中田裕二、ホームでもある日本橋三井ホールで弾き語りライブ「バシの暮れだよ裕二だよ2017:謡うロマン街道日本橋 ひとり忘年会」
中田裕二 | 2018.01.11
中田裕二の年末恒例ワンマンライブが2017年は東京・日本橋2daysに加え横浜と大阪でも行われ、その最終日12月27日を中田が“ホーム”と呼ぶ日本橋三井ホールで迎えた。前日のバンド編成から一転この日は弾き語りで、題して「バシの暮れだよ裕二だよ2017:謡うロマン街道日本橋 ひとり忘年会」。セットリストは決めず、ライブ冒頭で中田いわく「僕の気まぐれで、その時の気分とムードで歌を決めていきます。なので一体何の曲を歌うのか本人もわかっていません(笑)」というワクワクするライブだ。アコースティック編成でカヴァーを中心に歌う『SONG COMPOSITE』シリーズを経て2014年から始まった“謡うロマン街道”は、さらに自由な弾き語りで、まさに一期一会の歌の旅。中央にはアコースティック・ギターにエレキ・ギター、下手側にキーボードが置かれたシンプルなステージに姿を現した中田は、まずはこの日の説明から始めた。
「昨日はバンド編成でしたが今日は”ひとり忘年会”。歌いたい歌を、歌いたいだけ歌って帰っていくということになっております」続けて” 謡うロマン街道”が53回目、この日本橋三井ホールではバンド編成でのライブも合わせて13回目となり、この会場を使うライブ本数で1位になったと報告すると、大きな拍手が起こった。そしてアコースティック・ギターを手に歌い始めた最初の曲は、ファースト・アルバム『école de romantisme』から「リバースのカード」。1番の歌詞が終わるあたりで「東京!」と呼びかけ空気をほぐし、続いて歌った「誘惑」でも同様に声をかけた。肩のこらない幕開けに客席の空気は早くも和み、中田も最後の《夜を託した》という一節をアカペラで歌うなど、弾き語りならではの場面を作り出す。
この日はロビーにドリンクバーが設営され、開演前にアルコールやソフトドリンクを楽しめるようになっていた。
「今日は皆さんも飲んでるから僕もワインを」と中田がいうと、ステージに女性ソムリエがグラスワインを運んできた。そのグラスを手に「君の瞳に乾杯!」と声をかけるが失笑が起き、「毎年滑ってる」と苦笑。「いま日本で、白いスーツでワイン呑んでるの僕だけだと思います」とさらに笑いを誘った。そして「ゆっくり飲んでてください、曲を決めてますから」自分の前にあるノートを繰り、次に選んだのは、映画『黒いオルフェ』の主題曲「カーニバルの朝」。耳なじみのいいボサノヴァのスタンダードナンバーだ。それに続けたのは中田の2作目に収録されている「セレナーデ」。アコギでちょっとボサ風の味付けをして、前曲から自然な流れを生んでいたのも、このライブならでは。拍手の中をひと口ワインを飲んで「夜をこえろ」を歌った後は、イントロのフレーズから一目瞭然のビートルズ「Come Together」をストレートに歌い、一転して「カナダからの手紙」は男女デュエットの体で地声とファルセットで交互に歌い笑いを誘った。こんな意外な曲や思いがけない歌声を聴けるのが、” 謡うロマン街道”の醍醐味だ。
ジャズのスタンダード・ナンバー「Fly me to the moon」から、NHKの番組を見て“井上陽水ブーム再来”と「結詞」「Just Fit」を歌い、そのニューウェイヴな感じが「椿屋四重奏の初期にもありそうな」とインディーズ時代の曲「惑わず仕舞」をさわりだけ歌って観客を喜ばせた。「陽水、連発していいですか?」と、もう1曲「リバーサイド ホテル」を歌い、井上陽水の流れで安全地帯の「ワインレッドの心」を歌った後にはワイングラスを掲げて飲んだりと、まさに気持ちの向くままに歌っていく。ブルースハープをホルダーでつけて吹きながら演奏したスティングの「Englishman In New York」は、佐藤竹善と共演した曲と紹介した後にSING LIKE TALKINGの「Rise」を歌って大きな拍手を受けた。意外なようで、この日歌うからには何か理由がある。MCで聞く話から伝わるミュージシャンらしい感性が、改めて中田が様々な歌に挑む原動力となっているのだろう。
中盤は、ステージ下手に用意されたキーボードに向かい、「Deeper」「PURPLE」を弾き語り。落ち着いた歌を聴かせた自分の曲とはいえキーボードで歌うのは慣れていないからか「緊張した~」と声を漏らした。しかし「来年はピアノ慣れしていこうかと思って。地方でピアノがあるところをやっていこうかと思っています」と抱負を語り、再びセンターに座りギターを抱えた。力強く歌い出したのは「デイジー」。やはりギターを持つ方が余裕があるようだ。そんな気持ちからか、オリジナル・ラブの「接吻」をまるで自分の曲のようにフェイクを入れながら歌うと手拍子が起こった。
「年末なんで、紅白感を出していきたいんで演歌を。といっても歌謡曲ですけど」とガット・ギターに持ち替え哀愁漂うマイナーコードを鳴らして歌い出したのは「北の宿から」。都はるみの代表曲だ。しっとりと切ない曲を、中田はさらに哀愁を込めて歌う。そして「宿が来たら、舟」と、八代亜紀の「舟唄」を続けた。演歌と呼ばれる曲には名曲が多いし歌手も名手揃いだ。中田はそこに挑むことで新しい歌を掴もうとしているようだった。重さを増した空気を変えるように、自分が日本橋のランドマークである三越や高島屋でアルバイトしたことがあると近隣の蕎麦屋の鴨せいろを食レポさながらに紹介した後は、リクエスト・タイムと客席からの声を拾う。声に応えたのは「ウイスキーが、お好きでしょ」。最近はシングルモルトをロックでと通な飲み方になり「裕二はウイ 「まだいきましょう」とリクエストを募ると「ももいろクローバー!」と声が飛び、「歌えるか!」と笑いながら応える。そんなやりとりの中、「TRUE LOVEって聞こえました」と歌った藤井フミヤの代表曲は、初めて買ったギターの教則本に載っていたのだとか。もう1曲、お子さんの声でリクエストがあった椿屋四重奏の「トワ」を軽く歌った後で、「「トワ」は、結婚式で使いましたというお手紙をよくいただくんですよ。嬉しいですね、人生の節目に僕の歌があるのは、ミュージシャン冥利に尽きます」と頭を下げた。その流れで、椿屋四重奏時代の「恋わずらい」で手拍子を誘い、ソロ4作目の「髪を指で巻く女」で盛り上げる。後半に向け温まったところで新作のレコーディング中だと近況を報告。「次のアルバムも、俺を引っ張ってくれるような求心力のある作品になっています。デカイこと言いますけど、俺が売れれば日本の音楽、歌謡界、変わると思います、ぐらいの気持ちでやっていかないといけない(笑)。来年も引き続きよろしくお願します」
最後は「皆さんを素敵な夜間飛行にお連れしたいと思います!」と「MIDNIGHT FLYER」。曲を熟知した観客の手拍子やハンドウエーブでステージも客席も一つになって、後半はシンガロングに。中田も嬉しそうな顔で共に手を振り声を張り上げた。
「また来年お会いしましょう!」と挨拶をした後もステージの左右で頭を下げ、オフマイクで「ありがとうございました!」と挨拶をして、この年最後のステージを降りた中田の笑顔は、新年に向け輝いていた。
【取材・文:今井智子】
【撮影:洲脇理恵/ MAXPHOTO 】
リリース情報
thickness
2017年03月22日
テイチクエンタテインメント
2. 静かなる三日月
3. ラフター・パーティー
4. IT’S SO EASY
5. 何故に今は在る
6. Deeper
7. リビルド
8. ただひとつの太陽
9. ギミー・ナウ
10. 愛に気づけよ
11. THE OPERATION
セットリスト
「バシの暮れだよ裕二だよ2017:謡うロマン街道日本橋 ひとり忘年会」
2017.12.27@日本橋三井ホール
- 1.リバースのカード
- 2.誘惑
- 3.カーニバルの朝(Luiz Bonfa)
- 4.セレナーデ
- 5.夜をこえろ
- 6.Come Together(The Beatles)
- 7.カナダからの手紙(平尾昌晃&畑中葉子)
- 8.Fly me to the moon(ジャズのスタンダードナンバー)
- 9.結詞(井上陽水)
- 10.Just Fit(井上陽水)
- 11.惑わず仕舞(椿屋四重奏)
- 12.リバーサイド ホテル(井上陽水)
- 13.ワインレッドの心(安全地帯)
- 14.Englishman In New York(Sting)
- 15.Rise(SING LIKE TALKING)
- 16.Deeper
- 17.PURPLE
- 18.デイジー
- 19.接吻(オリジナル・ラブ)
- 20.北の宿から(都はるみ)
- 21.舟唄(八代亜紀)
- 22.ウイスキーが、お好きでしょ(石川さゆり)
- 23.TRUE LOVE(藤井フミヤ)
- 24.トワ(椿屋四重奏)
- 25.恋わずらい(椿屋四重奏)
- 26.髪を指で巻く女
- 27.MIDNIGHT FLYER
お知らせ
松川ケイスケと真一ジェット
”名うての唄ひ手〜高崎博〜”
02/23(金) 高崎シティギャラリー内「コアホール」
”名うての唄ひ手〜渋谷博〜”
03/03(土) 東京:Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
"LIVE 2018 COFFEE & SOUL~深煎り編~”
04/22(日) 大阪Music Club JANUS
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。