。ライトがピンクや黄色で花びらのように光る中、感情を込めた松尾の歌が、ひときわドラマチックにこの曲は響いた。
アンコールは着替えてきたグッズのTシャツのことなど二人で話した後で、松尾がスッと前を向いて語り出した。 「新曲をめちゃめちゃ作ってます。次は攻めるアルバムになりそう。日本でロックというと固定観念がすごくある。ロック=激しいとか反発するとか。でもロックってそれだけじゃなくて、平和とか愛、希望があり、その上にロックがあると思ってる。ロックにいろいろな引き出しを作っていきたいなと思ってGLIM SPANKYは、やっています」 大きく息を吸って歌いだした「大人になったら」。”私たちはやる事があってここで唄ってる”という歌詞が、リアルに響いた。そして「日本だけじゃなく世界のGLIM SPANKYと言われるようになりたい」と宣言して最後を締めたのは「ワイルド・サイドを行け」。ここからまた新しい道を彼らは切り拓いていく。
【取材・文:今井 智子】
【撮影:HAJIME KAMIIISAKA】
リリース情報
I STAND ALONE
2017年04月12日
ユニバーサル ミュージック
2.E.V.I
3.Freeder
4.美しい棘
5.お月様の歌
セットリスト
GLIM SPANKY 野音ライブ 2017
2017.6.4@日比谷野外音楽堂
- 1. アイスタンドアローン
- 2. E.V.I
- 3. 時代のヒーロー
- 4. 褒めろよ
- 5. ダミーロックとブルース
- 6. 闇に目を凝らせば
- 7. NIGHT LAN DOT
- 8. MIDNIGHT CIRCUS
- 9. お月様の歌
- 10. 風に唄えば
- 11. 太陽を目指せ
- 12. Freeder
- 13. NEXT ONE
- 14. いざメキシコへ
- 15. Gypsy
- 16. 怒りをくれよ
- 17. 夜風の街
- 18. 美しい棘
- 19. 大人になったら
- 20. ワイルド・サイドを行け
お知らせ
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07/15(土) いわみざわ公園
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