coldrain 最新アルバム『FATELESS』 JAPAN TOURファイナル、日本武道館
coldrain | 2018.03.02
開場前BGMにLINKIN PARKとPay money To my Painが流れていた。前者は00年にデビューしたアメリカのバンド、後者は00年中盤にデビューした日本のバンドで、どちらもcoldrainに絶大な影響を与えたアーティストだ。しかしながら、両者のフロントマン(チェスター・ベニントン、K)は既に他界している。ラウド・ロックを盛り上げ、音楽シーンに革命をもたらした2バンドの存在なしに、俺たちはここに立っていない。BGMを通して、そんな言葉が聞こえてくるようだった。
偉大なる先人たちの背中を追い続けたcoldrainも結成10年という大きな節目を迎えた。ラウド・ロックの旗を、火を、志を受け継ぐべく、まだ超えなければいけない壁はたくさんある。そのひとつの大きな壁を、彼らはこの日乗り越えた。
coldrainの最新アルバム『FATELESS』ツアー・ファイナル最終地は日本武道館である。英語詞オンリーのラウド系バンドが武道館でやることの意義はとてつもなく大きい。90年代にHi-STANDARDが英語詞でパンク・ロックを鳴らし始めたとき、多くのキッズが夢中になり、それから楽器を持ってバンドを始めた人たちが無数にいた。00年代に突入すると、日本のラウド・シーンは斜陽のジャンルになっていた。その頃に世界中のファンを魅了したLINKIN PARK、無風状態の日本で孤軍奮闘したPay money To my Pain(PTP)の活躍はcoldrainにとって希望の光だったに違いない。そして今、coldrainは10年間の集大成を見せるときが来た。
会場に入って、しばらくすると、スクリーンに10分前を告げるカウントダウンの数字が浮かび上がり、観客の高揚感を刺激する。それからMasato(Vo)、Y.K.C(Gt)、Sugi(Gt)、R×Y×O(Ba)、Katsuma(Dr)のメンバー5人それぞれがヘリコプター、車、バイク、アヒル・ボートなどに乗った紹介映像が流れ、「武道館!」とMasatoが雄叫びを上げると、ライヴは「ENVY」で火蓋を切った。空気を真っ二つに切り裂く豪快な演奏が響き渡ると、早くも場内は興奮のるつぼと化す。「FIRE IN THE SKY」に入ると、数本の火柱が上がり、ステージ背面に設置された巨大5面スクリーンにはメンバーの姿が映され、臨場感もたっぷりだ。それから街に爆弾が落ちる映像が流れる中で「LOST IN FAITH」を披露。随所にMETALLICAオマージュと言えるスクリーンによる演出効果に思わずニヤリとした。
「10年間好きなことをやってきた。全員で行くぞ!」とMasatoが煽ると、「NO ESCAPE」、「TO BE ALIVE」、「SIX FEET UNDER」と牙を剥き出しにした獰猛なヘヴィネスを発揮。シンガロング、ヘッドバンギング、ダイバーなどが続出し、カオスな熱気に包まれていく。有無を言わせない力業でねじ伏せる一方、ラウド・バンドとしての別の側面も中盤にアピールする。なんとストリングス隊をゲストに招き、「STAY」、「UNINVITED」、「RUNAWAY」で共演を果たした。武道館仕様とも言うべきスケールで、楽曲の良さを数倍に輝かせるスペシャルな演出に会場も大沸騰。Y.K.Cの駆け上がるようなギター・ソロと壮麗なストリングスが絡み合い、激しくも美しい音風景を創出することに成功していた。
さらにMasatoはラウド・ロックを教えてくれたというLINKIN PARKのチェスター、PTPのKの名前を口にすると、その2人に捧げて「Confession」をアコースティック形式でプレイ。天国まで届くように、張り上げるように歌うエモーショナルな声色に魂を揺さぶられたのは言うまでもない。後半は「R.I.P.」、「FICTION」、「ADRENALINE」、「F.T.T.T」とラウド・ロックの真髄を叩き付ける豪放なパフォーマンスを見せつけ、アリーナのあちこちで激しいサークル・モッシュが起きていた。その異様な盛り上がりにトドメを刺したのは初期のアンセム曲「FINAL DESTINATION」だ。開放的なエネルギーを振り撒くと、会場は天井知らずの大盛況ぶり。
本編ラストは結成10年という節目に生まれた「A DECADE IN THE RAIN」を放った。曲作りの段階から大バコを意識したアリーナ・メタルが演奏されると、ウォーウォーの大合唱で会場は埋め尽くされ、バンドと観客の絆を確かめ合う濃厚な空気が流れる。また、Katsumaの抜けのいい野太いドラムも武道館でより一層映え、楽曲のドラマ性を高めていたことも付け加えておきたい。
アンコールに応えると、再びストリングス隊を従え、「THE WAR IS ON」を披露。coldrainの楽曲との相性の良さを改めて感じつつ、ラスト・スパートは「AWARE&AWAKE」、「THE REVELATION」で締め括る。演奏中にふと周囲に目をやると、3階の隅々まで拳を突き上げる人で溢れ、アリーナにはヘッドバンギングの嵐が吹き、肩車した観客の多さにも圧倒されるばかり。曲の後半に客電が付くと、武道館の凄まじい盛り上がりを見事に炙り出す。気付けば全28曲、2時間半に及ぶ長尺ライヴは様々な演出効果も相まって、1秒も見逃せない渾身のパフォーマンスの連続であった。
「好きなことを10年やり続けたら、見たこともない景色を見れた」とMasatoは感慨深げに語っていた。そこには、己の信念を曲げずに英語詞オンリーのラウド・ロックを貫き通したバンドの矜持が滲み出ていた。LINKIN PARKとPTPから授かったバトンを持って、俺たちはこれから10年先も走り続ける。そんな決意と覚悟に漲っていた。ラウド・ロックの未来はcoldrainにかかっている。そう思わずにはいられない圧巻のショウだった。
【取材・文:荒金良介】
【撮影:Julen Esteban-Pretel】
【撮影:ヤマダマサヒロ】
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リリース情報
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FATELESS
2017年10月11日
ワーナーミュージック・ジャパン
2.FEED THE FIRE
3.LOST IN FAITH
4.BURY ME
5.R.I.P.
6.INSIDE OUT
7.STAY
8.COLORBLIND
9.F.T.T.T
10.UNINVITED
11.AFTERMATH
12.A DECADE IN THE RAIN
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セットリスト
“FATELESS” JAPAN TOUR in 日本武道館 2018.2.6@日本武道館
- 01.ENVY
- 02.FEED THE FIRE
- 03.WRONG
- 04.FIRE IN THE SKY
- 05.INSIDE OUT
- 06.LOST IN FAITH
- 07.NO ESCAPE
- 08.TO BE ALIVE
- 09.SIX FEET UNDER
- 10.BURY ME
- 11.COLORBLIND
- 12.STAY
- 13.UNINVITED
- 14.RUNAWAY
- 15.24-7
- 16.DIE TOMORROW
- 17.Confession
- 18.THE STORY
- 19.GONE
- 20.R.I.P.
- 21.FICTION
- 22.ADRENALINE
- 23.F.T.T.T
- 24.FINAL DESTINATION
- 25.A DECADE IN THE RAIN [ENCORE]
- EN 01.THE WAR IS ON
- EN 02.AWARE & AWAKE
- EN 03.THE REVELATION
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お知らせ
VANS WARPED TOUR JAPAN 2018 presented by XFLAG
03/31(土) 幕張メッセ 9〜11ホール
TRIPLE AXE TOUR’18
04/07(土) LIVE WAREHOUSE(高雄)
04/12(木) 新木場 STUDIO COAST
ANOTHER DECADE IN THE RAIN TOUR 2018
04/17(火) 苫小牧ELLCUBE
04/18(水) 旭川CASINO DRIVE
04/20(金) 小樽GOLDSTONE
04/21(土) 帯広MEGA STONE
04/23(月) 函館club COCOA
04/25(水) 青森Quarter
04/26(木) 秋田Club SWINDLE
04/30(月) 山形ミュージック昭和SESSION
05/02(水) HEAVEN’S ROCK宇都宮 VJ-2
05/11(金) 滋賀U STONE
05/13(日) 佐賀GEILS
05/15(火) 長崎DRUM Be-7
05/17(木) 熊本B.9 V1
05/19(土) 山口 周南RISING HALL
05/21(月) 島根 出雲APOLLO
05/22(火) 鳥取 米子laughs
05/24(木) 三重 松阪M’AXA
05/27(日) 和歌山SHELTER
06/05(火) 福井CHOP
06/07(木) 奈良NEVERLAND
06/12(火) 山梨 甲府CONVICTION
06/13(水) HEAVEN’S ROCK熊谷 VJ-1
07/03(火) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
07/05(木) 郡山CLUB #9
07/06(金) 新潟LOTS
07/10(火) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
07/11(水) 高知 X-pt
07/13(金) 大分DRUM Be-0
07/15(日) 鹿児島CAPARVO HALL
07/16(月) 宮崎SR BOX
07/18(水) 愛媛 松山W Studio RED
07/19(木) 徳島 club GRINDHOUSE
07/22(日) 静岡 SOUND SHOWER ark
07/24(火) 柏PALOOZA
07/25(水) 高崎club FLEEZ
11/24(土) 桜坂セントラル
ARABAKI ROCK FEST.18
04/28(土) みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
04/29(日) みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
LOUD OR NOTHING
05/07(月) 恵比寿LIQUIDROOM
05/08(火) umeda TRAD
SPACE SHOWER TV × Monster Energy モンスターロック LIVE 2018
05/09(水) 名古屋 ダイアモンドホール
SATANIC CARNIVAL’18
06/16(土) 幕張メッセ 国際展示場 9-11 ホール
06/17(日) 幕張メッセ 国際展示場 9-11 ホール
LIVE
07/21(土) 岐阜 岐阜CLUB-G
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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