一歩ずつ、確実に前に進んでいる。Shout it Outの確かな進化が見えたステージに。
Shout it Out | 2018.02.01
10代でメジャーデビューを果たしたShout it Outが21歳になった。そんなこのタイミングで、大阪と東京の2ヵ所で開催された今回のワンマンライブに、彼らは「GOODBYE MY TEENS」と名づけた。いま改めて“10代への別れ”をテーマにしたこのライブについて、恵比寿リキッドルームのステージで、山内彰馬(Vo・Gt)は、深い意味はなかったと言いながら(もともとグッズのデザインとしてシンボリックだから選んだタイトルらしい)、こんなふうに説明した。「20歳になって1年半が過ぎて、ようやく10代のことが昔のことのように思える。いつまでも若さに頼ってもいられないので……今日は、自分の10代を成仏させる気持ちで歌って帰ります」と。そのライブには、10代だとか20代だとかは関係なかった。彼らがいちバンドマンとして、一人前の人間として、責任ある大人として、この場所から前に進んでいこうとする、いままでにない決意が込められたものだった。
BGMにくるりの「赤い電車」が流れるなかで、山内と細川千弘(Dr)のふたりに、サポートのギター&ベースを加えた4人がステージに現れた。1曲目は「青」。エレキギターを掻き鳴らしながら、ゆっくりとギアを入れるように彰馬がメロディを紡ぎ始めると、そこにパワフルなバンドサウンドが加わった。ステージ上で爆発した抑えようのないエネルギーがダイレクトにフロアへと伝わると、お客さんもまた一斉に手をあげて、その熱量を受け止めていた。《いつまでも子供で 許されるわけない》と、大人と子供の狭間で揺れ動く心境をストレートに綴った「青年の主張」から、大人が作る“勝ち組”のルールに疑問を投げかける「17歳」へ。それはソングライティングを手がける山内が真っすぐに社会と対峙しながら、そこに生きる自分自身の葛藤をストレートに吐露した、嘘偽りのない曲たちだ。細川が叩き出す性急かつ表情豊かなビートにのせて、時々、彰馬は足で空を蹴るようにして歌う。彼らと同世代のお客さんを中心にしたフロアは、その様子を熱いまなざしで見守っていた。
最初のMCでは、「年間100本以上のライブをやってきた」と語り出した細川。「10代の頃は見えなかった景色を見て、バンドが大好きになりました」と、晴れやかに話す姿が印象的だった。Shout it Outは2016年7月のメジャーデビュー直後にギターとベースが同時に脱退している。メンバーの半分が欠ける――当事者以外には理解できない困難のなかで、それでもふたりだけでバンドを続ける道を選んだ彼らが、いま再び「バンドを大好きになった」と言えたことは、とても大きな前進だ。そんな千弘の言葉のあとで届けた「夜間飛行」や「逆光」といった楽曲たちは、暗闇のなかでなんとか光を掴もうともがき続けるシャウトそのものを表すようだった。なかでも爽快にドライブするギターとともに、《小さな命を燃やして生きている》と、自分自身を奮い立たせるように歌う「逆光」は、リリース当時10代だった頃にライブで聴いたときとは、比べ物にならないほど強い説得力を持っていた。
中盤、「僕の10代を歌った曲を」(山内)と紹介をした「ギターと月と缶コーヒー」は、ひとつのハイライトだった。ひとりでトボトボと夜道を歩くような、ゆったりとしたテンポにのせて、誰にも理解されない感情を“孤独ごっこ”と揶揄する感傷的なバラード。このあたりから山内の集中力がますます研ぎ澄まされていった。「トワイライト」「灯火」、そして「一から」という10代の頃の曲たち。後悔に涙を流しながらも、明日という名の“光”を目指していくことが、紛れもなく“生きる”ということだ。そんな信念にも似た揺るぎない想いは、シャウトがその音楽のなかで最も大切にするメッセージのひとつだ。
2017年をライブの年として位置づけていたため、「今日、ここでリリースの発表ができたら良かったんですけど……ないです。いま、がんばって作ってます」と、山内が残念そうに伝えたあと、唯一の新曲として披露されたのは、1月27日公開の部活コメディ映画『ちょっとまて野球部!』の主題歌になった「アフタースクール」だった。細川が叩き出すタイトなビートにのせて、いまのシャウトなりの青春を綴ったその曲には、『青年の主張』以降、たくさんのライブを経たことで成長を遂げたバンドの進化がたしかに刻まれた。
最後のMCで、山内はギターを掻き鳴らしながら語りかけた。「10代の自分に別れを告げると言ったけど、20代の自分に何があるかと言われたら、ひとつも思い浮かばない。10代の頃に自分が何を持っていたかと聞かれると、それもひとつも思いつかない。これからも、ひとつの武器を持たないまま、素手で、行けるところまで行ってみようと思います」と。
山内はそう言ったが、シャウトは決して“何も持っていないバンド”ではない。剥き出しの想いをぶつける度胸がある、繊細で真っすぐな心がある、山内と細川の絆がある、何ひとつ嘘をつかずに生きてきた信念がある。それらを肯定できたとき、Shout it Outはもっと強いバンドになれるのかもしれない。最後の1曲は「青春のすべて」だった。《不確かでも歩いていく》と、全力で歌うフィナーレは、まさにShout it Outの生き様そのものだった。
アンコールでは、山内が「新曲、がんばって作ります」と、改めて集まったお客さんと約束を交わすと、リクエスト曲として「これからのこと」が久々に披露された。遠くに暮らす大切な人に宛てた手紙形式の歌詞のなかでは、“あなた”でも“きみ”でもなく、“お前”と投げかけてエールを送る。そして、ラスト1曲。山内が「10代に別れを告げる意味というのは……これからも続いていくいまこの瞬間に、純粋に向き合っていくためじゃないかと思います」と、言葉を選びながら丁寧に伝えると、「光の唄」でライブを締めくくった。
Shout it Outは、3月から今回のワンマンの流れを汲んだ1年ぶりの全国ツアー「GOODBYE MY TEENS-延長戦-」を開催する。その初日となる3月21日の堺Tick-Tuckは、かつて山内が「高校生のときに週5で通っていた」という思い入れのあるライブハウスだ。さらに、5月27日のファイナルは細川のホームである名古屋のAPOLLO BASEで開催される。“いまの自分たちだからこそ歌える音楽”を正直に作り続けながら、一歩ずつバンドの現在地を更新していく彼らにとって、それは大きな意味のあるツアーになりそうだ。
【取材・文:秦 理絵】
【撮影:南風子】
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リリース情報
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青年の主張
2017年03月08日
ポニーキャニオン
02. 17歳
03. 雨哀
04. 道を行け
05. DAYS
06. 夜間飛行
07. トワイライト
08. 青春のすべて
09. 影と光
10. 青年の主張
11. エンドロール
12. 灯火
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セットリスト
「Shout it Out ワンマンライブ『GOODBYE MY TEENS』supported by Eggs」
2018.1.20@LIQUIDROOM
- 01.青
- 02.青年の主張
- 03.17歳
- 04.道を行け
- 05.夜間飛行
- 06.逆光
- 07.列車
- 08.生きている
- 09.ギターと月と缶コーヒー
- 10.トワイライト
- 11.灯火
- 12.一から
- 13.そのまま
- 14.エンドロール
- 15.大人になれない
- 16.アフタースクール
- 17.風を待っている
- 18.青春のすべて 【ENCORE】
- EN 01.これからのこと
- EN 02.光の唄
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お知らせ
でらロックフェスティバル2018 powerd by @FM
02/03(土) 名古屋市内ライブハウス
ハルカミライ ”俺達が呼んでいるツアー
02/09(金) 高松DIME
02/10(土) 高知X-pt.
machioto2018
02/11(日)
岡山CRAZYMAMA KINGDOM / 岡山MO:GLA / 岡山BLUE BLUES / 蔭涼寺
拝啓、親愛なる世界へ
02/28(水) TALK & MUSIC Naked Loft
HIROSHIMA MUSIC STADIUM ‐ハルバン’18‐
03/10(土) 広島市内ライブハウス
TENJIN ONTAQ 2018
03/11(日) 福岡・天神地区ライブハウス
FACE IT!!
03/12(月) 大分clubSPOT
03/14(水) 小倉FUSE
03/15(木) 鹿児島 SR Hall
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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