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ボーカル・ユウの誕生日翌日に迎えた、ワンマンツアー「チリヌルヲワカ堂々巡り2017」ファイナル

チリヌルヲワカ | 2017.12.14

 恒例となったワンマンツアー「チリヌルヲワカ堂々巡り2017」が今年も全国4カ所で行われ、その最終日を鶯谷の東京キネマ倶楽部で迎えた。 「堂々巡り2017、泣いても笑ってもファイナルなんで、楽しんでいきましょう」

 歓声に迎えられて「再生可能」からスタートし、5月にリリースした最新アルバム『きみの未来に用がある』のリードトラック「ドルチェ」を演奏したところで、ユウは自分たちにも言い聞かせるように、こう言った。クリーム色のシャツにレザーのミニスカートを着て足元は黒のハイカットとスポーティ・シックなスタイルで決めたユウからは、このツアー・ファイナルへの気合いが伝わるようだった。

 ドラムの阿部耕作が大きくカウントをとって始まった程よく落ち着いたテンポの「みずいろの恋」は、高く上り詰めるようなサビに合わせて手拍子が起こり、それに負けまいとユウは声を張って歌った。テンポ良いリズムに乗って刻むギターリフが印象的な「浮キつ沈ミつ」は、≪のぼり下りと感情≫と歌う歌詞そのままに乱高下するユウらしいメロディが、ライブでは一段と起伏に富んで響く。CDではシレッと歌っている曲も、やはりお客さんの前では気持ちが入っていくようだ。イワイエイキチのベースがパンキッシュに響く「空蝉」でフロアの熱気がさらに高まった。「ありがとう!」と声援に応えて曲を締めたユウが、レトロな円形バルコニーに囲まれたフロアを見渡しながら話し出す。 「ここでやるのも3回目? 4回目? 今回も2階に殿様シートがあります」

 バルコニーの殿様シートにご着席の殿様たちから拍手と声援が送られると、ユウは嬉しそうに阿部と笑顔を交わした。 「今日は懐かしい曲もいっぱいやるんで、楽しんでください」

 こう言ってユウがギターを弾きながら歌い始めたのは2作目『白穴』からの「やまみちにて」。ヲワカ流60’sポップスめいたリズムとメロディにフロアが揺れる。続く「it」はイントロからオイコールが起こり、間奏ではユウがセンターのお立ち台にると一段と大きなコールが送られた。更に懐かしい「天邪鬼」に進むと更に声援が大きくなる中、「姫事」と『白穴』からの曲が続いてフロアがウネリだした。興が乗ってきたイワイがお立ち台に上がったりジャンプしたりとステージの熱気も半端ない。後半にブレイクを入れ、タメを効かせて盛り上げた曲に盛大な拍手が送られた。

 一息入れて楽器を整え、落ち着いた調子でユウが歌い出した「シガー」。この曲を収録した『イロハ』をリリースしたのは12年前で、当時は4人編成だった。2年前に3人編成となって、ギターを一生懸命弾かなくちゃいけないくて大変とユウは言っていたが、さすがにそれにも慣れたようで、初期の曲が今の彼らのサウンドになっている。この曲もベースとギターがスケール感たっぷりにエンディングをキメた。ベースが力強く響いた「永久-とこしえ-」は4作目からの曲だが、ギターを弾きながら足でテンポを取って歌うユウの声が高く伸びていき、抑えたシンバルの響きをきっかけにした最新作からの「春は彼方」で現在の彼らへと繋がった。

「12月になってしまいまして、また歳を重ねて」 と話し始めたユウに拍手が送られたのは、この前日12月1日がユウの誕生日だったからだ。照れながらユウが続けた。 「この歳までこんなにみなさんに支えられてやってると思ってなかったというか、ここまで来てしまいまして、ほんっとに幸せだなと思っています。ありがとうございます」

 突然メンバー紹介となり、名前を呼ばれたドラムの阿部が話を継いだ。 「誕生日だったんですよね? ケーキ食べました?」  食べてないとアッサリ答えてユウが紹介したベースのイワイエイキチは、 「もう、1年頑張りました! 来年もがんばります!」  阿部が改めて「ボーカル、ギター、ユウ!」と紹介するとユウは、今年の思い出として5月~7月に行った「OctopusTour 2017」ファイナルで、ステージにゴキブリがいて戦慄した話を披露。 「曲終わりに足元見たらゴキブリがいて。いつからいたの?って思いましたけど、ずっと歌ってる時もいたのかなって。そしたらスタッフのテンくんが素手でゴキブリを持って退出。かっこよかったね。ぐっじょぶ!って思いました」

 ステージ袖にいたスタッフが頭をさげるとお客さんから拍手が送られた。こんなアットホームな雰囲気がチリヌルヲワカならでは。そしてユウが 「来年もよろしく! じゃあ行きます!」 と声をかけると後半戦に突入した。ギターリフとベースの絡みがスリリングな「ひとみごくう」が空気を引き締め、ベースとドラムが重低音を響かせる「マシーン」は、“燃料は足りているのに動きが鈍い”と自嘲気味に歌い、軽快なドロップビートでステップを踏ませる「シーホース」は、お立ち台でギターを弾いて見せながら“人間は忘れていくもの”と、あっけらかんと達観を歌うユウに向かって、オイコールと共に腕が差し伸ばされた。

 ブルースロック風のグルーヴがある「松の木藤の花」で見せた3人の呼吸は絶妙で、イワイのベースリフがお客さんを巻き込んで「空想都市」へ。この歌の通り、“今夜もこんなコトして、観て、聴いて、鳴いて”いるうちに、本編ラストを飾る「ホワイトホール」でフロアも殿様シートも一つになってカオスとなった。力一杯歌ったユウはギターソロもたっぷり聴かせ、3人がダイナミックに合わせたエンディングにまた大きな歓声が送られた。「ありがとう!」とユウが挨拶をした直後からアンコールが起こり、それに応えて数分後に3人は再びステージへ。

 初めて作ったパーカーが売り切れたことなどツアーグッズの紹介をした後でユウが、ちょっと居住まいを正して言った。 「今年最後のワンマンになります、来年も私たちはますます突き進んでいきます。音楽の戦場を、皆さんのおかげで生き抜いてこれています。本当にありがとうございます」

 もう少し楽しんでくださいと、まずは「怒りの筆先」を始めるとお客さんは大喜びでフロアを揺らし、イントロとアウトロのユウの弾き語りがグッときた「カスガイ」はイワイと阿部のコーラスも曲をドラマチックに彩った。2度目のアンコールに応えてステージに戻ったユウが「みんな、欲しがるよねー」と笑いを誘い、今の彼らのアンセム「アヲアヲ」を落ち着いて聴かせた。そしてこの日の最後を締めたのは「ヨスガ」。ユウはギターを持ちあげたり弦をスライドして弾いたりとギタリストらしいアピールをし、全力を出し切って今年最後のワンマンを終えた。来年はどんなチリヌルヲワカに会えるだろう。

【取材・文:今井智子】
【撮影:yasuyuki kimura】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル チリヌルヲワカ

リリース情報

きみの未来に用がある

きみの未来に用がある

2017年05月10日

ヤマミチレコード

1.ドルチェ
2.クリーチャー
3.怒りの筆先
4.春は彼方
5.シダレザクラ
6.浮キつ沈ミつ
7.空想都市

セットリスト

ワンマンツアー
「チリヌルヲワカ堂々巡り2017」
2017.12.02@東京キネマ倶楽部

  1. 01.再生可能
  2. 02.作りかけの歌
  3. 03.ドルチェ
  4. 04.みずいろの恋
  5. 05.浮キつ沈ミつ
  6. 06.空蝉
  7. 07.やまみちにて
  8. 08.it
  9. 09.天邪鬼
  10. 10.姫事
  11. 11.シガー
  12. 12.永久-とこしえ-
  13. 13.春は彼方
  14. 14.ひとみごくう
  15. 15.マシーン
  16. 16.シーホース
  17. 17.松の木藤の花
  18. 18.空想都市
  19. 19.ホワイトホール
     【ENCORE】
  1. EN 01.怒りの筆先
  2. EN 02.カスガイ
  3. EN 03.アヲアヲ
  4. EN 04.ヨスガ

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