PUSHIM LIVE TOUR 2017“THE SUMMER”、Zepp DiverCity TOKYOをレポート!
PUSHIM | 2017.07.03
6月16日金曜日、Zepp DiverCity TOKYOで、『PUSHIM LIVE TOUR 2017“THE SUMMER”』を見た。アルバムのリリース・ツアーではなく、しかも昨年は東京公演がファイナルだったが、今年は9本中の6本目。レゲエが最も映える暑い季節を前に、セットリストも演出も、より自由に伸び伸びと躍動するPUSHIMが見られるはず。という期待はいきなり叶えられ、HOME GROWNの奏でるアツアツのイントロダクションから、会場内の空気はすでに真夏状態。PUSHIMが登場し、1曲目「JAMAICA JAMAICA」を歌い始めると、フロアは一気に総立ち。ハンズアップやワイパーを繰り出して、あっという間に全員の心が一つになる。「レット・ミー・シー・ユア・ダンス!」と、PUSHIMの煽りに応えて自由に踊り、「I wanna know you」ではサビのコーラスを完璧に合唱、「RAINBOW」ではイントロだけで大歓声が沸く。ここにいる全員がPUSHIMが大好きなんだなあと、当たり前のことに思わず頬が緩む。小さな子供連れも多い、にぎやかなオーディエンスが生み出すハッピーなムードが、PUSHIMのライブの大事なエレメントだ。
ぐっとスローでちょっぴりセンチメンタルな「Good Morning Jamaica」から、明るいレゲエ・カバーの「Over the Rainbow」、そして軽快なクラップやコール&レスポンスが楽しい「Reach to the Goal」へ。すっかり体が温まったところへ、火に油を注ぐべく登場したのは、東京だけのスペシャル・ゲスト、MAGNUM RECORDSのRUDEBOWY FACE、RUEED、AKANEという、楽しいパーティーには目がないやつら。PUSHIMとの共演曲「ASOBITAI」を、18禁のヤバいダンスを交えてド派手にぶち上げ、嵐のように去ってゆく。さらに休まず止まらず、「まだまだ踊れますか?」というPUSHIMの言葉に続いてハッピーなダンス・チューン「MaNaTu…」、そして最新曲「ALFEE」の登場だ。レゲエのリズムに洗練されたAORエッセンスを振りかけたような、せつなくメロディアスでしかも踊れる1曲。この曲が収録されたGroovillageのミックスCD『Groove Island』を、「ぜひこの夏のお供にどうぞ」と、さりげなくアピールを入れつつ、ライブはさらに佳境へと入ってゆく。
中盤は、ゆったりと体を揺らす心地よいレゲエのコーナーだ。ほとんど曲間を入れずに「Anything for you」「Light up your Fire」「And ever」「EBB TIDE」と、懐かしい曲を中心に、あくまでスムーズにハッピーに聴かせる。「Light up your Fire」では、PUSHIMの呼びかけで、オーディエンスがケータイのバックライトを灯す美しいシーンが見られた。「EBB TIDE」ではHOME GROWNが本領を発揮し、2階席の椅子がビビるほどの超重低音でレゲエの凄みを堪能させてくれた。PUSHIMも思わず「ヤバいな。HOME GROWN最高!」とひとこと。会場内のあちこちから、幸せなヴァイヴスが湧き出しているのがわかる。
ここで、PUSHIMが長いMCをした。デビューが24歳、今はひっくり返して42歳になったこと。在日韓国人3世として生まれ、子供の頃は、自分が何者かわからなくて悩んだこと。音楽を始めて、アイデンティティを実感できたこと。「それは、みなさんのおかげです」。あまりに率直で曇りのない言葉に、オーディエンスはあたたかい拍手と笑顔で応える。そして、「私のルーツの歌を」と前置きして歌った韓国民謡「アリラン」の、なんとすさまじい迫力だったことか。尽きることのない女の情念を、全身を使って歌い上げる姿は、まさに歌にアイデンティティを見出した一人の女の、命の歌そのものだった。それだけでなく、「日本にも、いかつい女の歌があります」と言って歌った、山口百恵のカバー「プレイバックpart.2」、そしてジャマイカの労働歌から生まれたスタンダード曲「BANANA BOAT」。つまり韓国、日本、ジャマイカという、PUSHIMの三つのルーツを代表する曲を並べたこのパートこそ、間違いなくこの日のハイライト。PUSHIMの歌に単なるレゲエを超えた深みを感じるのは、重なり合うルーツが生んだものだということがよくわかる、感動的なシーンだ。
いよいよライブも終盤へ。昨年のアルバム『F』のリード曲だったディスコ・レゲエ「Feel It」は、懐かしい曲が多いこの日のセットリストの中で、PUSHIMクラシックスに負けない存在感の強さを見せる、すでに代表曲と言っていい。そして本編ラストは代表曲「I pray」から「ルネサンス」。曲間のMCでPUSHIMは、「人生はいいことと悪いことの連続です。どんなことがあっても歌える私は、恵まれています。喜びも悲しみも、この体を使って体現していくので、これからもよろしく」と、力強く語った。PUSHIMの歌には必ず、リアルな経験と実感の裏打ちがある。だからこそ、こんなにも心を打つ。
アンコール。ツアーTシャツに着替え、ステージに戻ってきたPUSHIMが歌ったのは、坂本九のカバー「見上げてごらん夜の星を」だった。この曲を含め、「Over the Rainbow」「プレイバックpart.2」「BANANA BOAT」は、昨年のカバー・アルバム『THEノスタルジックス』収録曲だ。PUSHIMのルーツの幅と深み、そしてレゲエ・ミュージックの楽しみを味わう上で最高の1枚なので、未聴の方はぜひチェックしてほしい。そして本当のラスト・チューンは、痛みや悲しみを優しくハッピーなヴァイヴスで塗り替える、PUSHIM流のメッセージ・チューン「夕陽」。明日は小さな幸せが、舞い降りるように。祈りの言葉のようなリフレインが、今も心に残って離れない。自らのルーツから、未来へのメッセージまで。2時間の中でPUSHIMのすべてを見せてくれた、美しくエモーショナルなライブだった。
【取材・文:宮本英夫】
【撮影:cherry chill will】
リリース情報
リリース情報
Groove Island
2017年06月21日
徳間ジャパンコミュニケーションズ
2.ISLAND / 上江洌.清作&The BK Sounds!!
3.ハピネス - Reggae Summer Remix by Mighty Crown / AI
4.Touching The Sky feat. ルンヒャン / 韻シスト
5.BELIEVIN’ / LIBERATION
6.MOSIM / YARD VIBES BAND
7.ASOBITAI (feat. PUSHIM) / RUDEBWOY FACE × RUEED × AKANE
8.Explain / CHAN-MIKA
9.SUMMER DAY / TOKYO CRITTERS
10.PARTY SIX / 韻シスト
11.Feel It / PUSHIM
12.愛WAR / Spinna B-ILL
13.シンガー・レディ / しばたはつみ
14.Go Action / EGO-WRAPPIN‘
15.アツくてムシムシ (Taku from 韻シストRemix) / AFRA
16.サマー・シンフォニー / 曽我部恵一
17.あなたには / BASI
18.My Dream (KLK BEATS remix) / DAG FORCE
19.Orange’s Star / トレモノ
20.electric foundation -night pack mix- / underslowjams
21.スカートの砂 / UA
22.接吻 (Dennis Bovell Lovers Mix) / 中島美嘉
23.EBB Tide feat. PUSHIM / Home Grown
24.桜 (Mad Professor’s Lovers Rock Dub) / bird
25.Summer Rain / Coma-Chi
26.TAIYO~special guest 山岸竜之介 (from LIFE IS GROOVE) /YOKOYURE
27.Mr. サマータイム / サーカス
セットリスト
PUSHIM LIVE TOUR 2017
“THE SUMMER”
2017.06.16@ Zepp DiverCity
- 00.introduction
- 01.JAMAICA JAMAICA
- 02.I wanna know you
- 03.RAINBOW
- 04.Good Morning Jamaica
- 05.Over the Rainbow
- 06.Reach to the Goal
- 07.ASOBITAI
- 08.MaNaTu…
- 09.ALFEE
- 10.Anything for you
- 11.Light up your Fire
- 12.And ever
- 13.EBB TIDE
- 14.アリラン
- 15.プレイバックpart.2
- 16.BANANA BOAT
- 17.Feel It
- 18.I pray~ルネサンス
- EN 01.見上げてごらん夜の星を
- EN 02. 夕陽
お知らせ
OTODAMA SEA STUDIO 2017
SUNSET MELLOW 2017
07/22(土) OTODAMA SEA STUDIO
MIGHTY JAM ROCK presents…「HIGHEST MOUNTAIN 2017 -JAPANESE REGGAE FESTA IN OSAKA-」
08/13(日) 大阪城野外音楽堂
Slow LIVE’17 in 池上本門寺
09/02(土) 池上本門寺 野外特設ステージ
TOKYO MUSIC CRUISE 2017
08/12(土) ザ・プリンス パークタワー東京
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。