BiSH、3年目にして初の満員御礼となったZepp Tokyoで魅せたライブアーティストとしての高い才能
BiSH | 2017.09.05
BiSHの勢いが止まらない。
2015年3月にBiSを手がけたマネージャーの渡辺淳之介とサウンドプロデューサーの松隈ケンタのコンビよって結成された彼女たちはインディーズ時代に開催された全国10都市での2度のワンマンツアーにおいて全公演を即日完売させ、2016年5月に(たぶん)史上最短となる99秒のシングル「DEADMAN」でメジャーデビューを果たした。同年10月にはメジャー1stアルバム『KiLLER BiSH』をリリースし、iTunes総合アルバムチャートで1位を獲得。2017年6月発売の1stミニアルバム『GiANT KiLLERS』も2作連続でiTunes総合アルバムチャートの1位を記録し、7月22日にはキャリア最大規模(7000人!)となる幕張メッセイベントホールでのワンマンライブもSOUL OUTし、大成功に収めた。メジャーデビューからたった1年でここまで集客できるのはどうしてなのか。
数々のスキャンダルを撒き散らし、伝説を残したBiSは、音楽のみならず、SNSでの発言などを含めた周辺要素も込みで“表現”を捉えている現代的なプロジェクトだった。言うなれば、自らを“ニュース化”することで、大きな話題を集めていた側面もあった。身を切るようなテーマ性を、自分たちの身を素材にしてパフォームする。ある意味、そこで歌われていたのはBiSの事件性そのものであり、それゆえに一部で熱狂的な支持をえていたのだと思う。
しかし、BiSHの場合は、いい曲をいい歌とパフォーマンスで届けるというところに焦点が合わされている……というか、この6人が集まったところで、結果として、楽曲やライブそのものに合ってしまっているのではないかと思う。もちろん、映像やビジュアル面においては常に新しく刺激的な表現を追求しているし、3年連続の開催となったフリーライブ「TOKYO BiSH SHiNE3」(通称TBS)も元々は「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」の2日目の出演を「アーティスット側の事情」でキャンセルしたことがきっかけで急遽、開催されたイベントだった。アーティストが盛り上がりまくった観客側に立った故の措置だったが、翌年からは「TIF」などのダイブを禁止するイベントにも延々と1曲を繰り返すスタイルで出演し、今回8月23日にZepp Tokyoで開催された「TOKYO BiSH SHiNE3」もダイブ、リフト、サーフの禁止が徹底してアナウンスされていた。
会場には、先着700枚限定の無料観覧整理券を手にした清掃員(BiSHファンの総称)と、どうしても入場したい人向けに販売された有料チケットを購入した、合計2700人が集結。しかも、半分近くは同性である女性の観客で埋め尽くされ、彼女たちはキラキラと輝く目でステージを見つめていた。“楽器を持たないパンクバンド”というキャッチフレーズを持つBiSHにはふさわしくない表現かもしれないが、エレクトリカルパレードに合わせてミラーボールが回るオープニングから、観客全員が笑顔で音楽を楽しみ、ライブを観れるのが嬉しくて仕方がないという、実にハッピーなヴァイブレーションで満ちた空間となっていた。
BiSの過激な振る舞いに興味が向いていたファンにとっては寂しいかもしれないが、筆者は純粋にBiSHの音楽を味わえるライブに喜びを感じた。メンバー6人で右手を上げながらステージ上で大きな円を描くように走り回る「SCHOOL GIRLS,BANG BANG」ではセントチヒロ・チッチの演歌のような歌い回しに、アイナ・ジ・エンドが本格派のブルースシンガーのような渋い歌声を被せ、歌い手としての存在感を見せつけた。リンリンの「お前らのノドチンコ、焼き殺してやるかんなー!」という煽りから始まった「GiANT KiLLERS」では観客は拳を上げ、大声を張りあげて応戦。サビでダルマさんが転んだが展開される「VOMiT SONG」は青春を想起させるギターロックで、手を振りながら一人一人の歌唱に耳をすませていると切なさが胸に押し寄せてきて、思わず涙しそうになった。ダンスは決して上手いわけではないが、ヘヴィーなサウンドとの緩急のつけ方がうまく、物語性もあり、観客を煽るタイミングも抜群。ワンマンライブに足を運べば、彼女たちがライブアーティストとしての高い才能を携えていることがすぐにわかるだろう。
最初のMCではアイナから3年目にして初めて満員御礼に達したことが発表された。さらに、「1年目2年目は大赤字で。赤字イベントにきてねって笑って言ってたけど、めちゃめちゃ悔しかったんですよ。1年目の時はこんなに人を集められるなんて思ってなかったです。たぶんやけど、運命って変えられると思ったんです。これからも清掃員の人たち、みんなでBiSHを更新してくれますか!」と呼びかけた後、「運命変えていこうぜ!」と叫び、ロックンロールナンバー「デパーチャーズ」へとなだれ込んだ。チッチがフロアにダイブしたフォークロア調のメタルロック「OTNK」、ハシヤスメ・アツコがメインを張るガーリィーなスカロック「社会のルール」、タッチをしながら歌い継ぐエモい「Is this call??」、はないちもんめから始まり、ステージ上もフロアも肩を組んでの合唱となる「スパーク」、ミドルテンポで心をぐっと掴む「Primitive」と、熱狂と興奮にまみれた乱雑さの中からメンバーによる歌詞やメロディの良さが浮かび上がってきて、何度も泣きそうになる。本当に、BiSHってなんなんだろうか。
ハシヤスメ・アツコにリンリンとアユニ・Dが暴言を吐き続けるミニコントを経て、ライブは後半戦に。ベースが唸り、ドラムが暴れる「ぴらぴろ」や「MONSTERS」、お人形さんになったアユニが心の叫びを吐露する「Marionette」、手をつなぎ、肩を抱き合って歌唱した「ALL YOU NEED IS LOVE」で熱く激しく、静かに優しく心と体を揺さぶり、最後にモモコグミカンパニーが「今日はみなさんありがとうございました。明日から嫌なことがあっても、BiSHはここにいる全員の味方です」と語ったあと、「beautifulさ」では大合唱が巻き起こった。場内に<過去は忘れ/晴れた明日へと行こうぜ>というメッセージが鳴り響く中で、本編の幕は閉じた。
アンコールではチッチから11月29日にメジャー2ndミニアルバムのリリースと、中高生と女性限定のツアーを開催することが発表され、男性ファンからはブーイングが起きたが、女性限定エリアからは大きな歓声が上がった。そして、チッチが「この夏もみんなと過ごせて、楽しかったー!」と声を張り上げ、「BiSH-星が瞬く夜に-」を熱唱。アイナの「一人残らず楽しんでますか?」という問いに、「最初から最後までずっと楽しかったです」と心の中で答えたライブだった。
どうしてBiSHがこんなに集客力があるのか。それは、ただ単純にライブが楽しいからとしか言えない。楽曲のジャンルもメンバーの個性もバラバラだけど、音楽を楽しんでるという充実感と躍動感は一致している。楽しいの一言だけでは言葉足らずかもしれないが、今、一番ライブが熱いアーティストはBiSHであることだけは断言できる。
【取材・文:永堀 アツオ】
リリース情報
Major 2nd ALBUM「未定」
2017年11月29日
avex trax
セットリスト
TOKYO BiSH SHiNE3
2017.8.23@Zepp Tokyo
- 1. SCHOOL GIRLS, BANG BANG
- 2. GiANT KiLLERS
- 3. VOMiT SONG
- 4. デパーチャーズ
- 5. OTNK
- 6. 社会のルール
- 7. Is this call??
- 8. スパーク
- 9. primitive
- 10. ぴらぴろ
- 11. MONSTERS
- 12. Marionette
- 13. Nothing.
- 14. ALL YOU NEED IS LOVE
- 15. beautiful さ
- 16. BiSH- 星が瞬く夜に-
お知らせ
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※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。