NOWEATHER、リリースツアー『I like tube screamer tour』ファイナル
NOWEATHER | 2018.04.23
届ける、伝える、響かせる、聴かせる、贈る、残す…。ミュージシャンが歌をうたったり、音を放ったりする際に込める想いは様々だ。さしずめ、このNOWEATHERは、どのような思いを込めて表現しているのだろう? 私は、この日の彼らのライブを観て、それが「残す」ではないだろうかと察した。記憶、想い出、傷痕、記録…。ミュージシャンは次に繋げる為にも、集まった人々に色々なものを「残していける」職業でもある。
今年1月にタワーレコード限定のシングル「さよなら恋人」、TSUTAYAレンタル限定シングル「オーバードライブ」を同時リリースしたNOWEATHER。それらと共に2月下旬より全国を回ったツアー『I like tube screamer tour』のファイナルが彼らのホームグラウンド、下北沢Daisy Barにて行われた。自身最大となった今回のツアー。その行く先々にて様々な対バンとライブを繰り返してきた。そんなツアーもこの日が千秋楽。「高校の頃から好きで聴いていた、そんなバンドと出来て嬉しい」と出番中、NOWEATHERのボーカル&ギターの大畑カズキが語った通り、この日はゲストに、憧れのpaioniaとasayake no atoを迎え行われた。
「残し方」は違っていたが、各々楽曲の中にエモさを秘め、忍ばせ、時に暴発させた、この日の3バンド。先鋒はasayake no atoが務めた。神社宏行(Vo&G)、佐々山裕(G)、中川博文(B)、森泉直貴(Dr)からなる、2011年に京都で結成された4人組だ。
ギターの爪弾きから始まり、一気に生命力を帯び走り出していくが如く「花たち/旅」でスタートを切った彼ら。サビでのストレートさが開放感を場内に寄与していく。アクティブに動くベースやギターが泳ぎまわる感じも特徴的な彼ら。集まった各々なりの宝物へと想いを馳せさせた「ワインドアップ」、更に突っ込み気味に飛び込んだ「AGAINST」では、サビのストレートさやツインギターでユニゾンになる箇所もポイントに、《全身全霊覚悟を決めていた》的な歌詞も胸を惹いた。また、「僕のネガティヴな部分も歌にした」(神社)と入った6/8の「欠落」では、景色感のあるギターソロも交え、ミディアムな歌を場内に広がらせていった。
後半では、ラストに向かうにつれ疾走感を帯びていく箇所も印象深かった「これからのこと」、「音楽を辞めた奴のために作った曲」との思いが込もった「クライマー」での、《明日を信じてる》のリリックも想い出深い。ラストは新しい世界へと誘った「軌跡」で走り抜け、最後は爽快ささえも得ることが出来た。
中堅はpaioniaが務めた。ドラマーが脱退し新体制での初ライブだったこの日。その新生劇に、あえてこの舞台を選んだところも、お互いのバンドの関係値や信頼感のように映った。このpaioniaも結成は古く2008年。現在は高橋勇成(Vo&G)、菅野岳大(B&Vo)にサポートドラマーを交え活動している。スロースターターながら楽曲を追う毎に独特の楽曲とそれらが放ち、擁する世界観で会場をズブズブ惹き込んでいった彼ら。胸をかきむしるかのようにエモい音楽性と浮遊感を擁したボーカルの歌声も特徴的だった。
叙情性のある歌とメロディの「未明の将来」から彼らのライブは開始された。場内を惹き込むように楽曲に激しさが帯びていく。ジャズ系のドラマーなのだろう。なんだかタイム感がシャッフルや4ビートだったりする。そんな独特のタイム感を交え歌われた「帰るところ」。続く「11月」は、やるせなさを激しさとして、場内にぶつけてきた。
中盤では菅野が歌った「僕らの音が苦」に於いてのファズの効いたギターソロ、続く「サニーハイフレット」でのアウトロのインプロ混じりのインタープレイにも目を見張るものがあった。
当日、自分も彼らに近い心境だったのだろうか? 後半は痛々しく響く曲が目立った。「正直者はすぐに死ぬ」で歌われた、悲痛なまでの≪まだ俺はこの街で生きていたい≫のフレーズや、ラスト「跡形」の怒涛さは、最後、置き去りにされたかのような、“凄い!!”という感想だけが既にメンバーが去った無人のステージの上に残された。
そして、この日の大将はNOWEATHERが務めた。
スネアにアクセントをつけたドラミングを基調に、2本のギターにベースが夜明け感を加えていく長いイントロから「誰も風を止めない」に入ると、ライブが走り出していく。≪大丈夫さ誰も止めないから≫と一緒に突き進んでいくべくゴーサインがステージから楽曲を通じ贈られる。篠原朴哉(B)の6限ベースのスライドを活かしたイントロから、伊藤勇太(G)のかき鳴らすギターが合わさり「靴底と少女」へと進むと、大畑カズキ(Vo/G)のハイトーンにエモさを交えた独特な歌声が場内に広がっていく。「残像、街灯」のイントロが鳴り出すとファンも驚喜。サビのストレートに伸びていくところも気持ちいい同曲に合わせて、場内から力強い幾つもの拳が挙がる。
この日は久々の曲もプレイされた。ミディアムさもおり交えた「潜水」では、大畑がエフェクターのつまみをいじり一瞬会場をカオスに陥れ、ギターの爪弾きと歌から入った「告白によせて」では、≪君と一緒にいたい/好きだぜ≫とのどストレートな心情が6/8のリズムに乗せて歌われた。
「これまでで最も長いツアーだったけど、思ったより大変じゃなかった。喧嘩もなかったし。但し、序盤で観光しすぎてお金が無くなったけど」と笑う大畑。 中盤に入ると新曲「jeanes」も披露された。ツアー前に出来、このツアーを通して歌ってきた曲とのこと。愛しい人の仕草や行動の数々を思い返しながら、それらが愛おしく綴られた同曲。アウトロではオルタナな一面も伺わせてくれ、「些細な幸せだけど、こんな日々を愛してるし、これからも愛する」と宣言しているかのような曲であった。
ラスト2曲は感情たっぷりな歌と駆け抜ける疾走感がライブを再び走り出させた。中でも≪夢から覚めても夢は冷めなかった≫と歌われたラストの「さよなら恋人」の際には、ギターもベースも前っつらに出てソロをキメ、ハイライト場面が生み出されていった。
アンコールは1曲。「これからもよろしく!!」との気持ちを込めて「オーバードライブ」が鳴らされた。変わったものと変わらないもの。ここでやらなきゃいつやるんだよ的な決意表明っぽさをあえて、ゴリゴリに伝えないのがいい。彼らのオーバードライブは、これからも常にフルでかかり続けていく。そんな風にも響いた。
ツアーは終わったが彼らのライブはこれからも続いていく。ステージを降りる際のメンバーの表情は、このツアーの完遂も含め、やり遂げた達成感と満足そうな表情でいっぱいであった。
「どこもこんなに人が集まったわけじゃなかったけど…」と、ライブ中盤での今回のツアーを振り返るMCの際に、この日、集まってくれた人々への感謝の意も込めて大畑は振り返った。しかし、その表情には不思議と残念さや悲壮さは伺えなかった。どころかむしろ、希望や次の課題に向けての意欲的な明るい表情のように映った。きっと彼らは、このツアーで都度、その土地土地で、動員うんぬんではなく、次に繋げたり、足跡として「残せる何か」を各所に置いきたのだろう。
動員や多くの人に見てもらうのが目的ではなく、むしろ数人の前だろうがシッカリと、その見てもらえた人たちの中に「何を残せたか」。それこそが今のところの彼らのツアーやライブの成功だと私は考える。
それが実現できたかどうかは正直いまは分からないだろう。その都度の手ごたえを信じ、それを確信に変え、次にまたその顔と出会えた時に、初めてそれが実感できるであろうから。だがしかし、NOWEATHERよ、今はその感触や手ごたえを信じて進め。きっとその先に、もっともっと多くの出逢うべく人たちがいるはずだから。
【取材・文:池田スカオ和也】
【撮影:ハラタイチ】
リリース情報
タワーレコード限定シングル「さよなら恋人」
2018年01月24日
primitive
2.靴底と少女
3.告白によせて
セットリスト
『I like tube screamer tour』FINAL
2018.3.30@下北沢Daisy Bar
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asayake no ato
- 1.花たち/旅
- 2.ワインドアップ
- 3.AGAINST
- 4.欠落
- 5.これからのこと
- 6.クライマー
- 7.軌跡
paionia
- 1.未明の将来
- 2.帰るところ
- 3.11月
- 4.僕らの音が苦
- 5.サニーハイフレット
- 6.正直者はすぐに死ぬ
- 7.跡形
NOWEATHER
- 1.誰も風を止めない
- 2.靴底と少女
- 3.残像、街灯
- 4.潜水
- 5.告白によせて
- 6.jeanes
- 7.鼓動のきらめき
- 8.さよなら恋人 【ENCORE】
- オーバードライブ
お知らせ
アコースティックANGA
4/17(火)千葉・ANGA
※大畑カズキ弾き語りでの出演になります。
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※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。