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闘牛場の最後を飾る、ORANGE RANGEが生み出した祝祭空間「テレビズナイト」

ORANGE RANGE | 2017.10.27

 とにかくもう、暑くて熱い、格別な沖縄の一日だった。そして、ORANGE RANGEがORANGE RANGEであり続けていることの凄さ、面白さをひしひし感じる一日でもあった。
ORANGE RANGEがデビュー前からずっと続けている主催イベント『テレビズナイト』。今年はそのスペシャルバージョンというべき野外開催で、しかもそれが元闘牛場の沖縄市野外ステージで行われた――と言っても、沖縄のロック事情に詳しい人以外は「なんで闘牛場?」と思うだろう。実は、この闘牛場というのは1980年代から開催されている沖縄のロックフェス『ピースフルラブ・ロックフェスティバル』の主な会場であり、オキナワンロックの数々の伝説が生まれた場所なのだ。そして、ORANGE RANGEのメンバーが生まれ育ったのもこのすぐ近く。いわば地元中の地元。その会場がアリーナに建て替えのため年内に取り壊されることとなり、「闘牛場ファイナル」と銘打ってこの日のイベントは行われた。
出演バンドはORANGE RANGE、四星球、SCANDAL、04 Limited Sazabys、そしてBEGIN。対バンなどで交流がある中で、きっとORANGE RANGEのメンバーが「地元で伝説の会場の最後を飾るなら」と強く思い入れたラインナップだったのだろう。間違いない。それくらい、どのバンドも、観ていて「今、この場所で聴けること、体感できること」を全身が喜んで、身も心も熱くなるような、気持ちのいいステージだったのだから。

 心配された雨も止み、曇り空ながら朝から気温は軽く30度越え。野外ステージ周辺ではじーわじーわと蝉の声もして「沖縄はまだ夏」を実感する。ステージエリアのオープン前、午前中から会場ではスケートボードやBMXのパフォーマンス、そしてORANGE RANGEと四星球のメンバーも参加したバスケットボールのフリースロー大会や3on3が行われた。こうしたストリートカルチャーの実演を通して、その面白さ、カッコよさを体感させるのは『テレビズナイト』おなじみの企画。自分たちの好きなこと、楽しいことをどんどん共有していこうという姿勢はORANGE RANGEがバンドとして貫いていることのひとつだろう。それにしても今回圧巻だったのはフリースタイルスケートボードの山本勇のパフォーマンス。弱冠14歳にして、数々の世界大会で優勝しているキレッキレの技に目を奪われた。

 そして15時過ぎ、いよいよ始まったステージのトップは四星球。「日本一泣けるコミックバンド」で「とにかくライブがすごい」と評判の彼ら。その初めての沖縄ライブを、闘牛場の円形の客席に詰めかけたお客さんもワクワク待ち構えている様子。するとSEから「どうも沖縄のみなさんはじめましてー!」とVo.北島康雄の声が響き渡る。で、〈自家用ジェットで来ました〉設定で、段ボールのでっかい手作り飛行機を神輿のようにわっしょいわっしょいしながら客席後方からメンバー登場。そこから1曲目「運動会やりたい」に突入し、あれよあれよの間にお客さんもみんなぐるぐる回って踊り出す状況へ。沖縄ご当地ネタも次々繰り出し、最新シングル曲「お告げ」は後半「お告ゲーション(=ロコローション)」バージョンになって、北島がHIROKIとRYOの巨大な写真を天秤みたいに担いで歌うとか、ラストの「妖怪泣き笑い」には、さらに超巨大でおそらく中に風船がつまったぼっこぼこのYAMATO人形が登場するとか、機関銃のようなボケ連射と共にレンジトリビュートをきっちり入れ込んでいた。ORANGE RANGEと同世代、結成時期も同じの「同期」バンドとして、「友達の実家に遊びにきた」様子でのびのびと、かつ1曲1曲これでもかと刻み込むように(そもそも1曲がやたらと長い!)、四星球は噂通り、いや、噂以上の濃いステージで本領を見せつけた。

 続いて登場したのはSCANDAL。沖縄でも女子高生バンドのカバー率ナンバーワンと(この日のMCとラジオブースの司会担当、沖縄芸人モバイルプリンス情報によると)言われる、昨年結成10周年を迎えた、ライブにも定評のあるガールズバンド。登場するだけで一気に、ラフな可愛さと大人女子の魅力でステージが華やぐ。1曲目「LOVE SURVIVE」の疾走感のあるギターリフから、切ない感情にドライブがかかるようなSCANDALワールドが展開されていく。ダンサブルなアッパーチューン「テイクミーアウト」のサビのフレーズが沖縄の空に広がると、この日の曇り空が晴れやかになるような爽快感が生まれた。「DOLL」ではオーディエンスが持つ、この日参加のそれぞれのバンドのタオルが一斉に舞うように振られて、カラフルな一体感に会場が沸く。そして、ラストはHARUNA(Vo・Gt)の「今日はこの曲やりに来ましたー!」という言葉から、ORANGE RANGEのNAOTOが楽曲提供した「太陽スキャンダラス」へ。レンジの楽曲に通じるキャッチーなメロディーとTOMOMI(Ba・Vo)、HARUNAの掛け合いヴォーカルの魅力は熱気をさらに一段アップさせ、SCANDALのライブ初体験の観客が多かったこの日の会場に大きな拍手が巻き起こった。

 少しずつ空が暮れかかる時間にステージに現れたBEGIN。この日は石垣島から駆けつけたという彼ら。「沖縄の音楽シーンに欠かせない、この闘牛場の最後に呼んでもらって感謝しております」と比嘉栄昇(Vo)が挨拶して、デビュー曲「恋しくて」で、スタート。BEGINのブルースが、ここで繰り広げられた沖縄音楽の歴史に捧げられるように、しっとりと響く。歌い終わって栄昇は、〈島から東京に出て不安でしょうがなかった時、コザ(沖縄市)でライブハウスをやってた“かっちゃん”(※沖縄の伝説的バンド、コンディショングリーンのボーカリスト)が「どうにもならなかったら、いつでも帰っておいで」って言ってくれた〉というエピソードを披露。沖縄の先輩ミュージシャンから見守られ、背中を押された経験をORANGE RANGEも引き継いでいるはず、と、訥々と語った。続いて、三線のフレーズが心地よく響く「海の声」を島袋優(Gt・Vo)が歌い、そこからは一気にブラジルサンバの元になった2拍の「足踏みリズム」、マルシャの世界へ。「上を向いて歩こう」に始まる昭和歌謡ヒット曲メドレーからBEGINのヒット曲メドレーまで、比嘉栄昇、島袋優、上地等(Pf・Vo)それぞれが歌う13曲で、会場は踊りと笑顔と歌声が混じり合う、幸福な祭りの空気に包まれた。そして、最後は「島人の宝」。故郷を、自分が生まれた場所を誇りに思う気持ちがこもった、BEGINの、そして沖縄のアンセムを、オーディエンスも皆一緒にくちずさみ、かみしめていた。

 とっぷりと暗くなり、まばゆい照明にステージが浮かび上がるなか登場した4ピースバンド、フォーリミこと、04 Limited Sazabys。弾けるように音を放った1曲目「Warp」、そして「Climb」で、GEN(Ba・Vo)のハイトーンボイスとバンドの高速グルーヴが沖縄の夜の空気を震わせると、闘牛場の円形の客席がまるでライブハウスのようになり、ぎゅっと熱気の密度が上がった。MCではGENが「沖縄でBEGINとORANGE RANGEの間にやるって、アメリカでボン・ジョヴィとエアロスミスとやるぐらいすごい」と言い、自分はORANGE RANGEがデビューした当時〈直撃世代〉としてバンドに憧れ音楽を始めた、とも告白。続く「monolith」では、バンドが放つエネルギーをオーディエンスも真っ向から受け止めて、客席から自然とモッシュやダイブが巻き起こった。骨太なバンドサウンドと、音源で聴く以上に表情豊かで繊細に感じられるGENの声に、まさにライブで観るべきバンドだと実感する。熱帯夜の曇り空を破り、星が降り注ぐようなエモーションを確かに届けた「midnight cruising」。1曲1曲ごと、全力疾走を繰り返すように、まっすぐ届けられる衝動が観る者の心に刺さる。そして「Squall」、最後は「swim」。心の奥底の暗さを覗きながら、光が射す方へ進んでいく命の力。まさに、そのものが彼らのステージから溢れ出していた。

 そして、ついに、いよいよ。もちろんラストを飾るのはORANGE RANGE。メンバーの登場で客席から大きな歓声と指笛が沸き上がり、「以心電信」からスタート。一気に気持ちが上がるリズムとメロディー、「僕らはいつも繋がっているんだ」のシンガロングでしょっぱなから会場全体が多幸感に包まれる。続いて新曲「チラチラリズム」。11月1日リリースの新曲とはいえ、沖縄県内では地元コンビニのCM曲としてすでにおなじみであり、レンジならではの「らしさ」と新しさがミックスされた曲調にがっつり客席も盛り上がる。
「後輩、同期、先輩といっしょに闘牛場最後のライブができてうれしい」「自分たちだけじゃできなかった、俺らは人に恵まれてるバンドだね」というHIROKI(Vox)のMCの後、地元沖縄市のキッズダンサー10人を呼び込んで「SUSHI食べたい feat.ソイソース」をコラボ。これが、サウンド、演出、照明、ダンスのキレが相まって異様なまでにカッコいい。とにかく寿司ネタを連呼する、ちょっと頭がどうかしてるんじゃないかと発表当時から話題だった楽曲がこんなにカッコよくなるってどういうこと!? と頭を抱えつつニヤニヤしてしまうような素晴らしさ。さらに「男子ing session」でテレビズダンサーズ4人を呼び込み、ダンスチューン2連発で会場は湯気が立つような熱気に染まった。そこに響いたのが「*~アスタリスク~」、「花」。メガヒット曲を、ただ懐かしさを感じる曲ではなく、今、リアルに胸に響く曲として鳴らすことができる。それはORANGE RANGEの強みであり、HIROKI、YAMATO(Vox)、RYO(Vox)、YOH(Ba)、NAOTO(Gt)がライブを積み重ね、自分たちのやりたいことを貫いてきたからこそ、実現していることだと思う。
自分たちの地元への思い、沖縄市が基地を抱える街であるという歴史と現実も知ってほしいというニュアンスをにじませるYOHのMCに続いて、ライブ初披露の新曲「アオイトリ」。不穏なイメージの中に一筋の光を見るような、エッジのきいたサウンドとメロディー、言葉にぐいぐい引き込まれる曲だ。そこからキラーチューン「イケナイ太陽」、「キリキリマイ」へと疾走したままエンディング。「キリキリマイ」で、ボーカル3人とYOHとNAOTOが一斉にフロントに並び立ち客席をあおる姿にはゾクゾクするような凄みとパワーが宿っていた。バンドとしてキャリアを積み重ねながら、メンバー個々の個性をより発揮できる境地へとORANGE RANGEが進化を続けていることが、その佇まいにしっかりと現れていた。
会場全体、老若男女、小さな子どもたちも声を合わせたアンコールの声がかかり、出演者全員も呼び込んで、「上海ハニー」でカチャーシーを踊る締めくくり。四星球の大道具=巨大YAMOTO人形も再度飛び出しての大団円は、地元・沖縄に捧げる思いとORANGE RANGEの世代を超えた繋がりへの感謝が詰まった、まさに「祝祭」の光景だった。

【取材・文:長嶺陽子】
【撮影:G-KEN】

tag一覧 ライブ

リリース情報

UNITY

UNITY

2017年11月01日

SUPER((ECHO))LABEL

1.アオイトリ
2.チラチラリズム -UNITY ver.-
3.脳内ポップコーン
4.Second Hand
5.Carnation

お知らせ

■ライブ情報

ORANGE RANGE LIVE TOUR 017-018 ~UNITY~
[2017]
11/22(水) 東京かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
11/24(金) 京都・ロームシアター京都
11/26(日) 群馬・みかぼみらい館
12/01(金) 岩手・二戸市民文化会館
12/03(日) 秋田・由利本荘市文化交流館 カダーレ
12/09(土) 長崎・長崎ブリックホール
12/10(日) 佐賀・鳥栖市民文化会館
12/12(火) 鹿児島・宝山ホール
12/15(金) 東京・中野サンプラザホール
12/16(土) 東京・中野サンプラザホール
12/22(金) 富山・クロスランドおやべ
12/23(土) 滋賀・守山市民ホール
[2018]
01/07(日) 大阪・オリックス劇場
01/08(月) 兵庫・三田市総合文化センター 郷の音ホール
01/13(土) 愛知・アイプラザ豊橋
01/14(日) 三重・シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)
01/20(土) 静岡・裾野市民文化センター
01/21(日) 埼玉・東松山市民文化センター
01/27(土) 山口・スターピアくだまつ 大ホール
01/28(日) 岡山・ロマン高原かよう総合会館
02/03(土) 栃木・小山市立文化センター
02/04(日) 神奈川・厚木市文化会館
02/11(日) 高知・県立県民文化ホール オレンジホール
02/12(月) 愛媛・松前総合文化センター

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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