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奥華子 “ダーク”な楽曲のみで綴られた裏ベスト的ライブ「弾き語りダークナイト☆」

奥華子 | 2017.12.15

 シングル「思い出になれ/愛という宝物」「キミの花/最後のキス」を含む9thアルバム『遥か遠くに見えていた今日』のリリース、さらに全国ツアー「奥華子コンサートツアー2017 弾き語り~遥か遠くに見えていた今日」を開催するなど、充実した活動を行ってきた奥華子。12月8日(金)に東京・なかのZEROホールで行われた「奥華子の弾き語りダークナイト☆」は、切なさと悲しさに満ちたラブソング、死生観を描いた楽曲などを中心にしたスペシャルな内容となった。

「手拍子なし!涙あり?失恋バラードやダークな曲オンリーのスペシャルライブ!」。公式HPに記されたこのキャッチフレーズが示す通り、この日行われた「奥華子の弾き語りダークナイト☆」は、哀切な失恋ソング、自らの存在と向き合うような楽曲などを中心とした“ダーク"なステージとなった。ライブの構成は、生ピアノの弾き語りと自作詩の朗読。“どこまで君を責め続ければ 僕の心は救われるの?"というフレーズが響くオープニングナンバー「幻の日々」によって、会場全体が美しい憂いに包まれる。さらに“もう一度抱きしめてほしい"という切実な願いを綴った「好きだったんだ」を歌った後、「今日はいつも違う雰囲気で、歌と朗読を。ただただ歌っていきたいと思います」と挨拶。椅子と机が置かれたステージ上手に移動し、“どうして人を好きになるんだろう?"から始まる朗読を披露する。観客は物音一つ立てず、じっと彼女の言葉に耳を傾けている。

 再びピアノに戻り、「秘密の宝物」「さよならの記憶」を歌う。どちらも“好き"という気持ちを描いた楽曲だ。誰かを好きになったときの切なさ、それを上手く伝えられないことのもどかしさ。恋愛の機微を掬い取るような楽曲はもちろん、奥華子の大きな魅力につながっている。

 その後も朗読と弾き語りを交互に繰り返しながら、ライブは進んでいく。“曲を作り始めた頃、何を歌いたいの? ときかれたとき、いつも、孤独を歌いたいと言っていた"という朗読の後は、≪どうして今一人なのか/理解できず ただ眠った≫と歌う「月のそばで眠りたい」、別れてしまった恋人との日々を空虚な気持ちで回想する「トランプ」を披露。さらに“どうして人は死んでしまうのだろう。どうせ死んでしまうのに、どうして生まれてくるんだろう”からはじまる朗読を挟み、震災の被災者から受け取った手紙をきっかけに書かれたという「悲しみだけで生きないで」、“この愛、この寂しさはずっと忘れないだろう"という強い感情を映し出す「rebirth」を歌い上げる。普遍的なテーマをシンプルな言葉で綴った自作詩とオリジナル曲が呼応し、より豊かな感動へとつながっていく。エモーショナルな響きを備えたピアノ演奏、歌詞に内包された感情と生々しく重なるボーカル、楽曲のなかにある情景とリンクした照明も素晴らしい。

 どうしても他人と比べてしまい、どう見られたいのかを気にしてしまう人の在り方を描いた朗読の後で歌われたのは、“一人でいいから本当に分かり合える人がほしい”と願う「迷路」、“本当の心で人と接しすることができないのはなぜだろう?”という思いを込めた「他人の涙」。恋愛ソングの名手として知られる彼女だが、他者との関係のなかで生きざるを得ない人間の存在をまっすぐに描いた楽曲もまた、シンガーソングライター・奥華子の一面なのだ。

“あなたにとって恋愛とは何ですか?”という質問に、私は迷わず、生きる意味と答えていた”という朗読によって、ライブは終盤へ。≪あなたと出会えたこと とても幸せだったよ それだけは伝えたい≫というラインが心の深い部分に届く「最後の恋」、好きだということを伝えられず、切ない思いだけが重なっていく極上の片思いソング「あなたに好きと言われたい」、運命的な愛の終わりを叙情的に描いた「ピリオド」。恋愛の本質へとまっすぐにつながる言葉、繊細な思いをドラマティックに映し出すメロディが、ピアノの弾き語りによって生々しく響き渡る――それはまさに奥華子の真骨頂とも言えるシーンだった。ライブが進むにつれてダイナミズムが増し、リアルな思いを生み出していくボーカリゼーションも圧倒的だった。

「こういう形のライブを初めてやらせていただきました。もし好評であれば、またやりたいと思います」という挨拶から始まったアンコールでは、昭和の歌謡曲を代表する作詞家・阿久悠の歌詞に曲をつけたバラードナンバー「黄昏のアンニュイ」、そして、“誰もが落ち込んだり、悲しんだりしながら日々を戦ってる"と「それぞれ」を披露。

 この日演奏されたシングル曲は「あなたに好きと言われたい」のみ。知る人ぞ知る名曲を中心とした、いわば裏ベスト的なライブだったわけだが、心のなかにある暗い感情、葛藤や悩みを綴った楽曲の数々は間違いなく、奥華子というシンガーソングライターの本質を露わにしていた。ピアノの弾き語りと朗読だけで2時間半のステージをやり切る技術と集中力の高さを含めて、感じるところの多いライブだった。「弾き語りダークナイト☆」、シリーズ化を切に願う。

【取材・文:森 朋之】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 奥華子

リリース情報

遥か遠くに見えていた今日

遥か遠くに見えていた今日

2017年05月17日

ポニーキャニオン

1. Rainy day
2. 恋のはじまり
3. 愛という宝物
4. プロポーズ
5. 彼女
6. 365日の花束
7. キミの花
8. ほのぼの行こう
9. 思い出になれ
10.最後のキス
11.Mail
12.アイスクリーム
13.スタンプラリー
14.遥か遠くに

セットリスト

奥華子の弾き語りダークナイト☆
2017.12.08@なかのZEROホール

  1. 01.幻の日々
  2. 02.好きだったんだ
  3. ―朗読―
  4. 03.秘密の宝物
  5. 04.さよならの記憶
  6. 05.透明傘
  7. ―朗読―
  8. 06.月のそばで眠りたい
  9. 07.トランプ
  10. 08.パズル
  11. ―朗読―
  12. 09.きみの空
  13. 10.悲しみだけで生きないで
  14. 11.rebirth
  15. ―朗読―
  16. 12.迷路
  17. 13.羅針盤
  18. 14.他人の涙
  19. ―朗読―
  20. 15.最後の恋
  21. 16.あなたに好きと言われたい
  22. 17.ピリオド
 ENCORE
  1. EN 01.黄昏のアンニュイ
  2. EN 02.それぞれ

お知らせ

■ライブ情報

Happy 48th!@FM Christmas Special from Centrair
12/23(土) 中部国際空港セントレア

ニッポン放送ラジオ・チャリティーミュージックソン
12/24(日) 17時頃〜
コクーンシティ(さいたま新都心駅)コクーン2 コクーンひろば

12/24(日) 20時20分〜20時35分頃
WHITE KITTE(東京駅) 特設ステージ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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