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打首獄門同好会、バンドの核を貫き13年越しの夢の武道館に立つ!

打首獄門同好会 | 2018.03.20

 13年越しの武道館進出の浪漫。お家芸の貫き。出発時より現在まで様々な楽曲テーマを用いながらも一貫してブレていない「生活密着型ラウドロック」のアティテュード。高い目標を掲げ、それを叶える強い信念。諦めずに前向きに進んでいく、その不屈性と結果、得た素晴らしい光景。てんこ盛り状態のバイタリティとサービス精神……。

 打首獄門同好会が、昨年の同時期より実施を公言していた日本武道館公演が満場の中、大成功を収めた。
この日に向け様々な試練を自身に課し、一部未達成なものがあったものの、この武道館実施に向け掲げた公約をほぼ完遂した彼ら。そこには彼ら史上、最も美しく感動的で素晴らしい光景が広がっていた。

私が着席したのは開演30分前。しかしその時点で、既にこの日のライブは始まっていた。彼らが去年、行っていた10獄放送局の特別番組「お遍路フェス」が我々を待っていたのだ。『水曜どうでしょう』風の同番組。内容は昨年の公約の一つに掲げていた各地域のフェスの制覇が、残念ながら四国のみ達成できず。ならば四国風情のお遍路を88箇所全て回ることで、それを達成したことにしようと、その道中を映像に収めたものであった。笑いあり、感動あり、感心ありの映像が会場のはやる気持ちを和ませていく。

 オープニングはRPG風の映像をバックに、アコギに乗せ、これまでに果たした公約を振り返るボーカル&ギターの大澤敦史の叙情的な「はじまりの歌」(「春盤」収録)だった。それを打ち破るが如く激しいSEが流れ出し、3人のメンバー+サカムケ&風乃海のVJ&コーラスが登場。場内を煽る。
1曲目は男鹿ナマハゲ太鼓のナマハゲ姿の左右2人の力強い和太鼓隊と共に贈られた「DON-GARA」が飾った。祭の土着性と彼ら特有のラウドロックが融合を見せ、まさに会場中が血沸き肉踊る状態に。疾走感と躍動性がフロア中をいきなりバウンスさせていく。続く「音楽依存症生活」では、ベース&ボーカルのjunkoと、ドラム&ボーカルの河本あす香の歌声も加わり、ポップ性が場内に呼び込まれる。同曲では歌内容同様、彼らの音楽が、ここではないどこかへと連れ出してくれ、VJの一部では、この日の為に特別に「ライブハウス(武道館とルビ)へようこそ」と加えられた演出も現われた。

 続いては彼ら得意の食べ物ソングが連射される。ドラム、ベース、コーラス女子のユニゾンボーカルと、ハーモニー。メロディの美しさが味わえた、ラーメン二郎讃歌「私を二郎に連れてって」、燃え盛る松明と共に食べ物の恨みや怒り、怨念をラウドなサウンドに乗せて放った「TAVEMONO NO URAMI」が場内を交え一緒に歌われる。
食べてばかりでは偏りがちだ。彼らは健康面でのケア勧告も忘れていない。ゲストの歯科医ラッパーDr.COYASSのダミ声ながら鋭利なラップに音頭調の歌が融合した、歯医者に行きたくないと誘いの攻防もユニークな「歯痛くて」、食べたいけど痩せたい。そんな自己との戦いとせめぎ合いを描いたサビの上昇感も印象的だった「糖質制限ダイエットやってみた」が我々の健康面も気遣った。

 彼らの魅力の一つは、その轟音サウンドとキャッチ―さの融合だ。そして、ことライブになると、更にそれに各曲に合わせての歌詞とシンクロするリリック付きの映像という楽しみも加わってくる。この日も武道館ステージ中央設置の巨大モニターに、サカムケ&風乃海による各曲のビジョンが映し出され、その見事なシンクロっぷりと、歌詞が分かることによる、より親しみやすさや一緒に声を合わせられる役割を担っていた。そもそも彼らの楽曲は構成も複雑だし、テンポチェンジもかなりあり、目まぐるしい上にトリッキーな箇所も多い。しかし、それらをものともせず終始シンクロさせ、より舞台の充実度のアップのさせっぷりには特筆すべきものがあった。

 また、この日は多くの着ぐるみたちも舞台を楽しませた。「New Gin_geration」では、岩下の新生姜のキャラクターの被り物やバルーンドールが。中盤ではパンキッシュで疾走感たっぷりにアレンジされた『水曜どうでしょう』主題歌のカバー「1/6の夢旅人2002」に合わせonちゃんが愛らしいアクションを魅せ、寒い冬の朝のふとんから出たくない葛藤と、そこを勇気をもって抜け出し、その先の現実社会と戦って、再び舞い戻ってくる諭しを歌った、アンコールでの「布団の中から出たくない」の際には、同曲のMVと共にそこにも登場していたコウペンちゃんも現われ、それらは、そのゆるキャラ性も伴い、ハードでラウドな彼らの音楽性に微笑ましさや楽しげさをブレンドさせてくれた。

 この日は幾つかのアトラクションも配されていた。漁港の森田釣竿をゲストに迎え歌われた、魚讃歌「島国DNA」では、6つのブロックに分けたフロアに鮪の巨大バルーンを放ち、どのブロックが最も鮪を優雅に泳がせたかを競い、ヘッドバンキング必至の「きのこたけのこ戦争」では、朋友バックドロップシンデレラのメンバーも応援団として駆けつけ、各エリアのきのこの山派とたけのこの里派によるウォールオブデスを煽り、決着を見届けた。また、武道館中にこの日限定の特製「うまい棒」が配られ、それが振られるなか歌われた「デリシャスティック」に於いては、それがあたかもサイリュームかの如くの錯覚を起こした。そんな中、最大の見せ場は、跳ねるリズムと4つ打ちの上昇感も印象的な「88」の際の、先述の10獄放送局を一緒に行っていたアシュラシンドロームのボーカル青木亞一人による、お遍路スタイルでの空中遊泳に他ならない。この際は演奏と重なり、彼の勇姿に後光が射すのを見た。

 それから、この日は彼らの公約の一つにあった、春夏秋冬盤リリースの最後の1枚、「春盤」の発売日でもあった。その中からプレイされた、北から南まで全都道府県が歌に盛り込まれた「47」は、まさに彼らが今年成し遂げた全47都道府県ライブの完遂への感謝が込められているかのようにも響いた。

 しかし私が、この日、最も感心したのは、やはり彼らならではの「生活密着型ラウドロック」の神髄とも言える本編ラスト3曲であった。結成して初めて作った曲でもある「Breakfast」(「春盤」にも収録)では、朝ご飯の大事さや重要性を、そして「日本の米は世界一」と称え誇らしく鳴らされた曲、さらに本編ラストを飾った「カモン諭吉」では、“お札よ財布から逃げないで。戻ってきて!!”との祈りと共に、それが叶ったかのように、武道館頭上から彼らの肖像画を模したお札のダミーが美しく舞い散った。それらはみな、この13年間の集大成の凝縮と、昔から変わらないアティテュードを誇示しているかのようであった。

 アンコールは「布団の中から出たくない」「フローネル」と、どちらもささやかな幸せをキープする為にも、まずは現実社会と向き合い、勇気を持ってそれを制し、再びそのささやかな幸せに帰還できる歓びを目指すべく歌が伝えられた。それらは、また明日から現実社会へと踏み出していく我々の背中を強く逞しく後押ししてくれた。

 サービス精神旺盛でバラエティに富んだ内容の満足度はもちろん。色々な意味で明日への活力を授かった一夜であった、この日。集まった多くの人たちは、何か彼らと共に一つ大きなものを達成させ、やり遂げた多幸さを得たことだろう。それはやはり、彼らが結成時より、たゆまず貫き通してきた「生活」を、時にコミカルに、時に誇らしく、時に雄々しく、ラウドロックに乗せて歌い続けてくれたからに他ならない。
人は、ささやかな望みや希望、好きなもののためなら、たいていの苦難は乗り越えられる。それが例え、食や音楽、孫に布団、お風呂にお菓子、時にはお金だったとしても。人は一瞬、それらを思い浮かべ、うっとりしつつもハッと気づき、また歩き出していく…。
そこに愛しい人や恋しい人を描かずとも不思議と同等の、それらへの愛しさと、そこに向かっていく原動力を与え続けてくれる彼らの音楽。そう考えると、この13年間、彼らが歌い続けてきたのは、愛しい人や恋人は一切出てこないし影もちらつかないにせよ、全て「ラブソング」だったのだ!! と改めて強く感じたのだった。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:HayachiN】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 打首獄門同好会

リリース情報

春盤

春盤

2018年03月11日

LD&K

1.はじまりのうた
2.47
3.Breakfast
4.おわりのうた
5.失われし平和な春の日よ(LIVE)

セットリスト

打首獄門同好会 at 日本武道館
2018.3.11@日本武道館

  1. 1.DON-GARA
  2. 2.音楽依存症生活
  3. 3.私を二郎に連れてって
  4. 4.TAVEMONO NO URAMI
  5. 5.歯痛くて feat. Dr.COYASS
  6. 6.糖質制限ダイエットやってみた
  7. 7.まごパワー
  8. 8.New Gingeration
  9. 9.島国DNA
  10. 10.ニクタベイコウ!
  11. 11.ヤキトリズム
  12. 12.47
  13. 13.今日も貴方と南武線
  14. 14.きのこたけのこ戦争
  15. 15.88
  16. 16.10獄食堂へようこそ
  17. 17.1/6の夢旅人2002
  18. 18.デリシャスティック
  19. 19.Breakfast
  20. 20.日本の米は世界一
  21. 21.カモン諭吉
  22. 【Encore】
  23. En-1.布団の中から出たくない
  24. En-2.フローネル

お知らせ

■ライブ情報

ザ・マジックアワーツアー「春のPAN祭り2018」
04/14(土)新宿LOFT

バックドロップシンデレラ5th Single『サンタマリアに乗って』レコ発
「サンタマリアとウンザウンザを踊るツアー」

04/16(月)千葉 稲毛 K’s Dream

ROTTENGRAFFTY PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018
04/21(土)山口県 周南RISING HALL
04/22(日)島根県 出雲APPOLO

JAPAN JAM 2018
05/04(金)千葉氏蘇我スポーツ公園

VIVA LA ROCK 2018
05/05(土)埼玉スーパーアリーナ

HER NAME IN BLOOD FULL POWER TOUR 2018
05/10(木)名古屋CLUB UPSET

セックスマシーン結成20周年記念「バンド名による影響を考察するツアー」
05/18(金)埼玉県 HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1

METROCK2018
05/19(土)METROCK大阪特設会場(大阪府堺市・海とのふれあい広場)

百万石音楽祭2018~ミリオンロックフェスティバル~
06/02~03 石川県産業展示館

JUNE ROCK FESTIVAL 2018
06/16(土)クラブチッタ川崎

オメでたい頭でなにより全国ツアー「オメ道楽2018 ~鯛獲るレコ発編~ 札幌店」
06/30(土)札幌mole

OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL vol.9
07/28~29 秋田県男鹿市船川港内特設ステージ

THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018
10/07~08 桜島多目的広場&溶岩グラウンド

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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