開催2回目も大盛況、ヒップランドミュージックの新人発掘イベント『xsprout.#2』
HIP LAND MUSIC | 2017.10.06
HIP LAND MUSICが手がける新人発掘プロジェクト「xsprout.」のライブイベント「xsprout. #2」が10/4(水)下北沢ERAで行なわれた。このイベントはプロジェクトへの応募やプロジェクトスタッフの推薦による若手バンドが出演したもので、この日はCalmine、STEPHENSMITH、yeti let you notice、ベランダという4組のほか、ゲストにthe quiet roomが出演。まだ広く知られていないバンドたちだったが、そのフレッシュな音楽をお客さんが自分の目と耳で触れることで、新たな音楽を知る、素晴らしい出会いの場所となっていた。
トップバッターを飾ったのは名古屋の4人組ロックバンドCalmine(カーマイン)。ボーカル、鶴田龍之介(Vo/Gt)の透明感のある歌声が紡ぐセンチメンタルなメロディが魅力のバンドだ。ピアノのイントロで幕を開けた「Evergreen」や温かいシンセのフレーズが郷愁を呼ぶ「季節のせいにして」など、曲ごとに表情を変える良質で淡いポップソングを届けていく。歌われるのは移りゆく季節と出会いと別れ、そこで波立つ感情の断片。ラストの「Universe」はドラマチックに膨れ上がる音像が言い様のない昂揚感を残してくれた。
続いて、全員がきっちりと左右に分けたヘアスタイルで登場したトリオバンドSTEPHENSMITH(スティーブンスミス)は、70年代ブラックミュージックの影響を色濃く感じさせるアーシーなグルーヴでフロアを心地好く揺らした。「微温湯の雨」をはじめ、スリーピースゆえの音数の少なさをあえて武器にするように、大きく余白を残しながらループする演奏がハイセンスだ。スローな3拍子にのせて、ファルセットを交えたボーカルが愛の痛みを歌う「皺寄せ」まで、渋谷ERAをうっとりするような空気で包み込んだ。
中盤、ゲストとして登場したのはthe quiet room。すでに渋谷クアトロでワンマンを成功させるバンドということもあり、この日の出演アーティストのなかでは一歩先をゆく存在だったが、「ゲストという枠だけど、ふんぞり返るつもりはなくて、挑戦者としてこのイベントを盛り上げたい」と、菊池遼(Vo/Gt)は気合いを込めた。ライブの定番曲「Number」や新曲「Fressy」という心踊るような瑞々しいポップソングから、クリスマスを先取りするようなウィンターソング「スロウダンス」、さらに疾走感溢れるアッパーな「Instant Girl」まで、メンバー4人が一体となる熱いパフォーマンスでお客さんと向き合っていた。
京都発の男女混成4人組バンド、ベランダはどこかアンバランスな感性でユニークなポップミュージックを鳴らした。朴訥としたポップソングに歪んだギターがカットインする「早い話」など、全く予測もつかない展開に惹きつけられる。MCでは「これ、LINE LIVEで配信されてるようですが、知ってはりますか?」(髙島颯心(Vo/Gt))「お母さんが見てんねん」(金沢健央(Dr/Cho))という、ほのぼのとしたMCで笑いをとり、ラストは男女二声のハモりが温かい味わいを生んだ「最後のうた」で締めくくったベランダ。決して大袈裟ではないが、誰の日常にもさりげなく寄り添う、飾らなさに魅力があるバンドだった。
トリを飾ったのは美しくも退廃的なポストロックサウンドで下北沢ERAを幻想的なムードで包み込んだ4人組yeti let you notice(イエティ レット ユー ノーティス)。ボーカル大雪男(Vo/Gt/Syn)がひとりファルセットで歌い出し、そこに繊細なバンドサウンドが重なり合った「競技会」を皮切りに、そのサウンドは変拍子やポリリズムを交えながら静と動を行き来する。なかでもアンコールで届けた「みんなの歌」で、ピアノと優しいメロディにのせた、“お前らみたいな屑が生きてるせいで くそったれみたいな人生を生きている”という歌い出しは鮮烈だった。劣等感や自己嫌悪を抱えて生きる“みんな”へと捧げた歌には、その感情を互いに理解し合いたいという切なる願いを感じてならなかった。
この日、出演した4組はまだ無名だが、それぞれが強い個性と、伝えたい想いを持ち、そこに確かに光るものがあるバンドたちだった。今回で2回目となった「xsprout.」。この場所から新たなムーブメントが起こりそうな予感がする。この日、新人イベントにしては異例なほど、フロアに大勢のお客さんが詰めかけたことも、その期待の大きさを物語っていた。
【Text by 秦 理絵】
【Photo by 石崎祥子】
セットリスト
xsprout.#2
2017.10.4@下北沢ERA
[1.Calmine]
- 1.Evergreen
- 2.想像のキャンバス
- 3.季節のせいにして(short ver.)
- 4.エンドレスサマー
- 5.Universe
- 1.新曲
- 2.微温湯の雨(ぬるまゆのあめ)
- 3.皺寄せ
- 4.夜釣
- 1.Number
- 2.Fressy
- 3.スロウダンス
- 4.Locus
- 5.Vertigo
- 6.Instant Girl
- 1.早い話
- 2.Let’s Summer
- 3.しあわせバタ〜
- 4.ハイウェイオアシス
- 5.最後のうた
- 1.競技会
- 2.アニメーション
- 3.bouget
- 4.ori
- en.みんなの歌