フレデリック バンドの進化と強い意志をしっかりと体感できた新木場STUDIO COAST
フレデリック | 2018.01.29
東名阪クアトロをまわった昨年10月の「フレデリズムツアー2017 QUATTRO編~僕のTOGENKYO~」に始まり、11月から12月には東京はZepp Tokyoを含む全国12会場の「フレデリズムツアー2017~ぼくらのTOGENKYO~」を開催。一連の“TOGENKYOツアー”の一環として、年を明けて新木場スタジオコーストで開催された追加公演「フレデリズムツアーリリリピート公演 ~みんなのTOGENKYO~」だ。フレデリックの音楽的なキャパシティを大きく押し広げた最新ミニアルバム『TOGENKYO』を携えた今回のツアーを経て、三原健司(Vo・Gt)はステージ上で、「2018年のフレデリックは音楽の可能性を広げる年にしたい」と言っていた。その言葉のとおり、この日のフレデリックは勢いに身を任せるのではなく、丹念に音を重ねた純然たる音楽のちからで、バンドの進化を証明してみせた。
ステージには、ミニアルバム『TOGENKYO』のアートワークが額入りで飾られていた。定刻。会場後方から真っすぐに伸びたレーザー光線がスクリーンに“TOGENKYO”の文字を映し出すと、健司と康司、赤頭隆児(Gt)、高橋武(Dr)の4人がステージに現れた。オンリーワンの存在として進んでゆくという決意を込めた「オンリーワンダー」からライブはスタート。いかに彼らが日頃からプレイヤーとしてのたゆまぬ鍛錬を積んでいきるかがわかる、キレのあるバンドサウンドが鳴り響くと、新木場コーストは一瞬にしてダンスフロアに変わる。《あなたに出会えて私はとっても迷惑なんです》と、本当の気持ちとは裏腹な言葉を口にしてしまう天邪鬼な心を歌った「愛の迷惑」では、「迷惑なわけないやろ、愛してますよ!」という、健司の決めゼリフで会場を沸かせた。
最初の4曲を終えたところで、「本日は我々の音を素直に楽しんでください!」という手短なMCを挟んで、息の合った(難易度の高い!)ハンドクラップを巻き起こしたのは「かなしいうれしい」。ここからライブは『TOGENKYO』の収録曲たちが続々と披露されていく。武が刻むタイトなダンスビートのなかで泳ぐように流れるメロディが昂揚感を掻き立てる「ミッドナイトグライダー」から、康司のアグレッシヴなベースが哀愁に濡れるダンスフロアを作り上げた「スローリーダンス」、さらに隆児が繰り出すファンキーなギターが大人なムードを醸し出した「パラレルロール」へと、ノンストップで楽曲を繋いでいく。さらに、スクリーンにはレーザーを駆使した演出やリアルタイムでメンバーの演奏姿が加工される視覚的な効果が、フレデリックの楽曲にマッチしていたのも素晴らしかった。
フレデリック・アコースティック・バンド。略して、「FAB!!」と名づけられたアコースティックコーナーが繰り広げられたのは中盤。フロント3人がギュッとステージの中央に集まり、健司がアコースティックギターを奏でると、「USO」と「ハローグッバイ」の2曲を届けた。特に「ハローグッバイ」は、彼らが自分たちのやり方で音楽を続けるという意志を込めた大事な楽曲だけに、少ない音数のなかで演奏することでその想いが強く浮彫りになり、感動的だった。思えば、昨年のいま頃、初めて新木場スタジオコーストのステージで彼らを見たときは、派手な演出も手伝って、この場所までフレデリックが辿り着いた達成感に興奮したが、今回シンプルな演出のなかで、より音楽のちからで勝負するフレデリックの姿は、彼らの大きな成長を強く感じるものだった。
後半再び、バンド編成に戻った「まちがいさがしの国」では、揚げ足とりの社会への皮肉を込めた高笑いを上げ、80sなダンスナンバー「RAINY CHINA GIRL」ではピンク色の光の玉が会場を美しく満たすと、いよいよライブはクライマックスへ向けて熱狂が加速していく。「リピート地獄に落ちてください!」という言葉で突入した中毒性抜群の「リリリピート」から、「次はダンスホール天国を作りませんか?」と言って、「オドループ」へ。まさに「TOGENKYO」の《天国だって地獄だって楽園はここにあったんだ》という歌詞を思い出させるような言葉を投げかけたあと、狂騒の2時間に終わりを告げたのは「KITAKU BEATS」だった。最後のフレーズと同時にバサリと紗幕が落ち、そこに映し出されたのは“FRDC”というバンドロゴ。最後の瞬間までハイセンスな演出を詰め込み、私たちを楽しませてくれた。
紗幕が下ろされたまま始まったアンコール。アーバンな雰囲気に酔いしれた「たりないeye」では、健司と康司によるツインボーカルが優しくメロディをなぞり、紗幕にはメンバーの巨大なシルエットが映し出された。そして、ラストは2017年に彼らの新たなアンセムに加わった「TOGENKYO」だった。フレデリックの代名詞でもある繰り返しのフレーズで、まだ見ぬ“桃源郷”を追いかけるナンバー。それは、幻想世界に憧れを抱き、“音楽”という名のユートピアに可能性を見出そうとする、フレデリックの強い意志も刻まれている。この曲のサビで《桃源郷 待って 待って》と繰り返されるフレーズが、やがて《桃源郷 舞って 舞って》に変わったところで、ライブはフィニッシュ。「健司が2018年1月14日、桃源郷は新木場スタジオコーストにありました!」と叫んで幕を閉じた。
このツアーを終えたあと、フレデリックは2月に台湾での公演が控えるほか、4月30日に神戸ワールド記念ホールでの初の単独ワンマンを迎える。オンリーワンのバンドとして自信を身につけた2016年、バンドとしての器を広げた2017を経て、着実にバンドの足場を固めてきた彼らは、きっとその場所に素晴らしい“桃源郷”を作り上げてくれるだろう。
【取材・文:秦 理絵】
【撮影:Viola Kam (V’z Twinkle)】
リリース情報
TOGENKYO
2017年10月18日
A-Sketch
2. スローリーダンス
3. かなしいうれしい
4. たりないeye
5. ミッドナイトグライダー
6. パラレルロール
7. RAINY CHINA GIRL
セットリスト
フレデリズムツアー リリリピート公演〜みんなのTOGENKYO〜
2018.01.14@新木場STUDIO COAST
- 01.オンリーワンダー
- 02.オワラセナイト
- 03.愛の迷惑
- 04.かなしいうれしい
- 05.ミッドナイトグライダー
- 06.ナイトステップ
- 07.スローリーダンス
- 08.ディスコループ
- 09.パラレルロール
- 10.USO(FAB!!)
- 11.ハローグッバイ(FAB!!)
- 12.まちがいさがしの国
- 13.RAINY CHINA GIRL
- 14.リリリピート
- 15.オドループ
- 16.KITAKU BEATS
- EN 01.たりないeye
- EN 02.TOGENKYO
お知らせ
FREDERHYTHM ARENA 2018
〜KOKYOのTOGENKYO〜
4/30(月・祝) 神戸ワールド記念ホール
お問い合わせ : 清水音泉 06-6357-3666
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。