やりたいことをやって武道館を目指す。DATSがツアーファイナルで見せた新たな一歩
DATS | 2017.12.07
6月に待望のデビューアルバム『Application』をリリースし、フジロック・フェスティバルをはじめとしたフェスへの出演も果たしたDATS。アルバムを引っさげてのツアー「Application Tour」の最終公演が、11月19日(日)渋谷WWWにて開催された。バンド史上最大規模でのワンマンとなったこの公演は見事ソールドアウト。サラウンド音響システムを導入してのスペシャルなライブとなったこの日の模様をレポートする。
日曜の夜、満員のオーディエンスが訪れた渋谷WWW。会場中から拍手と歓声を送られる中、メンバーが1人ずつ入場しライブはスタートした。シンセのシーケンスフレーズとクラップが絡むポリリズム的なイントロが会場を包み込み、生ドラムとシンセのコード鳴り響く。オープニングトラックは「Amazon」だ。トライバルなドラムプレイに観客は思い思いに身体を揺らし、杉本亘(Vo)の「楽しんでいこうぜー!」というMCに歓声をもって応える。早速会場後方のスピーカーを活用したダビーな音処理も施され、サラウンド音響システムの効果も抜群だ。
続くのは、フィルターがかけられたシンセフレーズとドラムのコンビネーション。そしてファットなキックが鳴り響く。「Tinnder」だ。音源よりもより生のバンド感が加わったサウンドメイキングは、2017年らしいエレクトロニクスと生音のバランス感。ファンキーなベースが踊らせ、杉本はハンドマイクで踊りながら歌う。よりフィジカルなDATSの姿がステージには展開されていく。
「アプリケーションツアーへようこそ。皆さん楽しむ準備はできていますか?」というMCに続いて演奏されたのは「Mobile」。イントロのシンセが会場中をぐるぐる回り、EDMで言うところのドロップ的な展開ではボーカルサンプルが会場中をサラウンドしていく。平熱のサイケデリックとでも呼びたくなる空気感が心地よい。そして続くのはアルバムのオープニングトラックである人気楽曲「Netflicks」。四つ打ちのキックにメロウでノスタルジックなシンセが重なり、確かな熱量を持ちながらも抑えたヴォーカルが楽曲をリードしていく。トロピカルハウスにも通じるバレアリックなフィーリングに身を委ねていると、展開は一転。ヘヴィーなギターサウンドが鳴り響き、ドラムソロになだれ込むというサプライズも。そして「Health」ではアシッドなベースラインと低音ヴォーカルでディープなフィーリングでフロアを満たす。ビートレスになる展開からの激しいアウトロは、音源をさらにダイナミックにした印象だ。
ここでさらなるサプライズが。「ツアーファイナルということで、今日は特別にアコースティックセットを用意してきました。珍しいですけど僕がギターを持って歌うので楽しんでください」という杉本のMCとともに、始まったのはアコースティックバージョンの「Coolwind」。アコギのコードカッティングとミュート気味に鳴らされるエレキギターが絡み、ヴォーカルのメロディーが際立つ仕上がりに。続いて「なんと俺1人で歌います」と杉本がソロで歌い始めたのは「Some boy」。しかしロックバンドのアコースティックバージョンというよりも、どこかR&Bっぽいフィーリングも漂うところがなんともDATSらしい。
アコースティックセットは終了。「引き続き爆音で、サラウンドシステムで盛り上げていきたいと思います」との宣言通り、「Queen」ではこの日一番の重低音が鳴り響き、フロア中が振動。そしてダビーなヴォーカルとトリッキーなビートで、フロアに異質な雰囲気を持ち込んだ「Filter」では、ラッパーの荘子itが登場。会場を煽り、セッションになだれ込む。オーディエンスの手拍子をサンプリングしてその場でループ。ドラムサウンドをそこに重ねて行くと、会場中で「D」「A」「T」「S」と大合唱。最大規模の熱狂が会場に広がった。
そんな熱を冷ますように、メロウでブリージンな「Patagonia」そして「Run」を挟み、ライブは最後の曲へ。
「ここ(渋谷WWW)をソールドするのは今年の一つの目標でした。本当にありがとう。ここで演奏してみて新たに目標ができました。馬鹿げてると思うかもしれないけど、俺ら武道館に立ちたいです。ここにいるみんなと一緒に行きたい」と杉本がオーディエンスへの感謝と目標を宣言し、「Candy girl」で本編は幕を閉じた。
アンコールの声に再びステージに上がった彼らは、新作のリリースと次回ワンマンを予告。そして新曲「Heart」と「Jane」「Message」を演奏したわけだが、やはり注目は新曲「Heart」。鼓動のような四つ打ちビートとセイレーンの声のようなシンセに導かれて始まるこの楽曲は、まるでサッカースタジアムでの合唱を思わせるシンガロングなコーラスが印象的なアンセムだ。サラウンドの音処理も含め、第1期DATSのエピローグかのような祝祭的な雰囲気を醸し出していた。
音源以上にフィジカルなバンド感に溢れた演奏を見せてくれたDATS。バンドが上り調子であることを伝える陽性なヴァイブスと、それに応えるオーディエンスの熱量、そして新曲「Heart」からは、武道館実現への確かな手応えを感じさせられた。
【取材・文:照沼健太】
【Photo by Kosuke Ito】
リリース情報
Application
2017年06月07日
Rallye Label
02. Filter
03. Mobile
04. Health
05. Amazon
06. Queen
07. Tinnder
08. Patagonia
09. Jane