メジャーデビューも決定!快進撃を続けるyonigeの「Neyagawa City Pop Tour」渋谷CLUB QUATTRO公演をレポート
yonige | 2017.06.29
4月にリリースしたEP『Neyagawa City Pop』を引っさげ、5月より全国8カ所を廻ってきたyonige。6月22日に大阪・梅田CLUB QUATTROで行われたライブツアー『Neyagawa City Pop Tour』ファイナル公演では、ワーナーミュージック内のレーベル・unBORDEからメジャーデビューすることもバンドから発表された。9月に予定されているファースト・フルアルバムのリリース、ワンマンライヴ『売上総取』の開催とバンドとしてギアをフルスロットルまで踏み込んだ彼女たち。本レポートではそんな絶好調のyonigeが、6月19日に渋谷CLUB QUATTROで行った公演の模様をレポートする。
この日の対バンはAge Factory、PELICAN FANCLUBの二組。日本のロックシーンの新たな時代を担っていく贅沢な3アクトの組み合わせが、どんなライヴを見せてくれるのか否応無くオーディエンスの期待は高まる中、一番手に登場したのはAge Factoryだ。1曲目「真空から」の冒頭、フリーな演奏から一気に沸騰する3ピースとは思えないほどの重い音圧が会場を飲み込んでいく。90年代オルナティヴ・ロックからの影響が如実に現れたファースト・フルアルバム『LOVE』収録の「Yellow」や、ヒップホップのリズムやハードコアのラウドネスを彼ら流に咀嚼して落とし込んだ「Puke」、そして7月26日に発売されるミニアルバム『RIVER』に収録されるポップネスが薫る新曲「SUNDAY」を続けて披露した彼ら。ハードコアからロックバラードまでささくれたサウンドやイメージとは裏腹に音楽的なリファレンスの芳醇さを匂わせながら、彼らの根底にあるエモーショナルなカオスをフロアに叩きつけたAge Factoryのライヴだった。
「yonige好きって、そうそう楽しまないイメージがあるんですよね。……楽しんでますか?」と、冒頭から会場を煽るPELICAN FANCLUB。今年5月にリリースされたファースト・フルアルバム『Home Electronics』では00年代のJ-ROCKやシューゲイズバンドからの影響を感じさせながら、クールでモダンなオルタナティヴ・ロックを聴かせたPELICAN FANCLUBだったが、この日のライヴは熱情的なものだった。「手、上がる?」などと小まめにオーディエンスとコミュニケーションをとりながら、ライヴ前半は強烈に耳をジャックするPELICAN FANCLUB印のリリックが印象的なロックンロール「Night Diver」をプレイ。続けてビートの効いた「Luna Lunatic」と「Dali」を披露しフロアをしっかりとグルーヴさせる。ライヴ中の立ち姿やステージ・パフォーマンスは恐ろしくスタイリッシュで、本人達の表現活動に対する美意識の高さが伺えた。ラストに披露されたのは、そんな彼らの意思の強さがロックバラードという形で表現された佳曲「花束」。ドリーミーなサウンドの残滓を残し、PELICAN FANCLUBはステージを去っていった。
真打登場を前に明らかにどんどん熱気を帯びていくフロア。この日は月曜日ということもあり、なかなか足を運び辛い日程のライヴだったかと思うが、yonigeの二人がステージ上に姿を表す頃には彼女達の姿を視界の端に入れるのにも背伸びをしなければならないほど、パンパンにオーディエンスの人数が膨れ上がっていた。yonigeが今、どれだけ多くの音楽リスナーから注目を集めているかが伝わってきた。
この日のライヴは『Neyagawa City Pop』の1曲目であり、EPのタイトルとリンクする楽曲でもある「our time city」で幕を開けた。仁王立ちでオーディエンスを見据えながらステージ中央でギターを弾く牛丸ありさ(Vo・Gt)、そして、ベースを振り回しながら暴れるごっきん(Ba・Cho)の姿が凛々しく美しい。昨年リリースされた『かたつむりになりたい』 に収録されライヴの定番曲でもある「あのこのゆくえ」、そしてyonigeの代表曲としても名高い「アボカド」、「最近のこと」を立て続けに披露し、一気に会場のヴォルテージは沸点に達する。
渋谷CLUB QUATTROでライヴをするのは2回目だというyonige。1度目はキャリアの長い先輩達に囲まれyonigeを知るオーディエンスも居らず、とにかく「怖かった」という印象があったそうだが、今日はyonigeを観に来たお客さんでフロアはパンパン。「こういう形でまたライヴが出来て嬉しいです」と、顔を綻ばせた二人だった。
先ほどまでのガトリング砲のようなロックチューンの連発から、BPMを落としたミドル・テンポの楽曲をプレイするゾーンへ。クリスピーなギターソロを何事でもないかのようにクールに牛丸がキメた「センチメンタルシスター」に始まり、「バイマイサイ」「サイケデリックイエスタディ」と続く。そして新作からの「しがないふたり」では、yonigeのポップネスの一番スイートな部分と凶暴かつヴァイオレントな二面性を、観客は堪能することとなった。
このツアーから始まったごっきんのユルくもアツいMCを挟みつつ、後半戦に突入。冷静ながらも、静かに燃え上がっていくロックンロール「さよならアイデンティティー」、ごっきんのベースがグルーヴする「悲しみはいつもの中」をプレイし、フロアの温度を再び上げていく。牛丸がギターをわざわざ持ち替えて演奏されたのはASIAN KUNG-FU GENERATIONの言わずと知れた名曲「ソラニン」。「この曲だけ、手が上がるんだよね(笑)」と冗談めかしてMCで言っていた牛丸だったが、それはこの楽曲が日本のロック史に残る名曲だからというだけでなく、行き場のない焦燥感と未来への渇望がyonigeの表現の本質と強く共鳴するからだろう。彼女たちに「ソラニン」が与えられた理由が伝わってくる見事な演奏だった。
続く「最愛の恋人たち」で会場のボルテージを最大限にまで上げ、本編ラストの楽曲「さよならプリズナー」では、鬼気迫る演奏を披露。輝かしい思い出、漠然と広がる虚無、意味のない追憶、本気とも冗談ともつかない諦観--どこまでも自らの生に対してリアリストな牛丸ありさの哲学が濃度200パーセントで力強く鳴らされた瞬間が、この日のハイライトだったことは間違いない。
アンコールでは初期のデモから「女の子の日」と「恋と退屈」の2曲を披露。高校時代に結成され、初期メンバーの脱退など様々な試練を乗り越えて来たyonigeの二人。その頃から決して変わることのない彼女達の強い意志を滲ませる演奏は、これからどんなに状況が変化していこうともyonigeが自らの音楽を自らの思う通り、正しく鳴らしていくことの「宣言」として聞こえた。大阪・寝屋川から東京、そして、未来へ。yonigeの快進撃はまだ始まったばかりだ。
【取材・文:小田部仁】
【撮影:Viola Kam(V’z Twinkle Photography)】
リリース情報
Neyagawa City Pop
2017年04月19日
small indies table
2.さよならプリズナー
3.悲しみはいつもの中
4.しがないふたり
5.最愛の恋人たち
お知らせ
ワンマンライブ『売上総取 Vol.3』
09/06(水) 渋谷O-WEST
ワンマンライブ『売上総取 Vol.4』
09/08(金) OSAKA MUSE
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