前へ

次へ

a flood of circle ワンマンツアー”NEW TRIBE-新・民族大移動-”、ファイナル公演をレポート

a flood of circle | 2017.06.26

 a flood of circleが1月にリリースしたアルバム『NEW TRIBE』を引っさげた全国ツアー「NEW TRIBE-新・民族大移動-」のファイナルとなる東京公演をZepp DiverCityで開催した。それはロンドンでレコーディングを行なったことでバンドが獲得した開放的なムード、さらに新しいサポートギタリストにアオキテツ(Gt)を加えたことによる刺激も相まって、まるでバンドの原点に還るような衝動的なライブだった。

 ヘヴィなグルーヴにのせて佐々木亮介(Vo・Gt)が鋭いラップを捲し立てる「El Dorado」からライブはスタートした。“黄金郷”を意味し、最新アルバム『NEW TRIBE』のなかでは中盤に訪れる、アルバム制作でもキーになった楽曲。“どんな嵐のなかでも前に進め!”と強く鼓舞するその歌は、タイトルに「民族大移動」と冠したライブの幕開けに、これ以上ないぐらいくらい相応しかった。「Dirty Pretty Carnival Night」ではHISAYO(Ba)とギターのテツが佐々木を挟むかたちで向き合い激しいパフォーマンスを見せ、「Rude Boy’s Last Call」では渡邊一丘(Dr)が高い位置からスティックを振り下ろして後方から3人の援護射撃をした。勢いのある曲が続く。いつもより曲間も短い気がする。間髪入れずにスピーディなパンクチューン「Rex Girl」へと突入した。今、目の前にいるフラッドは、1年前とはまるで違う生き物みたいだ。『NEW TRIBE』の作品インタビューで渡邊は「ここに来て、今まででいちばんテンションの高いアルバムになった」と言っていたが、その言葉を借りるなら、ここに来て、今までいちばんパワフルで、勢いがあって、衝動のままに音を鳴らすフラッドを今、私たちは目撃しているのかもしれない、そんなステージだった。

 佐々木が学校のチャイムの音をエレキギターで奏でた「Rock’N’Roll New School」のあとは、渡邊が打ち鳴らす軽快なリズムの上を転がるようにメロディをのせた「ジュテームアデューベルジャンブルース」、ゆったりとしたビートでフロアのお客さんを心地好く横に揺らした「Trash Blues」へと続いた。このあたりからライブのテンションは少し変わった。MCでは「“みんなのおかげで僕は歌ってます”とか言う気はないけど。みんな闘ってるから。あなたも君も。一緒に闘ってるやつがこれだけいるって最高だと思います」、そんなふうに佐々木が伝えてから、そのハスキーな声を張り上げて届けたのは“歌うぜ 何度でも”とバンドの決意を込めたバラード曲「The Greatest Day」だった。人が本当に理不尽で絶望的な状況にあるとき、果たしてロックンロールに価値はあるのか。その問いに対して佐々木が出したひとつの答えがこの曲だと思う。ロックンロールは明日を生きる希望になり得るはずだと。そこから追い打ちをかけるような「BLUE」と「New Tribe」だ。過去ではなく未来にこそ指針があると声高に叫ぶ楽曲たちは、ロックンロールバンドとして転がり続けて11年、今のa flood of circleが歌うからこそ強い説得力があった。

 メンバー紹介。クールな見た目によらず今回も珍事件を起こした姐さんのネタに始まり、佐々木や渡邊よりも年下だが「フラッドに骨をうずめる」覚悟でサポートを務める新ギタリスト・テツも一言喋った。そんななか渡邊が「良い緊張感のあるチームになってるんじゃないですかね、社長?」と言葉を漏らしたのが印象的だった。渡邊が佐々木を社長と呼ぶのは初めて聞いたが(※昨年フラッドは自分たちで所属事務所“青”を立ち上げて、佐々木はその社長)、佐々木の相棒として唯一の初期メンバーである渡邊が感じるバンドの“良いムード”は、言わずもがなこの日のライブに顕著に表れていた。ロンドンでのレコーディング、初めて自分たちの居場所を作った自主企画「A FLOOD OF CIRCUS」の始動、そしてテツの存在。今それら全てがバンドを良い方向に導いていた。

 「社長命令だ! かっとばせ!!」。先ほどの渡邊の言葉を引き継ぐように発した佐々木の号令を合図に、ライブは終盤にかけて再び熱く激しい盛りあがりゾーンへ入っていった。フラッドのライブには欠かせない「Dancing Zombiez」では、いつものように佐々木が「ギター、俺!」と名乗りをあげて繰り出したギターソロ。そのステージの上では自らのロックンローラーとしてのかっこよさを微塵も疑ってないような佇まいが、さらにフロアを興奮させた。「Black Eye Blues」ではヒップホップのマナーで腕を上下するお客さん。その頭上にダイブして立ち上がる佐々木の姿はまるで群衆を率いる扇動者のようだった。そして重力から解き放つようなダークな狂騒のワルツ「Flyer’s Waltz」、佐々木がメンバー全員の名前をフルネームで呼んだ「プシケ」と曲を重ねていけば、いよいよライブはクライマックスだ。

 「理不尽なこととかいっぱい降りかかってくると思う。どうしようかわからなくなるじゃん。俺、このツアーの途中で友だちが3人死んだんだよね……。そいつらは最期まで理不尽なものに抗おうとしてた。そういう人たちを見てきてしまったから、俺たちは超えなきゃいけないものがたくさんあると思ってる。もし理不尽なものが降りかかってきたときも、俺たちは転がるし、転がる人と一緒に生きたいと思ってる。ロックンロールは君の味方ですから、これからも転がり続けていきましょう」。

 そんな熱い言葉のあとにはステージを明るく照らしてお客さん一人ひとりと目を合わせるように届けた優しいポップソング「Honey Moon Song」を続けた。そして「最後まで駆け抜けていってくれ、東京の狼たちよ!」と佐々木が叫び、美しいミラーボールの光が会場を包み込むなかに、ラストソングとして陽性のロックンロール「Wolf Gang La La La」を投げ入れた。その最後のフレーズは“振り返るな!”だ。それは今の4人(あえて4人と書きたい)が鳴らす最高のa flood of circleだった。だが佐々木は「言っとくけど今日が最高だけど、ゴールじゃないから」とも言っていた。そうだ、ロックンロールにゴールはない。

 アンコールでは当初は予定していなかったという「Blood Red Shoes」を加えて全3曲を、本編から全く衰えることのない熱量で披露した。そのライブの最後は「お前はお前のままでいいんだ!」と伝えて、お客さんと一緒に大合唱を巻き起こした「ベストライド」だった。ちょうど2年前に10周年の直前のタイミングでこの曲が発表されたとき、決して短くはないバンドの歴史のなかでフラッドが今をベストと呼ぶことに言いようのない喜びを感じた。だがこの曲はリリースしたとき以上に、今のほうが意味のある曲に変わってきていると思う。“世界を塗り替えるんだ、今日こそ”。そうやってa flood of circleは自らのベストを更新しながら、土砂降りのなかを走り続ける。

【取材・文:秦 理絵】

tag一覧 ライブ a flood of circle

リリース情報

NEW TRIBE The Movie -新・民族大移動- 2017.06.11 Live at  Zepp DiverCity Tokyo[DVD]

NEW TRIBE The Movie -新・民族大移動- 2017.06.11 Live at Zepp DiverCity Tokyo[DVD]

2017年10月11日

Imperial Records

1. El Dorado
2. Dirty Pretty Carnival Night
3. 泥水のメロディー
4. シーガル
5. All The Young Rock’N’Rollers
6. Rude Boy’s Last Call
7. Rex Girl
8. Rock’N’Roll New School
9. 見るまえに跳べ
10. ジュテームアデューベルジャンブルース
11. Trash Blues
12. The Greatest Day
13. BLUE
14. New Tribe
15. Golden Time
16. Dancing Zombiez
17. ミッドナイト・サンシャイン
18. Black Eye Blues
19. Flyer’s Waltz
20. プシケ
21. Honey Moon Song
22. Wolf Gang La La La
23. Blood Red Shoes
24. 春の嵐
25. ベストライド

セットリスト

a flood of circle ワンマンツアー"NEW TRIBE-新・民族大移動-"
2017.06.11@Zepp DiverCity

  1. 01.El Dorado
  2. 02.Dirty Pretty Carnival Night
  3. 03.泥水のメロディー
  4. 04.シーガル
  5. 05.All The Young Rock’N’Rollers
  6. 06.Rude Boy’s Last Call
  7. 07.Rex Girl
  8. 08.Rock’N’Roll New School
  9. 09.見るまえに跳べ
  10. 10.ジュテームアデューベルジャンブルース
  11. 11.Trash Blues
  12. 12.The Greatest Day
  13. 13.BLUE
  14. 14.New Tribe
  15. 15.Golden Time
  16. 16.Dancing Zombiez
  17. 17.ミッドナイト・サンシャイン
  18. 18.Black Eye Blues
  19. 19.Flyer’s Waltz
  20. 20.プシケ
  21. 21.Honey Moon Song
  22. 22.Wolf Gang La La La
  23.  ENCORE
    1. EN 1.Blood Red Shoes
    2. EN 2.春の嵐
    3. EN 3.ベストライド

お知らせ

■ライブ情報

a flood of circle presents "BATTLE ROYAL 2017"
10/13(金) 名古屋CLUB QUATTRO
10/15(日) 梅田CLUB QUATTRO
11/15(水) 新宿LOFT
11/16(木) 新宿LOFT
12/11(月) 新宿LOFT
12/12(火) 新宿LOFT
12/13(水) 新宿LOFT

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る