The Floor Presents 『In Train Tour』 東京ファイナルをレポート
The Floor | 2018.04.06
まさにタイトル通り、この日のライブは列車で旅をしているが如し。超満席の乗客たちを、ほぼノンストップで、これまで見たことのない眺めの良い場所へと導き、集まったオーディエンスたちも、その楽曲毎に次々に変わっていく車窓からの景色や光景に自身を同化させ続けた2時間であった。
The Floorが今年2月に発表した1stフルアルバム『ターミナル』と共に行っていたツアーを無事完遂した。そして、このツアーファイナルのステージ、渋谷WWWに於いては、満場の中、集まった者ひとりひとりに各々最良の景色を眺めさせてくれた。
登場SEは「ベートーヴェンの交響曲第9番」。その「第九=歓びの歌」にリバースを交えたものであった。同曲が神々しくも雄々しく鳴り響く中、メンバーがステージに登場。スタンバイを始める。ドラムのコウタロウの打ち出すキックに合わせてバックライトが眩しく点滅。通称「目潰し」と呼ばれる、光量の極めて高い白色ライトが神々しい雰囲気を作り出していく。その荘厳なホワイトアウトしたステージの上、更に神々しく映るメンバーたち。いきなり「ここではない楽しい世界へと引き連れん!!」とばかりに、ボーカル&ギターのササキハヤトが歌い出し、「Cheers With You」に入る。パーっと視界が開け、「明けない夜なんて無い。不安や悩みなんてひととき忘れ去って、俺たちのパレードについておいでよ」と、会場をまるでハメルンの笛吹きの様相で引き連れていく。続けて、1stアルバム収録の「ドラマ」に入るとライブは更に走り出し、同時に場内にカラフルさも呼び込まれる。ツラさや闇を超えた先の光や希望を信じさせてくれる、彼らの楽曲タイプの一つが光り出していく。
ベースのミヤシタヨウジのエフェクトの効いたベースラインのイントロから「はたらく兵隊さん」に。永田涼司によるギターの軽やかなカッティングが生み出すウキウキ感が場内に満ちていく。そして、コウタロウによるタイトで16分(ぶ)のドラミングを中心とした長めのイントロから「POOL」に入ると、永田もアゴゴを叩きステージ前方へ。一つ目の盛り上がりを作っていく。また、ノンストップで「Toward Word World」に入ると会場もビートに合わせてバウンス。軽やかでファンキーなカッティングが程よい横ノリ感を生んでいく。更には、彼らを押し上げたナンバーとも言えるインディーズ時代の代表曲、カリビアンタッチの「リップサービス」の登場に至っては、トロピカルさが場内に呼び込まれ、合わせて同曲の持つメッセージさも手伝い、ステージと場内の距離がグッと近づいていく。
中盤に差し掛かる辺りからライブは更に色を変えた。フルアルバムにも収まっていた「煙」では、彼らの胸の内にある多少の不安面が若干のスリリングさと焦燥感な雰囲気のなか吐き出された。またシューゲイズな「灯台」では、一般的にはズブズブと行きそうな世界観も、あえて上昇感を交えて伝える彼らならではのウェットさが味わえた。そして、「ノンフィクション」に於いては、フィクションのようにはいかない、だけどけっして色褪せることのない毎日を生き抜く自分たちを力強く後押ししてくれた。
チープな音色のリズムボックス的なコウタロウが叩くパッドと、ファットなミヤシタのベースライン、そして永田のサンプラーを使ったライブならではの隙間の多いオリジナルなアレンジも印象的だった「Wake Up!」。アコーディオンの同期音色も加わった「Flower」では、牧歌さが場内に寄与されていった。
曲に乗せてササキが「『In Train Tour』。みなさん乗り心地はいかがですか?今日はこの素敵な空間がずっと続けばいいなと思ってます」と一言。列車は更に彼らの深部へと進んでいく。この列車に乗ってパノラマの向こうに行こうと誘った「パノラマ」では、永田のギターソロも見どころであった。
後半に入るとライブは再び加速度を増した。サビを会場の大合唱に任せた「SING!」、「ハイ&ロー」では裏打ちのカッティングが軽やかさを呼び込んでいく。中でもこの日、私が印象深かったのは、オリジナルにはなかったきらびやかでダイナミズム溢れる長めのインスト的なイントロから入った「イージーエンターテイメント」であった。頭上のミラーボールも回り、至福の時を与えてくれた同曲。ササキも楽しそうにハンドマイクで歌い、会場も合わせて楽しそうにバウンスを起こす。そして、電車のコラージュ音から、上昇感と景色感溢れる「寄り道」に入ると、雄々しさとダイナミズムが、会場に「ねぇ、寄り道しようよ」と楽しげに誘った。
この日、私がハイライトに感じたのは「18」であった。高校の頃に見た憧れのアーティストのライブでの光景が今日までの自分をここまで駆り立て、ここにつながっていたかの感謝も交え、歌い伝えられた同曲。そして、その関係や間柄は、これからもずっと不変であることを力強く約束してくれた。
本編ラストは、「最高の景色でした。俺たちと出会ってくれてありがとう!!」(ササキ)の言葉のあと放たれた、アルバムでもラストに収まっていた「ファンファーレ」が飾った。誇らしげなこれからの道を明るく照らしてくれるようファンファーレのような同曲が会場中から力強い拳を上げさせた。
シームレスが故に生まれゆく流れや物語、持続性や凝縮感を目(もく)してか?あえて本編の曲間ではMCを一切挟まなかったこの日。アンコールに入ると、楽曲をプレイする前に、「その分を!!」と言わんばかり、和やかに会場との対話を交えた長いMCが贈られた。
アンコールは2曲。それぞれ力強く一緒に歩んでいく宣言のような歌がうたわれた。ギターソロを中心とした長く続くアウトロが、これからも歩んでいくが如く響いた「夢がさめたら」、また、会場中が力強く腕を掲げ一緒に歌った「Wannabe」では会場中も一体化。いたるところに嬉しそうな表情の花を咲かせた。
同曲が一旦、この日の終着地に帰着させてくれたものの、ここから先にも、まだまだ素晴らしい景色へと彼らが誘ってくれることを確信させてくれた、この日。終着地点の景色や雰囲気を想像し、ワクワクして乗り込んだ満席の同列車では、結果、全員をこれまで見たことのないほど眺めが良く、気持ち良い場所へと着させ、そこからまたそれぞれの目的地へと歩を歩ませるに至った。
移り変わる景色に心を委ね、気持ちを同化させていたかと思いきや、ふとトンネルに入ると急に外を眺めている自身の姿に差し替わり、それを機に自身と向き合い出すのも特徴的な列車での旅。よくよく考えるとこれって、The Floorの音楽性にも近い。気持ち良さや心地良さ、高揚感や快楽に身を預け、委ね、自身を楽しませながらも、リリックに込められた、時にふと現れる内面性が、自身と向き合わせ、考えたり物語を広げたりさせる、彼らの音楽。そう考えると今回のツアータイトルは、まさに今の彼らのライブを体現していたと言える。
次に彼らの列車に乗る際には、どんなところに誘われ、どのような景色が見れるのだろう?The Floorの列車は、まだまだ大勢の人を乗せ、これからもこの先の景色をみんなに届けるがごとく走り続けていく。そう、列車は前にしか進めないのだ!今後も乗り遅れるな!!
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:MASANORI FUJIKAWA】
リリース情報
ターミナル
2018年02月07日
ビクターエンタテインメント
2.ドラマ
3.イージーエンターテイメント
4.煙
5.POOL
6.Wake Up!
7.Flower
8. レイニー
9.寄り道
10.ファンファーレ
セットリスト
The Floor Presents 『In Train Tour』
2018.3.23@渋谷WWW
- 1.Cheers With You
- 2.ドラマ
- 3.はたらく兵隊さん
- 4.POOL
- 5.Toward Word World
- 6.リップサービス
- 7.煙
- 8.灯台
- 9.ノンフィクション
- 10.Wake Up!
- 11.Flower
- 12.パノラマ
- 13.SING!!
- 14.ハイ&ロー
- 15.イージーエンターテイメント
- 16.寄り道
- 17.18
- 18.ファンファーレ アンコール
- 1.夢がさめたら
- 2.Wannabe
お知らせ
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04/22(日)Sound lab mole , KRAPS HALL , BESSIE HALL , SPIRITUAL LOUNGE , KLUB COUNTER ACTION
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04/27(金)仙台 Rensa
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07/15(日)TSUTAYA O-EAST / TSUTAYA O-WEST / TSUTAYA O-Crest / TSUTAYA O-nest / duo MUSIC EXCHANGE / 渋谷7th FLOOR / clubasia
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