BURNOUT SYNDROMES 超満員&ソールドアウトで迎えた、全国ツアー・セミファイナル、渋谷CLUB QUATRO
BURNOUT SYNDROMES | 2018.04.10
BURNOUT SYNDROMESが今年2月にリリースしたアルバム『孔雀』を携えた全国ワンマンツアー2018「孔雀 ~いざ真剣勝負~」を開催した。地元・大阪の梅田クラブクアトロを皮切りに全国5ヵ所をまわった今回のツアーはワンマンとしては1年3ヵ月ぶり。昨年は対バンツアーを精力的に行ない、バンドとしてタフに鍛え上げられたバーンアウトだったが、今回のツアーは事前に入念に準備されたスクリーン映像やリクエスト曲を用意するなど、ワンマンならではの趣向を凝らした演出をたっぷり用意して楽しませてくれた。
ここではセミファイナルとなった、渋谷クラブクアトロの模様をレポートする。
会場に入ると、入り口で謎のスタンプを手の甲に押された。その意味がよくわからないまま、開演を待つ。オープニング映像が映し出されると、そのスタンプは“MBI”という悪い組織が、集まったお客さんがライブで燃え尽きないように制御するためのチップを埋め込んだものだとアナウンスされる(もちろん、そういう演出だ)。それを撃退する““モエツキーター””(=バーンアウトのメンバーのこと)を起動するためにコマンドを入力しよう! ということで、「ハイスコアガール」のサビのフレーズ“↑↑↓↓←→←→(同時押し)青+春”をみんなで歌う――という寸劇からライブはスタートした。初っ端から予想の斜め上をいくバーンアウトの茶番にフロアは爆笑に包まれるなか、メンバーが勢いよく登場。石川大裕(Ba)が「ライブを一緒に作る準備はできてますか!?」と叫び、廣瀬拓哉(Dr・Cho)が叩き出す軽快なビートに合わせて会場からはハンドクラップが湧き起こると、熊谷和海(Gt・Vo)の落ち着いた歌声が丁寧にメロディと言葉を紡いでいく。
ラップを刻みながら爽快に風を切って駆け抜ける「Melodic Surfers」、様々な文学作品を歌詞に散りばめた初期の代表曲「文學少女」など、序盤は疾走感溢れるナンバーを立て続けに披露していった。廣瀬のドラムソロを皮切りにダンサブルなビートにのせてクールな女性の向上心を歌う「エレベーターガール」のあとは、石川はキーボードを弾き、廣瀬が大太鼓を叩くという変則的なフォーメーションでエレクトロなロックサウンドを無表情で鳴らした「POKER-FACE」へ。生粋の文学少年だった熊谷が手がける語彙力に富んだ歌詞と、それを全力で音に変えるバンドサウンドによって、曲ごとに全く違う世界観を築き上げるバーンアウトの楽曲たち。音源ではライブの再現性を考えずに様々な楽器の音を取り入れる彼らだが、ライブに関しては、ひたすらスリーピースのソリッドなバンドサウンドにこだわるところに、彼らのロックバンドとしての譲れない信念を感じた。
熊谷が集まったお客さんに「感謝の気持ちを込めて」と言って披露したのは「吾輩は猫である」。熊谷はクラシック・ギターを奏で、廣瀬はカホンを叩くアコースティック編成による温かいミディアムポップは、夏目漱石の名作から拝借したタイトルからもわかるとおり、猫目線で理想の人間関係を綴った熊谷らしいテーマだ。石川が「熊谷くんは“良い曲を作るマシーン”なので、やりたい曲がたくさんある」と言うと、中盤ではアルバム『檸檬』の楽曲をメドレーで届けた。カラフルな照明を浴びて開放感のあるメロディが響き渡った「君は僕のRainbow」や「大海原に冒険しませんか? しっかり俺の手についてきてくれ!」という勇ましい言葉とともに賑やかな船旅へと誘った「Bottle Ship Boys」などをショートバージョンでつなぎ、コール&レスポンスを巻き起こしながら会場をひとつにしていく。
ライブの途中には冒頭のスクリーン映像の続きの展開が待っていた。MBIの陰謀によって会場が停電してしまう! という緊急事態が起きると(あくまで演出だ)、会場に集まったお客さんがスマホのライトを照らして、最終的にチップを破壊する――というストーリー。そして、「ヒカリアレ」へとつなぐ。それは、ともするとお客さん参加型のエンタメ色の強いショーのようなライブに映るかもしれないが、あくまでその中心はロックバンドとしての3人の骨太な演奏がある。なかでも石川が「あなたが照らしてくれた道を僕らは真っすぐに進む! そんな約束の歌を聴いてください」という熱い言葉と共に届けた「ヒカリアレ」は、次第に力強さを増していくサウンドにのせて、全身の血が燃え滾るような情熱を胸に未来への希望を高らかなメロディに託した、この日のハイライトのひとつだったと思う。
最後のMCでは熊谷が語りかけた。「みなさんがこれから生きて行くときに、ちょっとしたことで燃え尽きてしまって、“生きていく意味がないんじゃないかな”って思うことがあると思います。そういうときに僕たちが味方でいたくて、こうして歌っています。あなたたちの隣で一緒に歩いていきたいからです。これまでも、これからも」。一語一句を噛みしめるように伝えると、熊谷自身が「20歳のときに光が全く見えなかったときに書いた」という「斜陽」を届けた。言わずもがな、モチーフは太宰治だ。最初は絶望に打ちひしがれていた言葉が、3人の演奏が複雑に絡み合う長い長い間奏を経て、“死ねない。”という力強い目覚めに変わる瞬間はあまりにも美しく感動的だった。
いよいよライブがクライマックスへと向かう。「あなたが好きだって言ってくれたこの曲、俺たちは一生歌い続ける!」。石川の真っすぐな言葉と共に届けたメジャーデビュー曲「FLY HIGH!!」で特大のシンガロングが会場を包み込むと、ラストは歌詞が今回のツアータイトルにも使われている艶やかなロックナンバー「花一匁」でフィニッシュ。≪斬られて堪るか いざ真剣勝負 努々離すな 其の手を 夢を 魂を≫。このフロアを出たあとも、私たちが日常という“真剣勝負”に立ち向かえるように、力強い歌でライブを締めくくった。
アンコールではリクエスト曲のコーナーがあった。石川が「俺たちは大阪にいるから、東京まで500キロ。すごい長いです。どれだけ頑張っても6~8時間かかってしまいます。でも気持ちは200キロで飛ばしてでも、すぐに会いたいと思ってます」と言うと、インディーズ時代のアルバム『世界一美しい世界一美しい世界』に収録されてる「東名高速道路清水JCTを時速二〇〇キロメートル超で駆け抜けるのさ」を届けた。そして、最後はベートーヴェン「歓喜の歌」のメロディに、“バクタンセヨ(爆誕せよ)”という言葉をのせて21世紀に蘇らせた「ヨロコビノウタ」を華やかなサウンドのなかで歌い上げると、熊谷は「あなたに会えた喜びを僕は忘れません!」と叫んだ。ユーモア溢れる演出に笑う場面も多かったが、やはり最後はメンバーの剥き出しの想いに何よりも強く胸を打たれたライブだった。
今回のツアーのなかでバーンアウトは早くも来年2019年3月にワンマンツアーを開催することを発表した。1年先なんて気が早いような気もするが、“彼らにまた会える”、そんな約束があるだけで、なんとなく毎日が明るくなる。バンドを、音楽を楽しむとき、そういうワクワクする“待ち時間”にも意味があることを、彼らは知っているのかもしれない。
【取材・文:秦 理絵】
【撮影:HAJIME KAMIIISAKA】
リリース情報
孔雀
2018年02月21日
Epic Record Japan
2.花一匁
3.若草山スターマイン
4.吾輩は猫である
5.Melodic Surfers
6.ハイスコアガール
7.君をアンインストールできたなら
8.POKER-FACE
9.斜陽
10.Dragonfly
セットリスト
全国ワンマンツアー2018「孔雀~いざ真剣勝負~」 2018.03.23@渋谷CLUB QUATTRO
- 01. ハイスコアガール
- 02. Melodic Surfers
- 03. 文學少女
- 04. セツナヒコウキ
- 05. エレベーターガール
- 06. POKER-FACE
- 07. 吾輩は猫である
- 08. 燃えつきメドレー
・君のためのMusic
・君は僕のRainbow
・Bottle Ship Boys
・ナイトサイクリング - 09. 君をアンインストールできたなら
- 10. ヒカリアレ
- 11. 斜陽
- 12. 若草山スターマイン
- 13. 月光サンタクロース
- 14. FLY HIGH!!
- 15. 人工衛星
- 16. 花一匁 【ENCORE】
- EN 01. 東名高速道路清水JCTを時速二〇〇キロメートル超で駆け抜けるのさ
- EN 02. ヨロコビノウタ
お知らせ
ラックライフ presents GOOD LUCK 2018 大阪編
05/04(金・祝)なんばHatch
ANI-ROCK FES. 2018「ハイキュー!! 頂のLIVE 2018」
05/12(土)さいたまスーパーアリーナ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。