KREVA主催の“音楽の祭り”「908 FESTIVAL 2017」日本武道館公演をレポート!
KREVA | 2017.09.22
開演を告げる映像がスクリーンに流れた後、ステージに現れたKREVA。その隣に立っているのは三浦大知! いきなりのすごい並びを目の当たりにして観客は大興奮。そして、彼らは「全速力」を歌い始めた。ステージ上の隅々まで駆け巡り、ラップと歌声を交わし合う2人の姿が美しい。『908 FESTIVAL 2017』が見どころ満載のお祭りになることを早くも予感させられるオープニングであった。
KREVAに紹介されて、最初に登場したゲストはMIYAVI。エレキギターを鳴らしながらステージに現れた彼が、「Are you ready?」と観客に問いかけ、「What’s My Name?」をスタートさせた瞬間、日本武道館は強烈な爆音に包まれた。スラッピングを交えたパーカッシブなギタープレイ、パンチの利いた歌声が一体となり、エネルギッシュに迫って来るのが快感! この曲の演奏後、ライブメンバーのBOBO(Dr)とAlisa Ueno(DJ)を紹介し、「スペシャルゲストを呼んでます!」とKREVAを招き入れたMIYAVI。「言っとくけど、俺のイベントだから」と笑ったKREVAが加わり、2曲目は「STRONG(MIYAVI vs KREVA)」を披露。コラボであると同時にバトルであることを感じさせる熱いサウンドが観客の“Oh yeah”という歌声で彩られ、ものすごいエネルギーが生まれていた。そして「『SAMURAI SESSIONS』の続編を作ってます。大阪ではできなかった曲をやっちゃおうと思います!」とMIYAVIが言い、ラストに放ったのは三浦大知とのコラボ曲「Dancing With My Fingers」。情熱的なサウンドに刺激され、観客は興奮を露わにして身体を揺らしていた。
バンドメンバーたちが演奏をスタートさせたのに続いて、ステージ上に颯爽と現れた久保田利伸とKREVA。この2人が並んだことにより、これから始まる曲を悟った観客の歓声がものすごかった。届けられたのは、もちろんあの曲「M☆A☆G☆I☆C」。2人が“久保田利伸 meets KREVA”名義で2007年8月にリリースしたコラボ曲だ。80年代に登場し、日本のポップス界にファンキーなサウンド、グルーヴの概念を浸透させた重要人物である久保田。彼が生み出したサウンドに憧れながらミュージシャンの道へと進むようになったKREVA。偉大な先輩と後輩がこうして1つになって音を交わし合っている姿は、何とも言えず感動的なものがあった。そして最後にThe Isley Brothersの名曲「BETWEEN THE SHEETS」のカバーでも2人のコラボが実現。リズムマシーンの名器TR-909とTR-808をサイズダウンしてリニューアルしたTR-09とTR-08を「TR-908(クレバ)」と称して駆使し、バンド演奏と共に披露したこの曲は、久保田の歌に「K.I.S.S.」の一節を交えたKREVAのラップも加わり、スタイリッシュなムードで観客を包んだのであった。
重低音を利かせたビートとハードボイルドな質感のラップが不敵にきらめく「McLaren」からライブをスタートさせたAKLO。2曲目ではKREVAも加わり、「Catch Me If You Can」を披露。ラップを熱く交わし合い、ラストに腕を組んでポーズを決めた2人は、大喝采を浴びた。クールな共演を終えて、「どうもありがとうございました!」とバックステージに急いで戻ろうとしたKREVAを、「いつもならもうちょっと付き合ってくれるじゃないですか。一生のお願い!」と必死になって引き留めたAKLO……このフェスに於いて5年連続で繰り広げられているお約束のやり取りが展開して観客は大爆笑。「今年はそろそろ本人と歌ってください」と言ってKREVAは立ち去ったが、代わりにJAY’EDが登場し、「Different Man」が届けられた。続いて、原曲ではKREVAが担当しているパートをJAY’EDが歌うレアなコンビネーションからスタートした「想い出の向こう側」は、KREVAも途中から合流。終盤に差し掛かるとAKLOとJAY’EDをステージから送り出し、瑞々しいサウンドに包まれながらKREVAが1人で歌い上げた。
「想い出の向こう側」を歌い終えて、ひとりぼっちになったKREVA。「1人になったら寂しくなっちゃた」と呟き、スタートさせた「くればいいのに」が観客の大合唱を誘った後、「俺が“くればいいのに”って言うと、いろんな人が歌を聴かせてくれました。今年は半端ない歌声の人が歌ってくれます」と言い、絢香をステージに招き入れた。真っ赤なドレスを優雅に揺らしながら歌う「くればいいのに」が美しい。黒色の衣装のKREVAとのコントラストを鮮やかに際立たせつつ響かせる歌声に圧倒された観客が、息を呑んでいるのを感じた。「初めて会った時にかけた言葉をもう一度言う。まじで歌上手いね!」とKREVAも感嘆していた。そして「誰も想像できてない曲。絢香ちゃん、俺と歌うために新曲作ってきた。どうかしてるでしょ(笑)」(KREVA)。「“特別なことができないかな?”と思ってたらできちゃったんです」(絢香)と語り合った2人は、コラボ曲「Glory」も披露。ラストはステージから去ったKREVAのリクエストに応えて、「三日月」を絢香が心を込めて歌い上げてくれた。
ここ数年の908 FESTIVALで恒例となっている『ライミング講座』。今年もユニークな内容が用意されていた。KREVAが教師、ゲストたちが生徒という設定だったが、三浦大知は牛乳瓶の底のようなメガネをかけた真面目なガリ勉、AKLOとJAY’EDは悪ガキっぽい留学生、絢香は恥ずかしがり屋で無口な転校生。ファンキーな用務員役の久保田利伸も交えた寸劇を演じながら、ラップのライミングの仕組みについてKREVAが解説した。最後に実例を示すためにKREVAの曲「ビコーズ」をみんなで大合唱したのだが、無口なまま椅子に座り続けていた絢香が突然立ち上がり、机の中からマイクを取り出して大熱唱。周囲のみんなは仰天……というコメディタッチなストーリーを展開し、ラップの言葉遊びの深さをわかりやすく観客に伝えていた。
続いてKREVAが「新しい技を見せたいなと思います。ここに用意した機材、世界にまだ数百台しかないMIDIコントローラーです。このボタンの1個1個がゲームセンターのゲームのボタンと同じなんです。それが64個ついてます。これを押しながら歌う、“押し語り”をやってみたいと思います。次に出てくる大事な男のカバーです。新しい機材を彼に捧げたい。自分なりに解釈してリミックスしました」と説明。ボタンを押して様々な音色を鳴らしながらスタートさせた曲は、三浦大知の曲のカバー「Delete My Memories」。バンド演奏と、MIDIコントローラーを駆使して放つサウンドを伴奏としながら、美しいメロディを歌い上げた。
4人のダンサーを率いてステージに登場した三浦大知のライブは「(RE)PLAY」からスタート。ダンサーたちの動きと完璧にシンクロしながら踊り、歌声をダイナミックに響かせる三浦の凄味を序盤から強烈に噛みしめさせられた。2曲目「EXCITE」へ突入すると、最早すっかり彼の虜となっていた観客は、掲げたタオルを激しく回転させて大興奮。一瞬たりとも目を離したくないスリリングな場面が続いた。「歌、ダンス、そしてガリ勉生徒役(笑)。三浦大知です!」、最初のインターバルで挨拶をした彼は、「毎年呼んで頂けることに感謝してます。次、少し雰囲気を変えて、スペシャルな形でお届けしようと思います」と言い、KREVAをステージに招き入れた。ギター、ベース、カホン、シェイカーを持った熊井吾郎、三浦の歌とKREVAのラップによるアコースティック編成で披露された「Magic Remix Acoustic Session」。KREVAの曲をカバーした「瞬間speechless」。そして、ダンサーチームと共に華麗なパフォーマンスを繰り広げた「U」と「Cry & Fight」でライブは締めくくられたが、最後まで三浦の表現力とスキルの高さが圧倒的に際立っていた。
フードを被り、リングへ向かうファイターのような姿で登場したKREVAが、大トリを飾った。高速ラップの見せ場を交えて観客を熱狂させた「基準」。激しい手拍子を巻き起こした「トランキライザー」。「俺、このイベントの主。言い換えたらここの王様。王様は昨日から働き過ぎ。王者だって休みたいのだ!」と言いつつスタートさせた「王者の休日」は、絢香と三浦大知との共演となった。続いて、KREVAと三浦がお互いに実に活き活きとしながらラップと歌声を交わし合っていた「蜃気楼」。 柿崎洋一郎(Key)、近田潔人(G)、森多聞(B)、白根佳尚(Dr)、熊井吾郎(MPC & DJ)――バンドメンバーを紹介した後、「いつまでもやり続けられるように、いろんな場所に出向いて行って、さらに俺の居場所を広げていきたいと思います。残り少ない時間、はっきりさせておこうぜ。2017年の9月8日、KREVAの日、日本武道館。ここが俺らの居場所!」という言葉を添えて披露された「居場所」は、とても温かい空間を生み出していた。そして、観客が穏やかに身体を揺らしながら耳を傾けた「スタート」。久保田利伸の歌が加わり、美しいサウンドを響かせた「音色」、大合唱を巻き起こした「Na Na Na」で本編は締めくくられた。
アンコールでは、2009年にリリースされた三浦大知の曲「Your Love feat. KREVA」にMITAVIのギターと、KREVAが駆使するMIDIコントローラーのサウンドも加わったスペシャルバージョンが披露された。そしてラストは「全速力」。AKLOとJAY’EDも加わった5人編成でスタートし、中盤で久保田利伸、絢香、三浦のダンサーチームも合流。全員が笑顔を浮かべながら賑やかに盛り上がっていた。歌い終えた後、ゲストたちを送り出し、「どうもありがとうございました。また会いましょう!」と手を振ってステージから去ったKREVAに贈られた歓声は特大級。レアな共演を次々実現しつつ、各出演アーティストの魅力も存分に引き出していた『908 FESTIVAL』は、今年も素晴らしい音楽のお祭りだった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:岸田哲平/中河原理英】
リリース情報
嘘と煩悩
2017年02月01日
ビクターエンタテインメント
02. 神の領域
03. 居場所
04. 想い出の向こう側 feat. AKLO
05. FRESH MODE
06. Sanzan feat. 増田有華
07. ってかもう
08. あえてそこ (攻め込む)
09. タビカサナル
10. もう逢いたくて
<Bonus Track>
11. 君に夢中
セットリスト
908 FESTIVAL 2017
2017.09.08@日本武道館
■KREVA- 01.全速力(Feat. 三浦大知)
- 01.What’s My Name? Day 2 mix(MIYAVI)
- 02.STRONG(MIYAVI vs KREVA)
- 03.Dancing With My Finger(feat. 三浦大知)
- 01.M☆A☆G☆I☆C(久保田利伸 meets KREVA)
- 02.Between The Sheets(with KREVA)
- 01.McLaren(AKLO)
- 02.Catch Me If You Can(Feat. KREVA)
- 03.Different Man(AKLO×JAY’ED)
- 04.想い出の向こう側(KREVA feat. AKLO & JAY’ED)
- 01.くればいいのに(KREVA feat. 絢香)
- 02.Glory(未発表曲)(絢香 feat. KREVA)
- 03.三日月(絢香)
- 01.ビコーズ
- 01.Delete My Memories
- 01.(RE)PLAY
- 02.EXCITE
- 03.Magic Remix(KREVA×三浦大知)
- 04.瞬間speechless
- 05.U
- 06.Cry & Fight
- 01.基準
- 02.トランキライザー
- 03.王者の休日(feat. 絢香 & 三浦大知)
- 04.蜃気楼(Feat. 三浦大知)
- 05.居場所
- 06.スタート
- 07.音色(feat. 久保田利伸)
- 08.Na Na Na
- 01.Your Love(三浦大知 feat. KREVA & MIYAVI)
- 02.全速力 REMIX(KREVA、三浦大知、AKLO、JAY’ED、MIYAVI、久保田利伸、絢香)