会場全体に広がった大きな幸福。イトヲカシ、チャレンジ続きの全国ツアーファイナル東京公演をレポート!
イトヲカシ | 2017.07.29
SEが流れるや否や一気に沸き立った観客。一足先に登場したバンドメンバーたちが準備を完了した後、イトヲカシの伊東歌詞太郎と宮田“レフティ”リョウが現れると、ものすごい歓声が上がった。1曲目に届けられたのは、伊東と宮田が心地よいハーモニーを響かせた「スタートライン」。続いて、観客の力強い手拍子がステージから届けられるサウンドと絶妙に融け合った「東方見聞ROCK」。掲げられたたくさんの腕がフロアの全面で揺れる風景が壮観だった「カナデアイ」。ハンドマイクでステージ上を巡りながら歌った伊東が、どんどん観客を巻き込んでいた「ハートビート」――オープニングの4曲によって、Zepp Tokyoは完璧にひとつになっていた。
「16公演、3ヶ月、長かったようで短かったなと思っています。今日がファイナルって言うと特別に聞こえるかもしれないけど、全部が特別でした。今日ももちろん特別です。よく来てくれました! 6月21日にアルバム『中央突破』をリリースしたので、アルバムを引っ提げていない状態でツアーをスタートして、今は引っ提げています(笑)」、最初のインターバルでツアーを振り返った後、伊東は新曲について触れた。「『さぼリーマン甘太朗』というテレビドラマのエンディングテーマを8月9日から配信します。みなさんにお届けしようと思います!」と言ってからスタートさせた「アイスクリーム」は、ライブ初披露。涼やかなサウンドに包まれながら、観客は身体を穏やかに揺らしていた。
ピアノの伴奏と伊東の歌からスタートし、途中からバンド演奏が合流すると、一際美しく響き渡った「あなたが好き」。アコースティックギターを弾きつつ伊東が歌い、宮田のコーラスと寄り添いながら柔らかなハーモニーを響かせた「ヒトリノセカイ」――しっとりとしたテイストの2曲が披露された後に迎えたMCタイム。伊東と宮田は、ツアーの思い出を語り合った。当初は、各地でのエピソードに触れるつもりだったらしいが……タクシーの運転手に勧められて桜を見に行ったら1分咲き。丈が異様に短い、裏地が花柄のMA-1を着ている伊東とバンドメンバーたちに宮田が出くわして衝撃を受けた話(現地の量販店で購入したのだが、男性用が売り切れていて女性用になったのだという)……時間の関係上、語ることができたのは、ツアー初日・函館公演の思い出のみ。しかし、今回のツアーがいかに充実したものだったのかが、賑やかに語り合うふたりの様子から自ずと伝わってきた。
「ひとりじゃないぜ。みんなと歌って、ライブを作り上げよう!」と伊東が観客に呼びかけ、大合唱を巻き起こした「さいごまで」。伊東がマイクを観客に向けると、歌声がますます高まった「トワイライト」を経て突入した「ドンマイ!!」。この曲は途中でバンドメンバーの誰かが“ドンマイトーク”をするのが恒例となっているが、ファイナル公演はイトヲカシのふたりが担当した。「ちょっと前の話なんですけど。“レフティの音源、右側の音がうるさいよ”って言われたんです。どうやら僕の右耳が聴こえにくくなっているらしいぞと。それで耳鼻科に行ったんですけど、大きな掃除機みたいなので耳の穴を吸引されました。“ずぼっ!”っていう音がして、看護婦さんが“すごっ!”って……。耳に何かが詰まってたんです(笑)」(宮田)。「高校生の頃、僕に顔が似ている友だちがいて、仲良くなったんです。その彼が1ヶ月後にドイツに留学することになりまして。そのことについて話をした帰り道、彼がゲームを買おうとしたらお金が足りなくて、僕はお金を貸したんです。でも、出発の前々日まで音沙汰がなく。電話をしたら、翌日、“ごめんな”と言って学校で封筒を渡されました。彼が旅立った翌日、封筒を開けたら、中に入っていたのはユーロでした(笑)」(伊東)……秀逸なドンマイエピソードが連発され、観客は大喜びしていた。
伊東がエレキギターを弾きながら歌い、力強いメッセージを届けた「Never say Never」。「何か布的なものを回してください。何もなければ拳、サイリウムとかでもOK。自由に楽しんでください」と呼びかけ、イトヲカシのふたりは無地の黒い布を振り回しながら観客と一緒に盛り上がった「SUMMER LOVER」。ピアノのイントロが奏でられるや否や、観客の手拍子が起こった「スターダスト」――終盤も、多彩なナンバーの数々で楽しませてくれた。そして、観客が元気いっぱいに歌う《Thank you so much!!》という声が会場全体を爽やかに揺さぶった「Thank you so much!!」が、本編を華麗に締めくくったのであった。
アンコールを求める声に応えてステージに戻ってきた伊東、宮田、バンドメンバーたち。「チャレンジをしてきたツアーも今日で終わるんですけど、アンコールもチャレンジをしたいと思います。11月3日に公開される映画『氷菓』の主題歌を本邦初公開させて頂こうかと。10歳の子が聴いても良いと思って、その子が70歳になっても良いなと思うような曲をずっと目指してきました。この曲もそうなればいいなと思っています」と伊東が言い、アンコールの1曲目は、新曲「アイオライト」が初披露された。
「16公演の全部が思い出にあふれたツアーになりました。全部がひと繋がりだと思います。今日で終わるんじゃなくて、これから先も全部の活動が活かされるんだと思います。イトヲカシ以外の活動も今日に繋がっています。今日の活動も必ずそれ以外に繋がるから。本当にいつも応援ありがとう!」と伊東が挨拶。そして、イトヲカシのふたりのみで演奏した「パズル」がラストを飾った。伊東の歌声、宮田が奏でるピアノ、ふたりのハーモニーを、観客は耳を傾けながら噛み締めていた。歌い終えると、バンドメンバーたちをステージに呼び込んで改めて紹介した後、手を振りながらステージから去った伊東と宮田。彼らを見送った温かい歓声と拍手は、このライブが観客に届けた大きな幸福を鮮やかに示していた。
【取材・文:田中 大】
【撮影:田中聖太郎】
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リリース情報
中央突破
2017年06月21日
avex trax
02.カナデアイ
03.宿り星
04.あなたが好き
05.はちみつ色の月
06.さいごまで
07.ドンマイ!!
08.半径10メーターの世界
09.ヒトリノセカイ
10.スターダスト
お知らせ
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017
08/11(土) 国営ひたち海浜公園
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。