MOSHIMO ワンマンツアー2017夏「今宵もキミにこころあり」東京公演
MOSHIMO | 2017.07.24
「みんなの心に向き合え、寄り添える、そんな気持ちを込めて、このツアータイトルにしました」と、ライブ中、MOSHIMOのボーカル&ギターの岩淵紗貴は語った。その言葉どおり、彼女たちが次々と放った、身近で親しみのある、誰でも経験したことがありそうな歌の数々は、この日、会場に集まった多くの者の心に寄り沿い、想いを重ねたり、心を頷かせたり、次に向かうちょっとした決意を後押ししてくれたりしていた。
MOSHIMOのワンマンツアー「今宵もキミにこころあり」の東京公演が7月9日に東京・渋谷のWWWにて行われた。今回のツアーは今春発売の2ndミニアルバム『触らぬキミに祟りなし』を引っ提げて行われたもの。以後の福岡と名古屋も含め全箇所をソールドアウトさせ、この日も満場の中、上記作品の収録曲を中心に、彼女たちらしさ全開のポップスワールドが展開された。
デビュー曲「猫かぶる」で幕を開けたこの日。ドラムの本多響平によるクラッシュシンバル全開で4つ打ちで上昇感あふれるビートがライブを走り出させる。♪今日もキミに夢中♪のフレーズが会場と最後まで一緒になるアライアンスのように響く。岩淵の歌い出しから間髪置かず、CHEESE CAKE時代からの楽曲「夏のサイダー」に入る。ご存知の方も多いとは思うが、少しこのMOSHIMOについて説明させてもらうと、2015年春に前身バンドCHEESE CAKEの岩淵、一瀬貴之(G.)に、宮原颯(B.)、本多が加わり活動開始。5月にシングル「猫かぶる」でデビュー。9月には1stミニアルバム「命短し恋せよ乙女」をリリースし、幾つかのメディアのネクスト・ブレイク・アーティストにも選出され、今春、上述の『触らぬキミに祟りなし』のリリースに至っている。で、ライブを「夏のサイダー」に戻すと、同曲がより上昇感と光景感を場内に呼び込み、サイダーのような清涼性と爽快感が、ちょっとした切なさと共に会場全体に広がっていく。また、「みんなとジャンプするけど、用意はできてる?」(岩淵)の誘いと共に現われた、バウンス性を伴った「赤いリンゴ」に入ると、会場に躍動感が誘引され、ステージ/会場に共にジャンプが繰り広げられる。
「今日は全力でぶつける。みんなもぶつけ返してください」と一瀬。「日々いやな気持ちになることもあるけど。タオルを回して忘れて欲しい」との岩淵の言葉から、タオル大旋回ソング「ミラーボール」へ。合わせてステージ上部に設置されたミラーボールも回り出し、同曲では一瀬によるライトハンドも交えたギターソロも見どころもあった。
また、けなげな乙女心の数々に胸がキュンとさせられたゾーンもあった。「好きな人の、そのまた好きな人のことを羨んで作った歌」という「ミルクティー」では、かなわない思いとけなげさが広がり、「ダイエットした時に作った歌」という「ポテトサラダ」では岩淵もアコギに持ち替え、歌中繰り返し歌われ、会場中で大合唱した、マーブルチョコレートとポテトサラダの味が口いっぱいに広がっていった。また、フラれた時にフラれたことを恨むのではなく、いつかそのフッた相手を後悔させたり、再びよりを戻させることを相手から誘いたいとの想いを込めて作られた「スキップ」では、タンバリンに持ち替えた岩淵に合わせて会場もクラップ。進められる歌中での主人公の実は心の奥底での強い意志を窺い知れた。
満場ながら初めて観る人が多かったのも、彼女たちの浸透や広がりを確認出来たようで嬉しかった。中盤のMCでは、一瀬が他のメンバーに対し、「最近、俺の扱いが雑」と言及。一瀬の部屋でのレコーディングの際の扱われ方や、この日の会場入りの約束を反故にされたエピソードに会場もいささか同情モード。和む場面が作られていく。それを受け、「ありがとう。こんな私とこの10年一緒にやってくれて」と返す岩淵。「今はCHEESE CAKEの時よりも楽しい」と加える。とは言え、「スタンスは、あの時と変わらない」と続け、その気持ちを表すようにCHEESE CAKE時代からの「ファンシー」にて、喪失感や心にあいた穴を歌う。同曲ではノスタルジックとセンチさ、それを振り払うような楽器隊渾身のオルタナ感バリバリのアウトロも印象的であった。
MCの一部では岩淵の心の奥底に触れられた。基本、MOSHIMOの音楽は、悲しいものも悲しく伝えず、次に向かうバイタリティにしていく笑い飛ばしや生命力を持っている曲が多い。しかし、実際の岩淵はネガティヴでマイナス思考であるとのこと。実はそれが凄く苦しく、自身が自由になれる場所が音楽であったことが告げられる。そう、彼女の歌は、実際は彼女の理想としている彼女像。こうだったらいいのに、いつかはこうなりたい、そんな歌の数々だったことに改めて気づかされた。それを知り、なんか凄く安堵した。そして更に彼女の音楽が好きになった。誰もが彼女の歌ほど強くはない。そう思えた瞬間、彼女の歌がより身近に感じられ、なおのこと自分たちの歌のように感じられた。
後半は再びライブに生命力が帯びていく。“頼りなくても不確かでもこの道を進んでいく!!”そんな意思表示のようにも響いた「この恋の結末」、会場/ステージ一体になり、場内からも力強い呼応を受けた「触らぬキミに祟りなし」がドライブ感たっぷりに会場を一緒に走らせ、「命短し恋せよ乙女」では、恒例のコール&レスポンスがオーディエンスの恋を応援するように場内に居る男女の名前を交え、会場一体で歌われた。
アンコールに入ると曲前に、10月4日に新作CD「支配するのは君と恋の味」の発売と、10月からの全国4カ所でのワンマンツアーの開催が告げられ、会場から大歓声が上がる。
アンコールでは、初期のCHEESE CAKE時代より大切に歌われてきた「寝グセ」が、しっとりと、より切なさを持って伝えられ、これからの季節にぴったりな「めくりめく夏の思い出」が上昇感とスプラッシュ性、キラキラ感を伴って会場を一足先に真夏へと誘った。
正直、CHEESE CAKE時代は、男女仲良しロックバンド的な印象があった。しかし久々に観た彼女たちは成長していた。それはさしずめ<女性ボーカルを擁したしっかりとしたロックグループ>の様相であった。中でも、男性陣のガシッとした演奏内、埋もれることなく対等に場内に響いていた、あのファニーでキュートな岩淵独特の歌声には目を見張るものがあった。特に中盤のオルタナ性の高いサウンドの中でも、しっかりとあの個性的な歌声を成り立たせていたのは特筆に値する。
弱いが故に逆に弱い者にしか表せないし、同調できない力強さや逞しさを垣間見れた、この日。これからもMOSHIMOは、この独自性と共に多くの人の心に寄り沿い、想いを重ねさせ、笑い飛ばしたり、背中を押してくれたり、一緒に悩んでくれたりしてくれることだろう。まだまだMOSHIMOは強くなっていく。そんなことを確信した一夜でもあった。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:樋渡新一】
リリース情報
触らぬキミに祟りなし
2017年05月10日
ラストラム・ミュージックエンタテインメント
2.赤いリンゴ
3.この恋の結末
4.ポテトサラダ
05.めくりめく夏の思い出
6.途切れないように
7.花束
8.てんてこまい
セットリスト
MOSHIMO ワンマンツアー2017夏
「今宵もキミにこころあり」
2017.7.9@渋谷WWW
- 1. 猫かぶる
- 2. 夏のサイダー
- 3. 赤いリンゴ
- 4. ミラーボール
- 5. ミルクティー
- 6. ポテトサラダ
- 7. スキップ
- 8. ファンシー
- 9. 途切れないように
- 10. 花束
- 11. この恋の結末
- 12. 触らぬキミに祟りなし
- 13. 命短し恋せよ乙女
- EN1.寝グセ
- EN2.めくりめく夏の思い出
- EN3.支配するのは君と恋の味
お知らせ
MOSHIMO ワンマンツアー2017夏「今宵もキミにこころあり」
07/30(日) 名古屋ell.SIZE
MOSHIMOワンマンツアー2017冬
10/28(土) 大阪バナナホール
11/03(金) 名古屋ell.FITS ALL
11/05(日) 福岡BEATSTATION
12/09(土) 渋谷CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。