感覚ピエロ、嬉々として挑む2度目の47都道府県ツアーでバンドのプライド響かせる
感覚ピエロ | 2018.04.05
わずか3年間で二度目の47都道府県ツアーへ踏み切るなんて、やはり感覚ピエロは常軌を逸したバンドだ。スケジュールで言えば、3月から7月にかけて5ヵ月間をかける日程は、一度目に47都道府県ツアーを開催した2015年当時と比べると余裕はある。だが、それでも20本を終えたところで「まだ半分」という、終わりの見えない47都道府県ツアーは肉体以上に精神的にも過酷なものだ。そこに彼らは再び嬉々として挑む。一度目は、みんなに知ってもらうために。そして二度目となる今回は、待ってくれている人たちに会いに行くために。以下、そんなツアーの序盤となる2日目Zepp Tokyo公演をレポートするが、思い返せば、同じ全県ツアーの東京編でも約3年前は渋谷クアトロだった。いまや倍以上のキャパを誇るステージに堂々と立つ彼ら。そこには、あの頃と変わらずに、エロとかっこいいを行き来しながら、真っ直ぐに自分たちの想いを届ける感覚ピエロがいた。
ソールドアウト満員の会場。西尾健太(Dr)、滝口大樹(Ba)、秋月琢登(Gt)の楽器隊3人がまず姿を現し、最後に横山直弘(Vo/Gt)が登場すると、フロアからは割れんばかりの歓声が湧き起こった。「俺らと遊ぶ準備はいいか!? 東京!」。横山が放つその一言だけで最前付近のお客さんがさらに前へと詰め寄り、集団が大きくうねる。感覚ピエロらしいダークでエッジの効いたダンスロック「CHALLENGER」からライブがスタートした。全身をバネのようにして力強くドラムを叩く西尾、ひときわ色気の増した滝口のベース、衝動的でありながら繊細な秋月のギター。一発で聴き手のボルテージを上げる破壊力抜群のバンドサウンドの上で、横山の挑発的なボーカルは約2,000人と真っ向から対峙していた。
“あなたの世界は何色か?”という問いかけを合図にカラフルな照明の光が降り注いだ「疑問疑答」、感覚ピエロ恒例のお色気ダンサーがセクシーに体をくねらせた「ワンナイト・ラヴゲーム」など、Zeppワンマンだからこそ映える演出も取り入れながら、ライブは1曲ごとに熱狂の度合いを強めていく。「俺らにあなたたちの最高にいやらしい姿を見せてくれますか?」という横山らしい煽り文句から雪崩れ込んだ「Tonight Yeah!Yeah!Yeah!」のあと、2016年にクドカン脚本のドラマ『ゆとりですがなにか』主題歌に抜擢されて、バンドの名前を一躍広めるきっかけになった「拝啓、いつかの君へ」では特大のシンガロングが起こった。メンバーの短いソロ回しでも魅せた「ミステリアスに恋をして」、ヒップホップ的なアプローチの「A-Han!!」へ。ダイナミズムも哀愁も、不良性もエロも衝動も、ロックバンドが持つべき全てを兼ね備えながらエンターテイメントする、圧巻のパフォーマンスだ。
開始早々、怒涛のアップチューンの連発に「怪我せんようにな、おもいやりやで」と語りかけたのはベースの滝口。ここから会場の空気がガラリと変わった。秋月の奏でるギターがエモーショナルなメロディに寄り添い、横山が真摯な口調で「俺たちに出会ってくれて、本当にありがとう!」と感謝を伝えた「さよなら人色」、ポストロック的なアプローチでバンドの演奏力を見せつけた「変幻」、そして「何度だってやり直せる」という言葉と共に届けた「0になって」。この流れは素晴らしかった。ツアータイトルからしておふざけ全開で奇を衒ったバンドではあるけれど、とことん“かっこいい”を追求するときの感覚ピエロは本当に真っすぐだ。特に「0になって」は、ギターの秋月が手がけた“再出発”の歌詞を、横山がしっかりと汲んでバンドの想いとして伝える、とても感動的な瞬間だった。
どうやら、この日のMCはメンバー全員が順番に担当する段取りになっていたらしく、終盤、「ここで喋るのは俺やな(笑)。このツアータイトルどない?」と喋り出したのはドラムの西尾。「あれ、俺が考えたんだけど、言える? 絶対言えへんよな。Twitterで見かけたんだけど、コンビニで発券するとき、恥ずかしいって」と気さくに話して会場を和ませると、いよいよライブは終盤の盛り上げゾーンへと向かっていった。何も考えずにおバカになれるライブアンセム「リア充大爆発」から、再びダンサーを投入したお色気ロック「A BANANA」、さらに女子 vs 男子で「おっぱい」を叫んだ「O・P・P・A・I」へ。その凄まじいエネルギーを体感すると、いまや感覚ピエロにはZepp級の会場ですら狭いと感じる。
そして、最後のMC。横山がギターを弾きながら語りかけた。「俺たちは、“おっぱい”って言ってたバンドだけど、ちゃんと自分の気持ちを届けたいと思って、「拝啓、いつかの君へ」では“あんたの正義は一体なんだ?”って歌いました。“感覚ピエロは変わったね“って言われます。はっきり言います、変わりました。でも、俺たちの心のなかにある“かっこいいことをやる”っていう信念は一生変わりません!」と。バンドのこれまでを背負い、これからへの熱い決意を剥き出しの言葉で口にする横山の言葉に、会場からは温かい拍手が湧き起こる。そして、その場所に集まってくれたお客さんと一緒に“光り輝く未来”へ進もうと歌う「ハルカミライ」から、最後に「嘘偽りなく、ここに来てくれる人たちを家族だと思ってます。最後の1曲は、“ありがとう”を込めて帰りたいと思ってます」と続けたのは壮大なロックバラード「Just to tell you once again」だった。「僕らのことを愛してくれてありがとうございます!!」。絶叫のような横山の感謝の言葉でライブを締めくくった。
モーニング娘。の「恋愛レボリューション21」のカバーという、まさかのサプライズを用意していたアンコール。“君に夢中”な恋心を綴った西尾ワールド炸裂のポップソング「LOVE GENERAL」では、“飲みかけ飲みたい”のフレーズでコール&レスポンスを起こすと、横山はステージドリンクの“飲みかけ”をお客さんにパスするパフォーマンスでも湧かせる。アンコールとはいえ、本編の余力なんかでは決して終わらないのが感覚ピエロのライブだ。邦ロックシーンへの皮肉を込めた「Japanese-Pop-Music」のあと、サンバ的なアプローチの「VONGOLE ~ナポリの潮風~」でスマホのライトがフロアを美しく埋め尽くすと、横山は「これがZepp Tokyoの愛ですよ」と最高の笑顔を見せた。最後の1曲まで、惜しみないサービス精神。それは、事務所やレーベルに所属せず、バンドの身ひとつでのし上がってきたインディーズバンドのプライドを賭けたステージでもあった。
誰かが敷いたレールの上ではなく、誰も歩いてこなかった道を自ら切り拓いてきた感覚ピエロ。これからもその姿勢を変えずに進むという覚悟すら感じた東京公演を終えて、彼らの47都道府県ツアーは、ここから7月28日のファイナル大阪なんばHatchまで続く。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:ヤマダマサヒロ】
リリース情報
色色人色(ヨミ:イロイロトイロ)
2018年02月21日
JIJI INC.
01 CHALLENGER
02 疑問疑答
03 give me
04 無い ナイ 7i
05 ワンナイト・ラヴゲーム
06 A BANANA
07 0になって
08 さよなら人色
09 触れてみればいいんじゃない?
10 LOVE GENERAL
11 変幻
12 ハルカミライ
13 Just to tell you once again
【Disc 2 - DVD】
01 ハルカミライ (Music Video)
02 A BANANA (Music Video)
03 ワンナイト・ラヴゲーム (Music Video)
04 疑問疑答 (Music Video)
05 さよなら人色 (Music Video)
セットリスト
感覚ピエロの全国47都道府県ツアー2018、「KKP TOUR またイかせてもらいます!!47都道府県全国津々ムラ×2!! デリバリー感覚ピエロ!!~チェンジだなんて言わせない~」
2018.03.09@Zepp Tokyo
- 1.CHALLENGER
- 2.疑問疑答
- 3.give me
- 4.無い ナイ 7i
- 5.ワンナイト・ラヴゲーム
- 6.CRAZY GIRL
- 7.Tonight Yeah!Yeah!Yeah!
- 8.拝啓、いつかの君へ
- 9.ミステリアスに恋をして
- 10.A-Han!!
- 11.さよなら人色
- 12.変幻
- 13.0になって
- 14.リア充大爆発
- 15.A BANANA
- 16.O・P・P・A・I
- 17.触れてみればいいんじゃない?
- 18.ハルカミライ
- 19.Just to tell you once again 【ENCORE】
- EN1.恋愛レボリューション21
- EN2.LOVE GENERAL
- EN3.Japanese-Pop-Music
- EN4.VONGOLE 〜ナポリの潮風〜
お知らせ
ARABAKI ROCK FEST.18
04/28(土)[宮城]みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
NIIGATA RAINBOW ROCK 2018
05/04(金・祝)[新潟]11会場にて開催
rockin’on presents JAPAN JAM 2018
05/06(日)[千葉]千葉市蘇我スポーツ公園
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。