ウソツキ、新曲まで飛び出した『ULTRA USOTSUKA NIGHT~俺たちバッドボーイズ!~』ファイナル
ウソツキ | 2018.04.16
不良は人を惹きつける。それは古今東西、共通の理に違いない。完全なる悪ではなく、文字通り“良ではない”ところがポイントなのだろう。“ちょいワル”とか“やんちゃ”とかいう類いの、どこか憎めない感じ。加えて“不良”という言葉にはほのかに青春の匂いも漂っている。さて、ここでウソツキだ。おそらく不良とは真逆の青春を送ってきただろうウソツキが2018年の活動コンセプトに掲げたのが“遅れてきた青春”、それを実行する第一弾として選んだテーマが“不良”だという。3月23日からスタートした東名阪ワンマンツアー“ULTRA USOTSUKA NIGHT~俺たちバッドボーイズ!~”は彼らなりの“ワル”を追求し、具現化したツアーであり、最終日となった4月1日、東京・恵比寿LIQUIDROOMは間違いなくその集大成と呼ぶにふさわしいステージだった。
開演時刻から遅れること8分ほど(遅刻も不良には欠かせない要素だ)、スッと場内が暗転し、同時にステージを覆う紗幕に映像が浮かんだ。映し出されたのはバーを舞台に“全然モテない”“バッドじゃない”とうなだれる4人の姿だ。そこで“いいアイデアがある”と吉田健二(Gt.)がギターを取り出すや、全員で“ライブやっちゃう?”と盛り上がる、いかにもな流れがいい。グッと期待の高まるフロアに流れ出したSEがジャマイカのレゲエバンド、インナー・サークルの「Bad Boys」という徹底ぶりも然り。紗幕には映像に代わって彼らのシルエット、“♪俺たちはさ ワルいヤツらだ”のセンテンスをリフレインする、そのタイトルも「俺たちバッドボーイズ」がライブの一発目を飾り、続く「コンプレクスにキスをして」でついに幕が落とされると、揃って全身黒づくめの衣装にサングラス&金のチェーンネックレスという、まんまバッドボーイな出で立ちの4人に凄まじい歓声が上がった。思わず腰が揺れてしまうディスコティックな演奏に乗ってギターなしで竹田昌和(Vo/Gt)が軽快に踏むステップも実に堂に入っているではないか。
「“ULTRA USOTSUKANIGHT”へようこそ。今日は飛ばしていくので、ついてきてください」
拍手喝采の中、竹田がそう挨拶すると、間髪入れずにタフなロックナンバー「地獄の感情無限ロード」へとなだれ込み、抜けのいい疾駆感が爽快な「ミライドライバー」とリレー。さらには「かかってこいよ、抱きしめてやるから!」と力強くオーディエンスに呼びかけ、「夢のレシピ」でアッパーに畳み掛けて場内の温度を吊り上げていく。いつにも増して前のめりな竹田の佇まい、“ピーポー”と合いの手のように入るメンバーのコーラスも今日は2割増で凛々しく感じられるのは、やはりバッドボーイズ効果だろうか。
「“俺たちバッドボーイズ!”ということでね、みんなで言ってみる?」
そう提案して実行してみるもイマイチ締まらなかったが、それでも竹田は「テンション的にもう佳境を迎えちゃってる」とノリノリの笑顔。しかし直後に「ちょっと金属アレルギーなんで……」といそいそネックレスを外しにかかる(便乗してメンバーも)あたりがなんともウソツキらしい。外すのに手間取る林山拓斗(Dr)を「手伝ったほうがいいですか」と藤井浩太(Ba)が助けにいくも、やっぱり外せないというオチがフロアの爆笑を誘う。そのまま竹田は「むちゃくちゃいい曲やります」と宣言。「金星人に恋をした」で瑞々しい煌めきを場内いっぱいに満たしては、「春風と風鈴」で失くしたの恋へのほのかな痛みをさらりと歌い上げて聴き手の胸にいっそう切なさを募らせるなど、いっそう繊細かつ豊かになった表現力でオーディエンスを包み込んだ。
中盤戦、とりわけフロアを大喜びさせたのは3月23日に配信リリースされたばかりの新曲「恋はハードモード」だ。“イージー”“いいぜ”のコール&レスポンスで一体感を生み出した「人生イージーモード」のあと、無言のまま一旦ステージを去っていく竹田。何事かと思いきや、ファー付きの上着を羽織り、ギラギラしたハットとまたもサングラスを装着したパワーアップバージョン“Mr.BB a.k.a Bad Boys”となって再登場したのだから沸かないわけがない。気づけばメンバーもサングラスをかけ直し、気合い十分でブリブリのファンクチューンを投下。MVでも披露されている切れ味鋭いダンスも生で見ると殺傷力はさらに高い(ちなみにライブではどうしても竹田だけが踊ることになるが、MVでは全員がダンス。これは是が非でも観てほしい)。
それにしてもチャレンジングなバンドだ。一見、臆病そうに思えて、その実、果敢に変化に飛び込んでいく。音楽に対して、あるいはバンドの在りように対して、これほど意欲的な人たちもそういないのではないだろうか。毎年エイプリルフール=“ウソツキの日”に開催されている、この企画ライブ“USOTSUKA NIGHT”もそう。昨年は“USOTSUKA NIGHT 創世記-ジェネシス- ~ウソツキが生まれた日~”として当時、自身のキャリアで最大キャパシティとなるこの会場に立ち、一昨年は“劇場版 USOTSUKA NIGHT”と題して初のホールライブに挑んだ。当然ウィットに富んだ仕掛けもその都度、変わる。今回はツアーとまたひと回りスケールアップ、バッドボーイズという予想外の球を見事にものにした。そうやって毎回、趣向を変えながら、そのたびにバンドの新しい魅力を自ら開拓し、オーディエンスと共有してきたのだ。しかも年々、躊躇がなくりつつあるのが面白い。当サイトの連載第一回のインタビューで「昔は意味を求めていたけど、最近はただ“楽しい!”という概念、盛り上がるっていうこと自体がすげえものだって思えるようになった」と竹田が語っているように、“ウソツキはこうあるべし”といった固定観念や他人の評価に縛られることなく、より自由に可能性を楽しんでいることがステージを観ていてもよくわかる。そして、それをファンも一緒になって喜んでいるのがとても素敵だと思う。
ところで「恋はハードモード」のみならず、さらに2曲の新曲も披露された。吉田の太いギターリフが口火を切った「口内戦争」は“君とキスしたい”というストレートな欲望がグルーヴィに渦巻く、ウソツキの新境地を垣間見せるような攻め込んだ1曲。ギターをタンバリンに持ち替え、ブリッジでは拡声器をも駆使して非常事態感を煽ってはフロアをさらにヒートアップさせていく竹田の勇姿が印象的だった。アンコールの1曲目ともなった「名もなき感情」は、愛や恋と名付けられなくとも君を想う感情がたしかに息づいていることを伝える竹田らしい誠実な歌詞と、優しさと逞しさが同居した味わい深い演奏とが心地好く寄り添って、名曲の誕生を予感させる。
「俺が今日、言いたかったのは、いくつになっても青春していいじゃないかっていうこと。俺らがワルくなって“オラッ!”ってやったら、みんなもちょっとは“私も(青春)できるかも”って思ってくれるかなって。なので依怙地にワルになってみました」
本編も残すところ2曲と迫ったライブの後半、竹田は少し照れくさそうに笑って言った。「とにかく、これからもまだまだ俺らと一緒に遊んでいこうぜってことが言いたかった」とも。そうして演奏された「過去から届いた光の手紙」には自分の、そしてここにいるひとり一人の歩んできた道のりとこれからも続く旅の道行きを全力で肯定する大らかで力強い説得力があった。本編ラストはウソツキ屈指のラブソング「一生分のラブレター」。バッドボーイズを貫き通した4人からのまっすぐな愛情の手紙は詰めかけた人々の胸にしっかりと届けられたに違いない。
現在、ニューアルバムを絶賛制作中だというウソツキ。この日、聴くことができた3曲の新曲だけでもすでに楽しみで仕方がない。彼らの遅れてきた青春を、彼らと共に謳歌できる未来を今は心待ちにするとしよう。きっとそう遠くはないはずだから。
【取材・文:本間夕子】
【撮影:山野浩司】
リリース情報
[配信]恋はハードモード
2018年03月23日
DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT
セットリスト
「ULTRA USOTSUKA NIGHT~俺たちバッドボーイズ!~」
2018.4.1 @東京・恵比寿LIQUIDROOM
- 01. 俺たちバッドボーイズ
- 02. コンプレクスにキスをして
- 03. 地獄の感情無限ロード
- 04. ミライドライバー
- 05. 夢のレシピ
- 06. 金星人に恋をした
- 07. 春風と風鈴
- 08. ボーイミーツガール
- 09. 人生イージーモード
- 10. 恋はハードモード
- 11. 心入居
- 12. 恋学者
- 13. 君は宇宙
- 14. 口内戦争
- 15. ネガチブ
- 16. 過去から届いた光の手紙
- 17. 一生分のラブレター 【ENCORE】
- 18. 名もなき感情
- 19. 新木場発、銀河鉄道
お知らせ
夢チカLIVE VOL.129
05/26(土)札幌KRAPS HALL
ココロオークションTOUR 2018「Welcome to the Musical」
06/01(金)神戸・太陽と虎
SUMMER TIME LOVER CIRCUIT「サマラバ!」2018
06/30(土)仙台複数箇所
「UKFC on the Road 2018」
07/08(日)池下CLUB UPSET
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。