完全復活を改めて強く実感させてくれたKICK THE CAN CREW 「復活祭」
KICK THE CAN CREW | 2017.09.22
カウントダウンの数字がスクリーンに映し出され、ついに迎えたスタートの瞬間。タキシード&シルクハット姿のKICK THE CAN CREW(以下KTCC)の3人、KREVA、MCU、LITTLEが「全員集合」を歌い始めた。様々な夏フェスへの出演、14年ぶりのオリジナルアルバム『KICK!』のリリースなど、アクティブな動きが続いていたが、こうして日本武道館にKTCCの音楽が鳴り響いている風景は、完全復活を改めて強く実感させてくれた。そして「今日は共に祝ってくれる素晴らしいアーティストがたくさん来ています。粗相があってはいけない」とKREVAが言い、総合司会いとうせいこうが登場。これ以降、KTCCといとうのMCを間に挟みつつ、ゲスト陣が全力のライブを繰り広げていった。
まずはRHYMESTER。DJ JINが観客を煽った後、Mummy-Dと宇多丸も登場した。「復活おめでとう。再始動を祝して人差し指をかざしてください」、宇多丸の言葉を合図にスタートしたのは「ONCE AGAIN」。2009年にRHYMESTERが再始動した際にリリースされた曲だ。彼らがKTCCの完全復活を心から祝福しているのを感じる選曲だった。そして、「ライムスターイズインザハウス」、アカペラを経ての「Back & Forth」も届けられたが、Mummy-Dと宇多丸によるラップの切れ味、DJ JINの華麗なターンテーブルさばきがすさまじい。卓越したスキルと鋭いセンスを武器にヒップホップシーンで戦い続け、後輩であるKTCCと共に勝ち上がってきたことへの誇りが、生々しく伝わってきた。「Future Is Born」をラストに披露して、颯爽と去って行った3人の姿が、とてもかっこよかった。
2番目のゲストは藤井隆。彼が司会を務めていたテレビ番組にKTCCが出演したのが、両者の出会いのきっかけだったのだという。最初に届けられたのは、2000年にリリースされた大ヒット曲「ナンダカンダ[HyperJuice REMIX]」。イントロが流れた瞬間にものすごい歓声が上がった。ハイテンションな様子で踊りながら歌った彼は、「OH MY JULIET[DJ KAORI REMIX]」と「わたしの青い空[tofubeats REMIX]」も届けた後、宇多丸をステージに招き入れて「Quiet Dance feat. 宇多丸(RHYMESTER)」も披露。「武道館で歌わせて頂ける日が来るなんて思っていなかったです」と、藤井は共演が実現したことを大喜びしていた。そしてラストに「未確認飛行体[ikkubaru REMIX]」を歌い、「この後もお楽しみくださいね!」と挨拶をして去った彼を、観客の大きな拍手が見送った。
「俺にもライブをやらせてよ」と、ステージに現れたいとうせいこうは、後方にいるDJ TATSUTAを観客に紹介。同じ中学に通っていたMCU、TAICHI MASTERは中3の頃、いとうのライブを観に来ていたのだという。こうして共演が実現したことを示し「夢は叶う! その頃、彼らが一番聴いていたはずの30年前の僕の代表曲をやらせて頂きます」という言葉と共にスタートさせた「東京ブロンクス」。ハンドマイクでステージ上を巡りながらラップをするいとうの姿が雄々しかった。続いて「ヒップホップの初期衝動」も届けられ、ラストはMCUも登場。いとうの曲「マイク一本」をカバーした「マイク2本」(MCUが2009年にリリースしたアルバム『SHU・HA・RI~STILL LOVE~』に収録されている)が披露されて大喝采を巻き起こした。
6人のダンサーチームを率いて登場し、1曲目「Ultraviolet」をスタートさせるや否や、みるみる内に全観客を巻き込んでいた倖田來未。何本もの火柱が上がるステージでエネルギッシュに歌い踊る姿は、百戦錬磨のシンガーとしての圧倒的なパワーを示していた。その後も立て続けに「UNIVERSE」「XXX」「Hurricane~MONEY IN MY BAG~」を披露。「アウェイな感じじゃない? お話を頂いた時、私が一番驚いたから(笑)。2002年に北海道のクラブでKICK THE CAN CREWと同じステージで歌わせて頂いたんですけど、またこういう形でご一緒できるとは思っていなかったです」、出演できた喜びを語ったMCを挟みつつ、新曲の「LIT」や「LOADED」も届けられた。そしてラストの「Poppin love cocktail」は、観客が掲げたタオルが会場全体で激しく回転。華やかな魅力にあふれたステージだった。
大量のスモークが吹き上がるステージに登場したKICK THE CAN CREW。KREVA、MCU、LITTLEが、最初に届けた「千%」。完全復活の宣言直後にMVが公開され、ファンを熱く沸かせたこの曲は、大合唱を巻き起こしていた。続いて、メジャーデビュー曲「スーパーオリジナル」も歌った後に迎えたインターバル。「自分たち主催の誕生日会。見せるべきなのは、“あいつらやるな”というところ」とKREVAが言い、アルバム『KICK!』に収録されている「SummerSpot」をスタートさせたが、この曲は3人の掛け合いの難易度が非常に高い。彼ら曰く「ライブでの成功率1%」であるそうだが、見事に歌い切っていた。そして「イツナロウバ」「sayonara sayonara」と「アンバランス」が大盛り上がりとなり、RHYMESTERの3人も加わった「神輿ロッカーズ」はお祭り騒ぎ。激しい手拍子を誘った「地球ブルース~337~」、誰も彼もが飛び跳ねて踊っていた「マルシェ」がラストを飾った。
アンコールを求める手拍子に応えて再登場したKTCC。「あっという間だったね。ここは年長者のMCUさんから」とKREVAに促されて、MCUが挨拶をすることになったのだが、「えー」と喋り始めようとする矢先に「ありがとうございました~!」とKREVAとLITTLEが絶妙なタイミングで遮る寸劇が繰り広げられて観客は大爆笑。ラップ以外のこういうところでも3人のコンビネーションは相変わらず最高だった。そんな微笑ましい場面の後、ようやくMCUは語り始めたのだが……「何を喋ろうかと、昨日とか考えてたんですけども、なんかみんなの顔を見てたら全部忘れちゃった(笑)」と照れ笑いを浮かべ、「つっこまねえよ!」とKREVAに呆れられていた。そして、「我々、KICK THE CAN CREW、もう1回3人でガッチリやっていこうと思うんですけど。3人だけじゃなくて、みんなもガッチリ一緒にやっていきたいと思うんですけど、どうでしょうか?」というLITTLEの言葉によって起こった大歓声を経て披露された「I Hope You Miss Me a Little」。瑞々しいサウンドが会場全体に広がり、観客の瞳を潤ませていた。
「素晴らしいアーティストのみなさんをステージに呼びたいと思います」と言い、いとうせいこう、DJ TATSUTA、RHYMESTER、藤井隆、倖田來未とダンサーたち、KTCCのDJを務めた熊井吾郎をKREVAが改めて観客に紹介。最後に全員が並んで繋ぎ合った手を掲げてお辞儀。こうして『復活祭』は、華麗に締めくくられたのであった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:岸田哲平/中河原理英】
リリース情報
KICK !
2017年08月30日
スピードスターレコーズ
2.千%
3.今もSing-along
4.SummerSpot
5.なんでもないDays
6.完全チェンジTHEワールド
7.また戻っておいで
8.また波を見てる
9.I Hope You Miss Me a Little
10.タコアゲ
セットリスト
KICK THE CAN CREW 「復活祭」
2017.09.07@日本武道館
【KICK THE CAN CREW】- 01.全員集合
- 01.ONCE AGAIN
- 02.ライムスターイズインザハウス
- 03.Back & Forth
- 04.Future Is Born
- 01.ナンダカンダ [HyperJuice REMIX]
- 02.OH MY JULIET! [DJ KAORI REMIX]
- 03.わたしの青い空 [tofubeats REMIX]
- 04.Quiet Dance feat. 宇多丸 (RHYMESTER)
- 05.未確認飛行体 [ikkubaru REMIX]
- 01.東京ブロンクス
- 02.ヒップホップの初期衝動
- 03.マイク2本
- 01.Ultraviolet
- 02.UNIVERSE
- 03.XXX
- 04.Hurricane ~ MONEY IN MY BAG
- 05.LIT
- 06.LOADED feat. Sean Paul
- 07.Poppin love cocktail feat. TEEDA
- 01.千%
- 02.スーパーオリジナル
- 03.SummerSpot
- 04.イツナロウバ
- 05.sayonara sayonara
- 06.アンバランス
- 07.神輿ロッカーズ
- 08.地球ブルース~337~
- 09.マルシェ
- EN 01.1 I Hope You Miss Me a Little
お知らせ
KICK THE CAN CREW CONCERT TOUR 2017
12/01(金) Zepp DiverCity TOKYO
12/03(日) チームスマイル・仙台PIT
12/10(日) Zepp Sapporo
12/16(土) Zepp Nagoya
12/17(日) Zepp Osaka Bayside
12/21(木) 広島 CLUB QUATTRO
12/24(日) 福岡サンパレス
SOUND JUNCTION 渋谷音楽交差点
11/04(土) ベルサール渋谷ガーデン
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。