SHE’S アルバム『Wandering』を引っさげての全国ツアー・ファイナル、EX THEATER ROPPONGI。
SHE’S | 2018.04.12
ドラマチックなピアノの旋律と燃えるような熱を帯びたバンドサウンドにのせて、美しいメロディが様々な風景を描き出していく。SHE’Sが昨年12月にリリースしたアルバム『Wandering』を引っさげて、対バン10公演、ワンマン10公演で行なってきた全国ツアー「SHE’S Tour 2018 “Wandering”」のファイナル公演をEX THEATER ROPPONGIで開催した。昨年秋にはストリングスを交えたスペシャルな編成で芳醇な音楽の旅を楽しんだSHE’Sだったが(「SHE’S Hall Tour 2017 with Strings ~after awakening~」)、今回のツアーは再びメンバー4人だけで全国各地を巡り、様々なジャンルのバンドやアーティストと対バンを繰り広げた。そして、辿り着いたツアーファイナルは4人がプレイヤーとしての地力を上げて、ロックバンドとしてタフになった姿を見せつける圧巻のライブだった。
「大阪SHE’Sです!よろしく!」。井上竜馬(Vo)の爽やかな挨拶と共に届けた「All My Life」からライブはスタートした。アルバム『Wandering』でもオープニングを飾る晴れやかな旅立ちの歌が、ここから始まるライブの興奮を強く予感させて、会場を幸せなムードで満たしていく。服部栞汰(Gt)がオールドロックへのリスペクトを込めた渋いギターのフレーズを聴かせたのは「Blinking Lights」。激しく明滅を繰り返す照明の光を浴びて、ストリングスが軽やかにリズムを刻んだ「Un-science」に続き、自由への渇望を掲げた「Freedom」では、木村雅人(Dr)が繰り出す性急なビートのキレが以前より一段と増していた。
「今日は我々気合い十分で来たので、ついて来てください!」という服部の頼もしい言葉から、中盤はヘヴィなロックナンバーを立て続けに披露していった。井上がピアノからエレキギターへと持ち替え、英語詞を交えながら、周囲の人への嫌悪感を吐き捨てるように歌う「Getting Mad」、広瀬臣吾(Ba)の狂暴なベースラインが唸りをあげ、“燃え尽きるまで挑め”という衝動を煽った「Running Out」へ。透明感のあるサウンドスケープを得意とするSHE’Sはどこか洗練されたイメージもあるが、こうした曲で途端に露わになる荒々しい表情や攻撃的な感情もまた、彼らの持ち味のひとつだ。ダークな楽曲が続いたあと、転調しながら演奏をつなぎ、息を呑むような展開を見せたのは「White」。闇から光へ。わかりやすい演出を一切使わずに、音楽ひとつで、雨上がりのあとに空に架かる虹、あるいは長い冬のあとに芽吹く命の輝きのようなものを描き出した瞬間は、まさにSHE’Sの真骨頂だった。
井上がピアノをポロポロと弾きながら、「もう会えなくなってしまった人を忘れたくないと思う。そう思うだけで、思われる人は何倍も幸せなんじゃないかと思って書いた曲です」と紹介したのは、悲しくも前向きな別れのバラード「Remember Me」だった。たとえ傍にはいられなくとも“貴方と生きている”、そう語りかける曲のあと、「Say No」や「Ghost」という、別れをテーマにした楽曲が続いた。別れによって自分を見失い、人生を翻弄される。SHE’Sの楽曲の多くには、そんな“人への想い”が原点にある。そして、その別れを悲嘆するのではなく、人生の一部として受け入れながら前に進もうとする。ライブの後半に披露された「Over You」や「遠くまで」は、まさにそんな曲だった。陽性に煌めくサウンドにのせて“あなたたちの意味になりたいんだ”と宣言する「Over You」も、疾走感溢れる音のなかで“あなただけは離したくないんだ”と歌った「遠くまで」も、SHE’Sの歌の主役は、“僕”であり、“あなた”でもある。だからこそライブという場所で、たくさんのシンガロングが湧き起こるなかで聴く「遠くまで」こそ、この曲のあるべき姿なんだと思う。
ラスト1曲を残して、「バンドを組んで7年間やで……恐ろしいな(笑)。でも、ゆっくりゆっくり、その時その時の人たちと一緒に歩んできたという自負があります。これからもSHE’Sがいる、このライブハウスみたいな家を大きくするために、強くならなければいけないなと思います」と語りかけた井上。「もう自分のためにバンドをやってないです。こうやって集まってくれた人のために音楽を作り続けたいと思います。この居場所を守るために歌います」と言って届けたラストソングは「Home」だった。温かなピアノの伴奏、牧歌的なメロディ、力強いバンドサウンド、そして、お客さんの声。ドラマチックに重なり合うサウンドのなかで、“ほんの少し疲れたら/帰ろう”という優しく諭すような歌は、この日の締め括りに、同時に今回の長かったツアーの終わりにも相応しいものだった。
アンコールでは、メンバーから一言ずつ挨拶があった。「また(SHE’Sを)家のようにして帰ってきてください」(服部)、「5月27日に会いましょう」(広瀬)、「ちょっとずつ大きなSHE’Sになるので、今後とも応援よろしくお願いします!」(木村)。そして、最後に井上が「感謝の気持ちを込めて歌います」という言葉と共に届けたのは、SHE’Sのライブではラストソングとして欠かすことのできない大切な曲「Curtain Call」だった。“ここに立って 終わりまで 「君があって、僕だ」って 歌ってるよ ずっと”。それは、SHE’Sが音楽を奏でる理由そのものだ。エレキギターを弾きながら歌う井上が、会場の隅々まで視線を投げかけると、明るく照らされた客席に向けて「あなたの歌です!」と叫んだ。それは美しく均整のとれたサウンドのなかにあって、あまりにも泥臭く、切実で生々しい声だった。
メンバーがステージを降りたあと、スクリーン映像で夏にニューシングルをリリースすることが発表された。さらにSHE’Sは5月に初となるストリングス&ホーンを迎えた11人編成によるスペシャルライブ「Sinfonia “Chronicle” #1」が控えている。今回のツアーを通じて、ロックバンドとしてソリッドに進化したSHE’Sが、手練のプレイヤーたちと共にどんな素敵な“居場所”を作り出してくれるのか、いまから楽しみでならない。
【取材・文:秦 理絵】
【撮影:MASANORI FUJIKAWA】
リリース情報
Wandering
2017年12月06日
ユニバーサルミュージック
2. Blinking Lights
3. Flare
4. Getting Mad
5. Remember Me
6. White
7. Beautiful Day
8. C.K.C.S.
9. Over You
10. The World Lost You
11. Home
セットリスト
SHE’S Tour 2018 “Wandering”
2018.04.01@EX THEATER ROPPONGI
- 01. All My Life
- 02. Blinking Lights
- 03. Un-science
- 04. Freedom
- 05. Getting Mad
- 06. Running Out
- 07. White
- 08. Beautiful Day
- 09. Back To Kid
- 10. Remember Me
- 11. Say No
- 12. Ghost
- 13. Flare
- 14. C.K.C.S.
- 15. Over You
- 16. Time To Dive
- 17. 遠くまで
- 18. Home 【ENCORE】
- EN 01. The World Lost You
- EN 02. Curtain Call
お知らせ
FM NORTH WAVE & WESS PRESENTS IMPACT! XIII supported by アルキタ
04/22(日)Sound lab mole KRAPS HALL/BESSIE HALL/SPIRITUAL LOUNGE/KLUB COUNTER ACTION
NIIGATA RAINBOW ROCK 2018
05/04(金)万代シテイ(無料会場) / 新潟LOTS / NEXS NIIGATA / 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE 新潟GOLDEN PIGS BLACK SATGE / 新潟CLUB RIVERST / LiveHouse柳都 SHOW!CASE!! 柳都オレンジスタジアム / 市民プラザ / ジョイアミーア / 日報ホール
rockin’on presents「JAPAN JAM 2018」
05/05(土)千葉市蘇我スポーツ公園
OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2018
05/19(土)METROCK大阪特設会場(大阪府堺市・海とのふれあい広場)
Sinfonia “Chronicle” #1
05/25(金) - 27(日)NHK大阪ホール
百万石音楽祭 2018 ~ミリオンロックフェスティバル~
06/02(土)石川県産業展示館 1〜4号館
SUMMER TIME LOVER CIRCUIT「サマラバ!」2018
06/30(土)仙台市内ライブハウス6会場
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