超満員のホーム横浜で迎えた、wacci『あっち、こっち、そっち、わっちツアー2017~感情百景~』ツアー・ファイナル
wacci | 2017.12.22
「ただいま横浜」「元気だったか横浜」「まだまだついて来れるよな横浜」。橋口洋平(Vo・Gt)は1曲ごとにこう呼びかけた。パシフィコ横浜メインホール(会議センター)は満員。全40公演、5月から半年に及んだ、wacciの『あっち、こっち、そっち、わっちツアー2017~感情百景~』が、ホームの横浜でファイナルを迎えたのだ。会場は1曲目「僕らの日々」から「♪オ~オ、オ~オ!」と拳を振り上げ、3曲目「リスタート」で「♪やってやるんだって思いが奇跡を呼ぶ!」と大合唱。橋口によるFM横浜のラジオ番組のリスナーも支える、これぞホームの景色だ。
緊張感が走ったのが6曲目「ピアノ線」。歌詞のテロップが巨大スクリーンにニコ生の放送のように流れたり、「何回も」という文字だけが画面を覆ったり、LINE画面のような吹き出しが出たり。迫りくる音と文字が、ネット社会の息苦しさを訴えてきたのだ。「すごい…」と、誰かが思わず呟く。絶品の大サビが一回だけしか登場しない「あいの唄」。キャッチーとスタイリッシュが見事に同居した「スマイル」。“こんばんわっち!”という挨拶などの親しみやすさだけじゃない。どこか骨太な美学が見え隠れする。
ライヴ中盤、その美学が壮大なストーリーを生んだ。電車がホームに滑り込み、発車するまでの束の間、駅でのかつての別れを回想する「駅」。春に出会い、春にそれぞれが旅立つ「春風」。まるでアンサー・ソングのような2曲。そこから「東京」へとつながる流れが素晴らしい。やがてステージ全体に、メンバーの体にまで、都会の夜景の映像が写し出される。旅立った僕らは、東京で寂しい現実を知った。この街では人が人として見えていない。冷たくて痛い東京の雨。「♪うずくまってる君はそう僕みたいだ」。橋口が叫ぶ。血のように真っ赤なライトが会場を覆う。
その瞬間、村中慧慈(Gt)のギターが空を引き裂いた。橋口が「♪心を迷いなく開けるように」と片手で左胸を叩く。スクリーンの東京に陽が昇り、朝日のようなライトが客席を照らす。そして未来への希望は、ストーリーの最後を飾る「ケラケラ」に託された。自分を責めてしまうのは、君だけじゃない。だから一緒に笑おう。「駅」「春風」で旅立ち、たどり着いた「東京」でうずくまり、「ケラケラ」で笑顔を取り戻す。まるで人生の一部を体験したようなカタルシス。こんなに徹底的に緻密で大胆な演出が、ライヴでも効果的だったのだ。
カップルはまだ許せる。しかし、クリスマス前のこの季節、男女のグループがキャッキャッと騒いでいるのを見ると「嗚咽が……(場内爆笑)」。橋口のこんな非リア充MCが、見事に空気を変えた。ここからは後半戦だ。ディスコ調の「シンデレラ」ではミラー・ボールが会場中を照らし、ソウル・チューン「Weakly Weekday」は会場中が二の腕を絞るエクササイズを繰り広げ、お祭りモードの「君に不採用」はタオルがくるくると回った。最高に盛り上がったのは「Ah! Oh!」。複雑で高度なダンスを、会場のほぼ全員が踊っている。「今年の嫌なこと全部、このパシフィコ横浜に置いてけ!」という声と共に、銀テープが発射され、“Ah!Oh!”の掛け声とダンスはひと際大きくなった。
wacciの骨太な攻めの美学は、楽しい楽曲でも、いや、むしろ楽しい楽曲だからこそ、徹底して貫かれていた。橋口、村中、因幡始(Key)、小野裕基(Ba)、横山祐介(Dr)の演奏力はファンキーなダンス・ナンバーも可能にし、また、彼らは言葉を生かし続けた。そんな美学と、「ピアノ線」「東京」の演出で見せたようなアイデアが、「感情」という傑作を生んだ。「今、一番大事にしてる曲を真っ直ぐに届けます」という前振りから始まった「感情」は、「♪初めて出会った時の感情。恋だと気づいた時の動揺」と韻を踏み倒し、糸を織るように言葉をひとつひとつ紡いでいく。愛するという感情とはどういうものなのか。日常のひとつひとつのシーンを“感情”をベースに綴ることで、その答えにたどり着く。本編最後、その答えが届けられた瞬間、パシフィコ横浜は深い感動に包まれたのだ。
「今日は来てくれてどうもありが……(パチパチパチ!)」。アンコールで代表曲「大丈夫」、レアな季節もの「サンタクロースを僕に」と嬉しい2曲が披露された後、橋口の言葉を、鳴り止まない拍手がさえぎる。それを彼が「パン、パパパン」とタモさん風に締めてから、「バカなの?」とひと言。この日、何度も交わされた爆笑のやり取りが、wacciをさらに乗せたのは間違いない。そんなファンを、橋口は「自慢のみんなです」と言った。
「自慢のみんなに、僕らのことをもっともっと自慢してもらえるように、大きいバンドにきっとなるから。応援よろしくお願いします」
そして最後は「サヨナラ」。「♪僕は君が好きだった」という歌詞を、橋口は「♪僕はみんなが好きだった――ッ!!」と歌い、会場は彼がびっくりするほどの大きな声で「♪グッバイサヨナラ――ッ!!」と返した。会場全体で撮った記念写真。名残惜しそうにメンバーが去り、ツアーの風景や全スタッフの名前がスクリーンに映し出される。エンドロール最後の”Special Thanks”は「あなた」。何とそこには数分前に撮ったばかりの記念写真が写っていたのだ! まったく最後の最後まで……。その時、それぞれの胸にある感情が生まれたのではないか。それはきっとwacciを愛するという感情。
【取材・文:柳村睦子】
【撮影:江隈麗志】
リリース情報
感情百景[通常版]
2017年08月16日
Epic Records Japan
2. Ah!Oh!
3. 感情
4. あいかわらず
5. ピアノ線
6. 駅
7. ケラケラ
8. あいの唄
9. シンデレラ
10. 恋の宛先
11. 宝物
12. 男友達
13. スマイル
14. サヨナラ
15. 春風
セットリスト
あっち、こっち、そっち、わっちツアー2017~感情百景~
2017.12.10@パシフィコ横浜メインホール(会議センター)
- 01.僕らの日々
- 02.恋の宛先
- 03.リスタート
- 04.あいの唄
- 05.あいかわらず
- 06.ピアノ線
- 07.スマイル
- 08.会いにゆきましょう
- 09.駅
- 10.春風
- 11.東京
- 12.ケラケラ
- 13.シンデレラ
- 14.Weakly Weekday
- 15.君に不採用
- 16.Ah! Oh!
- 17.宝物
- 18.感情 【ENCORE】
- EN 01.大丈夫
- EN 02.サンタクロースを僕に
- EN 03.サヨナラ
お知らせ
[2018]
ワンマンツアー
「あっち、こっち、そっち、わっちツアー 2018」
04/14(土) EX THEATER ROPPONGI
04/28(土) CRAZYMAMA KINGDOM
04/29(日) 高知X-pt.
05/03(木祝) 北海道KRAPS HALL
05/04(金祝) MARUSEN函館
05/12(土) 長崎DRUM be-7
05/13(日) 福岡イムズホール
05/19(土) 金沢vanvanV4
05/20(日) 新潟GOLDENPIGS RED STAGE
05/26(土) LIVE HOUSE浜松窓枠
05/27(日) 京都紫明会館
06/02(土) 広島BLUE LIVE
06/03(日) 徳島club GRINDHOUSE
06/10(日) 大阪BIG CAT
06/16(土) 横浜ベイホール
06/17(日) 横浜ベイホール
06/24(日) 名古屋ダイアモンドホール
07/07(土) 仙台darwin
07/08(日) 仙台ルフラン
07/16(月祝) 昭和女子大 人見記念講堂
[2018]
『ワンダフル THE ニッポン!迎春キャナル祭』(無料イベント)
01/08(月祝) 福岡県・キャナルシティ博多 B1F サンプラザステージ
wacci 360°ワンマンライブ ~パノラマ百景~wacci荘会
01/13(土) umeda TRAD
01/27(土) 福岡ROOMS
02/12(月祝) 名古屋E.L.L.
wacci アコースティックライブ
01/14(日) 京都 SOLE CAFE
01/28(日) P.Paradise
02/02(金) 城下公会堂【岡山】
徳島市シビックセンター 文化の駅づくり事業 FM徳島25周年 Gatar-ist LIVE 寒い冬にはあったかい弾き語りがちょうどいい
02/10(土) 徳島市シビックセンターホール4F
wacciと吉田山田のワンマンライブ』
02/11(日) マイナビBLITZ赤坂
SANUKI ROCK COLOSSEUM
03/17(土)・03/18(日)
高松festhalle、高松オリーブホール、高松DIME、高松MONSTER、高松SUMUS
※17日/18日のいずれかに出演。出演日は後日発表。
HAPPY JACK 2018
03/17(土)・03/18(日)
熊本B.9、Django、ぺいあのPLUS’、NAVARO
※17日/18日のいずれかに出演。出演日は後日発表。
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。